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44:伝説のモンスター

偶然の出来事でアマミさんが床下から見つけた、一冊の本

今、テラスちゃんがそれを読んでいる


「うーん…テラスっちわかるか?うち古文は苦手で…」

「これは、魔力文明黎明期くらいの文章だね

 授業でも軽くしかやらなかったトコだから、無理も無いよ」

テラスちゃんはペラペラと、すごい速さでページをめくっていく

…私も多少は読めたりするんだけど、やっぱり本職は違うなぁ


「しかし、昔の本なのに、よく残ってましたよね」

「古代文明末期は、『物を凄く長い時間保存できる魔法』が編み出されて

 色々な物に使われてたらしいで」

「あの脱出の時に使った『エレベーター』とかにも、かかってたと思うよ」

「なるほど…確かに、昔のマジックアイテムは、錆びたりしないですもんね」

モンスターを倒すのには役不足だけど、そういう便利な魔法がいっぱいある古代文明

すたれてしまったのが実に惜しい


「えーと…まあ、ぱっと見た感じだけど、要点は掴めたかな?」

「え?!」

「も、もう…?ちょっと早すぎません?!」

「天才だからね!」

えっへんポーズでそう言うテラスちゃん

これは天才ですわぁ…


「細かいところはまた後で調べるとして…要約して話すよ」

テラスちゃんが本の内容を、先生が生徒に教えるように、語りだす


「本のタイトルは…『アナナス島滞在録』

 書かれた時代は、古代文明が終わりを迎え、人類にスキルが浸透しはじめた時期」


『新興国イーストエレクトに巨大なモンスターが出現

 モンスターに追い詰められたエレクトの民は、偶然見つけたこの島に避難しに来た

 しかし、かなりの人数の避難だったために、食料が早晩に尽き果てる』

イーストエレクトは私たちの住んでる国の名前

その国が始まったばかりの話となると…数百年くらい前の話になる


『島の植物は豊富だったが、動物や魚は少なく、すぐに狩り尽くしてしまった

 お肉成分が足りなかった』


『そこで、この島で大量に採れるサトウキビとパイナップルから、お肉成分が取れるように

 神から教わったばかりのスキルの力で、品種改良をしよう

 …という話になった』


『実際の改造結果は…なんか手足の生えた謎のパイナップル生物になってしまう

 元々採れていたサトウキビ等は駆逐され、パイナップルがはびこる島になってしまった』


『一応、そいつらで食いつなぐことはできたが、パイナップルだけじゃ飽きる

 いつの間にか地元のモンスターも消失していたので

 我々はこの地を後にし、帰還することにしたのだった』


「ぐ…ぐだぐだな話やな…」

「まあ、人間そんなもんだよね」

お話として語られるのは成功したものばかりだけど、実際は失敗の方が多い

…それはそれとして…


「パイナップル生物によって駆逐されたサトウキビ…

 それたぶん、アマミさんが言ってた幻のサトウキビじゃないですか?」

「えー?!」

目を見開いて、床を両手で叩くアマミさん


「そんな…すでに壊滅しとったから幻やったんか……」

「よしよし」

「およよよよ」

アマミさんは、テラスちゃんの膝枕で泣き崩れる

オーバーアクションすぎるし、たぶんネタなんだろうなー…


「で、これ書いた人が…ルーンって名前で……

 …魔法学校の初代校長先生っぽいんだよね」

「そうなん?」

「個人的な感想だけど…魔法学校の行事に、この島のモンスター退治があるのは

 彼が微妙に責任感じてたんじゃないかな…変なモンスター作ってしまったっていう」

「ほー…流石テラスっち、書いた人の気持ちまで読み取っとる…

 …国語も120点や!」

「えへへー」

褒められて素直に喜ぶテラスちゃん


「しかし、初代校長の名前なんてよう覚えとったな」

「校庭に銅像立ってるじゃん、あの人だよ」

「あー!あのチョビ髭かぁ!」

「そうそう」

「テラスっちが、魔法的当て試験の時に間違えて壊したやつ!」

「そ、その話はやめてよぉ…!」

なんだかよくわからない話で盛り上がってる二人

…ちょっとだけくやしい気分になる

学校かぁ…


盛り上がってる二人を尻目に、自分でも、ちょっとその本を覗いてみる

私もおとうさんたちに習ったから、そこそこ読めるはず…


「…あれ?」

最後のページ…折りたたまれたメモが挟んである

テラスちゃんは気づかなかったのかな…?

メモを本から取り、広げてみる

…そこに書かれていたのは……


「あ…あああああああ…!」

なんていうこと…

この本に書かれていた巨大モンスターって……


「な、なんや?!」

「どうしたのお姉ちゃん?!」

「こ、これ…!」

「!?」

広げたメモに描かれていたモンスター…それはあの日の巨大蛇

ラグナロクが相打ちで、どうにか倒したあのモンスターは

…昔からこの地に出現していた…!


「待て…!何か文字も書かれてるで!」


『ニーズヘッグ』


『巨大な蛇型のモンスター

 固い鱗で覆われており、通常の攻撃はまるで歯が立たない

 数年をかけて出現した国を荒らしまわり、寿命によって死亡する

 現在、イーストエレクトと呼ばれる地で、数百年毎に一度出現するようだ

 ごく少数の生き残った者が、伝説として語り継いでいる

 子供を残している場合があり、その場合、数年後に再び出現する』


「…伝説級の化け物やないか…ラグナロクはこんなんによう勝ったな…」

「それは素直にすごいと思うけど…問題は……」


『子供を残している場合があり、その場合、数年後に再び出現する』


「………!」

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