人の話は最後まで聞いてよっ
「そうか! 結奈さんを助けるのが一番なんスね」
草士が思いついたら即行動とばかりに、間園のいる場所へ走っていく。
「待って!! あいつは普通じゃないんだから」
だからそうしても無駄なんだって言った感じで美久は止めようとしたのだが時すでに遅しだった。
場所変わってここは校舎から少し離れた場所にある体育館の裏。たまたまそこには複数の木がつらなっており、視界が悪い場所である。
「私のことは気にしなくていいよ。キミは行って!」
「はいっ」
カツアゲ(パシリかもしれないが)されそうだった気弱な感じの男子生徒に間園はこの場を去るように指示した。邪魔されることの多い不良のフラストレーションが溜まっていく。怒りで体を震わせていた。
「間園結奈ぁ。いつも邪魔なんだよ、今日はただじゃおかねぇっ」
いつ、それをしてくれる《なぐられる》のかと倒錯した感じに待ちわびていた間園にとって、やっと痛いのをもらえると「ご褒美を……」って感じでものすごく嬉しそうな表情をしている。後もう少しという所で走ったままの勢いで牛原が不良にカウンターを食らわせた。
「結奈さん、危ねぇ!!」
「グハッ」
突如現れた乱入者に、間園が何を思ったか――
「大丈夫みたいっスね。結奈さん」
不良を倒した牛原が間園に聞く。
「俺が来たからには悪い奴は全員倒すっス」
草士なりの決め顔で、間園に告げた。 間に合う可能性が低くても諦める気のなかった美久が二人に気づいて声をかける。
「結奈っ。牛原くん!!」
せっかくの大チャンスだったのに……誰よ。間園がそんなことを思っているのだろう、痛いことを楽しみにしていた分、お預けを食らった気分を味あわされてまるで何かの中毒患者のように体を震わせ続けていた。
その間園の状態を見て美久は悲鳴をあげかけた。
(お……遅すぎだったよ……)
牛原が不憫すぎて、美久は顔を覆った。
「ッ」
その無念さを間園が全身で表現していたと思ったら今度は落ち込んでいる。
(あーあ)
さすがに美久はかける言葉を見つけられない。
「美久さんどうスか? 俺、結奈さんの救出に成功したっス。これで俺の株は結構上がったっスかね?」