聖女
ああ、どうしよう。
どうやってこの大男をまこう。
もうそろそろいい加減にしないと逃げられなくなっちゃう。
でもこの大男離れてもすぐ私のことを見つけてくるし、戻ってくる。
一体どんな目をしているの?
どんな足をしているの?
こいつこそ悪魔じゃないの?
あんな辺境の地で看守なんてやっている田舎者が。
まあ、とにかく都に行かないと。
何とか人に紛れて逃げないと。
ホントに私って可哀想。
何て不幸なの、誰よりも美しく生まれたばっかりに。
聖女の身代わりで幽閉されるなんて。
本物の聖女なんて私と違って器量の冴えない足の短いどうしようもない娘だった。
聖女感出すためだけに台所の下働きだった私が選ばれた。
すぐに無罪放免となって出てこれる、それが終わったら生涯悪いようにはしないって大奥様に言われ、あれよあれよと悪名高い世界一の塔へ。
けれど、結局どうせ家の飲んだくれジジイの懐に入って全部泡となって消えたんだわ。
そうに決まってる。
あのクソ聖女。クソ親父。
もう最悪。
この大男に得意のもてなし笑顔で結婚を餌に脱獄させてもらったとこまでは良かったけど、どこまで歩いても田舎、田舎、田舎、都が遠い。
でもこの大男あの塔を素手で破壊できるくらいだから本当に人間じゃないのかも。
とんでもないのひっかけちゃった。
でもあのヒョロガリモヤシじゃ逃げられなかっただろうし、少しの間でも一緒に過ごすのなら顔のいい方がいいし。
ああ、もう、早く都についてよぅ。
ああ、口調移っちゃった。
都に着いたら彼を置き去りにして、何とか職にありつくの。
お裁縫だってお料理だってできるし、見た目だって最高なんだし、大丈夫絶対に上手くいく。
早くお金を持っている素敵な旦那様を見つけてまともに暮したい。
そのために歩き続けなくちゃ。
ああ、もううんざりですよぅ。
まあ、優しいし、顔も悪くないし、私のこと大好きみたいだからまあ当分我慢ですかねぇ。