第四十四話:ナユタの強さ
進化聖剣を携えたナユタは、地面を蹴って幻魔の群れへと飛び込んでいく。それを見ていた撤退していく兵士達の最後尾にいた男達が叫んだ。
「ここで精神武器を展開しただと!?」
「だが無茶だ! 自殺行為にも程がある!」
実際その通りだ。精神武器が使えているとはいえ、相手はあまりに多い。
予想通りナユタは直ぐに幻魔達に囲まれ、突撃される。一瞬にして空中に球体が出来上がる程の圧倒的な幻魔の数に押しつぶされたナユタを見て、兵士達は苦い表情を浮かべた。
「くそ! 言わんこっちゃねぇ!」
「あんな若い子が…」
「ん?…いや待て! 何か様子が変だ!」
「あ?」
その瞬間、刹那の煌めきが走る。
一瞬にして空中で幻魔達に押しつぶされたかと思われたナユタは、刹那の輝きと共に、自らの周囲を埋めつくしていた幻魔達を切り飛ばした。一瞬にして数十の幻魔を討ち取った彼女は、肩で荒く息をしながら声を発する。
「やっぱりそうでしたか。遺跡で弱体化するのは我々だけではないんですね」
彼女の言葉は、作戦会議で示されたイオの仮説の正しさを証明していた。
「魔素が十分に供給されない状況では、幻魔の行動も鈍る!」
そう言って彼女は、先程よりもゆっくりになった幻魔の攻撃をかわして剣を突き立てる。攻撃を受けた幻魔は一瞬の時を経て霧散した。
「…綺麗な剣だな」
その無駄のない完璧な動きに、イオの口から感嘆の声が零れる。それほどまでに美しい動きで、彼女がこの戦いの中で成長していることが容易に理解できた。幼い頃から鍛え上げた剣技が実戦で磨かれ、より完成度の高い技へと深化している。
凄まじい成長速度だ。彼女ほど速く成長した者を、イオは最前線の地でも見たことがない。人類最高峰の英傑達が集う最前線にすら存在しない、比類なき圧倒的な才能。嫉妬すら能わないその力と、その土台に積み重ねられた血の滲む様な研鑽の末にある技に、イオはただただ目を奪われた。
しかし、戦闘のために最適化された脳はすぐさま現状を認識する。
幻魔が弱体化しているとはいえ、余りに数が多い。ナユタはすぐに取り囲まれ、幻魔達の厳しい攻撃にさらされた。
「くっ…」
一撃、また一撃と攻撃を喰らいながらも、それに倍する速度で幻魔を倒していくナユタは、幻魔の殴打によって生じた腹部の痛みに顔を顰めながらも、辺り一帯を切り裂いて吠える。
「……あの時の痛みに比べたら、この程度、どうってことありません!」
再び剣を構えた彼女は、超高速で駆けだした。凄まじい覇気を纏った彼女の背中を見据えながら、イオはやれやれと呟く。
「…まさかこんなに無鉄砲だとはな。まぁ約束だからな。しっかり付き合ってやるよ!」
イオは剣を手に爆発的な加速で飛び出す。そして進化聖剣を振るうナユタに追随した。




