こんなデマ情報ないよな~……
「もし事実なら俺達はライバルになるっスよ。勝負!」
男らしく宣言してくる草士。熱意だけじゃなくて体も前のめりになっている所に、美久は反射的に正拳突きを食らわせてしまう。
「調子乗っていたっス。ゴメンナサイ、謝るんで……許して」
たまたま骨,または脇腹付近に拳を当てられた草士が震えた声で許しを乞う。
「違うから! 驚きのあまり手を出しちゃっただけ。諦めないでよ!!」
美久は自分のしでかしたことに今気付いて、諦めないように頼んだ。
美久は勘違いとはいえ、怖がられてしまっているようなのでそれを利用して詰め寄った。
「ていうか誰からのウワサよ。説明しなさい」
「誰も何も学校中、このウワサはめぐっているんじゃないっスかね」
胸ぐらをつかまれている草士は、美久の剣幕におされながらも、そう教える。
「だいたい一緒にいて激しくツッコんだりそれを結奈さんが嬉しそうに受け入れていたりするとそれは"愛ゆえじゃないかって"」
学校中、そういうウワサで持ちっきりだと話を続けてもらっていたが――
もう話を聞きたくなくなったので、美久は草士の頭を殴ることで黙らせる。
「それ以上しゃべれば消す……」
「説明させといてこの仕打ちとかあんまりっス」
美久は今以上の情報はいらないと草士を脅す。しかし、草士の言い分も、もっともではないだろうか。
「そんなデマ情報、誰がウワサを飛躍させたんだか。ないわよ、そんなコト!」
女同士だとかおかしな点が多いのに、信じる奴がいる事実をタメ息混じりに、腰に手を置いている美久が否定した。
「なら嬉しいっス」
草士の表情が希望を持っても良さそうだという感じになる。
(知らなかったんだけど。学校中で結奈と付き合っているとかって噂されていた事とか……どうにか出来ないかな)
二度と顔も見たくない相手とそう思われていたってだけで憂鬱である。微妙に青ざめている表情で、どうしたらいいかと頭をフル回転させようとしていた。
「良かったっスよ~。まだ可能性が残っているってわかって」
神様っていたんだなといった感じに、草士が祈りのポーズをしている。
「それよ!!」
「はいぃ!?」
美久が草士の肩を勢い良く叩き、グッドアイディアだとばかりに褒めているつもりでいる。だが、草士は美久を怖い女生徒だと認識してしまっているので恐怖心から顔を青ざめさせていた。