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第13話 ○月○日 花火大会!

  今日は地元で花火大会があり、家族4人で行ってきました。

  凪は花火が大好き。碧は初めて見る花火。

  途中、奥さんが迷子になり、大変でしたが、

  楽しい1日でした(*^^*)

  でも、奥さん、もう迷子にならないでね(^_^;)

  あと、奥さん、ナンパもされないでね(>_<)


 ああ、聖君ったら、こんなことブログに書いて~~!

 だって、聖君とほんのちょっと離れていたら、人ごみの中に巻き込まれて、近づけなくなって。それですごく焦って、慌てまくっていたら、誰だか知らない人に声かけられて。


 聖君だって、私がいないことに最初、気がついていなかった。私がいないことに気がついたのは凪で、聖君は中学時代に付き合っていた子に声をかけられていたんだよね。



 花火大会が始まるので、聖君が碧を抱っこして、私は凪と手をつないで浜辺まで歩いていた。凪は可愛い子供用の浴衣を着ていた。

 私も浴衣をお母さんに着せてもらい、聖君にも絶対に着てもらいたくて、無理を言って着てもらった。

 超、かっこい~~~!!!めちゃくちゃ、似合う~~!モデルさんみたい!!!


 でも、それが良くなかった。

「聖君?聖君でしょ?」

 そう言ってきた女の人がいた。聖君は碧を抱っこしたまま、振り返り、

「あ…」

と言って、顔が思い切りクールになった。


 この人誰だっけ。見たことあるなあ。

 私はちょっと離れたところから、凪と一緒に聖君たちを見ていた。


「あれ?抱っこしているのって、まさか、聖君の」

「うん。息子の碧」

「え?私、風の噂で聖君の子は娘だって聞いたよ」


「ああ、それは上の子。凪」

 聖君はそう言うと、凪の方に手を出した。凪はすかさず、

「パパ」

と言って、私からテテテと離れ、聖君の腕にしがみついた。


 女の人は凪を見て、

「二人も子供がいるの?」

と驚いている。それから、聖君の腕を引っ張って、凪がその場から離れようとしているのに、

「可愛い浴衣ね」

と、その人は凪に話しかけた。


 凪はますます顔つきを怖くさせた。最近は、聖君がほかの女性と話していても、泣いたり怒ったりしなかったんだけど、あの顔はやばいかもなあ。

 さて、どうしよう。私も聖君のところに行って、腕でも引っ張ってあの女の人から離れさせようか。


「聖君も浴衣似合ってるね。すごく素敵な人がいるって思ったら、聖君だったからつい声かけちゃった」

「え?」

「さっきから、聖君、目立ってるよ。あっちに私の大学の友達もいるんだけど、カッコいい人がいるって言ってたんだ」


「パパ!花火は?!」

「ああ、うん。凪、もうちょっと海の方に行こうか?」

「聖君、二人の子がいたら大変でしょ?凪ちゃんだっけ?お姉ちゃんと手、つなぐ?」

「やだ!」


「でも、パパ、碧君抱っこしてて大変そう」

「ママ!」

「え?ママもいるの?」

「ママ~~!!!」


 凪が私を呼んだ。

「凪!」

 ダメだ。ちょっと離れている間に、どんどん聖君と私との間に人が入り込んで、離れちゃった!


「ママ~~」

 凪の声が聞こえているのに。

「凪~!」

 私の声は聞こえないの?


「桃子ちゃん?どこ行った?桃子ちゃ~~ん」

 あ、まさか、今、聖君、私がいないことに気がついたんじゃないよね。

「桃子ちゃ~~~~…」

 ああ!聖君の声が、フェイドアウトしていく。どんどん離れていってるんだ。


「待って!」

 ここだってば!

「聖君!」

 ダメだ。目の前には、人、人、人!


 ドン!思い切り人にぶつかられ、私はこけそうになった。

「大丈夫?」

 え?誰?誰かが私の背中を支え、

「友達とはぐれた?」

と聞いてきた。


 顔を見ると、知らない人。大学生くらいの男の人だ。

「あ、あの、家族と離れちゃって」

「この人ごみだと、見つかるかな。どっか、待ち合わせの場所とか決めてないの?」

「はい」


「えっと~~。君、高校生?まさか、中学生じゃないよね?」

 グサ。さすがに最近は中学生には間違われていなかったのに。ああ、そうか。このやたら子供じみた浴衣のせいか。

「もう、私20歳です」


「え?ごめん。そうなんだ。あ、家族って言うから、まだ中学生だったりするのかなって」

「ひどい」

「ごめん。えっと。じゃあ、携帯とかで呼び出してみたら?」

「あ、そうか」


 私は慌てて携帯を、肩からかけていたポシェットから出した。すると同時に携帯が鳴った。

「も、もしもし?」

「桃子ちゃん?どこ?!」

「え?い、今、どこだろう」


 あたりを見ても人だらけで、自分がどこにいるかもわからない。

「とにかく、海の方はもっと人が多いから、歩道の方に出てて?俺、探しに行く」

「でも、凪と碧もいるのに」

「とにかく!歩道にいて!!」

「はい」


 電話を切った。そして歩道の方に歩いていこうとすると、なぜかさっきの男の人までくっついてきた。

「あ、もう大丈夫ですから」

「でも、君、危なっかしいし」

「本当に、もう大丈夫なんで」

と言ったそばから、ドスンと人にぶつかった。


「あぶねえな、気をつけろ!」

 うわ!怖そうなおっさん!思い切り睨まれた~。

「ほらね?」

 そう言うと、その男の人は、私の背中に手を回し、

「どこで待ってたらいいの?そこまで行くよ」

と言ってきた。


「い、い、いいです」

 こんなところを聖君に見られたら、また怒られる!

「遠慮しないで。俺、友達とあとで合流するようにしてるから、大丈夫だし」

 こっちが大丈夫じゃない。


「あ、あそこ、歩道ですよね。もう平気です。歩道で待ってろって」

「歩道も人、たくさんいるよ」

「いえ、でも、ほんと、大丈夫」

「ほら、危ない。また、人にぶつかる」

 そう言って、その人が私の肩を抱き寄せ、自分の方に引き寄せた。


 げ~~~!

「ちょ、ちょっと」

 離れてよ!

 私はその人の腕から、離れようとした。と、そこに、

「誰だ?お前!」

という、ものすごく怖い声が後ろから聞こえた。


「な、なんだ?」

 男の人が、かなりビビった声を出した。え、この、怖い声ってもしや。

「人の奥さんに、手、出してるんじゃねえよ!」

 やっぱり、聖君だ~~~~!


 私は思わず、聖君にしがみついた。いや、抱きついたといってもいいかもしれない。思い切り、むぎゅって抱きついたから、聖君は身動きが取れなくなった。

「お、奥さん?」

 あ、男の人が、目を丸くしてこっちを見ている。


「そういえば、凪は?碧は?」

 聖君、一人だけど、なんで!?

「ママ~~~」

 凪の声?


「あ、桃子、見つかったんだ!」

「桐太?」

 桐太がなぜか、凪を抱っこしている。

「ま、ママって?」

 男の人はまだ、私と聖君の前で立ち尽くしていた。


「で、お前、誰だよっ!」

「いや、誰でもないし、なんでもない。そんな、旦那も子供もいるなんて」

「え!?」

 聖君の低いドスのきいた声で、その男の人は、人ごみの中に走って行ってしまった。


「桃子ちゃん!!!!」

「はいっ」

 怖い。聖君の顔、見れない。

「ナンパされてた?!」


「ち、違うの。違うんだってば」

 私は慌てて、なんとか言い訳をしようと思ったそのとき、

「ママ~~~!」

と凪が、桐太の腕からおりて、私に抱きついてきた。


「凪~~~~!」

 私はそんな凪を、抱き寄せた。

「まったく、ママのほうが迷子だなんて、桃子、しっかりしろよ」

 う、桐太にまで言われてしまった。でも、私も心から、そう思うよ。ママが迷子になったなんて、情けなさすぎる。


「あれ?碧は?」

 碧がいないことに気がつき、聖君のほうを向いてそう聞くと、

「碧ちゃんなら、ここよ」

と桐太の後ろから、麦さんが顔を出してそう言った。


「麦さん?」

「桃子ちゃんを探していたら、二人にばったり会って、で、碧と凪をお願いして、俺だけ走ってこっちに来たんだ」

 聖君が落ち着いた声になって、そう説明してくれた。

「そ、そうだったんだ。麦さん、ありがとう」


 碧は、泣きそうな顔をしていた。いきなり、パパとママが消え、いくら知っている顔だとは言え、麦さんに抱っこされていたんじゃ、不安だったよね。

「碧、おいで」

 私はそう言って、麦さんから碧を受け取った。

「ふ、ふえ~~ん!」

 碧は私の首に手を回し、ぐずぐず泣き出した。


「ママ~~~」

 ああ、凪も半べそかいて、まだ私にひっついてる。

「はあ。まったく、桃子ちゃん、頼むよ。俺にちゃんとつかまってて」

「う、うん」

 

「碧は俺が抱っこする。俺は桃子ちゃんと手をつなぐから、桃子ちゃんは凪と手、つないでて」

「うん」

「凪、ママからもパパからも離れるなよ。あ、桃子ちゃんは俺から、離れないこと!」

「はい」


 シュン。怒られた。でも、元はといえば、聖君が声かけられたりしたから。

「さっきの、女の人は?」

 聖君に、小声で聞いてみた。

「ああ、知らない」

「え?」


「桃子ちゃん探すのに夢中だったし、知らない間に離れた」

 う。聖君の顔、なんだかまだ怖い。これ以上聞けそうもないな。そう思って黙っていると、

「さっきのって、あいつだろ?ちょっと遠目から見えたよ」

と、桐太がポツリと言った。


「あいつ?」

 私が聞くと、

「聖とちょっとの間、付き合ってた女」

と桐太は眉をしかめてそう答えた。


 あ、そうか。どおりでどこかで見た顔だって思った。

「桃子、前に会ったことあんの?」

「一回だけ」

「ふ~~ん」

 桐太はそう言うと、凪のほうを見て、

「凪、花火が上がったら、お兄ちゃんが抱っこしてやるからな?そこからだと、花火見えないだろ?」

と優しく微笑んだ。


「うん!キイニータン!」

 凪は桐兄ちゃんと言っているつもりだ。でも、キイニータンになってしまう。

 それから、しばらくすると、ヒュ~~~~!という音がした。桐太はすぐに凪を抱っこした。


「たまや~~~!」

 桐太の声と共に、ドン!と大きな花火が上がった。

「タマヤ~~。きゃきゃきゃ」

 凪が思い切り喜んだ。凪は、桐太のことを思い切り気に入っている。


「碧、びっくりしてる!」

 聖君は碧の顔を見て笑った。

「碧、綺麗だろ?花火。でも、ドンって音にびっくりした?」

 ギュ!碧はびっくりしたようで、聖君の胸に思い切りしがみついている。


 麦さんは、桐太の隣に立ち、

「綺麗ね、凪ちゃん。あ、また上がった」

と空を指差した。麦さんはたまにお店に来ると、凪と遊んでくれるので、凪は麦さんのことも大好きだ。


 ヒュ~~~!

 ドン!!!!


 私は聖君と碧を見た。同じように目を輝かせている。

 ああ、今年もまた、聖君の花火を見る嬉しそうな顔、見れたんだなあ。

「桃子ちゃん、俺じゃなくて花火ね、花火」

 聖君はそう言って、くすって笑った。


 うん。わかってるよ。聖君の顔じゃなくって、花火を見ろって言うんでしょ?でも、やっぱり私は、花火を見ている聖君の顔が好き。


 それに、碧の顔も。ああ、それに、喜んでいる凪の顔も。

 こりゃ、今年は花火なんて見ていられないかも、私。


 そして花火が終わり、人が一気に移動を始めた。

 そんな中、聖君はまだ花火の余韻に浸り、

「もうちょっと人が減ったら、帰ろうか」

と、桐太に話しかけた。


「そうだな。また桃子が迷子になっても困るしな」

 私はそう言われて、思わずぴったり聖君にくっついた。

 そういえば、聖君がかっこよくて聖君しか見えていなかったけど、周りから、かっこいいって声がしていたっけなあ。


 聖君を見て、そう言ってたんだよね。そうだった。また、誰かに聖君が声をかけられないよう、ぴったりとくっついて離れないようにしないと!


「凪、歩くか?」

「ううん」

「疲れた?」

「あんよ、痛い」

「ああ、可愛いサンダル履いてるけど、それで痛くしちゃった?じゃ、お店まで抱っこしてってあげようか?」


 桐太がそう優しく凪に聞いている。

「うん!」

「凪、パパが抱っこするから!碧は桃子ちゃん、抱っこしてってくれる?」

 聖君がそう言いだした。あ、桐太にヤキモチ妬いてるな。


「なんだよ、いいじゃんか、なあ?凪。桐にいたんが抱っこしてもいいよなあ?」

 桐太がそう言うと、凪は、

「パパ!」

とそう言って、聖君のほうに手を伸ばした。


「凪はパパが一番なんだもんな~~?」

 そう言いながら、聖君は凪を抱っこすると、思い切り鼻の下を伸ばして、

「いいだろ?悔しかったらお前も、さっさと結婚して子供作れば?」

とそう桐太に言った。


「そ、それは!あ、あれだ」

 あ、桐太、麦さんのほうを見て赤くなっちゃった。

「ふ~~んだ。私と桐太はふたりっきりのラブラブな時間をもっと過ごすから、いいんだも~~ん、ね?桐太」

 うわ。麦さんは、まったく動じず、そんなことを言ってきたよ。あ、桐太のほうがもっと赤くなっちゃった。


「なんだよ、お前ら、ラブラブじゃん」

 聖君はそう言ってにやって笑うと、

「でも、俺と桃子ちゃんは、子供がいたって、ラブラブだけどね?」

と付け加えた。


 うわわ。今のは、私が思い切り照れちゃう。あ、ほら、顔が思い切りほてっていく。

 その顔をみんなに知られないよう、わざと碧のほうを向いて、

「碧、眠い?帰ったら寝ようね」

と、碧に話しかけたりした。


 それから、ちらっと聖君を見た。聖君はもうさわやかな顔をして、凪と笑っている。

 ああ、かっこいいよ~。日に焼けた肌に、すごく浴衣が似合っている。


 本当に、私たちは子供がいても、バカップルだよね。






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