第23話 ○月○日 碧の2歳の誕生日!
碧が2歳になりました。ますますやんちゃ坊主で大変です。
でも、サッカーで遊んだり、戦いごっこをしたり、
パパは碧といっぱい遊べて、すっごく嬉しい(^▽^)
凪はもう4歳です。早いです。
凪は小さい頃よりも、落ち着いた女の子になりました。
最近はもっぱら、お人形で遊んでいます。
さて、今日の凪のお弁当は、うさぎさん弁当!
おにぎりを可愛いうさぎさんにしてみました♪
凪、大喜び~~~~(*゜▽゜*)
聖君のお弁当は、本当に園でも話題になっている。それに、聖君がブログをしているのも、本を出しているのも、バレている。
「凪ちゃんのお弁当、可愛い」
と同じクラスの子達にも評判で、ほかのお母さんたちもかわいいお弁当を作るため、聖君の園児のお弁当っていう本を、みんな買って頑張っているのだそうだ。
凪は、聖君のお弁当があるから、一回も幼稚園を休んだことがない。聖君がブログで書いたように、落ち着いた(大人しいといってもいいかも)女の子になったが、病気にもならず、元気に園に行っている。
行き始めたとき、あんなに泣いて嫌がったのに。
「あれも、聖君のお弁当のおかげかもね」
私は聖君が凪のかわいいお弁当を作っている横で、コーヒー豆を挽きながらそう言った。
「あれって?」
聖君がこっちを向いて聞いてきた。
「園に入った頃、凪、泣いてたでしょ?でも、いつの間にか、楽しんで行くようになったじゃない?聖君にお弁当作ってもらうのも喜んで、毎日お弁当箱空っぽにして帰ってきたよね」
「うん。凪、好き嫌いないしね」
「聖君の作るものが美味しいんだよ。それに見た目もかわいいし、凪、きっとお弁当を開けるのが、いっつも楽しみだったんじゃないかなあ」
「かもね?俺も、毎日作るの楽しかったし。あ、今もだけど」
「碧は保育園、給食だよね」
「4月から、碧も保育園か~。なんだか、寂しいなあ。桃子ちゃんは、お料理の学校だしさ~」
「聖君だって、大学院じゃない。それから、研究室にも残るんでしょ?忙しくならない?」
「そうでもないよ、多分。夜のバイトも続けられると思うし。っていうか、続けないと、家に生活費入れられない」
「なのに、私まで学校行っちゃっていいの?」
「大丈夫だよ。それに俺も、講師の仕事が入れば、ちょっとはもらえるようになるし」
「それ、心配」
そう言うと、聖君の手が止まった。
「まあね、そんなに多くはもらえないと思うけどね」
「え?」
「給料のことでしょ?」
「違うよ~~。大学にいる女の子たち、聖君みたいな教授がいて、みんな恋しちゃわないかなあ」
「大学教授じゃなくて、単なる講師ね」
「そんなの、女の子には関係ないの。ああ、絶対に惚れちゃう学生続出する!」
「あはは。ないない。俺、もう妻子持ちだよ?」
「逆にそれだから、憧れられるかも。榎本教授って、あの若さで奥さんと子供がいるんだって。独身でいるよりも、魅力的~~なんて言われたりして」
「……なんか、変なドラマでも見た?」
「ううん。でも、絶対にモテそう」
「そうかな~~~。けっこう暗いイメージあると思うけどね?研究所にこもって、研究ばっかりしてるのってさ」
そんなことないよ~~。
「海オタクとか、言われそうだよ、俺」
そんなことないよ~~~~。
「心配なら、桃子ちゃん、ちょくちょく大学来たら?お弁当とか持ってきちゃったり」
「え?いいの?!」
「いいよ」
わあ!それ、いいかも~~~。
「聖君、私ね、免許取ろうかなって思っているの」
「なんの?調理師?」
「車の免許!」
「え?!ま、マジで?!」
うわ。聖君、思いっきり顔が青ざめた。
「や、やめたほうがいいかな」
「うん。やめたほうがいいと思う」
「……」
やっぱり。
「パパ~~~。お弁当は?」
「ああ、凪。今できたよ。ちゃんと朝ご飯食べた?」
「うん!」
凪は今まで、お父さん、お母さんと碧とリビングで朝ご飯を食べていた。
碧と凪の世話を見ててもらっている間に、聖君はお弁当を作り、私はみんなのコーヒーを淹れていた。
「歯も磨けた?」
「あ~~~ん」
「あ、ピカピカだ」
凪の大きく開けた口の中を見て、聖君がそう言った。凪は嬉しそうに聖君からお弁当を受け取った。
「じゃ、凪、幼稚園行こうか」
「うん!パパ、行ってきます」
「いってらっしゃい」
「爽太パパ、くるみママ、行ってきます」
凪は一回リビングに戻り、二人にそう声をかけた。
「はい、いってらっしゃい」
リビングからお父さんとお母さんも碧を連れ、凪を見送りに来てくれた。
私は凪と手をつなぎ、お店を出た。凪は今日もとても元気だ。
凪は聖君が春休みになると、一緒に園に行きたがって、一回だけ聖君と園に行った。
でも、お母さんたちや、先生たちに聖君は囲まれてしまい、それを見た凪は慌てふためいたらしく、翌日から、
「パパと行かない。ママと行く」
と言い出したのだ。
「え?なんでパパじゃダメ?」
聖君はそれを聞いて、しょげてしまったが、
「だって、パパがモテちゃうと、ママが泣いちゃうから」
と凪はそう聖君に言った。
「へ?」
「凪、ママが泣いちゃうの嫌だもん」
いや、凪の前で泣いたことはないと思うんだけど。
「そっか。ママのためにか~。でも、凪、パパはママだけが大好きだから、浮気はしないんだけどなあ」
「でも、パパが他の女の人と話すだけで、ママ、悲しそうだもん」
うわ。ちゃんと見てるんだ、凪。
「そ、そうか~~~。わかった。ママと行っておいで」
ってなことがあってからは、ずっと私が凪を送りに行っている。
それにしても、凪はここ最近、すっごくおしゃべりが上手になった。っていうか、おませって言ってもいい。そんなこと、どこで覚えたの?っていうことを話し出すから、家でもみんなでびっくりしている。
そして、2歳になった碧はやっと、いろいろと話すようになってきた。
そう、今日は夜、碧と凪の誕生日会だ。碧の誕生日なんだけど、凪も3月生まれなので、碧の誕生日まで待ってもらって、今日一緒にパーティをすることになった。
今日はお店の定休日。うちの両親も、ひまわりもれいんどろっぷすにやってくる。父は仕事を早く切り上げて、やってくるらしい。
杏樹ちゃんはもともと水曜が仕事のお休みで、やすくんは4月から入る会社にアルバイトで行っているが、仕事が終わったらすっ飛んで来ると言っていた。
パーティには、紗枝さんと桜さんが手伝いに来てくれる。桜さんは今、妊娠5ヶ月。大変だからわざわざ来てくれなくてもいいのにって、お母さんが言っていたけど、桜さんは碧が可愛いらしくて、どうしても来たいんだそうだ。そして来るからにはお手伝いがしたいと言っていたらしい。
そうそう。紗枝さんにもようやく彼氏が出来た。桜さんが妊娠してれいんどろっぷすをやめてから、入ってきたバイト君だ。今、大学2年生で、紗枝さんよりも年下だ。そのバイト君も今日、手伝いに来てくれる。
紗枝さんの好みのタイプじゃなかったらしいけど、バイト君が押しに押して、紗枝さんと付き合うことになった。
でも、告白された時には、紗枝さんもまんざらじゃないって感じだったし、付き合うようになるのも時間の問題だねって、聖君もそう言っていた。
紗枝さんの場合は、押してくれる人じゃないときっとうまくいかなかったよ。だから、あいつでいいんじゃない?なんて、聖君はそんなことも言っていた。
「今日のパーティも賑やかになりそうだなあ」
聖君はそう言いながら、買い物のリストを書いている。
「日菜ちゃんと麻里ちゃんも来るし」
「うん。二人ともパパも来るんでしょ?」
「うん。来れるって言ってた。聖君といつの間にか仲良くなったもんね」
「あはは。そうだね。3家族で去年の夏も、海に行って泳いだり、バーベキューしたり、楽しかったよね」
「うん!」
「でも、今年は日菜ちゃんママが出産だから、日菜ちゃんとパパだけが参加することになるかなあ」
「そうだねえ。夏が予定日だから、あ、日菜ちゃんもママの実家に行っちゃうかもなあ」
「夏かあ。今年もあれかなあ。凪は空にべったりなのかなあ」
「正月も、結局空君と一緒に寝泊まりしてたもんね」
「か~~~~!」
「何?聖君」
聖君は買い物リストにぐるぐる書きをして、
「空め。俺の永遠のライバルになったりしないだろうな」
と悔しそうな顔をしてそう言った。
「……」
まあ、いいけどね。いつまでも、凪の恋人気分でいてもらっても。
だって、私だって、碧の恋人気分でいるし。なんて言ったら、今度は碧に聖君、妬いちゃうかなあ。時々妬いてるからなあ。
「パパ~~~」
「碧?何?」
碧がパパと呼びに来るときは、公園に行きたい時だ。
「はい!」
ほらね。お砂場着自分で持ってきたし。
「あ、公園?今日は行けないよ。パパ、忙しいし。あ、碧もママと一緒に買い物に行こうよ。ちょっとなら、子供の遊び場で遊べるかも」
「キチャ?」
「そう。汽車にも乗れるよ?」
いつも行くショッピングモールには、モール内を可愛い汽車が走っていて、それに乗ることができる。たまにすいていると、聖君までが碧と一緒に乗ってしまう。そういうのには抵抗がないらしい。でも、周りの人がびっくりしている。なにしろ、めちゃ若いイケメン男子が、そんな汽車に乗り、2歳児と一緒になって喜んでいるんだから。
「じゃ、そろそろ行こうか?桃子ちゃん」
「うん!」
聖君と碧と車に乗り込んだ。そして、ショッピングモールに出向いた。
買い物を先に終わらせ、フードコートでお昼を食べた。碧はとりあえず食べていると大人しいので、碧が食べている間に聖君が、ガツガツと早くにご飯を済ませ、そして、碧が食べ終わってからは、しっかりと碧の世話をしてくれる。
とはいえ、私も碧が生まれてからというもの、ゆっくりとご飯を食べていられなくなり、早食いになってきてしまった。ほんと、あののんびりしていて、食の細かった私と同一人物とは自分でも思えないほどだ。
「じゃ、碧、汽車乗りに行こうか?」
「キチャ~~~~!」
そして、汽車乗り場に行くと、平日だからかすいていて、
「あ、これなら俺も乗れそう」
と聖君は碧と一緒に乗り込んでしまった。
赤ちゃん連れのお母さんも、中に乗っていた。一人では乗れない子だけが親と乗っているんだけど、聖君は碧一人でも乗れるのに、乗ってしまうのだ。それに、たいていのお子さんがママと乗っていて、パパが乗っていることもかなりめずらしい。
汽車に乗っているお母さんたちや、お子さんが乗っていて、それを外から見守っているお母さんたちも、いつも聖君を見て、
「うわ。かっこいい」
と声をもらす。もしくは、顔を赤らめたり、中には堂々と話しかけるお母さんもいる。
それに、汽車を運転させているバイトのお姉さんは、必ず聖君に声をかける。もう聖君のことは覚えているらしい。聖君が来ると、かなり張り切っちゃうし、喜んでいるのが見ていてもわかる。
はあ。こんなところでも、聖君はモテちゃうのだ。子供がいたって、汽車に乗っていたって。
「ママ~~~」
碧が私に手を振った。私も手を振り返すと、聖君までニコニコ顔で手を振ってきた。
「写メ、写メ」
慌てて可愛い親子を携帯で撮った。
ああ、おんなじ顔して笑ってるよ。本当に可愛い親子だよなあ。
そして帰り道、碧は車の中で寝てしまった。
「ちょこっとだけ、ドライブしちゃおうか」
「うん」
聖君は海沿いの道を、鼻歌交じりに走らせた。
「今度、花ちゃんと藤也君のライブ行ってくるね」
「ああ、なんか、すんげえでかいところでやるんだろ?」
「うん。ごめんね?聖君も行きたかった?」
「いや。俺は凪と碧の面倒見てるから、楽しんできていいよ?」
「ありがとう」
「その代わり、ゴールデンウイークはごめんね?俺、潜りに行っちゃうけど。でも、1泊だけだからさ」
「1泊だけでよかったの?」
「享さんも店、そんなに休めないから」
「杵島さん、ライセンス取れたんだね」
「ああ。もう去年に取れてたんだって。でも、なかなか俺の休みと合わなくって」
「杵島さんと潜りに行けるの嬉しい?聖君」
「嬉しいよ。だって、ずっと願ってたことだったしさ」
そうだよね。聖君にとっては、杵島さんはいまだに兄貴みたいな存在なんだね。今もとっても嬉しそうな顔をしている。
「そういえばね、籐也君のライブ、芹香さんも来るんだって」
「へ~~。大変じゃん。芹香さんって最近、テレビにも出てるよね?籐也と変な噂とかになったりしない?」
「平気だよ。だって…」
「あ、そっか。籐也、彼女がいるって宣言しちゃったんだっけ?「花」って歌を出してから、あれこれ噂が勝手に流れて、自分で恋人のことを歌った歌ですってばらしたんだよな、あいつ」
「うん。花ちゃんが誰よりもビックリしちゃって、どうしたらいい?って相談のメール来たよ」
「結婚しちゃえばいいのにね」
「え~~~!それは、どうかな」
「だって、そうしたらもっと堂々としていられるじゃん。こそこそ会ったりしないでさ」
「そうだよね。今も、いつ写真を撮られるかわからないからって、なかなか会えていないみたい」
「籐也、恋人いますって言っちゃったんなら、結婚します宣言もしちゃいえばいいのにな」
「聖君、他人事だと思って」
「え?そんなことないよ。もし俺だったら、さっさと結婚しちゃうもん」
「…聖君、さっさと結婚しちゃったもんね」
「うん。だって、ほかのやつに取られたくないし、絶対に桃子ちゃんと結婚するって決めてたしっ!」
聖君は嬉しそうに可愛い笑顔でそう言った。
「ほかのやつなんかに取られないよ。聖君にしか恋しないのに…」
「………」
あ、照れた?
「桃子ちゃん。今夜のパーティ終わったら、二人を早くに寝かせちゃおうね?」
「へ?」
「で、俺の部屋で、思い切り愛し合っちゃおうね?」
「……」
う。照れてたんじゃなかったの?私の顔の方が熱くなったよ。
聖君はなぜか、るんるんで車を走らせている。ああ、この分じゃ、断れそうもないなあ。
私と聖君が、夜中に裸でいるところを凪が起きて見てしまい、その時は聖君が、
「凪、これは夢」
と言い聞かせ、(凪は夢だと思い込んでくれた)それからは、二人が寝てから、聖君の部屋のベッドに行って、愛し合うようにしている。
お風呂は、なかなか二人きりで入ることはできないが、それでも私と聖君はいまだにラブラブのあつあつのバカップル。
そして、その日の夜も。
「桃子ちゅわん」
「ん?」
「もうちょっとだけ、裸で抱き合っていようね」
「朝まではダメだよ?碧が目を覚ましたら、ママを探して泣いちゃうかもしれないし」
「うん。ちょっとだけだよ」
ギュって聖君は抱きしめてきた。
「愛してるよ、桃子ちゃん」
「私も」
「私も?」
「愛してるよ、聖君」
「うん!」
ああ、今日も聖君はめちゃ可愛い。
「桃子おばあちゃんって呼ぶようになっても、愛してるからね?」
「うん、聖おじいちゃん」
「何十年でも、バカップルのままでいようね?」
「うん!」
私も聖君にギュって抱きついた。
ああ、聖君が大好きだなあ。って、心からそう思いながら。
出会った時から変わらず、私は聖君に恋してるなあ。
そして、これからも、ずうううっと、聖君の隣で、聖君を見ていく。そしてまたきっと、聖君に恋をするんだ。
何度も何度も。
きっと永遠に。
~おわり~




