#019:私の知らない彼等
お久しぶりでございます。
書き直し増量版、お届けです。
Q.今、貴方の手の中に一枚の紙があります。何か書かれてるようですがどうしますか?
1.とりあえず読む。
2.とりあえず捨てる。
3.とりあえず寝る。
…*…
‥‥えーと、なになに?
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語りと呼ばれた部族が滅んでから約四百程の時が経つ。
彼等は全てを分けて世代に伝える為、幾通りもの伝えがある。
【紺碧の地】【白い紋様】
【真白な泉】【無垢な赤】
【深淵の真】【凍れる扉】
【刃の禁忌】【眩虹の呪】
【対の相手】【解放の楔】
我等の理が彼らの理とともに歩むか離るるか、すべては鍵を放つ時にあかされる。
--------------------------以上
‥うん。‥‥どう、コメントしようか?
云っておくけど私の血筋にも知己にも、世間様に知れ渡るほど名の知れた有名人は居ませんよ。
ましてやいくら見た目が小学生並でも中身は一応大人だからって、私はどこぞの推理オタクぢゃありません。
人には得手不得手があるのだから、得意な人に託すべきで。
まかり間違っても一介の事務員の手には余りまくりですってば。
託すべきは名探偵か、家政婦か。教えてください池○さんッ!!
こんな怪しい文章が綴られているのは、私の職場でよーっく見かけるA4コピー用紙(某メーカーのスノーホワイトだよコレ、絶対に間違いないって。この目に痛いくらいの白さは絶対に蛍光剤か反射剤が入ってんじゃねえのかと疑っているぐらい白いんだから)。
しかも使われてる文字が黒丸ポップ体。フォントのサイズ迄聞かないやうに。
つうか詳細マジでスルーぷりいず。
此処にかかれている内容は、多分誰かによって伝えられた厳かな伝承か何かだろうと思われる。意味深な内容からして大事な事柄なんだろうとは思う。
‥‥け・ど・ね・?
それをこんな素材で演出する其のセンスについていけないのよ、私は!!
「‥シュール通り越して痛寒いね。で、こんなん読んで私に何をしろと?」
まさかコピー用紙がこれで切れたがら"A4頼んでえーよん"なんて、○塚商会のCMギャグ(古っ)を繰り出す為じゃないよね?
(このギャグを言いたいが為に、わざと在庫が空になるまでだんまりをし、社長命令で近くのホームセンターまで即買いに走らされたのはメタボ細川である。あームカつく(怒)!!)
『‥おれらは"まうあ"さ見づげでもらいでぇだげだ』
『ほーじゃほーじゃ。じゃけん、やり方はまかせるきに』
―――(私にとって、とりあえず逃避したい現状を)説明しやう。
…*…
気がついた私が居たのはこの薄ぼんやりとした空間。
そこに突如現れたのはこの声の持ち主'sと、まばゆい白さの例のコピー用紙一枚。
綴られた内容は先程の意味不明で訳ワカメ、しかも持ち主'sって‥羽根付きナンデスヨ?
なにこの状態?って思うよね。そう思った私は変じゃないよね?
誰かそうだと言ってよ〜(泣)と、現実逃避したいけど、思い返しても私の記憶の中でこんなしゃべり方をするのは、変態ニワトリ'Sぐらいしか思いつかない。
だけど目の前にいるのはニワトリではなかった。うん違う。
九州弁(つうかNHKの大河ドラマ?)を口にする鴉(って白黒だったっけ?)と、東北弁(NHKの昔の連続小説?)を口にする鷹(にしては何だかちょっこし野暮ったい?)は、こっちをじーっと見てる訳ですよ。
「(‥観られてるよ〜。まさか二匹同時に襲ってくる‥事ないよねぇ)」
もう気がついたらこんな状況で、二匹と私以外は誰もいないのでから助けを求める事すら出来ない。
なので気持ち強気に(内心ビビり気味で)二匹に対峙する。うんもう私ヘタレでいいよ。
ってのが現状なんだけど、ぶっちゃけ私にもよくわからないので説明にあまりならないと思う。
…*…
「‥ほー、するとナンですか? 関係ない世界の人間をなぁんも説明なく巻き込んで、訳わからん話をかぁってに一方的にまくし立てて、質問一切させずにさぁやれと責め立てた上で責任の丸投げ発言を偉そ〜ぅに言い放つんが、あんたらのお願いっちゅう訳ですか」
どーゆう神経してんのよ、責任者出て来いや!
この際なのできっちししっかり話をしようじゃない。この理不尽さに文句を言ってやる!(気持ちは前向き、しかし本音は「あっちいけぇ〜、こっちにくんなぁ〜」である。)
これがヘクサや翡翠だったなら目線を合わせた上で納得するまで話を聴く気になる。だって、私の危機を救ってくれた恩があるし、なんて云うか懐いてくれてるせいか、もはや癒やしだし(笑)
だがこのエセ方言をぶちかますニワトリ'S‥、こほん。鴉と鷹は、私を此処へと送り込んだ輩の仲間であることは間違いない。いわば私の危機やら何やら含めての話は、彼等が発端な訳で、‥悪態の一つもつきたくもなるってモンでしょ。
『じゃっと、どげんしたっておい等には見つけられんかったじゃ』
‥鴉擬きよ、言い訳はいいから。君さ、何とな〜く単体でそれぞれ突っ込んでいったんじゃないかと思うよ。せめて三、四人組んで、何組かに別れて探す場所を振り分けて虱潰しの人海戦術を取るような輩には見えないしねえ‥。
『んだ。おらの眷族さ、ずっど捜してるだども見つがらねぇ。400年かがって捜しだども何処にもいながったんだぁ‥』
「‥(400年って、あんた今何歳よ!?)」
どんな手段で捜したかなんて問い詰めたりしたら、引き受けざるを得なくなりそうな気がするので、敢えて聞かないでおこう‥。
『見づけてけろ。まうあさ居ねがっだら扉さだげで済まねぇ、始まっでは困るがら』
困るって、云われても‥‥、ねぇ。まぁ、必死というか切羽詰まっている感がひしひしと伝わる‥まぁ、なんとなぁく判るけど‥うし。
「‥幾つか質問していい?」
『おんしじゃったら大丈夫じゃきに。鍵ば持っちょるけんわかるじゃろ』
―――ぷち‥。
「わかるかっ!! まず現状説明せいっ、何にも知らない他人を渦中に引き込んで放り出すなんてどーゆう了見よ!」
『説明?』
揃って首傾げる姿にちょっこし萌えが擽られるけど、一歩たりとも退きませんからっ!
「そーよ、誠意を見せなさいよっ。いっておくけど、一蓮托生とかなし崩し的に巻き込んでおいてうやむやにする気なら、一切の協力はしないからねっ」
"まうあ"を探し出す事を報酬とする代わりに私の何を叶えるのか―――知りたくないといったら嘘だ。ここまでされてる私は既に関係者だろう。―――被害者という名の。
だから、ちょっと事情が聞ければ位の気持ちだったのだけど、二人の話す事情はかなりぶっ飛んでいた。―――少なくとも私の常識に当てはめるならば―――だけども。
…*…
とりあえず彼等の話を簡単に言うと、今から四百年ほど前に居なくなった"まうあ"はこの世界の住人ではなかったらしい。
ある時フラッと現れた"まうあ"はこの世界の原型を作り出した。そのときの構築に五つの国を一つの世界にして、まとめ上げた‥らしい。("まうあ"ってどこかの神様か、魔法使いなんじゃなかろうかと思った。―――無論この時点ですでに私の手に負える問題ではないと思うんだけど。)
五つの国、すなわち精霊と魔物、人と獣、そして------。(最後だけ何故か聞こえなかった。なんで?)
まとめ上げたあと、暫くは留まっていたけど、ある日突然に居なくなったそうだ。
たびたび居なくなる事はあったけど、これほど長くはなかったから焦ったらしい。
「‥つまり"まうあ"って神様か何かなワケ?」
『"まうあ"は"まうあ"だ。神でも何でもねぇ。そう言ったんだど』
『おいはまだ逢っちょらけんわからんが、婆様がいうちょった。優しかひとじゃっち』
「‥どう優しいかはこの際置いといて、その"まうあ"を捜し出してどうしたい訳?」
ただ逢いたいにしたって400年も捜すなんて、ただ事じゃない。
しかも鴉擬きは眷族でと言った。
クラフ達が云っていた"羽根あるものが精霊、姿が変われるものが魔物"なら、この場合の眷族は、精霊なのか、鴉擬きなのか。
『おらにはわがんね』
「は?」
『おいもラオも代行じゃけ、願われたから叶えんといけん』
願われた、それって翡翠と同じ?
「えっと、ラオって誰?」
『おらだ。んでこっちさテス』
「鴉のテス、鷹のラオね。私は遼よ」
『鍵のハルカじゃな』
「鍵はいらないわよ。さっきの願われたって"願いは叶えなくてはならない"からって事?」
コクリと頷く頭が二つ。
「じゃ、願った人って誰?」
一族総出で400年も捜すなんてどんだけ偉い願いよ?
『ハルカが持っちょる、それを綴った御仁じゃと聞いちょる』
「はぁあっ!?」
ちょっとまて、このふざけた演出のコピー用紙に、なんつう仕掛けを仕込んでるのよ?
私は貧乳奇術師でもないし、日本科学技術大学の物理学教授も、書道家の母も、公安部のヅラ警部補なんぞも居ません、シリマセン、分かりませんってば。
そんなミステリーはTV越しに観るだけで充分ですって。
「その御仁は今何処に居るの?」
『最初に願ったんが誰かはおいも知らん。確か最後に願ったんが4日前に亡くなった云うんは聞いたが、あとはよう知らん』
「はぅいっ?」
『ラオさ知らねなら、おらにはわがんね。済まねぇがおら、そったら事はわがんねから』
鷹のテスが首を軽く竦める様子に、この理不尽な憤りの矛先を向けていいものかと正直迷ってしまった。
何かね、ニワトリ'sと彼等は"精霊"っていう同族なんだけど、よくよく考えてみれば、私に理不尽な役目を押し付けてきたのはニワトリ's。ラオとテスは彼等なりの契約の上で努力し、協力を求めてる。
つうか、半ば上から目線の投げやりな押し付け命令口調のニワトリ'sよりも、400年近く願いの為に頑張ってきた上で協力要請する彼等の方に手を差し伸べてもいいんじゃなかろうかと思うのは何故なんだろう。
『まぁ願いが叶えば、テスもおいも漸く解放じゃけん』
微妙に苦笑いしてるように見える鴉の顔‥ってイカン、同情してどーするの。
そもそも"まうあの鍵"なんてどういうモノか知らないし、いつの間に受け取ったすらかも判らない現状下で、右も左も常識も分からない異世界迷子の私に、一体何ができるっていうのよ。
‥‥まぁ悲劇のヒロイン気取りたいなら、泣いてわからないと駄々こねれば出来なくもない。(出来れば可愛らしい外見と愛らしい性格の美少女or儚い外見の控えめ美人が似合うと思う。)
見た目チビでも、社会に出て一応独立している社会人の私がしたら、間違いなく世間様は生暖かい白い眼でせせら笑うだろうと予測は立つ。
なので此処は取り敢えず社会人必修スキル"お茶を濁す"で、明言は避けて‥‥。
『ときに、ハルカが犬狼族と契約したっちゅうは間違いなかか?』
「待て‥、話が飛びすぎてわからないけど。けんろーぞく?」
『ああ、ハルカの近くさ居る闇色の獣だ。魔獸が姿表すんば珍しぃんだ』
「魔獸って、ヘクサのこと?」
確かクラフがそう呼んでいた覚えはある。
『犬狼族ば近くさ居るなら気をづけろ。奴らさちょっかい出してぐるからな?』
「ヘクサはちょっかい出してない。つうか、ヘクサはヘクサなの。当人を見もしないで悪く言わないでくれない?」
何かあるのかもしれないが、知りもしないで悪口言うのは正直嫌いだ。
テスに向かって軽く抗議したが、彼はその方向を否定した。
『‥犬狼族さ関わる奴に悪さすんだ‥ソイツは』
「へっ‥、それって私が標的って事?」
こっくり。
『幸いひとり、おんしの傍らに付いたき多少の牽制には成っちょるるが、好奇心が強い奴ら相手に何処まで耐えられるかが判らんしのう』
「ひとりって、翡翠の事? 悪さってまさか今日の事故も‥」
『‥事故? ようわからんが、気をつけるぜよ』
『んだ。おら達は役目さあっがらあんまし来れねぇげど、おめえさに付いた若いのに言えば連絡さ取れっけ』
おお、翡翠経由なら連絡が付くんだ。
了承の意を確認したので、これでこっちからの連絡手段を確認完了。あとは‥。
『‥おめぇさ、怖くねぇのが?』
「‥‥‥何が?」
‥‥どっかでみたな、こんなやりとり。
『犬狼族に関わった上に、俺達にも関わっでんだ。‥怖くねぇのが?』
あ、ヘクサとクラフに初めて逢ったときのやりとりだわ。
つうと、怖がるのがこちらの正しい対応なんだろうか。
「‥‥今更悲鳴上げて、恐怖におののく私を見たいの? ならホラーか火曜サスペンス並みの展開にすれば悲鳴上げて、おののく自信あるわよ。心霊系も気絶するほど苦手だけど、血みどろなスプラッタな展開するならちゃんと言ってよね。私そういうの駄目だから」
‥‥‥。なに、その反応。カパーんって口開けて、凝視したままびくつくって、どーいう反応よ?
「‥あーもぅ、いい? ヘクサにも言ったけど、あんた達は私に対して傷付けたいもしくは傷つけられたいって願ってる訳じゃないでしょ? つうか、私はそんな願望ないから」
動物愛護主義ではないし、博愛精神なんて無いけど、"自分やられて嫌なことをするな"ってのは常識だと思う。
‥‥‥つうか、人語を使いコミュニケーションの取れる生き物を、初対面でいきなり傷付ける事が出来るほど、器用な人間じゃない。
そりゃここ一ヶ月ほど、やたらと鳥さんを見かけたりすることは多かったけど、殺意がわく程じゃないし、悪意も感じない。
『‥‥おんし、かわっちょるな』
「悪かったわねえ、変わり者んで(怒)」
『‥‥おめぇさで、よがった』
「‥はっ倒して欲しいなら遠慮なく申し出て下さって‥」
‥‥はい? コレ、どうしたらいいんでしょうか。
二匹のその行動に対して、私が出来たのは、近寄ってその背をさするのがやっと。
ポロポロと涙を流す二匹は、変わり者と呼んだ私の手を嫌がるでもなく大人しくされるがまま声も上げずに‥、受け入れてくれた。
「‥‥今は誰も見てないし、内緒でこぼしちゃえばいいんじゃない?」
泣いている小動物にゃあ勝てませんて。
小さな声をこらえて泣く姿に、彼らもヘクサと同じような事情があるのだろうと思う。
"感情を、心を、理解してもらえる事"
私も共感して貰えると嬉しく思うけど、もしかして彼らはその機会が少ないのかもしれない。
…*…
そして、なし崩し的に“まうあ探し”を確約してしまった事に気がつくのは、まだ少し先の事になる。
本編中のミステリーで浮かんだのは色々ありました。
キャラクターから役者さんまで多種多様。
推理=ミステリーと予測したのは単純すぎましたね〜、反省。
本編に出てきた作品が特にお気にではなく、最近みた夢に出てきたお方なんですよ。
例えば
・金田一耕助さん
・明智小五郎さん
・江戸川コナンさん
・大泉洋さん
・(アンフェア主演キャスト)さん
・(trick主演キャスト)さん
・(和希知人ご一同様)
しかも何故かこの濃い方々で会社をしてんですよ。
また野際さんと大泉さんが会議で揉めてねぇ、と金田一さんが愚痴をこぼしたり。
江戸川さんが夏樹マリさんと企画してイベントしてたりとか。
疲れてるんだろなぁ〜。って実感してました。
あり得なさすぎだって(泣)