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42:髭親父と娘のベッド

「…お父さん、最近楽しそうだね」

「そうか?」

我が家の親子水入らずの時間

娘はベッドから半身を起こして、リンゴを剥いてくれている

一時期は、痛みで起きているのも大変だったが

それが楽になると、ちょっとしたことがやりたくなるらしい


「うん…お父さんが冒険者始める前は、わたしのせいでお仕事無理をしてって…

 気にしてたんだけど…」

「薬がな…買うと高いから頑張って働いていたが

 自分で採取して作れるとなると、ほぼタダみたいなもんだからな」

…そのかわり、そこそこの危険はあるのだが

気を付けてさえいれば、俺の逃げ足でなんとでもなる


「採取だけじゃない、新天地へ冒険に行くのも楽しくてな」

戦闘力はそれほど高くはならなかったが、俺の足は偵察にはもってこいだった

パーティの先を進み、危険を事前に把握して帰ってくる

俺の情報を得てパーティは作戦を立てる

強いだけが冒険者の全てではないと、理解できた


「ふふっ…ウズメさんに感謝だね」

娘は笑いながら、ウサギの形に切ったリンゴを手渡してくれる


「…ああ、俺みたいな素人が冒険者になって

 ラグナロクなんて大きなギルドに入るとか、夢にも思わなかった」

そのリンゴを頬張り、笑顔で返す

仕事で走り回ってた頃には考えられなかった、穏やかな時間



…結局、娘は長生きできず、二年後には亡くなってしまう

けれど、その二年間…幸せな家族の時間を過ごせた事に、感謝している




その娘が使っていたベッドに、今、俺は王族を寝かしている

流石に放ってはおけなかった

眠っている彼女の憔悴した顔は、症状がひどい時の娘のようだった

この顔は…まずいな……


本人は威勢のいいことを言っていたが、こいつの心は硝子のように脆かった

…どうすればよかった?


やっとギルドから解放されたウズメを連れ戻す?

しかし、やっと自分の道を歩めるようになったウズメを

王家のごたごたに、危険を承知で巻き込むのか?


真実を話さなければよかった?

…話さなくてもいずれギルドは崩壊し、知らないまま詰む事になる


リーダーを無理やりにでも引き留めれば?

…あいつは周りを自分の引き立て役にしか思ってねぇ…

引き留めたところで、王族に手厳しく当たり、さらにボロボロにされるだけだろう


考えをめぐらすが、答えは出ない


「…ここ、は……?」

そうこう考えているうちに、王族が目を覚ましたようだ


「…起きたか。ここは俺の娘の部屋だ」

「娘さん…いらしたのですね……」

「…今はもういないがな」

「……すみません…」

消え入りそうな声で謝る王族

…そんな殊勝な奴じゃなかったろう、お前は……


「医者に診てもらったが、疲労が溜まってたんだろうとさ

 今は何も考えず、しばらく休め」

こいつはこいつで、今のギルドを立て直そうと頑張っていた

けれど、運営の事など何も知らない王族に、それは無理だった

…いや、そんな事、王族どころかウズメ以外の誰にも無理だろう…


「ユピテル…様は……?」

「ゴールドウエスト国の『シースター』って大規模ギルドに誘われて行った」

しかし、唐突にこんな誘いが来るものだろうか…

これも王族の姉、ヘレが一枚噛んでいる気がする


「…行か、なきゃ……」

「バ…バカなことを言うな!今動いたら死んじまうぞ!

 しばらく休んで、動いて大丈夫になったら連れてってやるから…」

無理をして動こうとする王族

あいつに会っても、もはやどうにもならないのに…


「ホントですの…?」

「ああ、約束は守る」

「……じゃあ、休みますわ……」

なんとか王族を宥めて、ベッドに寝かしつける

ともかく、もう少し元気になるまで休めないと

このままでは、王族はとどめを刺されてショック死してしまう…




…だが、俺の思惑を超えて、事態は動き出してしまうのだった


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