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「死神の落とし物 ~食い本のグリード~」  作者: nekorovin2501


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第2話 女神の贈り物と光の囁き

交通事故の衝撃は、瞬間の記憶しか残っていなかった。

カイトは目を覚ますと、柔らかい光に包まれた空間にいた。

周囲は白くぼやけ、足元は雲のようにふわふわしている。

「ここは……異世界か?」

カイトは即座に状況を把握した。

現代の知識で、転生ものの小説やゲームを思い浮かべる。

彼は元々、会社員として生きていたが、性格はずる賢く、目的のためなら手段を選ばない男だった。

事故の記憶を振り払い、辺りを見回す。

前方に、美しい女性の幻影が現れた。

白いドレスを纏い、長い金髪が輝き、穏やかな笑みを浮かべている。

女神だ。

「ようこそ、異世界へ、カイト。

君は選ばれし転生者。

この世界の魔王を倒す使命を負うわ。」

カイトは冷静に微笑んだ。

「へえ、勇者扱いか。面白そうだな。

で、チート能力は? ないと、俺みたいな普通の人間じゃ無理だろ。」

女神は優しく手を差し出す。

「これを授けましょう。光の魔導書――ブックと言ったら出てくるわ。

この世界ではブックは日常の道具だけど、これは特別。

未来を予知し、書き込んで現実を変えられる。

でも……気をつけてね。死神の落とし物と言われる禁断のものよ。」

カイトは本を受け取り、革装丁の表紙に触れた。

その瞬間、頭の中に冷たい声が流れ込んだ。

視界が一瞬暗くなり、ページが勝手に開いて光る。

「……ようこそ、俺の新しい所有者。

お前の……美味そうだ……だが、まだ早い。

まずはカードを食わせろ。俺を強くしてくれ。」

カイトは眉をひそめた。

声は低く抑えめで、頭蓋骨の内側から響くように感じられた。

「本の……意思? 女神の贈り物なのに、なんかヤバいな。」

本は静かに閉じ、ページに光の文字が浮かぶ。

「今日の出来事: 森の出口に安全に到着。」

カイトは試しに書く。

「森のモンスターを回避。」

文字が輝き、現実が少し歪むように道が開けた。

女神の幻影は微笑み、消えていく。

「がんばってね、カイト。」

カイトは森を抜け、近くの村に着いた。

村は賑やかで、住民たちが「ブック!」と唱えて魔導書を呼び出し、カードを収めて日常の魔法を使っていた。

火を灯す、物を運ぶ、簡単な回復。

カードは使用すると消滅するから、皆が常に新しいカードを求めているようだ。

カイトは興味を引かれ、村のギルドへ向かった。

ギルドは活気にあふれ、冒険者たちがカードを自慢し合っていた。

「この火球カード、ダンジョンでゲットしたぜ!」

「俺のは回復カードだ。争奪戦で勝ち取ったよ。」

カイトは登録を済ませ、初クエストを受ける。

「森のゴブリン討伐。報酬はカード一枚。」

パーティーを組むために、剣士の少女・エルと魔法使いの少年・トムと出会う。

エルは明るく、「一緒にがんばりましょう!」と笑う。

トムは内気だが、「カード集めが好きなんです……」とつぶやく。

森でゴブリンと遭遇。

本の予知が文字を浮かべる。

「左から攻撃。」

カイトは回避し、書き込みで「ゴブリンの動きが止まる。」

ゴブリンが倒れ、カード入手。

「炎のカード!」

本の声が、抑えめに響く。

「……カード……食わせろ……」

カイトは本を睨む。

「黙れ。お前は俺の道具だ。」

声は消えた。

だが、予知の文字が、ほんの少しぼやけたように見えたのは、気のせいか。

クエストを終え、ギルドに戻るカイト。

日常の冒険が始まったばかりだった。

負け知らずの魔王の噂が、遠くから聞こえてくる中、カイトは本のページをめくり、未来を覗き見る。

すべてが完璧に思えた。

――今は、まだ。

(つづく)

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