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第12話 ○月○日 可愛い天使たち!

  最近、凪が碧の世話をするようになってきました!

  おむつを持ってきたり、寝かしつけたり、添い寝をしたり。

  二人並んで寝ている姿は、まさに天使!(*゜∀゜*)

  もうすぐ、碧が生まれて1ヶ月。

  碧はどんどん体重も増え、すくすくと育っています(^-^)


 凪は最近、聖君にべったりしなくなってきていた。碧の世話が楽しいらしく、おっぱいをあげ終わるとおむつを持ってきたり、布団で碧が目を開けていると、お腹を優しくポンポンして寝かしつけたり、たまに絵本を読んであげていたり。ただし、あくまでも読んでいるふりで、何を言っているかは、まったく意味不明だ。


 碧は、3時間置きどころか、2時間くらいで起きて泣いていたのが、やっとまとめて寝てくれるようになり、私と聖君も、夜中に起こされる回数が減ってきた。

 

 それから、沐浴も聖君がするようになり、凪は沐浴のお手伝いも張り切ってしてくれている。タオルの用意、おむつの用意、そして、碧の体もタオルで優しく拭くお手伝いまでしてくれる。

 というか、聖君は凪がしたがると、怒らずさせてあげるのだ。


「じゃ、凪は碧の手を拭いてあげて」

とか言って、一番凪が簡単にできることを提案している。凪がいると邪魔だなって多々感じることもあるんだけど、聖君は凪を邪魔だとはけして言わない。


「あ、上手!凪。ほら、碧も喜んでる」

と、必ず褒めて凪のことを喜ばせる。そのへんが本当にうまい。

 だから、碧の世話だけでなく、凪は聖君が料理をするとき、洗濯物を干すとき、掃除をするとき、お手伝いをしたがるんだよね。


 それは、榎本家でもそうだった。椎野家にいても、やたらとお手伝いをしたがるので、母は、

「えらいのね、凪ちゃんは。お手伝いをその年でできるなんて」

と驚いていた。


 それから、最近はもっぱら、私の真似事をしている。私が碧の世話をしている様子をじっと見て、クマのぬいぐるみにしてあげている。それに、洗面器を持ってきて、沐浴ごっこもしょっちゅうしている。

「クータン、キレーになりまったね」

とか、

「クータン、気持ちーでちゅか」

とか、口がまだまだ、うまく回らないんだけど、そんなようなことを言っている。たまに、意味不明なことも言い、一人で喜んでいる。


 凪語は面白い。だいぶ、意味のわかる言葉になってしまったけど、2歳になるまでは、宇宙人の言語かと思うくらい、意味不明なことをしゃべっていた。


「ふ、ふえ」

 碧が手足を動かし、ぐずりだした。するとすかさず凪がすっ飛んでいって、

「ア~オ」

と、お腹をポンポンする。


「ふ、ふ、ふえ~~~ん!」

 でも、碧はお腹がすいて泣いているので、もっとお大きな声で泣き出す。そうすると、

「ママ、アオ、パイパイ!」

と言って、碧がおっぱいを飲みたがっているよと、私のところに来て教えてくれる。


「碧のおっぱいの時間だね」

 私は碧のところに行き、抱っこしておっぱいをあげる。

 凪は私が碧を抱っこしても、そんなにヤキモチを妬くこともなくなった。おっぱいを飲んでいる碧を、

「カーイーネ(可愛いね)」

なんて言いながら、優しく見ている。


 すっかり碧の世話係になった凪は、聖君にくっついてれいんどろっぷすに行くこともなくなり、聖君のお母さんやお父さんは、ちょっぴり寂しがっているよと、聖君が教えてくれた。


「聖君が一番寂しいんじゃないの?」

 夜、凪と碧が寝てから、私は聖君に聞いてみた。

「そんなことないよ。凪が碧の世話をしているの、俺も嬉しいもん」

「そうだね」


「それにさ、こうやって桃子ちゃんとべったりくっついていられるようになったし!」

 ギュ~~~。聖君が抱きしめてきた。


「碧に本当に、取られちゃうかと思ったよ、俺」

 また、そんな可愛いことまで言ってくるんだから。

「私だって、凪に聖君、取られちゃって寂しかったんだよ?」

「本当?でも、碧のことばっかり見て、俺と凪のこと、ほっておいたじゃん」


「それは、凪があんまりにも、聖君にべったりだったから」

「な~~んだ。桃子ちゃんも、妬いてたんだ。もう、やきもち妬きなんだから!」

 そう言って聖君は私にキスをしてきた。


 ああ、二人目が生まれたって、私と聖君はバカップルだよなあ。


「もうすぐ、一ヶ月検診だね」

「うん」

「それで、桃子ちゃんも碧も元気だってわかったら、うちに戻る?」

「榎本家に?」

「うん」


「うん。そろそろ、帰ろうかな。聖君の大学も始まるしね」

「あ、でも、その前に、菜摘が碧に会いたがってた。それにお父さんも」

「菜摘の?」

「うん。一回、菜摘の家に遊びに行こうか?」

「そうだね」


「そういえばさ、昨日の夕方、俺がバイト行ってから、和樹君来たんでしょ?」

「うん。小百合ちゃんが連れてきたよ。でも凪、久しぶりだったからか、照れちゃって遊ばないんだよ」

「うそ。凪が照れたの?」

「うん。私の後ろに隠れてみたり、和樹君は普通におもちゃで遊んでいるのに、なかなか近寄ろうとしなかったんだよね」


「へ~~。誰とでもすぐに仲良くなって、勝手に遊んでいた凪がねえ」

「公園では?」

「公園って言っても、俺とばっかり遊んでいたから、ほかの子とは遊ばなかったかなあ。江ノ島に帰ったら、麻里ちゃんや日菜ちゃんと遊ぶかもしれないけど」

「麻里ちゃんと日菜ちゃん、しばらく会ってないなあ」


「麻里ちゃんママも、二人目できたんだよね?」

「うん。メールできたけど、つわりもなくなって、もう4ヶ月で安定期に入ったから、公園に出て毎日日菜ちゃんママと会ってるよって」

「ふうん。旦那さんとは仲良くやってるんだね」


「すごくいいパパしてるって言ってた。麻里ちゃん、パパになついてるんだってさ~」

「俺、何度か日曜日、公園で会ってたよ」

「麻里ちゃんパパと?」

「うん。碧が生まれて、桃子ちゃんが入院していた時も、凪連れて公園に行ったら、麻里ちゃんもパパと来ててさ」


「それ、初耳。麻里ちゃんママは?」

「家で寝てるって言ってたけど、つわりだったんだね、きっと」

「あ、そっか~」

「で、二人目生まれたって言ったら、おめでとうって言ってくれた。今度は男の子だってそう言ったら、羨ましいってさ」


「男の子が欲しいのかな」

「サッカーとか、野球とかしたいんだって。それ、わかるなあ。俺も男の子が生まれたら、したいって思ってたし。実際、碧とサッカーしたりするの、今からすげえ楽しみだし!」

「そうなんだ」


「泳ぎにも連れて行く!あ、もちろん、碧が大きくなったら、潜りに行くし」

「碧も聖君に似て、女の子にモテモテになっちゃうかな」

「え?何?いきなり」


「碧、聖君に似てるから、絶対にかっこよくなるよなあって思って」

「…。もう、桃子ちゃんってば。何を心配しているんだか」

 そう言いながら、聖君はまた私をギュって抱きしめる。


「あ、そういえば、春香さんからベビー服、いっぱい今日届いたの」

「空のお下がり?」

「うん!可愛いベビー服、いっぱい送ってくれたんだよ。生まれた時期が近かったし、そんなに汚れていないから、ぜひよかったら使ってねって」


「空って何月生まれだっけ?」

「4月だよ、確か。凪より1学年下になるんだよね」

「碧より1学年上か」

「うん」


「大きくなったら、碧と空、仲良く遊ぶかな」

「碧と空君が仲良くなるのはいいんだ?」

「え?当たり前じゃん」

「凪はダメだったくせに」

「凪は女の子だからダメなの!」

 やっぱり、凪は特別みたいだなあ。


「桃子ちゅわん」

「ん?」

「まだまだ、桃子ちゅわんのおっぱいは碧のものだよね?」

「うん」


「ああ、複雑な気分。息子とは言え、碧も男だからなあ」

「はあ?」

「俺以外の男が、桃子ちゃんのおっぱい吸ってるなんて」

「へ、変な言い方しないでよ、聖君」

「ちぇ」


 ちぇって何?ちぇって。

「いつまで、碧は桃子ちゃんのおっぱい吸ってるのかなあ。凪っていつまで吸ってた?」

「凪はご飯大好きっ子だったから、離乳食始まったら、早い時期で断乳できちゃったけど」

「そうか!離乳食をまた工夫すれば、碧も早くにおっぱい離れするね?よし、俺、また頑張っちゃおう!」

 そう言って聖君は、目を輝かせた。


 まったく、スケベ親父なんだか、子煩悩なんだか、よくわかんないよ、もう。

 でも、やっぱりそんな聖君も可愛いと思ってしまう。



 そして、一ヶ月検診も終わり、私たち4人家族は、椎野家から榎本家に戻ってきた。

 椎野家を離れるときは、案の定、父が淋しがり、

「凪ちゃん、すぐにまた遊びにおいで」

としきりに言っていた。


 凪もじ~じが大好きだから、別れを惜しんでいた。それから、茶太郎としっぽも大好きだったから、帰るときに車に乗せようとして、2匹を捕まえて大変だった。


「チャター!チッポー!」

 凪は半べそ状態。でも、猫たちは冷たく、凪の腕から離れて、さっさとどこかに消えてしまった。猫って案外、薄情?じゃなくって、マイペース。


「凪、茶太郎としっぽは連れて行けないよ?それに、向こうにはクロがいるでしょ?」

 私がそう言うと、ようやくクロのことを思い出し、猫たちのことは諦めてくれた。


 そしてれいんどろっぷすに着くと、凪は真っ先に、

「クロー!」

とクロに抱きつきに行っていた。


「おかえりなさい!碧ちゃんは元気?」

 ずっと碧に会っていなかったお母さんとお父さんは、順番に碧を抱っこした。凪が、ヤキモチを妬くかと思ったら、クロに抱きつき、クロに夢中になってしまっていて大丈夫だった。


「凪ちゃん、リビングに上がって、おやつ食べる?」

「食べりゅ~~!ソーパパ、はあく、はあく!」

 おやつという魅惑の言葉に凪はすぐに反応して、クロから離れてお父さんの手を引っ張り、家の中へと上がっていった。


「あはは。凪ちゃん、相変わらず元気だね」

 お父さんは笑いながら、凪とリビングに上がっていった。

「碧ちゃん、ちょっと見ない間に大きくなって」

 お母さんはまだ、碧を抱っこして目を細めている。


「ただいま。あれ?父さんは?」

 車を停めに行き、ようやく聖君が荷物を両手に持って、お店に入ってきた。

「凪ちゃんとリビングに行ったわよ」

「え~~。荷物運ぶの手伝って欲しかったのに」


「聖、凪ちゃん、あなたにべったりだったのに、そうでもなさそうね」

「うん。いっときだけだったよ。赤ちゃんがえりして大変だったけど、今はそうでもないし。ね?桃子ちゃん」

「うん」

 私とお母さんも、リビングに上がった。聖君だけは、車から何度か往復して荷物を家に運び入れていた。


「は~~、疲れた」

 そう言って聖君も、リビングにやってきた。

「今日、シフト誰?」

「やすくんよ。それと、キッチンは桜ちゃんが入ってくれるから、聖は大丈夫よ?」

「そう?じゃ、ちょっとのんびりできるね」


「碧ちゃん、目が大きいわね。聖に似てるわ~」

「俺?」

「うん。赤ちゃんの時の聖そっくり!」

 お母さんはずっと碧を抱っこしている。


「くるみを碧君に取られそうだな」

 それを見ていたお父さんが、そうぽつりと言った。

「やあねえ。妬いてるの?爽太」

「…。そういうわけじゃないけど」

 お父さんは、ちょっとすねた感じでそう言った。面白いなあ。この夫婦も。


「チョーパパ!あちょぼ!」

 凪がそう言って、お父さんのところにおもちゃを持ってきた。お父さんは聖君と違って、平気でおままごともするし、なんでもする。

「何して遊ぶ?凪ちゃん」


 榎本家にもいろいろとおもちゃはあるが、最近は誕生日に買ってもらった、お店屋さんごっこセットに凪ははまっている。

 レジのおもちゃには、おもちゃのお金が入っていて、なんとバーコードすらついている。バーコードの先で何かを押すと、ちゃんと「ピッ」と音がするようになっている。


「凪ちゃんが店員さん?じゃ、ソーパパ、お客さんね?」

 そうお父さんは言うと、おもちゃの買い物かごに品物をいろいろと入れて、凪の前に座った。

「いらっちゃいまちぇ」

 凪はぺこりとお辞儀をして、バーコードを持って、ピッ、ピッと軽快に音を立て、

「ニジューエンでちゅ」

とそう言った。


「え?随分と安いね。こんなに買って20円?」

 お父さんがそう言って笑った。

「あ、ニジューエンマンでちゅ」

「あ、あれ?20万円ってこと?随分と跳ね上がっちゃったねえ」

 くすくすと笑いながら、お父さんはおもちゃのお金を凪に渡した。


「おちゅり、サンジェンチェンえんでちゅ」

 いったい、いくらのお釣りなんだか…。

「あはは。凪ちゃん、たくさん話せるようになったね。ちょっと会わない間に、すごい進歩だ」

 聖君のお父さんは嬉しそうに笑った。


 凪はお父さんが大好きだ。だって、こうやってなんでも笑って遊んでくれるから。めちゃくちゃ優しいよね。

 そんな凪を聖君は優しく見ていた。お母さんも凪を優しく見ては、碧のこともあやしていた。そしてクロはと言うと、碧のことをさっきから匂いを嗅いだり、鼻をくっつけたりして、可愛がっている。


 私は、榎本家のリビングで、すぐにあったかいほわわんとした空気に包まれ、幸せを感じまくっていた。

 ああ、帰ってきたなあ。あったかい家に。もう私は、ここの住人なんだなあ、なんて思いながら。



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