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シクウノソラニ  作者: 津村の婆ァ
9/22

#007:んな事望んでないっ

Q.ハルカが取らされた移動手段は?



1.徒歩での自力移動

2.車両を使用しての移動

3.ヘクサに騎乗しての移動

4.魔術を使用しての移動



答えは本編で



※2010/11/10修正



 お互いに衝撃の事実に打ちのめされたお蔭かどうかわからないけど、クラフィスさんは私を名前で呼んでくれるようになった。


 私もほら、アレコレあったから忘れていたのよね。だから彼等に訊ねたのよ。


 即ち“ここがどこであるのか”という話をしたわけだ。


 答えは私の予想の範疇外。


「首都郊外にあるから気がつかないだろうけど、メシュト・ラハム区のティタロージェ神殿と呼ばれた遺跡だ。今は跡地をつけるべきだろうな」


 記憶にない名称に落胆したが、携帯の通じない現実と、見覚えのない景色、目の前で見せられたヘクサの変化は納得するしかないでしょ。即ち私の知らない異世界だって、認めるしかないのだ。


 例えば、私がこちらに連れてきた光の帯が古術文字(コジュツモジ)と呼ばれる代物で、“遺失された嘗ての技術”であり、その構成から使用目的にいたるまで謎に包まれた“生きた文字”なのだと言われたって分かる訳ないですよ。


―――まるでおとぎ話に迷い込んだ旅人だわ。


 まぁ、私は傍観者でいいけどねぇ〜、主人公はもっと華がある若者にでもやってもらえばいいと思います。




「そろそろ、来てもおかしくないんだがな」


 空を見ながらクラフィスさんは、ボヤくというより誰かに向かって言ってるようで。


『メディルが絡んでいれば第六分室が来るだろう。大事(オオゴト)は避けられまい』


 ヘクサはフンって感じに答えてたから、二人にとってあまり関わりたくない人が来るらしい。


「もしかしてこの場を動かないのは、現場確保とか情報を引き継ぐためなの?」


 ドラマなんかで見かける警察が事件の起こった現場を検証するために、死体を含めた現場をさわってはならないっていうアレである。


 そうだ、とあっさり答えたのはクラフィスさんで、ヘクサは私の手に頭をすり付けていた。


「今のところ彼らの到着を待つしかないが、ハルカは寒くはないか?」


 頷く事で答えた、寒くはない。


 買い物に出かけた服装は、ヒートテック素材のタートルシャツにお気に入りのチェニック、レギンスとショートブーツを合わせ、その上に通勤に使うコートを羽織っていたのだ。


「もうすぐ日も暮れるし、山は冷え込む。だが現場確保の為には何もしてはならない決まりで、火も使えないんだ。結界を巡らそうにも魔力が足りなくてな。すまない」


「‥日も暮れるって、夜明け前じゃないんですか?」


 ええええっ、どういう事だ?


「現在23シア90ラコル。今は夕方だ。もうすぐフィンジアとパルステラが見える時期だから、冷え込むぞ」


「にじゅうさんしあ? ぱるすてらとふぃんじあ?」


「‥一日の時間を表す単位だ。一日を36で割ったものをシア、シアを1200で割ったものをラコルというんだ」


―――ややこしい。えと‥。


 携帯の電卓機能を呼び出して、単純に計算すると15時23分だった。うわ、携帯表示時間は03時23分。


「携帯の故障でなければ半日の時差ってわけだ。うわぁ‥」


 どおりで眠いはずだ。ヘクサが温かくてついウトウトしかけていたのは気のせいじゃなかった。


「半日の時差って事は、古術文字に捕まったのは夜中か?」


「そう、夜の十時位だったからえっとぉ、‥シアだと33シア位だねぇ」


 さっきのクラフィスさんの説明からすると一時間は約1.6シア。1800ラコルということになる。単純に言えば一秒は0.5ラコルということになるからややこしい。


「夜中に一人で出歩くなんて感心しないな」


「たまたまよ、普段はしないし。パルステラとフィンジアって何?」


 なんだか私、心配されてます?


『精霊と魔物が行き来すると云われている。空に浮かぶ星だ』


 ヘクサがつまらなさそうに教えてくれた。


「へぇ、じゃあヘクサはそこから来たの?」


『‥違う』


「え? 魔物が行き来するんでしょ」


「厳密には魔物と魔獸は違う」


―――意味、判らないんですが。


 だけど、この場でそれ以上聞くことは出来なくなってしまった。


 彼らの空気よりも、鮮やかに度肝を抜く登場でこの場を支配する人が現れたから。


「はぁい! クラフちゃん、ヘクサぁ。おっまたせぇ」


 ズシャアッと音を立て誰かが上空から飛び降りてきた。ナニこれダレ!


「速やかに現場確保に来ましたのでぇ、動かないでくぅーださぁい」


 更に追い討ちをかけるように別な声がした。なんとも緊張感の無いというか、脱力感溢れるというか―――しかも男とも女ともつかない声だから余計に言い難い。


「‥連絡してから6シア半が速やかなら、今後あんたの呼び出しは応じない事にしよう」


 うわ、何気にバッサリ言いますね。クラフィスさんって冗談とか通じなさそう。


「ひっどぉーい、これでも最速でラフィックとエマの使用許可と督査室の協力要請を取り付けて、調査機材一式スタッフ付きで揃えてきたのよ。ここで引き継ぎしたら十日のお休みのボーナス付きでね」


 いつの間にそこにいたのだろうか。クラフィスさんと同じような上着を着た方々が大きな荷物を抱えながらあちこちを歩いていた。


 その中でクラフィスさんと話しをしていたのは膿灰色の髪に青い眼の長身の男性で、左手には書類をファイルしたらしいボードみたいな物を持っていた。


「手回しに時間が掛かるのは仕方ないが、連絡くらいしろ。こちらも動けなくて困る」


「悪かったわよ〜。でもそれだけの事態だと認識してるって事よ? で、なにが起きたの」


 その問いに無言でサングラスもどきを外して渡すクラフィスさん。


 初めて見た瞳は少し切れ長で優しい鳶色をしていたが、眼の下のくまはいただけない。お疲れモードだったのね、思っていたよりも。


「コイツ位しか記録出来るモンが残らなかった。現時点まで入っているから足りるだろ」


「あっら〜、クラフちゃんにしては珍しく気前良いじゃない。いいわ、何が欲しいわけ?」


 そこで彼が示したのが私だった。何故に?


「彼女に関する全ての保護権限と、三週間の休日」


 何の取引かは知らないが、もしかしてヤバいですか? 膿灰色の人の値踏みする目線がイタいです。


「ふぅん、訳ありってトコね。いいわ、明日簡易診断受けに出てくることが条件でのんだげる」


「ヘクサ絡みだ。それでもいいならな」


 それどーいう意味だ。


「ちょっ、それってこの件と関わりあんの?」


「おそらく。だが今は無理だ、流石に三日は辛くてな‥」


「あー、なる程ね。じゃあゲートマーカー使いなさいよ。簡易型を用意したから」


「それだとヘクサが嫌がる。慣れないと無理だ」


「ならヘクサは自力で帰せばいいじゃない。彼の足なら何でもないわよ」


 訳の分からない会話をポンポン投げあうなって、理解不能だわ。三日は何が辛いの、解説を要求するっ。


「彼女はどうする」


「ん〜。クラフちゃんが抱っこしていけば? 小さい子って人肌に安心するし」


 私はこれでも27歳だっ、ついでに言うなら私にだって選ぶ権利はある!


「ゼオ、彼女は古術文字に巻き込まれた一般人だ。だが、ヘクサが彼女を気に入って離れない」


「え?」


「詳しくは記録をみればわかるが、彼女はお前と同じ年だ。幼女ではない」


「はあぁっ!? ナニソレ」


 なにその反応は、失礼にも程がありますよ?


『クラフ、先に戻れ。俺がハルカを連れて行く』


 しかもヘクサまで何いってんのよ。


「‥此処からか?」


『少々運動不足だ。付き合うか?』


 クラフィスさんもゼオと呼ばれた人も沈黙した。‥なんだか嫌な予感。


「さ、参考までに聞いていい?」


『なんだ』


「ヘクスが私を連れて行くって、ドコに、どうやって連れて行くの?」


『俺じゃ嫌か?』


「嫌とかじゃなくて‥」

『なら決まりだ!』


 いうが早いか私の股座(またぐら)をくぐると、あっという間にその背に騎乗させてしまった。


「ちょっ、なにすん‥」

『掴まってろ』


「ヘクサ!」


 それからの彼は目にも留まらぬ早さで、その場を走り出した。


 慌てて彼の首に抱きついた途端にスピードはぐんぐん上がる。やめてやめてぇ!


 上下に揺れる振動は激しくて下手に口を開こうものなら舌を噛む。それでも何とか目を開けていたのはほぼ反射的にだ。


 山頂近くは禿げ山だった景色も徐々に緑が増えていく。


『跳ぶぞ』


 ヘクサはそういうと更に加速をつけてある方角に向かった。



―――ちょっ、ちょっとぉ?


 見晴らしのよい方向に向かっているのは何故。


 眼下に広大な森林が見え、その先に小さく街並みが見える。


 頭の中で組み上がるその図式、そして答え。


―――まさかここを飛び降りる気ですかぁっ!


 ヘクサ身体がググンと沈み込む。お尻の下の筋肉はありえないほど硬く、しなやかに伝えたリズムを変える。


 次の瞬間重力が一気に私達を支配するかのように身体に巻きついた。




 ヘクサは私を乗せたまま、深緑の中へと崖の上から飛び込んだ。


新たにお一人様登場。


クラフィスの同僚になりますが、立場は実は上。しかもコンビを組んでいたりするから今後も出ますねぇ。


ゼノオーグ=フェンテが本名です。


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