表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
シクウノソラニ  作者: 津村の婆ァ
7/22

#005:驚くほどの事だろう

Q.クラフィスはハルカより年上?



1.当然上でしょう

2.まさかの同い年

3.え?年下?




答えは本編で(笑)


※2010/11/10修正

【前回に引き続きクラフィス視点でお送りいたします。】


―――専門外にも程がある。


 古代ゾロフ語を使う少女は、魔獸であるヘクサの姿を目の当たりにしながら、怯むも臆するも無かった。彼女は一体何者なんだ、貴重すぎてもはや遺跡に等しいだろ。


 とにかく言葉が通じない事には話が進まないので、彼女に意思疎通の術をかけた。本来は精霊や魔獸に使われる一過性のものである。


「君、ちょっと‥」


「貴方、飼い主さん? ちゃんとリードを持ってなきゃ駄目じゃない。こんなに大きいペットにいきなり飛びかかられたら驚くのよ。むやみに飛びついちゃダメって躾なきゃ、社会的に迷惑よ」


 鮮明になった言葉の意味に俺は別な意味でも驚いた。相棒の外見でもなく、俺の姿でもなく、いきなり躾問題という日常を振りかざすなんて只者ではない。


「‥飼い主って‥」


 一応断っておくが、魔獸は一般家庭で飼えるほど易しい生き物ではない。知能は人よりも高く、力も強い上に魔力を持っていて、用心深い。


『まうあっ、俺を忘れたのか?』


 相棒もそれに該当するが、こんなに饒舌な姿は此方が驚くほど珍しい。


「だからさっきから違うって言ってるでしょ。あたしはハルカ。人違いだって何度も言ってるでしょ、人の話聞いてないわけ?」


 どうやら彼女はヘクサに話しかける事に夢中で、術がかけられた事にすら気がつかないようだ。


「悪いが君の言葉を理解できるように術をかけたのが先程なんだ。古代ゾロフ語なんてなかなか使われない言語だしね」


 途端に彼女が眉をひそめたが、言わねば伝わらないのが現実だ。


「俺はクラフィス=ディレード。コイツはヘクサ。見ての通り魔獸(まじゅう)だが、訳あって俺と契約しているから心配ない」


 まぁ魔獸自体めったに居ないし、人に懐く魔獸も居ないからおびえない方が普通なんだが‥。


 ヘクサも何かを感じたのか名残惜しそうに彼女から一歩離れて座り込むが、意識は彼女を一瞬たりとも放そうとはしなかった。


 まるで母親に甘える子供だ。こんなヘクサは見たことがない。


「すまないが幾つか質問していいか? これでも遺跡管理者として不審者の確認は義務になってるから」


 彼女は眉をひそめ、俺の顔と相棒を見やった。


「君は何処から来たんだ? この区域一帯は、第二行政区第三室命令で一時封鎖されているはずなんだ。俺達は巡回調査の一端で此処に来たが、君みたいな女の子が独りで来るような所じゃない」


 俺の言葉に吃驚したようだ。まぁ、第二行政区なんて普通に考えてもあまり関わりになることは無いだろうし、俺の羽織っている外套を見れば察して貰えるはずだ。


 彼女が知らないで迷い込んだだけなら、問題はない。問題なのは。


「それに君、古代ゾロフ語なんてマニアックだね。そんなに遺跡好きなの?」


 彼女が使った言語にある。


 単純な音から成り立つ言語で、単語一つで何通りもの意味を持つ複雑な文法に、発音一つで全く別の意味を持ってしまうという難解な言語だ。


 一説には神語とも云われ、未だ学者の中で物議を醸していると聞く。


 俺も仕事の関係上、知識的に知ってはいたが耳にするのは初めてだ。おそらく間違ってはいないだろう。それにこの遺跡はその言語に関わる神殿として知られている。


 だが彼女のは俺の予想を根底から外してくれた。



「えと、クラフィスさん‥と仰いましたか? 失礼だと思いますが先に申し上げておきます」


 彼女は俺をキッと、睨みつけるとまくし立てるように話し出した。


「質問をしたのはこちらが先です。それを無視した挙げ句に職務質問される訳ですね。それが貴方の礼儀と言うなら、私も言わせて頂きます。先ずは」


 ヘクサを指して言った。


「初対面の相手にいきなり押し倒した上に、人違いしてセクハラするペットを、先ずはハーネスに繋ぐなり、ケージに入れるなりした上でちゃんと叱らなきゃ。躾は飼い主の義務ですよっ!!」


―――ヘクサを叱る? あ。


「それから謝罪して、職務質問なりするのが筋だと思うんですけど、違います?」


 どうやら俺は、遺跡に来てから相当疲れていたらしい。


 顔を見合わせた俺達は、とりあえず素直に彼女に謝罪したのだった。




     …*…




 話してみるとハルカは、信じられない事だらけの人間だった。


 大体の事柄、所謂常識や倫理観的な事柄はほぼ違いはないが、物の名前や魔術といった知識的な事柄は皆無だった。


「ハルカは魔獸は怖くないのか?」


 ヘクサを無害な姿に変えさせて尋ねると、自信満々に口にした言葉は。


「ヘクサがって意味ならそうだね。最初は驚いたけど、泣いているような切なさで抱きつかれて、無碍には出来ます?」


 そうしてへらっと笑うと


「しかもあんな澄んだ眼で誰かを傷つけるなんて思えませんよ」 


 正直驚きだ。ほんの僅かな時間で彼女はヘクサを受け入れた。


 魔獸というよりもヘクサという個人で、と云うのが正しいか。


 契約もなく魔獸を受け入れた人間なんて聞いたこともないが、事実此処に居る。


 本当になんて日だ。


 今日一日で、

古術文字の顕現化

遺跡の爆破


 極めつけが

“古代ゾロフ語を話す異世界の少女”

しかも魔獸を契約無しに手懐けた。


 これらが示すのはどういう事なのか。少し調べる必要があるようだ。


『ま‥、ハルカ』


「何?」

 

『お前はまうあではないと言った。だがお前の気配はまうあそのものだ。それはなぜだ』


「私は私だよ。生まれてから27年、私は私だったから判らないよ。そもそもまうあって何?」

「にっ、27?」


―――まさか、俺より年上?


「クラフィスさん、それどーいう意味です?」




 それは間違いなく今日一番のショックだった。


はい、下でした。(笑)



因みに24歳ですよ。

若いはずなのに何故に疲れたオッサン風に仕上がるのやら‥、まぁその辺も含めておいおい描きますね。



さて、次回は同じ話なんですが、ハルカ視点でおおくりします。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ