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シクウノソラニ  作者: 津村の婆ァ
12/22

#010:ああ、勘違い

Q.最初ハルカは初対面のラグラスをどう思っていた?



1.お兄さん

2.奥さん

3.お姉さん




答えは本編で(笑)


※2010/11/10修正


―――正直、頭の容積一杯です。


 あれから、暗くなると物騒だからと、ヘクサに連れられて町に向かいましたが、私の歩みが(彼曰わく)遅すぎて夜が明けると云われ、再びその背に乗せられて移動する羽目に。


 先程とは違い早足で軽やかに駆け抜ける程度なので、新たに痛みが増えることなく、町の郊外にある一軒家の前で降ろされました。



「此処は?」


 そこはゆったりと茂る植物植物に囲まれた立派な邸宅で、薄暗がりにもかかわらずハッキリと判る白い外壁が印象的だったの。私のアパートよりは大きいわね。


 さらにその外周を、そのままラッピングするかのように白いポールがぐるっとその周囲を囲んでいる様は、どこぞの展示物かと突っ込みたいぐらい綺麗ですよ。


『クラフの自宅。俺もここで寝泊まりしている』


「へ? 自宅って‥、このお屋敷にヘクサとクラフィスさんで?」


 うっわゼータくぅ。あの髭面、実はお坊ちゃまかセレブ?


『後一人いる。クラフは多分寝てるから聞きたいことはそいつに聞けばいい』


 へえ、二人と一匹かぁ‥‥て、なにそれ。後一人って、ヤダあの髭面既婚者なわけ〜!! 奥さんどんな人なのぉ!?


 色々驚いてポカンとしている私を置いて、ヘクサはさっさと中にはいってしまう。


「‥なんだか、なぁ‥‥」


『何か言ったか?』


 ううん、と答えてヘクサの後に続く。


 よし、こうなったらあの無愛想なクラフィスさんがどんな人を口説いたのか‥‥うん、楽しみだ。




 流石に疲れた頭はどこかネジが抜けていたのかもしれない。


 だって一言もヘクサは『奥さん』なんて言ってない。


 多分つがいだ何だと騒ぎまくった辺りからおかしかったのよ。うん、きっとそうだ。



 だから勘違いしちゃったのよ。


 玄関覗いた途端に見えた顔が、長身の細身の美人な男の人であることに「?」となったの。しかもにこって微笑むものだから、私の頭の中で整った事は。


 二人暮らし

=夫婦(←多分つがい発言。)

=クラフィスさんの妻

=美形の男性

=びーえる(腐女子の好物)


 ひえぇぇぇぇえええっ!?


 そ、そりゃ個人の嗜好をとやかく言う気はないけどさぁ。

 そうきますか? や、ほらだって何の予備知識も無しにいきなり押し掛けられても迷惑ってあるじゃない。ましてや新婚さんの愛の巣(←思い込み)にお邪魔するほど無粋な事したくないわよ。つうかクラフィスさんて面食いな訳? すごい美人さんだものねぇ、あ。身長随分ある、羨まし‥、じゃなくて。おいとました方が良いわよね、この場合。


「おかえり、ヘクサ。お客さんが居るんだって?」


『遅くなった、クラフはもう寝てるのか?』


 なんなの、この夫婦チックな妙な会話ァァって、脳内がおかしいよ私っ!


「ああ、僕が帰宅したときには既にね。‥貴方がお客さまかな。はじめまして。クラフから話は聞いてるよ、どうぞ」


 うわぁん、美形は真っ正面から拝むモンじゃない。遠くからちらっと鑑賞するべきだよ、絶対そう。


 とりあえず背筋伸ばして、身体ごと向き直り手を前に添えて立つ。

 事務とはいえ来客ぐらい対応できなきゃなりません。って職業癖よねぇ。


「はじめまして、ハルカ=カンナリと言います。あの‥夜分に押し掛けてすみません」


 ほんとにすみません。すぐにお暇しますから気にしないで下さいィ。


「寒かったでしょう、ここで話し込むより中で座りませんか? ちょうど夕飯が出来たところですし」


 クラフィスさんと同色の髪を一つに纏め、鳶色の瞳が綺麗でも、私出刃亀したくありませんからぁぁぁ。


「え、あの‥お邪魔じゃ‥」

『ハルカ、そうしよう』


 ヘクサぁぁ、あんた私に新婚家庭の(←口説いようですがつがい発言からの誤解)レポーターでもしろって言う訳? 馬に蹴られたくなんてないわよ、馬鹿ぁっ!!


 しかしヘクサは私に構う事なく中へと押しやる。かっ、覚悟しなきゃだめ? やめてぇ〜。


「あの‥じゃあ、お言葉に甘えて‥お邪魔します」


 普通の新婚家庭ですら私は伺ったことはない。それなのにいきなり同性結婚のご家庭に訪問なんてどんだけレベル高いわけ? って不審者のごとくホントにドキマキしながら玄関をくぐる事になったけど、正直ビクビクしまくりですよ。


「はいどうぞ。そんなにかしこまらなくていいよ、先ずはご飯にしよう。おなかが空いてるとろくな話が出来ないからね」


 特に僕はその典型だし。と告げた顔見た途端、お腹が空いていたんだと自覚したのよ。


 ああ、じゃあご飯食べたらお暇しよう。うんそれがいい。


 確かに腹が減っては戦は出来ないわよね、なんか眠いのもあるけどさ。


 第一旦那ことクラフィスさんは寝てるからイチャイチャしている訳ないし、ご飯位ならすぐ済むだろうし。うん、新婚家庭をちらと見たらそれでいいよねっ。




     …*…




「‥うまっ」


 はっきり言ってご飯はとても美味しかった。パンらしきものとか、具だくさんなシチューとか、彩りきれいなサラダみたいなのとか何だか久々に誰かと食卓を囲んだ。


「口に合いますか?」


「ホントに美味しいですよ。コレ」


『まぁクラフよりは上手いからな』


「ありがとう、ヘクサ。ハルカさんも遠慮しないで食べて下さいね」


 その後、差し障りなく会話しながら食事を進めていた私達だが、彼の一言で私はフリーズした。         

「そういえばまだ名乗ってなかったね、僕はラグラス デイレード。クラフの兄貴になります」


 お兄さん?


 ええっ、奥さんじゃなくて兄さんなの!?


 世間一般にいうところの身内であり、男性の兄弟の上を示すアレですかぁぁ? まさか禁断の兄弟ネタなんて‥‥、あれ?


 ‥‥そう言えば、ヘクサも一人いるって言ったけど、奥さんなんて言ってはいない‥ね。うわぁぁ、勘違い勘違い‥‥ハズカシイ。


 けど気になる、どうみても髭面より目の前の美形のほうが年若く見える。


「お兄さん‥なんですか。なんかもっと若く見えますね」


 双子にしては似てないし、あ。でも、目許は似てるかなぁ?


「おや? 嬉しいけどそれはどういう意味かな」


「いえ、見たままです。最初に逢ったときクラフィスさん、目をこう‥覆うようなのをつけていましたし。凄い髭面だったんで、てっきり年上のおじさんだと思ったんですよ」


「おやおや、それはいただけないね」


 クスクス笑う様まで綺麗なんて、それは卑怯でしょ。


「なのに話してみたら実は私より年下だって聞いてびっくりしちゃって、お互いに驚いたんですよ」


 そう言うと笑うのを止めてこちらをびっくりしたように見つめる。


「へぇ、ハルカさんはクラフよりいくつ上なんですか?」


 あれ、そこまでは聞いてないのかな‥。


「見えないでしょうが、3つ上の27です。えと、ラグラスさんはおいくつですか?」


「ラグで良いですよ。僕は28になります、確かに驚きますが、納得しますね」


「納得‥ですか?」


 何だか珍しい言われかたしてない。


「ええ。言葉が悪いですが、見た目と中身が合っていない感じがするんですよ」


 スッゴく褒められた気がしないけど悪くもない。なんだろ、この微妙な感じ。


「私も好きでチビでいる訳じゃないです、努力はしましたよ」


 これでもカルシウムとってランニングしたりとか、鉄棒で懸垂運動したりとか、学生時代はバレーボールとかやったのよ。運動苦手な私がよ?


 でもがんばった結果はご覧の通りよ、悪かったわね。微笑ましく見ないでよ。長身の美形にされたらへこむわよ。


「すみません。そういうつもりではなかったんですが」


 中途半端に笑いながらいうなぁっ、何かムカつくっ!


『ラグ、ハルカをあまりからかうな』


「おや、ヘクサが口を出すのは珍しいですね」


『ハルカは俺のつがいだ。当たり前だろう』


 こら、違うでしょバカ狼っ!!


「ヘクサっ、だからつがいじゃなくて仮契約でって言ったじゃない」


『いずれなるなら変わらない』


「いずれも何も有りません。初対面で求婚されて頷くような躾はされてないし、狼と結婚する気は有りません」


 神成家でそんなことしたら、父さんにぶっ飛ばされますって。


『俺は狼じゃなく魔獸だから問題ない』


 んもぅ、だから種族も考えも違えばいろいろ問題がでてくるのよっ。少しは察して!


「懐くのは構わないけど、お嫁さんはちゃんと選びなさい。そんな初対面の私なんていい加減じゃなくて、もっと綺麗で可愛い狼が居ないの?」


 こら、ぷいなんてそっぽ向くな。


「まぁ魔獸は数が少なくなったから、そうそう同胞には遭わないね。出会い事態が少ないんだよ」


「え、そうなの」


 うわ、嫁さん欲しくても出逢いが少なきゃ無理ってもんじゃない。


『最近は特に見かけないな。だが魔獸は人とつがいになることも珍しくないから問題ない』


 何だかマンガチックな話だね。ヘクサの場合、ロマンスが不足気味かもしれない。


「確かにそうだね。だけど初対面で口説くなんてヘクサも情熱的だね」


 やっぱりアレ口説かれていたんだ。


『ハルカは特別だ。このままなら精獸にも狙われる』


「彼女と仮契約したのはその為かい」


 そんなことも言ってたな。


『それもあるが、俺自身が離したくないのが一番だな』


「‥なっ!!」


―――やめて、本気で恥ずかしい。


『ラグ、まうあが絡めば精獸も魔獸もどうなるか判るな?』


「まぁ間違いなく騒ぎになるね」


 どう騒ぎになるのか想像つかないけど、まうあってそもそも何。って質問したら怒るかな。


『ハルカはまうあの気配がある。正直、俺ですら抑えられなかった』


 あれれ、なんか方向が変わってきました?


『明日には判る事だが、稼動した古術文字の確認で、ゼオが遺跡に詰めているから、クラフも忙しくなるだろう‥』


「なっ、はぁあっ!???」


 そこで何で焦るの? ってかヤバい。眠いや。


「いま、古術文字って言った?」


『ああ』


「彼女がそれに関わってるの?」


『ああ、ほぼど真ん中で』


「‥、そりゃ連れ帰って正解だ。遺跡は今頃祭だね」



『前夜祭で死にかけたがな』


「その辺、詳しく教えて貰える?」


『明日になれば、分かると言わなかったか?』


「あ、言ったねぇ‥」


『それにハルカも疲れただろうから休ませたい。眠いだろ?』


 ううっ、船漕ぎそう。でもまだまだ‥。


「あ、うん。‥大丈夫だ」

『無理せず今は休め、明日になれば色々聞かなきゃならないから』


「その方がいいね。うん、悪かった」





 ラグラスさんはそのまま部屋へと案内してくれた―――迄は覚えてる。


 でも、それ以降全く記憶がない。多分寝落ちしたんだろうけどさ、目が覚めていきなり知らない部屋っていうのに吃驚しましたよ。


 それから、ああそっか。昨日は泊まらせて貰っちゃったんだ。


 納得してから改めて部屋を見る。こじんまりとしているけど、全体の色調がブラウントーンで纏められていて、なんか雑誌とかホテルにある部屋みたいだ。


 窓から差し込む光は強くて、夜が明けていることを示している。


 うん、起きよ‥‥あれ‥? なんか重くな‥


「‥‥」

『‥‥』


 何で此処にあんたがいるわけ?


つがい発言による思い込みはオソロシヤ(笑)



一応ディレード兄弟はノンケです。兄貴は好きになれば相手を問わないところがあるので、微妙かもしれませんね。



この話の誕生したキッカケは活動報告にありますので興味がある方はご覧くださいね。

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