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シクウノソラニ  作者: 津村の婆ァ
16/22

#014:平穏に過ぎた時間

Q.今回は誰からの視点で描いているでしょうか?



1.ヘクサ

2.小雀

3.クラフィス




正解は本編で(笑)


※更新遅れてすみません。お気に入り登録してくださった方。本気でありがとうございます。


 出勤前に届いた仮想精霊の連絡内容から、おおよその調査状態は分かっていた。


 "昨日遺跡に現れた古術文字はごくわずかな痕跡を残し、遺跡ごと消滅した。"


 ゼオに手渡した記録媒体を除けば、残されたのは痕跡を体験した者―――俺たちだけということになるワケだ。


 さすがに三日の徹夜は厳しかったが、24シアム強の睡眠を取った後なのでまだマシだ。


 問題があるとしたらそれは後ろを歩く彼等、いや、彼女だろう。


『ハルカは帰るのか?』


「え、何の話だっけ?」


 どうやらぼうっとして聞いてなかったらしい、ヘクサも言葉足らずな所があるからな。


「検査が終わったら、家に帰るかと訊いたんだ。身分証を発行するまで一日かかるし、送って貰えば良いだろ?」


 今日は兄貴が発行した仮証明証で来れたが、無いと色々と不便を強いられる。


「それはそうだけど。ね、検査って何するの」


「魔力値と身体能力値、知能指数を計測して、個人の固有マーカーとする為のものだ。人によっては耐えられないから」


「耐えらんない?」


 そう。使う術式の組み合わせによってたまに気分が悪くなったりはするが、ヘクサは魔獸な事もあって6式検査が18式になったから大変だったっけ。


『俺は嫌いだがな』


 ああ、あれを組んだゼオがその後ヘクサに逆襲されたんだよな。確かに幾つかの式は重犯罪者の尋問に使われる代物だったから、ヘクサの反応は当然だろうと思う。


「ヘクサの魔力値なら要らないだろ?」


 逆襲の時に放った魔力は凄まじく、施設を一つ壊滅させたんだよな。兄貴は解体費用が浮いたと喜んだけど、正直間近で見た人間としては、正直アレはくらいたくない。


『‥‥ハルカ? そっちじゃないぞ』


 ヘクサは甲斐甲斐しくハルカに付き添い案内する。こうして見るとほのぼのとしたいい光景だが、中身は魔獸と異世界人という微妙な組み合わせだ。


「あ、ありがとう‥」


『ハルカは慣れない場所だろ。俺が付き添ってるから安心しろ?』


「‥付き添うというより捕獲だな‥」


 見た目はこんなに平和そうなんだがな。これでも俺より年上‥‥なんだよな。


『ハルカになら囚われるのもいいな』


「そーいう気は無いから。懐くのは構わないし、嫌がる事はお互いにやめようね」


 真顔で口説く魔獸と、真っ赤になって否定する幼女。まともなのは俺だけって、はぁ。


『なら捕らえて囲ってしまおうか? 俺しかいない所へ』


「やめてって言ってるの、聞こえてる?」


 うん、からかい入ってるな。珍しく笑いながらじゃれてるし。


『辞めたら俺だけのものになるのか?』

「んなっ!!」


 適当なところで辞めさせるか。まぁゼオの所に行かなきゃならないってだけでも俺も気が滅入るしな。


『仮初めの契約ではなく、俺だけのハルカになるなら‥、俺の全てをハルカにやるよ』


 本気とからかいがいりまじりの顔して‥ま、確かにハルカの反応はからかいがいがあるからなぁ。


「生憎私は自分が持てる責任しか持ちたくないから結構です。つうか色気出すの禁止してっ!!」


 あーあ、耳まで真っ赤にして。そんな事言っても説得力無いだろうが?


『余裕無いから、辞めない』


 あ、タガ外れた。理性がふっ跳びかけてるかな? ハルカもそんな声出して煽るんじゃ‥あーあ。そんな顔じゃ逆効果だろ?


「ヘクサ。そこまでにしとけ」


 とりあえずは止めておく。けど俺もからかいたい。


「白昼堂々と往来で押し倒すより、人目を避けた室内で雰囲気高めてしたほうが‥」

「おかしいでしょ、何を薦めてるのよ。モラルを考えなさいよ!」


 間髪入れず返る返事に、心が楽しいとざわめき出す。


『‥雰囲気が足りなかったか』

「違うでしょ!! つうか私嫌がっているよね?」


 必死になる言い訳も照れを含めてもからかいたくなる。こんな妹なら欲しかったな〜、兄貴よりも。


「心底ではなかったよな」

「突っ込むのソコ!?」


『それとも本気が足りなかったか?』

「悩む方向と現実を見直してください。本気で嫌いになるからね」


 あ、泣きそうだ。さて悪ふざけもやめとくか。


「悪いな。コレも検査の一環なんだ」


 まあ、そう言っておけば変に気を回すこともあるまい。ま、からかって愉しかったことは否定しない。


 この会話すら記録されているなんて思わないだろうがな。


『俺は本気だけどな』


「おかげでハルカがどういう人間か分かった気がする」


 よほどじゃない限り危険人物と認定はされないだろう。第一室副室長と魔獸のお墨付きだ。これで疑う奴が居たなら俺も睨ませてもらうかな。


「それはよう御座いましたわねっ、クラフさんの人の悪さもよくわかりましたよ!」


 そんなに顔を赤くして膨れても、年上に見えねえって。もう妹で良いだろ。



 そんなじゃれ合いをしながら着いた研究所は、あまりスタッフがいなかった。まぁ、大半が昨夜からの調査に駆り出され、現場からの結果を解析にかけるぐらいしか戻らないのだろうから、当然と言えば当然か。


「ゼオ、来たぞ」


「クラフちゃぁん、待ってたわぁぁん!!」


 声をかけるなりガバッと抱きついてきたヤツを、ガシィと手で顔面を掴んで回避した。


「はしゃぐなら独りでやれ、俺を巻き込むなと何回言えばわかる」


 ゼオは感情が高ぶると誰彼構わず抱きつく癖があるし、下手をするとキスまでする。本当に困った癖だが優秀な人材なのは認めるから厄介である。


「だってだってぇ、これすっごいじゃない。ああもうみたかったわぁ〜」


 興奮してるのは昨日の映像のせいだろう。正直二度とあんな体験はごめん被りたい俺としては下手に同意して余計な事をしたくなかった。


「現存したなんて信じらんないわよ、あの色からみて、何らかの加護があったわよね。あそこってクロフィアの乙女が祀られてる神殿でしょ? 他にあったかしらねぇ」


 話半分に聞き流して、ハルカを見ると、俺に抱きついているゼオを見て固まっている。異世界でも異様な光景なんだろう。


「あぁんもうっ、聴きたいことも有るから、じっくりつきあってよね?」


「話ならしてやるからとにかく離れろ。そういう行為は俺じゃなく恋人同士でやれ」


「クラフちゃぁん、つめたいわねぇ。ま、いいわ」


 ヤレヤレ、ようやく離れたか。


 まわりにいるのは、俺も知らない顔だな。


「じゃ、こっちで検査‥、あら、もしかしてこの子?」


 ヤツの視界にハルカが映ったらしい。気がついたハルカは顔を青くしてヘクサの後ろに隠れてしまった。


「昨日の救助者だ。粗方の事情は先程兄貴立ち会いの上で、とっくに済んでる。ヘクサの契約者だから手を出すなよ」


 一応釘は刺しておくか。ヘクサなら問答無用でなぎ倒すだろうから。


「ぇえっ、じゃあクラフちゃんとの契約はどうなったのよ」


「上書き無効化だな。だが、彼女を保護対象とする限りは変わらない」


 これだけ愉しい奴を手放す気になれない。それだけで今は充分だろう。


「へぇ、じゃあ第三室扱いの賓客クラスなの? ますます興味深いわぁ」


 ゼオはそれだけで分かったみたいだが、敢えて俺は言わないでおく。


「検査は俺たち三人だけか?」


「ええ。彼女は総合チェックも受けてもらうつもりよ、何もなくても一応ね」


 ハルカはゼオに別室へと案内された。総合か‥‥、ヘクサは顔をしかめているが無体な事はしないだろうと思う。


 仮とはいえハルカは魔獸の契約者だと聞いたのだ。何かあったらヘクサが黙っちゃいない。


「さっさと済ませるか。ヘクサ、いくぞ」


 名残惜しそうにハルカが消えたドアを見つめていたが、総合チェックなら検査服に着替えねばならない。着替えは席を外すと約束させられたヘクサとしては不本意だが了承せざるをえない訳だ。


「俺たちのはすぐ終わる。さっさと終わらせてから付き添えばいいだろうが」


「‥‥‥そうだな」


 状態確認程度の検査なら、ここの機材ですぐに済む。着衣のままで出来るのも利点で、大概の公共機関や大手企業のメディカルルームにも設置が義務づけられている代物だ。



 程なくして終わった検査は特に変わったこともなく"異常なし"とされた。


「クラフさんお疲れさまです。あとは報告書と申請書を提出してくださいね」


「ああ、ラウザもお疲れさま。報告書は少しかかるよ。映像、見たんだろ?」


 ラウザは此処のアシストを仕事にしている同僚だ。


 部署は違うが仕事が早く人当たりもいいと評判の人妻で、教職者の旦那との同伴出勤はもはや朝の風物詩となっている。


「ええ。あれでよく無事でいられたわね」


「結界となった護符とヘクサがいなけりゃ、間違いなくあの映像も俺も現存してないよ」


 掛け値なしの現実だ。その護符の開発者に彼女も含まれてる。


「効果はあったわけね、なるほど」


 確かな効果はあっても使い方一つ間違えれば間に合わなかったこともあり得るのだが、その辺は報告書にでも記載しておこう。


『クラフ。先に行く』


 ヘクサも検査が終わったようで、さっさと部屋を出て行く。


「あらあら、御主人様置いてけぼりね」


「今の主は俺じゃないからな。不安なんだよ」


 ヘクサの態度に思い当たる節があるのか、彼女は苦笑していう。


「まるでうちの旦那みたいね」


「‥なる程」


 言い得て妙だが、確かに彼女の旦那はあんな感じだ。


「ああそうだ、ラウザに頼んでいいか?」


 俺は今朝感じた懸案を彼女に依頼した。


 2つ返事で引き受けてくれた彼女に礼をいい、ヘクサの後を追うことにした。




 この時ハルカが何の説明も無いままに総合チェックを―――しかも異常精神(言語障害)者対応用でされていたなんて、全く知る由もなかった。


 異常事態だと知ったのは、ドアをあけた瞬間に立ち込める2体の存在と検査カプセル内で変わり果てたハルカと立ち込める魔力のぶつかり合いを見た時だった。


A.クラフィス でした。



次回はハルカが気絶していた間の話を予定してます。


へたれヘクサ、格好いいところあるのかしらん?


何気にクラフィス、ツンデレキャラになりつつある現実に、当初の予定を無視して進んでます。止ーマーレー!(笑)

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