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滅尽のイオ~災厄の力と鍵の少女たち〜  作者: るなーるべると
王国邂逅編:第五章『予想外の強敵』
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第三十九話:撤退戦

 負傷兵を回収し終えたイオ達は、撤退方法の確認を手早く済ませると、早急にリスティア大森林からの撤退を開始した。


 未だ意識の戻らないフッキを左腕に抱えながら、身体強化と自己加速術式を併用したイオは、リスティア大森林を抜けて平原を走る。背後には同じく負傷兵を連れた兵士達、そして最後尾では彼らを守るために、唯一負傷兵を抱えていないナユタが護衛を務めている。兵士自身も万全の体制では無いのだ。負傷者を抱えながら戦うなど器用な真似はできない。そのため守りの要はナユタである。


 しばらく走って森を出ると、一行は副官リンカーンが隊列を率いて幻魔を討伐している場面に出くわした。彼は険しい視線を走らせて、襲い来る何体もの幻魔を一人で倒し切る。いつもは優しい顔立ちをした好青年だが、今ばかりは彼にも焦りの色が見えた。

 長槍の精神武器ガイズを一度大きく振り払ったリンカーンは、同じく幻魔の討伐を行なっている部下達に向かってよく通る声を張り上げた。


「幻魔はできる限りここで倒せ! しばらくしたらリスティア大森林まで戻るぞ!」

「「「了解です!」」」


 部下に指示を出して、リンカーンは苦虫を噛み潰したような表情で呟く。


「……あれだけの轟音と衝撃波、森で何かが起きたのは明らかだ。早めにフッキさんと合流しなければ…」


 戦場全体を空から見ているような、独特の空気感を纏っていたリンカーンは一度深呼吸をすると、腰に下げていた皮袋を手に取って、中に入っている水を煽った。イオたちより一足早くその場に到着したナユタが声をかける。


「リンカーンさん! ご無事で何よりです」

「ん?」


 一瞬虚をつかれた様な表情を見せたリンカーンだったが、ナユタの姿を見止めると、すぐに何時もの柔らかい笑みを浮かべた。


「おお! ナユタ君! 無事でよかった!」

「はいっ、何とか! しかし…」


 ナユタは言葉を濁すと、背後から合流してきたイオ達に目を向けてきた。リンカーンもそれにつられて目を向けてから、静かに唸った。

 一次作戦が失敗したということは、ボロボロになった兵士と、イオに担がれたフッキの姿から理解したようだ。


「そうか。あれだけいた選抜隊も、これだけを除いて全滅したということか」

「その通りです」

「…先程の轟音と閃光。森の中で一体何があったんだい?」

「それは…」


 ナユタも現状としては理解できているのだろうが、あまりに甚大な被害に言葉を選ぼうとしている。少し彼女には荷が重いかもしれないと判断したイオは、すぐに二人に合流することを決めた。


「…あの卵から強力な幻魔が孵りました。俺らはその際に攻撃を受けた、というわけです」


 リンカーンの元へ、フッキを背負ったイオが赴く。

 イオに背負われたフッキを見やって、リンカーンは事の重大さを改めて認識したようだった。


「なるほど、そうだったのか。よく戻ってきてくれたね」


 小さく頭を下げたリンカーンは、すぐに真剣な顔に戻って続けた。


「…我々が取るべき行動についてだけど、とにかく拠点への撤退を最優先としよう。負傷者の搬送は部下にも手伝わせるから、ナユタ君には引き続き護衛をお願いしたい」

「分かりました」


 ナユタはしっかりと返事をし、イオもなんとか頷いて見せる。

 リンカーンは感謝する様に目を伏せると、背後にいた部下達に指示を出した。


「一次作戦は失敗した! これより二次作戦に移行する! ライル、ガイナ!」

「「はっ」」

「左右の各部隊長に二次作戦への移行を伝え、その後拠点にて合流せよ」

「「了解!」」


 リンカーンは部下たちに撤退の指示を出してから、再びイオ達に向き直った。


「では、我々も行動を開始しようか」


 走り出したリンカーンに続いて、隊は一斉に動き出す。

 こうして開戦からわずか数十分にして、甚大な被害を受けた中央軍の撤退戦が始まった。

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