どMに好かれそう……
いきなりだけど……降留津美久は何だか昔からやっかいな人に絡まれやすい人生を送っている学生だ。
「おいっ、何か言うことねえのか!!」
「一発食らわせないとわからねえのか!?」
肩がぶつかってしまった不良と目を合わせたくない美久……でもこんな不良程度なら平気だった。
「待てぇい、暴力にモノを言わす輩がっ」
こんな人目のつきにくい校舎裏までやってくる女生徒、問題はこいつ間園結奈。悪から守れるものを守ろうとする存在だと思っていたのだが――――――
「殴るなら私を殴れ!!」
むしろそうして《殴って》欲しそうな表情で、両手を広げて受け入れ態勢に入っている。その中身は痛いことが好きなただの"ド"をつけても言いすぎと感じないヘンタイだ。私は関わり合いたくないと思っているので逃げようと考える。
どうやらこの不良二人(リーゼントとモヒカン学生)は間園のことを知らないようで無駄にやる気を高めている。
「なーんか知らねえが」
「そうして欲しいってんなら殴ってやるさ」
モヒカン学生が学生服の内ポケットあたりから(どうやって入れていたんだよとツッコミたくなったが)木製バットを取り出した。
「むっ、木製バット……だと! そんな道具を使う気かっ]
何かを言いたそうな間園、欲望に忠実な言動をする。
「どうせなら金属にしてくれない!!」
「死に急ぐ気!?」
美久は言っても聞く耳を持たない人ってわかっているけど、と想像だけで痛そうだと顔を青ざめさせた。
美久は自分のせいでという負い目もあるので、間園にやめるように説得する。
「何考えてんの。バットで殴られるなんてただじゃすまないよ!」
間園がどこか冷静に考え始めた様に見えた。
「たしかにバットでは素手と比較できない感覚かもな」
でも考え方のベクトルがおかしい。どこか憂いを秘めた表情で溜息をつく。
「そんな感覚を知らされては普通では満足できない体になるかもしれない」
間園は顔を隠しながらも、唇の端をにやけさせて自分のやって欲しい事を口にする。
「そうなったら困る!! が味わってみたい気持ちが」
「頭を集中打されてもいい気がしてきたよ!!」
美久はその言動にイラッとしてしまったからか間園に早くやられてこいと言ってしまっていた。
リーゼントとモヒカンの不良にとっても、ただのストレス解消なのだから喜ぶという変な反応をされても止める気はなかった。しっかり間園を女だからとか知った事かという感じでボロボロにしていく。
「あー、スッキリした」
「行こうぜ」
不良二人がこの場を後にした。
「今回も難敵だった……」