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シクウノソラニ  作者: 津村の婆ァ
19/22

#017:名前と契約

おまたせです。今回はヒロインこと(ハルカ)視点で参ります。


Q.小雀がハルカに望んだことは何?



1.ヘクサとの縁を切る。

2.ご飯をねだる。

3.名前をねだる。

4.キスをねだる。






正解は本編で(笑)


 病室みたいに真っ白な部屋で気がついてから、緑茶色の雀は私から離れる事なく控えている。


 だけど決して私の身体に触れようとはしない。‥‥怖がられているのかな? 怖くないよと指でも出してみようかな。


 ヘクサは逆に離れることを怖れてるのか、私の身体から離れようとはしない。


 わざわざベットの上に乗り、自分の身体に寄りかからせようとする。そりゃあふもふもでお日様の匂いがする、ぬくぬくで良質の手触り毛布なんて目の前にあったらさ、その誘惑に逆らえます?


 人の姿じゃないけど好意をを全面に剥き出しで“ハグハグする?”ってすり寄ってくる特大サイズの毛布の誘惑を前に、私が勝てる訳ありません。勿論全力でハグって、ソッコーで堪能しますよ。衆目なんて寝ぼけで気にするやつなんていませんよ。


 その様を腕組んで見てるなんてクラフさん人が悪すぎるよ、何か突っ込んでよ、来るときのツッコミはどこ行ったのよ。ほんとにもぅ‥。とりあえず冷静になれ私。


「‥いい加減起き‥」

『起きなくていい、寝てろハルカ』

『まだ休まれた方がいいです。無理はいけません』

「世界の秩序とささやかな平和を守るためにも今は横になってろ」


 と、問答無用で否定します。起きてからずーっと。しかも行動を起こそうとすると、ヘクサが実力行使で押さえつけ、クラフまで加担する上に、雀までもが顔の前をホバリングしながらやめてと言う状態。くっそぉ!

ならせめて、此方をじーっと見続けるのは辞めようよお三方。も、居辛いったらないじゃないか、じゃないとこの年で拗ねるぞいじけるぞぐれてやる〜。


「‥子供じゃないのに‥」


『いいから今日は休んでおけ。あんな目に遭ったんだ。暫くは身体がまともに動かなくても不思議じゃない』


『無理をしたら倒れますよ。自覚がなくとも今は休まれた方が良いですよ』


 心配しているのはその言葉の響きからも判る。うん、判るけどね

『説明が出来るだけの情報が少ないからそのまま俺達と待て』

と、ろくな説明もなく時間だけが過ぎている現状はいつまで続くのかいい加減答えてほしいのよ。


 解説お願い○上さぁぁん、と(のたま)っても判るわけもなく、渡された白いカップに入ったお茶を啜りながら待つ時間はほんとにもぅ苦痛だったよ。




     …*…




 漸く変化が訪れたのは一時間半くらいたってから、一人の女性が入室してからだ。


 優しそうな“本物の長身美人な女性”が入室した途端、クラフが動いた。


「お待たせ。漸く判ったわよ、ついでに残りも片付けるからね」


「お疲れさん、出たのかアレで?」


「ええ、ついでに此方を渡しておいて。お詫びにもならないでしょうけど、規制受けるよりも良いと思うわ」


 と、何やら手渡していた。


「ヘクサも魔力で破壊しないでくれてありがとう。お陰で解析が早かったわ」


『‥ハルカを傷つけたくなかっただけだ』


「おやっさんが褒めてたわよ、被害が少ないって。それからねクラフは彼女に付いて。暫くはそれが業務になるから」


「構わないが相手は?」


「今はハッキリしないわね、情報的な対処は任せるわ。報告だけはお願いね」


 うわ、なんか会社の橋本さんみたいな仕切り方をするなぁ。うん、頼りになりそう。


 それから二、三言葉を交わすとクラフさんは部屋を出てしまい、彼女は私に向かっていきなり謝罪をした。何で?


「先ずは貴女に謝らないといけないわね、手違いとはいえあんな目に遭わせて本当にごめんなさい」


 此処の職員だと名乗る彼女はラグザさんと云う既婚女性で、クラフさんの同僚らしい。


「えと、つまりあの検査自体が“手違い”で、この精霊まで出てきちゃう位の不測の事態だったというわけですか?」


「まぁ、本音をぶっちゃけて言うとそうね」


 えーと、ニッコリ笑いながら新たな温かいお茶を手渡してくれたラグザさんは、中間報告と言って私に起こったことを教えてくれた。



 気を失った私が助け出されてから1シアム後、即ち40分後に届いた検査式と許可証で、私に使われた式が違うことが確定したそうだ。更にそれを組み込んだ筈の釜‥げふんげふん。ゼオさんも昨夜から遺跡の調査に付きっきりだそうで、此方には来ていないそう。


 私に使われた式も只の検査でなく、錯乱した猛獣や死亡した異種生命体に使われる代物らしく、ヘクサが拒否した検査よりも酷い内容だったらしい。気絶で済んで良かったと云われてぞっとした。



 因みに今この部屋にはラグザさんと私とヘクサと小雀がいます。うん、何となくだけどいずらいよね、空気がね。


「えと、いくつか確認したいんですが」


「はい。何でしょうか?」


 ラグザさんも美人だからね、本来は遠くからじっくり鑑賞すべきなんだろうけど、本物の綺麗なお姉さんだから、近くても大丈夫だろう。


「私はまた、検査を受けなきゃいけないんですか」


 正直言えばあの苦しいのも怖いもできれば受けたくはない。


「私の見解でいえば必要はないと思うわ。気絶した貴女をここに運んだクラフが、バイタルチェック用に付けたリストバンドを通じてみる限りだけどね」


「‥バイタルチェックって、いつの間に‥」


 そう言えばあの服じゃなくなってる。身体も綺麗になってるし、クラフさんの家を出た時の服になってる。


「運び込まれた後で私が着替えさせてもらったの。風邪ひくからって」


「あ、ありがとうございます。お手数お掛けしました、重くて大変だったでしょ」


 美人さんに裸を見られたよりも、気絶してる人間を着替えさせる方が大変だって思ったから出た謝罪に、ラグザさんは一瞬ぽかんとした、次の瞬間。


「プッ、あははははははははは‥」


「‥は?」


 破顔一笑、涙まで浮かべて大笑いした。


「やだもう、貴女殺されかける程の目に遭わされて、どうして謝るのよ。しかも魔獸に精霊まで纏わりつかれてるのよ? 平然としちゃって、普通なら怖がってもおかしくないのに」


 ああ、彼女の言わんとしてることが判った。けど、それは杞憂なんだけど。


「ラグザさんは心配してくれたんですね。私がこの世界を怖がってないかって」


 多分、全く違う世界からきた私は、いきなり死にかけるような目に遭った事で、ヘクサやクラフさんを含めた世界を嫌なものとして認識してしまわないかと心配してくれた訳だ。


「クラフさんやラグさんにも言いましたけどね、魔獸ってよりもヘクサはヘクサなんですよ。この雀の姿の精霊クンも、クラフさんも、ラグザさんもおんなじ。そりゃ悪い事したらごめんなさい、嬉しかったらありがとう、謝罪も感謝も自然に出てくる気持ちだから良いと思う。それに言ったじゃないですか。手違いでこんな目に遭わせてゴメンナサイって」


 謝ってくれたラグザさんの言葉は確かに聞いた。


「だから良いと思う。あとはこれを企んだ人を見つけ出して、まずふんじばってからたこ殴りしてから事情を吐かせて‥、それから考えれば良いんじゃないかな?」


 気がつくと雀クンもヘクサも私を見ていた。でも、何故かその視線はさっきみたいにいたたまれないようなものでなく、どことなくあったかい感じがした。


「‥貴女で良かった」


「へ」


 ラグザさんの言葉に逆に不安になる。なにがいいわけ!?


「精霊を呼び出し、魔獸さえも従わせたのが貴女みたいな人なら、安心していいと思うわ。少なくとも私はそう判断します」


「従わせるって‥、ただ懐かれてるだけですよ」


「懐くねぇ、けどヘクサがそこまで独占して懐く人なんて見たことないわ」


―――そこまで? そんなに普段は愛想が無いの?


『ハルカは俺を俺と見る。だから対等でありたい』

「うひゃっ! ‥耳をなめるなっていってるでしょ」


 そしたら、今度は耳朶から耳の裏側までをねろ〜って舐めやがったぁぁぁっ。


「ヘクサァッ」

『対等なら従うもない。それに、漸く逢えた伴侶だ。囲ってなにが悪い?』


「誰が伴侶よ、私は懐くのは構わないけど嫌がることはしないでって言ったわよね」


「あらぁ、もう求婚中なの?」


『そうだ。だからこの件は関わるからな』


「仕方ないわね、状況報告はするから」


 ってか、もうやだ。なにこれどんな罰ゲームよ。


『‥‥ハルカ様』


 なに、こそこそと話しかけるの?雀クン。


『‥名を、頂けますか?』


「名? 呼び名の事? そう言えば聞いてなかったね」


 私は彼の名前を聞くつもりだった。なんて呼んでいいか分からなかったから、ただそれだけだった。


『ハルカ様なら、なんと呼んで下さいますか?』


「え、つけていいの?」


『はい、是非に』


 本当に私は知らなかったのだ。


「うん‥と、なまえでしょ、ん。なら」


 名前を与える事がどういう意味があるのか


『‥ハルカ? 何を‥』


「雀クンは“翡翠(ひすい)”でどうかな?」


『ひすい‥』


「綺麗な緑色の石なんだけど‥‥」

『まさか名を与えたのか!』

「え?」


「うん。そー‥」



 雀くんの身体が変わってゆく、緑の若葉のような燐光を放ちながら大きく、そして人型に。って、何でぇ?


『名を与えるって事は従えるってことだ。つまりあいつはハルカを主と定めた契約を受け付けたって事だ』


「ふ‥、えぇぇっ!」


 ちょっ、ちょっちまてぇ〜!


「へ、ヘクサの時にはそんなんなかったじゃない!」


『仮契約に名前は要らないんだ。本契約はそれぞれが持つ力の使用譲渡が関わるからな。場合によっては命に関わるんた』


『そう。だけど逆に言えば使わなければ関わらずに済むんです』


 それは幼子の声じゃなくなった、しっとりと落ち着いた男性の声。


『貴女を主として認識いたします』


 水泳選手のようにしなやかな身体に、何故か昔の中国の良家の子息が着るような服を着た、金髪に褐色の肌色をしたインド系美形青年が、ペリドット色した瞳に微笑みを浮かべて此方を見ていた。


「‥‥‥‥雀クン?」


『はい、翡翠です。主』


 知らなかったとはいえ、認識が甘かったと悔やんでももう遅い。


『やっと、逢えました。私の主、この名を持って全身全霊で貴女にお仕えいたします』


 そう言って私に近寄ると、私の髪をひとすくいして、(うやうや)しく口づけた。


「‥‥‥‥‥びっ、」

『‥ハルカ?』


『‥主、どう‥』


 突然の美形出現に、なにこの腐女子が萌える展開わぁぁぁっ。もーやだ、どこの萌ゲーよ。訴えてやるっ!

 つうか美形は離れて鑑賞するべきよ、決して近くで触られるものじゃないわっ!


「責任者出て来やがれぇぇぇぇぇっ!!」


―――何なの、この美形出現率はっ!! イヤミなのコレ。平凡な顔って無いわけ!


 叫んだ私はヘクサに抱きついてわんわんと泣き出した。


 平々凡々な顔をした私の精神的安らぎは、ふもっふモフモフなヘクサしかねぇのかいっっ、ふえーん。




『(‥‥責任者って‥‥)』

『(‥何故泣かれるんですか‥)』

「‥‥‥‥‥‥は、ハルカ?」


 端から見れば狼に泣きつく幼女をどうしていいか判らずに硬直する周囲という図が、出来上がっていた。


 ラグザを呼びに来たクラフが入室するまで続いたその珍光景は、後にゼオから奇跡の悪夢として語られる事になったのだが、その場に居合わせた人物達にとっては正にどうでもいい事だった。


名前でしたぁ。




だいぶわからなくて混乱する方々もいらっしゃるとは思うんですが、何せ描くのが頭の悪い和希ですので、説明をかねてまた解説をさせますね。多分する羽目になるのはあの人とあの人とあの人とあの人と‥‥‥、(ハルカ)ちゃんと一緒にお待ちくださいませ(^^;;





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