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とあるシリーズ

とある男の子の話<消しゴム>

作者: 桜月空

また・・・、やっちまった・・・・・・。




高校2年に進級してから9ヶ月。

後3ヶ月で最終学年、受験が控えているというのに

斉藤 慎吾17歳、恋をしてしまった。




3ヶ月に一度、席替えのクジ引きで2回連続同じ子が隣の席になった。

もちろん誰も細工などしていない、いや出来ないといっていい。

無駄に厳しい担任が一人ずつ教壇の前へ出し、くじを引かせ番号を確認する。目が悪い人用に前2列を先にクジ引きするから唯一の変更さえも許さないようだ。

不正した奴が一人いたが結果バレて教壇の目の前に確定してしまった。

そして、また一からクジ引きをしたのだった。





「斉藤君、また使ってる・・・」


なんとも言えない可愛らしい声が聞こえた。


「あ、わりぃ。・・・・・・取りやすいとこにあったから。」



そう答えると今度はくすくすと小さい笑い声。

顔が赤くなりそうだったがどうにか抑えれたようだ。

ぶっきらぼうに、愛想無く答えても半年も隣だと照れ隠しというのもばれているようだ。



「別にいいよ。予備でもうひとつ出してるから、気にしないで」


小さく笑いながら優しい返答がくる。



また"消しゴム"を使ってしまった。

勿論俺のじゃない、隣の席の"藤原 葵の消しゴム"だ。

俺のはきちんと机の上に出ているのに何故か使ってしまう。

利き手の右側に置いているのにも関わらず・・・。


まず、大きさからして全然違う。

俺はすぐ無くしてしまうから大きめのものを使う。

しかも、特大を使用しているから間違う術はない。

俺、一体どうしたんだ・・・・・・。





昼休みになり、友人と飯を食い終わった時だった。

こいつはなんでいつも爆弾を落とすのか・・・。



「慎吾って藤原さんのこと好きなの?」



昔からの悪友、藤田 稔の言葉に頭が真っ白になった。

なんで知ってる、何故ばれた 俺は み つ め て さ え い な い の に 。



「は?なーにいっちゃってんの、そんなわけねーじゃん」



若干頬に熱を感じ、引き攣った顔のまま言っても説得力が無いことはわかっていたが否定するしかない。ダメだ、穴があったら入りたい・・・。


稔はニヤッと悪人さながらの悪い笑みを浮かべ更に追い撃ちをかけてきた。



「まあ。あからさまじゃねーけど、見てればわかるよな。視界に入ったら必ず気付いて確認するし、声が聞こえたら聞き耳立ててるし。なによりお前、藤原の消しゴム使ってんだろ」



思わず頭を抱えてしまった。

だから、なんでお前がそんなこと知ってんだよ!

俺と藤原の席はこの6ヶ月一番後ろを陣取っていたというのに。

誰にもばれてないと思っていたから、そこまで思い詰めて考えていなかったのに。やべぇ・・・、恥ずかし過ぎて 死 ね る 。



「な、な・・なんで・・・」


「今日、たまたま見ちゃったんだよねー。何気なーく後ろ見たら消しゴム使ってるとこ。お前のどでかい消しゴムがあるのにも関わらず、藤原の小さい消しゴム使ってんだから嫌でも気づくだろー」



無意識な呟きに、笑い声で稔が喋る。

お前はもう口を閉じろ、笑ってもいいから喋るのだけはやめてくれ。



「早く告っちゃえばいいのにさー、藤原も満更でもなさそうだし。」


「稔、藤原さんと話したことあんの?」


「あ、いってなかったけ?藤原は1年時から同じクラスで初っ端は必ず隣の席になるんだよ。同じ 藤 から始まるからなぁ。羨ましいだろ」



なんて羨ましい設定・・・、テストの時も隣ではないか。

この問題難しかったとかここ出るかなとか可愛く首を傾げる藤原さんを見れたり、全問解けたとか満面の笑みで話しているところを隣で見れるだなんて羨ましいに決まってんだろ!!あんな小動物を思わせるような仕草を至近距離から見ることが出来るのは俺だけだと思っていたのになんてことだ、藤原さんの優しさに付け込んで一体なにをしようとしていることか・・・。稔、許さん・・・!!



「慎吾、ちょっと目が逝っちゃってるから現実に戻ろうか・・・」


「!!お、俺、考え事してて意識飛んでた。あ、は・・はは・・・・ははは。」


「お前の目つきがやばかったからいっとくけど、俺は藤原をなんとも思って無いから変に勘繰るなよ。ただのクラスメイトだ、それ以上それ以下でもない。ダチですらもない、何てったって世間話位しか話したことねーもん。」


「ああ・・・。」



稔の言葉に、ほっとしながら返事をすると予鈴がなった。


「そろそろ行くか。まあ、頑張れよ。応援してっから。」


「おう、サンキュー。」




今日、後3時間は確実に隣だ。

もう少ししたら、また席替えがあるがなんとかなるだろう。

それまでに気持ちを伝えることが出来れば・・・。


それで、付き合うことになって、あんなことやこんなこと・・・。

そんでもってその先の事も・・・・・・・・・。

・・・・・・・・・。



「・・・、慎吾。教室入るからその顔どうにかしろ、ヤバい顔してるぞ。」


「!!はッ俺は一体なにを考えてたんだ。落ち着け、落ち着け。」


「ま、気ィ引き締めて頑張れ!」



5限目の担当教師が入ってきたので自分達の席へついた。

藤原さんの隣は恥ずかしいが嬉しさの方が勝っているので幸せだ。










読んでくださりありがとうございます。

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