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第1話 ○月○日 ハイハイをした!

「永遠のラブストーリー」番外編です。子育てをしている聖をどうしても書きたくて、桃子から見た子育て聖を書いています。よろしくお願いします^^

   娘が、今までズリバイだったのに、ハイハイができるようになりました!!

   超可愛いO(≧▽≦)O

   どんどん、ハイハイが上手にできるようになって、

   さらに行動範囲が広がり、おイタもするようになってきて、

   いろいろと、心配事も増えました(´Д` )


   今日の離乳食。凪、美味しそうに食べてくれました(*^。^*)

   ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 とうとう、聖君は、子育てブログを書くようになってしまった。離乳食をブログに載せようかと言っていたのは、やっぱり冗談じゃなく、本気だったようだ。

 離乳食の写真をやけに撮っているなあと思っていたんだよね。


 どうやら、お父さんにそのことを話したら、お父さんまでがノリノリになり、一緒にブログのデザインも考えたり、「凪ジジの日記」というコーナーまで作ってしまったほどだ。

 本当に、ジジばかと、親ばかだよなあ。この二人って。


「桃子ちゅわん、見て見て!感想欄のコメント!」

 聖君がニコニコ顔で、私をリビングに呼んだ。

「なあに?」

「ほら!」


  凪パパの離乳食レシピ、うちの娘も喜んで食べてくれました。

  今まで、なかなか食べてくれなかったのに、すごく嬉しい!


「嬉しいなあ、俺も!」

 ああ。聖君、めちゃ嬉しそうだ。

「アクセス数もどんどん増えてるよね」

「うん!」


  凪パパ、お料理得意なんですね。うちの旦那さんは何もしれくれない。

  凪パパの奥さんが羨ましい。


「あ、こんなコメントもあるんだ」

「うん」

「聖君」

「なに?」

「顔写真まで載せないよね?」


「凪の?うん。載せないよ?」

「聖君のも?」

「載せないよ。載せるわけないじゃん」

 よかった。もし載せたら、凪パパファンとかできちゃって、スカウトまで来ちゃったりして、また大変なことになっちゃう。


「あ~、でも、たまに凪の可愛い写真は載せたくなっちゃう」

「や、やめてね?」

「うん!それは、どうにか我慢してる。あ、脱走犯みっけ!」

 そう言うと聖君は、リビングからハイハイをして、お店の方に行こうとしている凪を追いかけ、ひょいと抱っこした。


「た~~!」

 あ。凪、怒った。

「ダメ。お店には行っちゃダメだよ?凪」

 ガードがあるから行けないんだけど、凪、たまにガードすら乗り越えようと必死になったり、ガードの前で、

「た~、た~」

と、怒っていたりするからなあ。


「凪はおてんばだよね?桃子ちゃん、子供の頃こんなだった?」

「私、おとなしかったって」

「じゃ、やっぱり俺に似たのか。俺、やんちゃ坊主だったらしいから」

「そうだな。凪ちゃんは聖に似たのかもな」


 お父さんが、いつの間にか2階から下りてきてそう言った。

「あ、父さん!見てみて!ブログ。感想のコメントがまた、たくさんあったよ」

 聖君は凪を抱っこしたまま、パソコンの前に座ると、お父さんにコメントを見せた。

「お。凪ジジにも、コメントが書いてある!」

 お父さんまでが、すごく嬉しそうだ。


「た~~た~~!」

 でも、凪はまだ、怒っている。聖君の腕から抜け出そうともがいているけど、聖君はそんな凪の頭にキスしたりして、なだめている。


 凪はどんどん、行動範囲が広がってきた。公園に行っても、凪はハイハイしてどこにでも行っちゃうし、本当に目が離せなくなってしまった。

 

「聖君、そろそろ大学に行く時間だよ」

「あ、本当だ。じゃ、行ってくるよ。凪、いい子にしてるんだぞ。あまり、ママを困らせちゃダメだぞ」

 私は凪を抱っこして、お店のドアの前まで見送りに行った。


「じゃ、行ってくるね、桃子ちゃん、凪」

「いってらっしゃい」

 聖君は凪のほっぺにキスをして、私にもチュってすると、思い切り爽やかな笑顔で、

「いってきます」

と言って、お店を出て行った。


「は~~~。凪、今日もパパ、かっこよかったねえ」

「た~~~~い」

 あ。凪、機嫌直ってる。この「た~~~い」っていうのは、「は~~~い」って言ってるのかなあ。なんだか、サザエさんに出てくるいくらちゃんみたいだ。


「凪ちゃん~~~。爽太パパと遊びまちゅか?」

「た~~い!!」

 うわ。嬉しそうだ。凪。

「すみません。じゃ、お願いします」

 私はそう言ってお父さんに凪を渡し、洗濯物を干しに2階に上がった。


 聖君が大学に行っている間、私が家事をしている時間はお父さんが凪の面倒を見てくれる。というか、その時間がどうやら、至福のようだ。凪もお父さんに遊んでもらうのは嬉しいみたいだし。


 そんな午前中、たまにお父さんが公園に凪を連れて行くこともある。そこでは、麻里ちゃんママも来ているようで、麻里ちゃんママはとても喜んでいるようだ。そして、

>今日、凪ちゃんのおじいさんが公園に来てたよ。麻里のことも一緒に遊んでもらったの。

と、そんなメールが必ず来る。


 麻里ちゃんママは、3日にいっぺんくらい、我が家にも遊びに来る。その時もよく、お父さんが麻里ちゃんの面倒も見ている。


 麻里ちゃんママが、お父さんのことを慕っているのは見ていてよくわかる。でも私は、ちょっとそんな麻里ちゃんママにハラハラしていた。


 ある日、それを聖君に言った。すると、

「ああ、そんなに心配しなくても平気だよ」

と聖君は淡々とそう答えただけだった。


 ほんと?お父さんとお母さんと、麻里ちゃんママの3角関係とかになったりしない? 

 なんて、私は本気で心配したんだけど、そんな心配、やっぱりまったくいらなかったって、最近は実感している。


 洗濯物を干し終わり、私もリビングでちょっと休んでいると、

「おはようございます」

と、お店から麻里ちゃんママの声が聞こえてきた。


「あら、いらっしゃい。あ!可愛い~~。麻里ちゃんのお砂場着!」

 お母さんのそんな声も聞こえてきた。私は凪を抱っこして、お店まで顔を出しに行った。

「あ、凪ちゃんママ、おはよう」

「おはよう」


「麻里ちゃん、今日は公園に行くの?」

 お母さんがそう聞いた。

「はい。一応公園に行ってもいいように、着せてきました」


「可愛いわね。これ、手作り?」

「そうなんです。くるみさんの言うように、作ってみたんです。結構簡単にできますよね?」

「でしょう?麻里ちゃんに似合ってるわね。麻里ちゃんはやっぱり、赤が似合うわ~~」

「わあ。ありがとうございます!」

 麻里ちゃんママが嬉しそうだ。


 そうなんだよね。麻里ちゃんママはいつの間にか、お母さんとも仲良くなっちゃったの。だから、3角関係なんて、そんなややこしいことにはならなかったんだよね。


 お父さんに恋しちゃったっていうより、優しいうちの家族にすっかり魅了されたっていう感じかな。お父さんの優しさにも、お母さんの優しさにも、麻里ちゃんママは触れてから、変わってきたもん。


「凪、公園に行く?」

「たい!」

「じゃ、凪もお砂場着着せなくっちゃ」

 リビングに戻り、お砂場着を着せた。これを着ると、公園に行けるとわかるらしい。凪は嬉しそうにしている。


 凪のお砂場着はピンク。お母さんが作ってくれた。それを見て、麻里ちゃんママも作りたいと言って、お母さんに作り方を教わったのだ。


 本当に、お父さんといい、お母さんといい、優しいしあったかいよね。麻里ちゃんママも、どんどん明るくなって元気になって、麻里ちゃんまでが変わってきて、本当に良かった。


 公園に行くと、凪と麻里ちゃんは、お砂場で遊びだした。

「最近、旦那が私と麻里が変わったって言いだして」

「え?本当?良かったね」

「うん。明るくなったのは良かったなって。ただ…」


「何?」

 心配事がまだあるのかなあ。

「麻里、後追いがひどいの。私がトイレに行っただけでも追いかけてきて泣くの。旦那がいても、私を追いかけてくるの。だから、旦那がちょっといじけてるっていうか」


「い、いじけてるの?」

「麻里は俺になついてくれないって。でも、しょうがないと思わない?ほとんど麻里と一緒にいないし、遊んでもあげていないんだもの」

「そっか~。凪は誰でもとりあえずそばにいたらいいみたいだから、後追いってないけど…」


「これ、いつかしなくなるのかなあ」

「うん。多分、今だけじゃないかと思うけど」

「うちの子も後追いしたよ?でも、そのうちにしなくなったから、麻里ちゃんも大丈夫よ」

 一緒にお砂場で遊んでいた子のお母さんが、そう言った。


「え?本当に?」

「うん。大丈夫。それも多分、成長段階のいっときのことだから気にすることないって」

「うちもしてるわよ、今。だから、誰もいないときはトイレ開けっ放しでしてるもん。そうすると、ママが見えるから安心みたい」


「うちは、トイレに一緒に入れちゃう」

 あれ?次々に周りにいたママたちが、そんな話をしだした。そっか~。後追いする子って、けっこういるんだね。


「凪ちゃんしないの?凪ちゃんなら、あのイケメンのパパを追っていそう」

 どういう意味だ。

「しないなあ。凪は…。どっちかって言うと、我が道進むみたいな、行きたいところにハイハイしていっちゃって、大変なの」


「そのうちに、つかまり立ちして歩けるようになると、いろんなものに手を出すようになるよ。うちなんて、テーブルの上とか、この子の手の届く範囲に物を置けないんだから」

「うちもだよ。この前、コーヒーの入ったマグカップ、ひっくり返しちゃって。もう冷めてたから良かったけど、焦ったよ」

 そうか。もっと活動範囲が広がったら、大変なんだなあ。


 公園に来ると、いろんな月齢の子のお母さんがいて、いろいろと聞けてためになるなあ。でも、たまに、

「うちの子、まだハイハイできないんだ」

とか、

「なかなか話すようにならなくって。この前の1歳半検診で、保健士さんにもっとお子さんといろいろとお話してあげてくださいなんて言われちゃったの。私がいけなかったのかなあ」

なんて、そんなことを言って落ち込んでいるお母さんもいる。


 自分の子の成長がほかの子より遅れているんじゃないか、そんなことを心配しているお母さんもいっぱいいて、どのお母さんも何かしら、悩みがあるんだなあって本当にそう思う。


 うちの場合、お母さんやお父さんがいろいろと教えてくれたり、相談にも乗ってくれるからなあ。

 そして何より、いつも明るくプラスでものを考えちゃうことができる聖君がいてくれるから、そんなに思い悩んじゃうこともないしなあ。


「最近、凪ちゃんパパ来ないのね」

「凪ちゃんのおじいさんが来てることはあるけど。おじいさんもパパって言ってもいいくらい若いもんね。それにかっこいい」

「え?そ、そう?」


「でも、凪ちゃんパパに会いたいなあ。目の保養になるのに」

「そうだよね。私なんて、お話するときドキドキしてたもん」

 う。だから、聖君はあんまり、公園に来て欲しくないんだけどなあ。

 聖君も、ママさんたちに囲まれるのが苦手みたいで、公園には私と一緒じゃないと来なくなっちゃったし。


「あれ?凪は?」

 みんなでわいわいと話していたら、凪がお砂場から消えていた!

「凪ちゃんなら、こっちにいるよ」

「あ!いつの間に!」


 凪はすでに、滑り台の方に行っていた。

 私は慌てて凪のもとに行き、凪を抱っこして一緒に滑り台に登り、一緒に滑った。

「た~~~~~い!」

 嬉しそうに滑ってるなあ。それにしても、もうちょっと大人しくしていてくれないかな。本当に凪は、好き勝手にいろんなところに行っちゃうんだから。


 そんなこんなで、昼まで公園で遊び、なかなか帰りたがらない凪をどうにか抱っこしてお店に戻った。

「お帰りなさい」

 お店に戻ると、紗枝さんがそう言ってくれた。

「ただいま」


「桃子ちゃん、凪ちゃん、おかえり。喉渇いたでしょ?あと、お昼も用意するから、リビングで待っててね?」

「すみません」

 ほんと、私ってもしかして、ものすごく恵まれた環境にいるかな。公園に遊びに行った日は、お昼をいつもお母さんに作ってもらっている。


 凪をまず洗面所に連れて行き、お砂場着を脱がせ、手を綺麗に洗った。

「タッタッタ~~」

 凪は楽しそうに水道から流れる水で遊びだした。


「凪、お遊びじゃないよ?さ、手を拭いて、ご飯食べようね?」

「たい!」

 あ、お腹すいているのかな。自分でハイハイして、リビングに向かったぞ。


 私も手を洗い、うがいをしてリビングに行った。すると凪は、クロにじゃれついていた。ああ、クロと遊びたかったのね。


「やあ、凪ちゃん、公園楽しかったかい?」

 お父さんが2階から下りてきた。凪は嬉しそうにお父さんに手を伸ばした。

 お父さんは凪を抱っこして、あぐらをかいて、膝の上に凪を座らせた。凪のお気に入りの場所だ。


 お母さんが私とお父さんのお昼を持ってきて、凪の離乳食も持ってきてくれた。

「凪ちゃん、今日のは聖じゃなくって、くるみママの離乳食だけど、食べてね?」

 そう言うと、お母さんはお店に戻っていった。


「はい、エプロンして」

 お父さんがベビーチェアに凪を座らせ、エプロンをつけた。凪は食べる気満々のようだ。

「はい、あ~~ん」

 お父さんが凪にスプーンで食べさせてあげた。凪は嬉しそうに大きな口をあけた。


 離乳食を始めた頃、お父さんに食べさせてもらって申し訳ないと思ったりもしたが、どうやら、お父さんには至福の時らしくって、いつもこうやってお父さんに食べさせてもらっちゃっている。

 聖君が休みの日は、聖君が食べさせてあげているし、私って、本当に楽させてもらっちゃってるなあ。

 

「美味しい?凪ちゃん」

「モグモグ」

 美味しいらしい。凪はぺろりとお母さんが作った離乳食も食べてしまった。とても幸せそうな顔をして。


 家にいるときには、私もお昼は離乳食を作ったり、お店で家族のご飯を作るお手伝いをする。でも、お母さんが作ってくれることも多い。

「私って…」

 お父さんに、こんなでいいのかなあって、思い切って聞いてみた。


「へ?別にいいよ?そんな気兼ねなんてしなくたって、いいんだから」

「はい」

「桃子ちゃん、料理の学校にも行くんでしょ?」

「はい。いつかは行きたいなって」


「じゃ、凪ちゃんが桃子ちゃん以外の誰にでもなつかないと、桃子ちゃんから離れられなくなっちゃうから、いいんじゃない?」

「そういえば、麻里ちゃん、後追いがひどいって言ってました。他のママさんたちも、子供の後追いで大変みたいで。凪はないですよねえ?」


「そうだね。ケロッとしているもんね。桃子ちゃんがいなくても」

 それもそれで、どうかと。いや、ありがたいことなんだよね?

「クス。凪ちゃんは、どっか肝が座っているところもあるしなあ」

「肝?」


「なんつうか、誰かがいないと寂しいっていうより、誰かを癒しちゃう側って言うの?」

「はあ…」

「あの空もさあ、凪ちゃんがいると安心するのか、ぐずらなくなっちゃうし、春香がいなくても、凪ちゃんの横で寝ちゃうんだろ?」

「はい」

「すごいよねえ、凪ちゃんは」

 そうなのかな。そんな器しているのかしら。


 でも、いいんだよね。お母さんやお父さんに思い切り甘えているような気もするけど、だから、私も凪も、こうやって楽しく過ごしていられるんだもんね?


 そんなこんなの、穏やかな毎日を過ごしていると、ある日突然、仰天するようなことが起きてしまった。

「お客様、開店は11時からなんですが」

 そんな絵梨さんの声が、お店からしてきた。


 土曜日で、聖君も大学が休みで、リビングで凪と遊んでいる時だった。

「え?凪ちゃんのおじいさんですか?」

 そんな声もお店からしてきた。


「何かな?」

 聖君と私は気になり、お店の方に顔を出しに行った。

 すると、そこには、知らない男の人が立っていた。


「あの、凪ちゃんのおじいさんに用があるとかで」 

 絵梨さんが聖君にそう言った。

「どうも、初めまして。麻里の父親です」


 え?麻里ちゃんの?

「いつも麻里とうちの妻が、凪ちゃんのおじいさんにお世話になっているようで、挨拶に伺ったんですが」

 そう言う麻里ちゃんパパの顔は、なぜか険しかった。


 なんで?

 麻里ちゃんも麻里ちゃんママも一緒じゃないけど、どうして一人で来んだろうか。


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