異様な視線を向けてくる男子生徒が何を語る?
美久は壁の曲がり角から美久の事をじっと見ている男子生徒。そいつが異様な気を放っているので驚いた。
「なっ……何なの!?」
穴が開くくらい見つめられている気がして、美久は冷や汗が増えていっている気がした。それも仕方ないだろう、得体の知れない男子生徒に見つめ続けられてしまっているのだから――
その訳のわからない恐怖を与えてくる男子生徒から美久は話しかけられる。
「あんたが降留津美久さんっスか?」
警戒心を露に、この男子生徒に問い返す。声が震えていたかもしれない。
「そう……ですけど。誰な……の?」
どうやら美久を怖がらせるつもりはなかったらしく(ヘタすればチャラそうな彼はそんなつもりなかったっスよと軽く言うかも)
「俺は牛原草士。結奈さんの第一の舎弟、困った時にいつも頼ってもらえる男……」
熱弁している草士と向かいあって、美久は呆気に取られている。
(へ~っ、結奈にこんな人がいたのか)
キリッとした男前な表情で、草士がおかしな事を口走る。
「――だったらいいのにと夢見ている男!!」
「まさかの願望だったの!?」
いくら、どんなに良い表情をしていてもこの事実を前にするとかっこ悪くなった。
「あ……アナタは結奈のことが?」
美久の問いかけに、草士がよくぞ聞いてくれたとばかりに素早く答える。
「もちのろん」
草士が結奈を好きになった理由を語った。
「つーかあのひと見てホレねぇ奴は聞いたことねえっス」
学校にいる悪人を前にして、一人立ち向かう間園結奈の草士のイメージ。実際がどういう感じかなんて知る由もない。
「弱気を助けるためどれだけキズつけられても悪人に対抗し続ける姿。シビレるっスよ」
草士の見たままの感想を聞かされる美久。「魅力的だ」と彼はもう自分の世界に入ってしまったようだ。
(……まあ、見方によってはそう見えるかも……なのか!?)
間園の本性を知っている美久は、何とも言いがたい気持ちになった。
「……で、そんなあなたが結奈じゃなくて私に用があるの?」
結局話しかけられた理由をまだ聞いていなかったなと、改めて質問し直す。
「風のウワサからなんスけど、あんたと結奈さんがつきあっているとか……本当のことスか?」
聞き捨てならないことを言われて、美久は閉口してしまった