優しさの裏に
やっとテストが終わった。
解放感に浸る間も無く、又イベントが……。
委員長という肩書きがあるいじょうは、やらなきゃいけない。
って言うか、この学校イベント多くないですか?
何て、現実逃避してたら。
「亜耶ちゃん。行くよ」
龍哉くんが、声をかけてきた。
「はーい」
私は、嫌々返事をした。
「そんな嫌そうにしないの。って、亜耶ちゃん、何時もと違わない」
移動しながら、龍哉くんが言う。
「えっ、あ…。そっかなぁ…」
やっぱり、わかっちゃうかな…。
「亜耶ちゃんが弱ってるの滅多になさそうだけど、それこそ、男が付け入る隙になってるよ。気を付けて」
龍哉くんが、忠告してくれる。
わかってるんだ。
だけど、声だけでも聞きたいって思っちゃダメなのかなって…。
「何かあったら言って。俺で力になれることがあれば、手伝うから」
ニッコリと笑顔を向けられて、私は頷いた。
「ありがとう、龍哉くん」
「ほら、急ごう」
龍哉くんに促されて足早に廊下を歩いた。
龍哉くんが先に教室に入る。
「ほら、亜耶ちゃん。俺等が最後だよ」
龍哉くんが振り向き様に言う。
彼に続いて中に入ると皆席に着いてる状態だった。
「えっ、本当だ。遅くなってすみません」
そう言って、頭を下げた。
それから、宛がわれている席に着くと視線を感じて目を向ければ、悠磨くんと目が合う。
私が、軽く手を降れば悠磨くんが、ホンノリ顔を赤らめる。その隣に座ってる彼女は、こっちを睨んできてるけどね。
「全員、揃ったところで始めるか」
生徒会長の声が教室に響いた。
例年通りなら、学年毎のレクだけで、この集まりは必要なかったそうだ。
今年は、何故か上級学年から不満(?)が出たらしく、全学年レクをする事になったという事だ。
レクの内容は、10ヶ所あるチェックポイントを確実に通過する事。その10ヶ所で問題やお題を解くというもの。
班も学年ごちゃ混ぜなので、前日の登校時間に校門で生徒会がクジの入った箱を持ってるから、それを引くっというもの。
誰と一緒になるかわからないとなると、気を引き締めないといけないなぁ。
そんな事を考えてたら。
「亜耶ちゃん。大丈夫?」
龍哉くんが心配そうに私を見てくる。
「うん。大丈夫だよ。心配かけてごめんね」
笑顔を向けたんだけど。
「そんな顔で言っても心配になるだけだよ」
へっ?
「凄く、不安そうな顔してる」
あーあ、ダメだな。全部見透かされてる。
「無理して笑うな。俺たちが居るだろうが…。俺に言いにくければ、梨花や加藤、近藤に話を聞いてもらいなよ。それだけでも不安は和らぐだろ」
龍哉くん、優しいな。
「ありがとう」
私は、お礼を言うしか出来なかった。
「亜耶。部活行くぞ」
放課後、唐突に悠磨くんが教室の入り口で呼び出した。
「あ、うん」
私は、そう頷くと鞄を掴む。
「亜耶、また明日ね」
「バイバイ、亜耶ちゃん」
梨花ちゃんや龍哉くん達が、声をかけてくる。
「うん。また明日ね」
私はそう返して、入り口に着くと悠磨くんが手を繋いできた。
「亜耶、どうかしたのか?浮かない顔をしてるが…」
悠磨くんが、私の顔を覗き込んでくる。
「どうもしないよ」
って答えるしかない。
「ふーん。オレに言えないことなのか?」
何時になく突っ込んでくる悠磨くん。
だって、何て言えばいいの?
付き合う前は、悠磨くんの事いいなって一緒に居たいって思ってたのに…。今じゃ、遥さんが傍に居ないと不安で押し潰されそうになってるなんて、言えない。
「なぁ、亜耶。オレに何か言うことあるんじゃないか?」
悠磨くんが、不安気に聞いてくる。
「なんで…」
私は、俯きながら、そう言うしかなかった。
「ただ、何となくそう思ったんだ。気にするな」
そう言って、手の繋いでない方の手を私の頭にのせた。
悠磨くん…。あなたの優しさが、時には残酷になるんだよ。
私の胸の内にあるものに気付き始めてるのがわかった。