表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
18/23

第18話 ○月○日 ライバルに凪、取られた!

  伊豆に来て、凪は昨日も今日も親戚のおうちに泊まりに行っています。

  凪の初のボーイフレンドがいるおうち。

  凪を取られちゃいました(>ω<)さみしい!


  奥さんは寝るまで碧が、べったりだし。

  パパは一人ぼっちです(ノω;)


「聖君、昨日は今朝早いからって、私より先に寝たよね?」

「うん。碧が桃子ちゃんのおっぱいずうっと吸ってたしね」

「…でも、どっちにしろ、早く寝ないとならなかったんだよね?」


「あれ?俺が早くに寝たから、寂しかったとか?」

「…今日も、帰ってきたの、9時だよね?」

「夕飯もみんなと食って来ちゃったから。あ、でも運転するし、酒は飲まなかったよ」

「ふうん。本当は、飲んで泊まってきたかったんじゃないの?みんなが泊まっている宿に」


「そ、そんなことないよ。ちゃんとこうして帰ってきたじゃん」

 夕飯も食べないで帰るって言ってたくせに~~~。いいけどさ。

「凪、パパのこと待ってたけど、帰ってこないから、今日も春香さんのところに泊まりに行っちゃったんだよ?」

「え?そうだったの?」


「そうだよ。それなのに、こんなブログ書いたりして、凪や空君を悪者にして~~。一人ぼっちだったのは、私なんだからね?」

「へ?」

「凪、今日はずうっと空君と遊んでいたし、碧はおばあさんとおじいさんが交代で面倒見ていたし。っていうか、取られたっていうか」


「ごめん、桃子ちゃん。今日1日寂しい思いした?」

「…」

 私はぷいっと顔をそむけた。


「ごめん。桃子ちゃん。あ、今日のビデオ見ない?海、綺麗に撮れてるよ」

 聖君はそう言って、私に今日撮ってきたビデオを見せてくれた。すると、

「きれ~~い!」

「最高~~~!」

 真っ青な海が映し出されたそのすぐあとに、女の子の可愛い声がした。


「この声、誰?」

「2年生の女子たち」

「女の子の部員、増えたの?」

「いや。今4人だけかな」


 それからしばらく海が映っていたが、

「聖先輩、撮ってあげる」

という可愛い声がして、そのあと聖君の姿が映し出された。

「先輩!海、潜れるの嬉しいですか?」


「うん。最高に嬉しいよ」

 うわ!聖君の最高の笑顔!

「私も、今年初めての参加だけど、嬉しい~~~!」

 聖君の隣に、可愛らしい女の子が現れた。それも、聖君にぴたりと寄り添っている。


「先輩、いろいろと指導お願いしますね~~。私、思い切り初心者だから」

「了解」 

 また、最高の笑顔で聖君は答えている。


「もういい」

「え?」

「もう、消していい」

「もういいの?」


「十分綺麗な海だってわかったし」

「そっか」

 聖君はビデオを止めた。

 それにしても、聖君はまったく悪びれていないけど、女の子達と仲良くしてて、何も感じないの?


 ああ、なんだか、落ち込んだ。いや、むかついた?なんなんだ。この胸のモヤモヤ。

「あ、碧、寝ちゃったね」

 聖君は、指しゃぶりをしたまま寝てしまった碧の顔を見た。そして私にビトっとひっついてきた。


「桃子ちゅわん」

「聖君も今日、疲れたでしょう?もう、とっとと寝たら?」

「まだ眠くないよ」

「私は眠いよ」


 そう言って、そっぽを向いていると、聖君はしばらく黙り込み、私の顔をじいっと見ていた。

「…まだご機嫌斜め?ごめんね?明日はずうっとそばにいられるから」

「いいよ。別に」

「桃子ちゃん。まじで、怒ってんの?」

「別に」


 ダメだ。まだ、モヤモヤ、いらいらが収まらない~~。

 

 私は布団に寝転がり、聖君に思い切り背を向けた。

「も、桃子ちゅわん」

 聖君も私の後ろに、ぴったりくっついて寝そべった。


「桃子ちゃんも、来年あたり一緒に潜りに行こうね?」

 可愛らしい声なんか出しちゃって~~。

「いいよ、私は」

「も、桃子ちゃん。俺、桃子ちゃんと一緒に潜りたいよ?」

 今度は甘えた声出してきた。


「ライセンス持ってないし、無理だもん」

 私は冷たい声でそう答えた。でも、

「じゃ、来年、ライセンスを取りに行こう」

と聖君は屈しない。


「いいよ。来年はお料理の学校に行きたいし。碧、保育園に入れられたら、そうするつもり」

「そっか、桃子ちゃん、料理の学校、行きたいんだもんね?」

「…おやすみなさい」

「え?まじで寝るの?まだ、10時半だよ?」

「寝る」


「桃子ちゅわん。俺、まだ眠たくない」

 聖君はそう言うと、私をギュって後ろから抱きしめた。

「さっきの」

「え?」

「さっきの子、可愛かったね。ショートカットで日に焼けてて、聖君のタイプ」

「へ?」


「ビデオに映ってた子」

「俺のタイプじゃないよ?俺、桃子ちゃんがタイプだって」

「元気ハツラツな子が、タイプでしょ?」

「何年前の話?それ」


「…」

「もしかして、思い切りヤキモチ妬いた?」

「だって、聖君、極上の笑顔見せてた」

「はあ?俺が~~?」


「あんな笑顔見せてるんだね」

「ち、違うって。あれは海に潜れるのが嬉しいから」

「……」

「も、桃子ちゃん、それで機嫌悪かった?」


「……」

「桃子ちゅわん…」

「……」

「可愛い~~~~~!!!」

 聖君は、もっと私を抱きしめる腕に力を入れた。


「もう~~~。俺が浮気とかするわけないじゃん。結婚して、何年目だっけ?俺ら、二人も子供いるんだよ?」

「だから?」

「妻子持ちの俺が、浮気するわけないでしょ?」

「そんなの、わかんないもん」


「なんで?!」

「相手はそんなの、関係ないって思っているかも」

「相手?ああ、あの子達?ないない。二人も子供がいるって知ったら、げ~~~って言ってたし、あの子達、サークル内に彼氏いるよ?合宿も一緒に来てる」


「え?」

「あのあと、ビデオに彼氏と仲良くしている映像も出てくるのに、桃子ちゃん、もういいって言うから」

「二人とも?」

「うん。サークル入って、1年もしたらひっついたよ?俺のことなんか、さっさと諦めたらしいし」

「でも、聖君目当てだったの?」


「よくわかんないけど?」

「……そ、そうか。彼氏いるのかあ」

「安心した?」

「4人女の子いるんでしょ?あとの二人は?」


「東海林さんは、今の部長とくっついた」

「え?あの、東海林さん?」

「そう。あの東海林さん。もう一人は、サークル内じゃないけど、彼氏いるってさ」

「そう…」


 彼氏がいるなら、安心なの?でも、わかんないよ。二股かけたり、彼より聖君の方がいいってなったりするかもしれない。

「安心した?」

「ううん」

「へ?なんで?」


「聖君」

 私はくるりと聖君の方に体を向け、

「絶対に女の人が迫ってきても、浮気したらダメだからね?」

とそう言って、抱きついた。


「するわけないでしょ、俺が」

「迫ってきても?」

「迫ってきてほしいのは、桃子ちゃんだけ」

「…今も?」


「え?」

「今も迫って欲しいの?」

「桃子ちゃんに?もちろん」

 聖君の顔を見てみた。あ、ちょっとにやけてる。


「スケベ親父」

「え?なんだよ、突然」

「っていう顔、今してた」

「俺が?」

「うん」


「はいはい。俺はスケベ親父ですよ。だから、奥さんに迫って欲しいんです」

 開き直り?

「ね?桃子ちゅわん」

 あ、いきなり可愛くなった。まったくもう。


 しょうがないなあと思いつつ、聖君にキスをした。すると聖君のほうからも思い切り熱いキスをしてきた。

 あ、とろける。


「桃子ちゃん」

「え?」

「俺が桃子ちゃんのことしか、考えられないようにしてね?」

「な、何それ」


「そうだ。そうしたら、俺、ぜ~~~ったい、ほかの子なんか、目に入らなくなるし。うん。これからは、そうしてもらおう」

 だから、何それ~~~。


「俺も、桃子ちゃんが俺以外の男に、目移りしないように、思い切り愛しちゃうからさ」

 うわ。なんつうセリフ?顔、一気に熱くなった。

「ね?」

「う、うん」


 こんなセリフだけ聞いていると、相当な女遊びでもしていそうだよね。でも、そんなセリフも可愛い顔で言ってくる。その顔はどうみても、女遊びしているって顔じゃないよね。

 あ、今、にやけたし。


 そして、伊豆でも私と聖君は、あつ~~い夜を過ごしたのであった。


 聖君の胸に顔をうずめ、聖君が優しく頬をなでてくれて、聖君が優しく髪にキスをしてくれて、このまま朝まで、聖君の腕の中で眠る…。


「ふ、ふ、ふ、ふぎゃ~~~~~!!!!」

「碧?」

「ふぎゃ~~~~!」


「ど、どうしたの?碧。なんか、尋常じゃない泣き方」

「熱かな?」

 聖君は、すぐに布団から起きだしてパンツを履いてTシャツを着ると、碧を抱っこした。私も慌てて、下着を着けて、パジャマを着た。


「熱はないな」

 聖君が抱っこして、ゆらゆら揺れても、碧は全然泣き止まない。

「夜泣きかな。こんなの初めてだね」

「うん」


「碧、どうしたんだ?聖」

 あ、泣き声が1階まで聞こえちゃったんだ。おじいさんが来ちゃった。

「じいちゃん」

 聖君はドアを開けて、

「碧が夜泣き。ごめん、起こしちゃった?」

とおじいさんに謝った。


「夜泣きかあ。車にでも乗ったら、泣くのもやむかもな」

「あ、そっか。じゃ、そうしようかな」

「私も行く」

「うん。あ、着替えていこうか、桃子ちゃん。じいちゃん、俺もズボン履くから、ちょっと碧抱っこしてて」

「よし、わかった」


「ふぎゃ~~~。ふぎゃ~~~」

「もう1歳も過ぎたのに、夜泣きってするのかな」

 私は聖君にそう聞いた。

 ドアの外で、おじいさんが碧を抱っこしている。でも、碧はずっと泣き続けている。


「いつもと違う環境で、興奮でもしたかな?」

「…うん」

 私と聖君は着替えを済ませ、和室を出た。廊下で碧を抱っこしていてくれたおじいさんから、聖君は碧を受け取り、それから1階におりた。


「碧君、どうしたの?」

 ああ、おばあさんまで起こしちゃったんだ。

「ごめん、ばあちゃん。じいちゃんも寝てて?ドライブ行ってくるからさ」

「夜泣き?運転気をつけてね、聖」

「うん、ばあちゃん」


 まだ泣いている碧を連れ、車に乗り込んだ。そして、聖君は車を発進させた。

 このあたりは、ほとんど明かりもなく、車も通っていなくて、静かだった。そんな中車を走らせた。


 夜の海は静かだった。

「碧、泣き止んだね」

 しばらく車を走らせていると、やっと碧が泣き止んだ。

「びっくりしたね、聖君」


「うん。びっくりだ。でも、俺もこんなふうに、夜泣きしたのかな。父さんやじいちゃんが、ドライブ連れ出してくれたんだろうな」

「そんなこと、前にお父さんが言ってたね」

「熱じゃなくて良かったよ」


「うん。でも、碧、もう突発はやってるし」

「ああ、1月に高熱出したもんなあ」

 聖君としばらくドライブをして、碧がすっかり寝たようなので、またまりんぶるーに私たちは戻った。


 碧はそのあと、ぐっすりと寝てくれた。

「ふわ~~~~~」

 聖君もおおあくびをして、

「寝るか~」

と一言言うと、すぐにすうって寝てしまった。


 ああ、碧と同じ寝顔。二人とも可愛い。

 私はしばらく碧と聖君の寝顔を交互に見て、それからまた聖君にひっついて眠りについた。

 

 翌日、朝、凪は空君と手をつなぎ、ルンルンでまりんぶるーに現れた。後ろからは、春香さんが櫂さんと一緒にやってきた。


「凪、二日もお世話になっちゃって、すみません」

 そう言うと、

「いいのよ。凪ちゃんいると、本当に空、機嫌いいんだもん。それに元気だし」

と春香さんは笑った。


「そうなんですか?」

「いつも偏食するのに、凪ちゃんが食べていると、空も食べるって言って、食べちゃうし。そうそう、うがいも凪ちゃんに教えてもらってできるようになったのよ」

「へ~~~」

 びっくり。


「夜、寝る前に、ちょっとぐずることがあったりするんだけど、それも、凪ちゃんがいたらしないしね」

「あ、でも、昨日の夜は、碧が夜泣きしちゃって。夜中に聖君とドライブに行ったんです」

 キッチンで私は、朝ご飯の準備をしながら、春香さんと話をしていた。その話を横で聞いていたおばあさんが、

「碧君もいつも、凪ちゃんがいるから穏やかでいたのかもねえ」

とそんなことを言った。


「凪が?」

「波風のない、穏やかな海。凪ちゃんってきっと、そんなオーラみたいな、何かを発しているのかもよ?」

「あ、私もそう思うよ、お母さん」

 おばあさんの言葉に、春香さんはうなづいた。


「そうなのかなあ」

「癒しのエネルギーみたいなね?」

 いつの間にか、キッチンに来ていた櫂さんまでがそう言った。


 ホールの方を見ると、テーブル席に凪と空君が座っていて、その隣に碧を抱っこした聖君が座っていた。碧はすっかりご機嫌で、テーブルをペチペチしたり、碧語を話している。

 空君も、とっても嬉しそうに笑っている。そして凪も。


 うん。凪の周りは穏やかだ。なんだか、ほんわかとしたあったかい空気が流れているようにも見える。

 やっぱり、凪には人を癒す、何かがあるのかもしれないね。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ