#015:最悪の一日は‥
予告のクリスマスに間に合わず、こんな時間になってしまいました。しかも今回短めでほぼモノローグのみ。
ホントにすみませんm(_ _;)m
ここ三ヶ月間に寄せられた聖霊の目撃情報と、突如として消えたロワレゲイ。同時期にパルステラとフィンジアに現れた原因不明な障壁の発生は正直お手上げの状態だった。
未だに原因も判らずに続く怪現象は人々の精神的な不安を徐々に煽るようで、確かに直接的な害があるわけではないがチョコチョコと現れる聖霊達に驚かされた者は多い。中にはマフノイエにある研究機関に苦情をぶつけてくる者もいるぐらいだ。
そんな中で発生したティタロージェ遺跡での古術文字の出現は新たな手掛かりだと喜ぶべきだろう。神話じみた伝説、いや、伝承にしか存在しない遺失技術そのもの。だが同時に先の見えない現状に投げられた大きな一石の波紋に不安もあるのは否めない。
探求心を擽られる状態だといえるが、正直手がかりが少なすぎる現状下でどでかい謎に挑むには時間も体力も知識も人手も足りなすぎた。
そう、足りないのである。
結論からいえば調査した遺跡にあったのは極々僅かな出現痕跡と思われる三種類の余波と膨大な土砂に埋め尽くされた跡地だけ。そのデータも粗方採取し終えたので、一帯を一時封鎖して観測用端末を設置して今日中にも撤収する予定だ。
幸いな事に出現から消失するまでのおおよその映像を、居合わせたクラフィスの機転で入手出来たが、現状の解析結果は"解析不能"。
詳しくはゼノオーグ=フェンテ氏の解析式に答えが出されるだろうが、発生メカニズムからその使用目的まで全てが謎のままだ。
こうなっては居合わせた彼等からの報告書とゼノオーグの解析を待つしかない。
だがそれも何時になるかは定かではない。何故なら彼―――ゼノオーグ=フェンテの興味は今、件の黒髪の彼女―――ハルカ=カンナリと言ったか―――にあるようだから。
映像の中で彼女は古術文字の気配を纏ってその姿を出現するなり、あの魔獸が子供のように飛びついたのだ。
あんな幼い子供の何処にそんな強さがあるのだろうか、魔獸に怯える事なく自然に立ち振る舞う姿は最早驚愕であるが、更に仮契約も結んだと聞いた時には有り得ないと否定しか浮かばなかった。既にクラフィスとの仮契約をしているヘクサとなれば普通は成り立たない筈とされている無茶ぶりである。
だが興味深いのはそれだけではない。
そもそも古術文字は意識あるもじとされている遺失技術。それによって異世界から何か―――生きた人間を運びこんだ事例など聞いたこともない。
―――彼女は一体何物か?
考えれば考えるほど足りない情報と事実は、湧き起こる好奇心と欲望と共にゼノオーグの思考を支配し、彼を暴走させていったのだろう。
彼は自身の好奇心を満たす為ならば対象の安全への配慮などスッポリ抜け落ちる難癖がある。その辺りが周囲に変人と一線を引かせているのだが、本人はそれに全く気がついていないからたちが悪い。それでも人材は一級品なのだから頭が痛い。
いつもならその狂気の矛先が誰かに向けられても、周囲が策を講じ回避出来るが、今回だけはタイミングが悪すぎた。
遺跡調査に繰り出した人員は、予定出張と予定休暇と申請休暇を出した者以外のほぼ全員だったのだ。研究施設を空にするわけにも行かないので後方支援という名目で私が残っていたが、流石に独りというわけにはいかず、他部署からの応援要員として数名が派遣されていた。
其処へ情報解析と伝承からの照らし合わせの為に戻ったゼノオーグと、彼の興味対象者がバッティングした現状は不運という以外にないだろう。
更に応援要員が入所後の経験浅い新人だった為、ゼノオーグの悪癖とも言える暴走を知らずに手を貸してしまったのは彼女にとって不幸以外の何物でもない。
本来準備だけでも半日はかかる調査用の解析式は八式までなら一般にでも資格を持つものなら組めるのだが、それ以上は中央行政区の第六分室でしか組めないため、使用には許可を得て、必要な式を組み込んだ記憶媒体を創って貰うのが普通なのだが、どうやらゼノオーグは自身のオリジナルで同等の色を組み上げて使用したらしい。
私もクラフィスからの報告で慌てて駆けつけた時には、半ば破壊された状況下で倒れ伏す応援要員と、荒れ狂う魔力を放出し対峙する二体の獸。そして検査用カプセル内で死人のような姿の幼女と必死に声を掛けるクラフィスの姿に事態の状況を"最悪だ"と知った。
こうして私、ラグザ=スティーユ最悪の一日は始まった。
一応ラグザさんは常識人なんです。はい。
ゼノオーグは変態性は無いんですが変人性はあります。しかも良識も乏しき所が‥‥。
年末の駆け込み投稿はこれが限界みたいです。
ほんとにスミマセン。
できれば年明けにup出来るように頑張ります。
受験生の苦しみを今また味わうなんて、自分ってマゾ?
と、ケーキの無いXmasを送る和希でした(泣)
皆様、よいお年をお迎えください。