正論に論破された……
遅れてやってきた美久に気付いて草士が質問してきた。
「どうだろ、自分で確かめてみるといいよ」
不自然なくらい笑みを浮かべて、美久は眼前の間園を指さして自分で確認させることにした。
「結奈さん」
親しげに草士が美久に言われたことで話しかける。
「すげーにらまれてる!! なんでっ!?」
間園が私の褒美を邪魔した貴様は誰だ的なオーラを発していた。そうされる要素が思いつかない草士はどう接したらいいか困ってしまう。
「なんでだろうね。はぁ~あっ」
私の忠告を聞かないからそういう目にあうんだよって美久はそう思いながら遠い目をして草士を無視した。
我慢できなくなったからか、間園が自分の欲望を口に出した。
「なんなのっ! あと数秒でたくさん気持ち良い思いが出来そうだったのに」
そんな様子の間園を見て、美久は言葉もない。
(第一印象最低。牛原くんじゃもうダメかな)
草士と間園を付き合わせる計画は無理か……と、美久は思案にくれた。
「美久さん」
どうにかしてもらえないかと草士が訴えかけてきた。辟易しているというのに。
「言う通りにしたはずっスよね? また一緒にうまくいくように考えてくだせぇ」
情けないことに、涙目で草士が他人任せの言動に終始する。
私の話を信じずにどの口が言っているんだとイライラして美久は草士を殴る。いつ言う通りにしたんだ!? という怒りもこもっていたのかもしれない。それを見ていた間園が、美久に殴られるのは私の役目なのにと勝手な考えでショックを受けていた。
美久の怒りの一撃は結構なダメージだったらしく、草士がほっぺたの辺りをおさえている。
「誰が私の言う通りにしているって言うのよ!? 全然聞いてなかったくせに」
何で私の教えを受けずに突っ走ったのかと、美久は草士に怒りをぶつけた。
「私は結奈を殴れば良いって言ったの。結奈はそれが嬉しい娘なんだよ」
まだ痛みがひかない、草士の頬は腫れているのかもしれない。それはともかく、草士が正論を言う。
「だったとしても……悪くもない彼女を殴るなんて俺には出来ねえっスよ。そんなのサイテー人間がすることだ」
サイテー人間というレッテルを貼られた気分になった美久は言葉の重みに押し潰される感覚を味わった。