第22話 ○月○日 お遊戯会!
今日は、幼稚園のお遊戯会でした。
凪のクラスは「浦島太郎」をしましたが、
凪の役は、竜宮城で踊っている鯛。
鯛の凪は、とっても可愛かったです(≧∇≦)
う、う~~~~ん。さすがだ、聖君。歌と踊りだけで、セリフもない役だったけど、お父さんと二人でビデオや写真を撮りまくり、目尻を下げて喜んでいたもんなあ。
でもまあ、見ようによっては、セリフがあっても一箇所から動かない乙姫よりも、可愛い赤い衣装を着て、踊ったり歌ったりしているのは楽しそうだったけどね。
お遊戯会が終わると、聖君もお父さんも、そしてお母さんまでが凪をベタ褒め。
「凪ちゃん、良かったよ~~」
「凪、最高の鯛だった!」
凪はとっても嬉しそうだ。
「あ、凪ちゃんのパパ、こんにちは。今度うちでクリスマス会開くんだけど、凪ちゃんもパパと来ませんか?」
帰りに大輔君ママにつかまってしまった。
「すみません。クリスマスはいつも店でパーテイを開くのが恒例になっているので、行けないです」
間髪いれず、聖君はそう答えた。
「まあ!楽しそう。じゃ、そっちに大輔とお邪魔しちゃおうかな」
嘘でしょう…。
「すみません。家族と親戚だけの身内のパーテイで、それだけで満員になっちゃうから、呼べません」
聖君。非情…にも聞こえるほどの、クールな断り方…。
「そ、そうなの?いいわね、凪ちゃんのおうちは、家族みんなが仲良くて」
そう大輔君ママは、顔を引きつらせて笑い、そして去っていった。
「聖ったら、あんな冷たい言い方しないでも」
横で今のやり取りを聞いていたお母さんも、さすがに今のは冷たいと感じたのか聖君にそう言った。
「いいの。男が凪のそばに寄るのは、20年早い」
おいおい。それで、あんな断り方したわけ?なんだ~~。大輔君ママを軽く撃退してくれたのかと思ったら、大輔君のほうなわけね。
「さてと。早めに帰らないと、杏樹とやすくん、碧君のお守りでてんてこ舞いしてるぞ」
お父さんがそう言って、足早に園庭を出た。
「今日は杏樹がお休みで良かったよなあ。碧君連れてきたら、勝手に園庭で遊ぶだろうし」
「そうよね。誰かが碧君を見ているとなると、凪ちゃんのお遊戯、見れなくなっちゃうもんね」
お母さんはそう言って、凪の方を見た。
凪は聖君と手をつなぎ、ルンルンで歩いている。碧もいないし、思い切り聖君を独り占めに出来ると思っているのかもしれない。でも、その分ママが、寂しい思いをしているんだよ、凪。
碧は、杏樹ちゃんとやすくんにいっぱい遊んでもらったらしく、ご満悦だった。杏樹ちゃんもやすくんも、凪や碧の面倒を本当によく見てくれるからありがたい。きっとこの二人は、結婚してすぐに赤ちゃんができても、しっかりと子育てできるだろうなあ。
「ありがとうね、杏樹ちゃん、やすくん」
私がお礼を言うと、
「凪ちゃんの踊りや歌、あとでビデオで見せてくださいね」
とやすくんは小声で私に言った。もし、聖君にそんなことを言ったって知られたら、怒られちゃうもんね。「やす、凪はやすには渡さないぞ」とか言いながら。
ほんと、聖君は、凪を独り占めにしようとしているもんなあ。ただ、空君にだけは、負けてしまうみたいだけど。 凪は、聖君がいようといまいと、平気で空君とスカイプでお話を楽しんでいる。その時には、聖君なんて見向きもしないで…。
それにしても、もうすぐクリスマス。聖君の誕生日もやってくる。今年は何をプレゼントしようかな。クリスマスはマフラーをあげようと思って、今、必死にこっそりと聖君がいない間に編んでいるんだけど。
「パパ~~。凪、今日頑張ったよ~~」
「うん。頑張ってたね」
「凪、いつもいい子?」
「うん。いい子だよ。なんで?」
凪が聖君のあぐらの上にちょこんと座って、
「じゃあ、サンタさん、来てくれるよね?」
と可愛く聞いた。
「もちろん!凪と碧のところには、絶対に来るよ」
「碧も?碧、いっぱいいたずらするし、悪い子なのに?」
「碧は悪い子じゃないよ。ただ、やんちゃなだけ。だから、サンタさんは来るよ」
聖君がそう言うと、凪は、
「そうだよね。いたずらしたりする悪い子には来ないんだって、今日、みっちゃんが大輔君に言ってたの。大輔君、いたずらばっかりしているから。でも、ちゃんとサンタさん、大輔君のところにも来るよね?」
と続けた。
「う、うん。多分ね?」
聖君がそう言うと、
「大輔君にもそう教えてあげる。だって、大輔君、寂しそうだったから」
と凪はそんな可愛いことを言った。
「そ、そうなの?ほっといてもいいような気もするけど」
聖君がぼそっとそう言うと、凪は、
「なんで?」
と聖君のほうを見て聞いた。聖君は、独り言のつもりで言ったらしく、返答に困ってしばらく黙っていたが、
「あ、ほら。当日サンタさんが来たら、喜びが倍増するだろうし、ね?内緒にしておいたら?」
なんて、適当なことを凪に言った。
「そっか~~~。わかった~~。でも、碧には言ってもいいよね?」
「いいよ」
「良かったね~~、碧。サンタさん来てくれるって」
凪がそう言っても、碧には通じていないようだ。碧は、まだやすくんと怪獣で遊んでいる。
「凪ちゃんは優しいねえ」
お父さんが凪を見ながら、目を細めてそう言った。
「凪ちゃん、クリスマス楽しみだね?」
杏樹ちゃんがそう言うと、凪は嬉しそうにうなづいた。
「クリスマス会、誰を呼ぶの?」
お母さんが、みんなの飲み物を持って来て、テーブルにそれを置きながら聞いてきた。
「菜摘、葉一、あとは~」
聖君は考え込んだ。
「あ、ひまわりとかんちゃんも来たいって言ってました」
私がそう言うと、
「へえ、かんちゃんも?」
と聖君が驚いた。
「うん。聖君に全然会えていないから、会いたいみたい」
「そういえば、ずっと会ってないな」
「他は?聖、誰を呼ぶの?」
お母さんがまた聞いてきた。
「桐太はどうせ、勝手に店閉めてからやってくるだろうし」
「蘭と基樹君は無理かなあ?蘭、仕事忙しいみたいだし」
そう私が聖君に聞くと、
「基樹は仕事も決まって、今、暇してるから来るんじゃない?」
と聖君は他人事だと思ったからか、適当にそう言った。
そうか。クリスマス、蘭と基樹君は、一緒に過ごせないのかあ。蘭、寂しがりそうだな。
「イブはどうするんだ?聖」
お父さんが、コーヒーを飲みながら聖君に聞いた。
「…イブ、忙しいよね?」
「店?そうだなあ。予約もう入っているしなあ。でも、俺が店に出るから、お前は出ないでも大丈夫だよ?」
「あ~~、うん。だけど、碧と凪の世話は無理だよね?店、出るんだもんね?」
「そうだな。無理だろうなあ」
お父さんがそう言うと、聖君は黙って私の方を見た。
「?」
聖君、イブにどっか行っちゃうのかな。誕生日だし、一緒にいたかったのになあ。
「桃子ちゃんのお父さんとお母さん、凪と碧の面倒なんて見てくれないよね?」
聖君が聞いてきた。え?どうしてかな。
「いいよ?私が二人の面倒見てるから。あ、それとも、私もお店の手伝いしないと、お店、大変になりそうですか?」
私がそうお母さんに聞くと、
「大丈夫よ。パートさんも来てくれるし」
と、お母さんはニッコリと笑いながら答えた。
「桃子ちゃん。ご両親にイブ、大丈夫かどうか聞いてみたら?」
聖君ではなく、お父さんがそう私に聞いてきた。あれ?聖君、そっぽ向いて、顔暗くなってるけど。なんで?
「はい。聞いてみます」
「うん。もし、大丈夫なら、そうだなあ、聖。せっかくだから、どこかレストランでも予約入れて、ロマンチックな夜を過ごしたらどうだ?」
え?ロマンチックな夜?って、誰と?!
「父さん。そういう言い方はさあ…」
聖君が照れてる。え?なんで?
「いいじゃない。海の見えるレストランがいいわよ。あ、桃子ちゃん、デート用の洋服とか持ってるの?今度一緒に行って、買いましょうか?」
「は?で、デート用?」
「そうよ。たまには、お洒落して、二人でデート楽しんできて?」
「私が聖君とですか?」
「他に誰がいるの?」
聖君が、眉をしかめてそう言った。
「え?で、デート?イブに?」
「俺の誕生日だよ?ダメ?」
「う、ううん、まさか。ダメなんて…」
う、う、うわ~~~~~!すんごい嬉しいかも!!!!
「真っ赤よ、桃子ちゃん。じゃ、決まり!水曜、洋服買いに行きましょうね?桃子ちゃん」
「私も仕事休みだし、一緒に買い物に行く~~~」
杏樹ちゃんも喜んでそう言ってきた。
「杏樹も買うの?」
「うん。やすくんとのクリスマスデートの時、着るから」
杏樹ちゃんがそう目を輝かせて言うと、やすくんが赤くなった。やすくんって、いまだに可愛いよなあ。
「じゃ、3人で行っておいで。幼稚園のお迎えは、碧君を連れて俺が行ってくるから」
お父さんがそう言ってくれた。
そして、デート用の服も買い、いよいよイブがやってきた。
父と母は、凪と碧のお守りを喜んで引き受けてくれた。凪はじ~じが大好きだし、碧もしっぽと茶太郎と遊べるので、椎野家で、にこやかに私と聖君を見送ってくれた。
「じゃ、行こうか?桃子ちゃん」
聖君は車の助手席のドアを開けてくれた。
「ありがとう」
私は助手席に乗り込んだ。
お母さんが私にプレゼントしてくれた、ワンピースを今日は着てきた。聖君も、今日はいつもみたいなカジュアルではなく、スーツを着てきている。
ドキドキ。いったい、どんなお店を予約してくれたのかな。
車内には、カーラジオだけが流れている。私はずっと、隣に座って運転している聖君の横顔や手を見ていた。ああ、今日も最高にかっこいい。うっとり。
「あ、桃子ちゃん、これ、ウィステリアの新曲じゃない?」
本当だ。籐也君の声だ。
「バラードだね、この曲」
「この曲の題名、知ってる?桃子ちゃん」
「ううん。知らない」
「うそ。聞いてないの?花ちゃんから」
「うん、なんにも」
「この曲の題名、「花」だよ?」
「ほんと?それ、まさか、花ちゃんの花?」
「らしいよ」
うそ~~~!花ちゃんがそれを知ったら、泣いちゃうかも!
私たちは耳をすませ、しばらくラジオから流れてくる歌を聴いてた。
名も無き、静かに咲いている花。
いつも、元気をくれる花。
誰かに踏まれないように、
誰かに傷つけられないように、
そして、誰にも気づかれないように、
守っていくよ。
そんな歌詞だった。
「本当だ。花ちゃんの歌だね」
「桃子ちゃん、なんで目、ウルウル?」
「だって~~!これ、花ちゃんが聞いたら、泣いてるだろうなあって思って」
「クス…」
聖君は隣で笑っているけど、私は感動して、今、思い切り胸がじ~~んってしているよ~~~。
「あのふたりは、結婚するんじゃないかな」
「そう思う?聖君」
「あ!」
「え?」
「それで思い出した。明日、葉一、招待状持って行くからって言ってたんだ」
「なんの?」
「結婚式のだよ。菜摘と葉一の」
「え~~~!?」
「あれ?聞いてない?菜摘から」
「式場ってどうやって探すの?とか、菜摘が言ってたことはあったけど、でも、けっこう最近の話だよ?ひと月前くらい」
「うん。式場決まったら、あとの展開は早いよね?式は確か、来年の4月だったかな」
「うわ~~~~!」
「桃子ちゃん、驚き過ぎ」
「だって、なんだか嬉しくて!」
「あはは。じゃ、もう一つ」
「え?え?他にもあるの?」
「桐太も、式場予約してたよ」
「うそ!」
「来年の11月だって。人気のある式場らしくて、1年も前から予約入れてた。で、新婚旅行はオーストラリアにするんだってさ」
「わ~~~」
「明日、きっと思い切りのろけまくるだろうなあ、あいつ。麦ちゃんも明日、桐太と来るかもね」
「うん」
うわ~~。うわ~~~。結婚ラッシュだ!
「でも、杏樹とやすまで、結婚するって言い出さないだろうなあ」
「え?そんな話あるの?」
「ないよ。やす、まだ学生だし」
「だよね、ああ、びっくりした~~~」
ああ、でも、なんだか嬉しいな。私までドキドキしちゃうなあ。
「麦ちゃんも大学卒業したら、桐太と一緒に住むって言ってるし、菜摘も、結婚前に葉一と暮らすって言ってたし、みんな江ノ島にやってきちゃうね」
「菜摘、葉君と暮らすの?」
「あれれ?聞いてない?」
「うん。あ、でも、最近、忙しくってって言ってた。じゃ、結婚の準備で忙しかったんだ」
「2月か3月には、江ノ島に来るって言ってたし、仕事しながらの準備は大変かもね。俺も、手伝えることあったら言ってとは言ってあるけど、子供が二人もいると大変だってこと、菜摘もわかってるみたいで、そうそう手伝ってとは言ってこないよ。桃子ちゃんにも、遠慮してるのかもね?」
「私、そんなに忙しくないのに」
「忙しいじゃん。こうやって、二人でデートも、碧が生まれてからずっとできなかったんだよ?」
「あ、そうか」
「今日は、桃子ちゅわん。恋人に戻っちゃおうね?」
「え?」
「ね?」
聖君は、可愛い笑顔でそう言うと、信号待ちの間に、私にチュってキスをした。
「う、うわ。こんなところで」
「あはは、真っ赤だ~~~~!なんだか、一気に恋人に戻ったみたいだ」
そう言って聖君は、思い切りにやついた。
恋人?そうか。今日は聖君と二人きりなんだ。なんだか、ドキドキしてきちゃった。
レストランに着いた。すごくお洒落な、海が見えるレストランだ。それも、もしかしてここ、フランス料理?
「お待ちしていました。榎本様、どうぞ」
ウエイターに案内され、窓際の席に座った。そして、聖君は、コース料理を頼んだ。
「ここ、いいでしょ?海も見えるし」
「うん。素敵。でも、高くない?あ、そうだった。聖君の誕生日なんだから、私がここは払うよ」
「いいよ、いいよ、桃子ちゃん。ここでの食事は、父さんと母さんからの俺への誕生日プレゼントだから」
「そうなの?」
「うん。ちゃんともう貰ってあるんだ。だから、心配しないでいいよ」
「じゃ、じゃあ、聖君、私からは何がいい?あのね、あんまり時間がなくて、マフラーしか編めていないの」
「じゃ、それが俺へのクリスマスプレゼントでいいよ?」
「誕生日は?」
「桃子ちゃんでいいよ?」
「…私?え?ど、どういうこと?」
「だから、桃子ちゃんにリボンまいてくれたら、それでいいよ?」
「え?ええ~~?」
「あはは。うそうそ」
もう~~~。いきなり何を言い出すかと思った。顔が思い切り熱くなっちゃった。
私が手で顔を扇いでいると、聖君は私をじっと見つめてきた。
「でもね、半分は本気…」
「……半分?」
「今日は、帰り遅くなっても大丈夫って、桃子ちゃんのお母さんが言ってくれたし」
「い、いつ?」
「前にイブ、子供たちを預けても平気かどうか聞いたとき」
「…そ、そうなの?」
「そ。だから、レストラン出たら…」
「うん」
な、なんだろう。
「本当は、お洒落なホテルでも予約して、泊まりたかったんだけどさ、さすがに泊まるとなると、夜中に碧が泣きそうだしね、ママ~~って」
「う、うん」
「だから、寄るだけにする」
「どこに?」
「ホテル」
「…どこの?」
「海沿いとか、あるじゃん?」
「え?」
「ラブホテル」
ラ…。
え…。え~~~~~~~~?!!!!!!!
「あ、桃子ちゃん、顔、真っ赤…。っていうか、意識どっかに飛んでった?戻ってきて?」
「……」
「桃子ちゃ~~~ん。酒は飲めないから、ジュースで乾杯しようよ」
「……」
「桃子ちゃ~~~~ん。戻ってきて?」
頭、真っ白。
しばらくして、ようやく私の魂は戻ってきた。それからは、ドキドキで、何を食べているかもわからなくなった。だけど、
「桃子ちゃん、こんなフランス料理のコースなんて、そうそう食べられないから、味わおうね?」
と聖君に言われ、ちゃんと味わうことにした。
レストランを出て、聖君はルンルンで車を走らせている。私は、どうしたらいいかわからないまま、緊張したまま固まっていた。
「あ、あははは」
それを横目で見た聖君は、突然笑い出した。
「な、なあに?」
「だって、桃子ちゃん、すげえ緊張してるからさ。なんだか、新鮮な気持ちになってきちゃった」
「え?」
「今日、初めてのデートでもしているような気がしてきた」
「…だ、だって」
「桃子ちゃん、緊張しすぎ」
「だだだ、だって…」
「ま、いっか。じゃあさ、今日は、初めてエッチする恋人同士ってことで」
「はあ?」
「そんな気分を俺も楽しむから」
なななな、何言っちゃってるの~?聖君は~~。
「やべ!なんだか、俺までドキドキしてきちゃった。どうしようっ!」
そう言うと、聖君は本当に頬を染めた。ああ、もう、聖君は~~~!!!
でも、そんな聖君だって、ラブホテルなんて初めての場所だから、かなり緊張…じゃなくって、楽しんじゃってるよ。お風呂がでかいとか、ベッドがでかいとか、そりゃもう、すごいはしゃぎぶり。
「桃子ちゅわ~~~~ん!」
むぎゅ~~~。と抱きしめてから、可愛い声で、
「一緒にお風呂入ろうね?碧が生まれてから、ゆっくり二人で入れなかったもんね?」
と言ってくるし、お風呂でも、何回も、
「桃子ちゅわん!」
って、抱きついてくるし。
このはしゃぎようは、子供みたいだ。碧にそっくりだよ。
「バッタ~~~ン」
と言って、ベッドに思い切り寝転がり、ゴロゴロしているし。あ、こんなの前にも見たことある。そうだ。菜摘とかと温泉旅行に行った時だ。布団に寝転がり、喜んでた。
「桃子ちゃん」
そう言って、手招きをするので、聖君の横に寝転がった。すると、私に抱きついてきて、
「今日はね、桃子ちゃん。いくらでも声、出しちゃっていいからね」
と、そんなとんでもないことを、可愛い声で言ってきた。
「え??!」
「いくらでも、エッチな桃子ちゃんになってもいいからね?」
「な、な、何言ってるの~~?もう~~~!!スケベオヤジ!」
「スケベだも~~~ん。あ、でも、忘れないで。今日、俺の誕生日」
だから、何?とは聞けなかった。聖君がキスをしてきたから。
本当にもう~。二児の父親になっても、子供っぽいんだから。でも、こんな可愛い聖君は、久々かも。それに、こんなスケベオヤジの聖君も。
「聖君」
「ん?」
「今日は、凪もいないし、私、聖君を独り占めに出来るんだね?」
「…もう!桃子ちゃんったら、可愛いこと言うんだから!」
そう言って聖君は私を抱きしめ、
「思いっきり俺を、独り占めにしてください」
とまた、可愛い声で言ってきた。
ああ。可愛いのは聖君のほうです。
そして、私たちは、恋人同士の夜を、思い切り満喫した。
帰ったら、また、親に戻らなくちゃいけないから、今は、あつあつのラブラブのカップルでいようね?
ね?聖君…。ギュ~~~~~。
そう言って、抱きついたら、聖君は顔を思い切りにやつかせ、
「今日って、最高の誕生日かもっ!」
と喜んでいた。…聖君、可愛いすぎ…。




