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25/55

25:プリンセスとギルドの家計簿

続きは8時からの予定です

それから…

小娘の抜けた穴は、徐々に広がっていきましたわ


「あ、そうそう…おばちゃん、今月限りでやめさせてもらうわね」

「…は?」

朝一番、朝食をとっていた所に、食堂の料理人から突然の一言


「何を言ってるんですの?!ラグナロクで働けることが名誉なのではなくて?!」

「そんなもん感じた事も無いよ」

国一番のギルドに、なんて不遜な…


「ウズメちゃんに頼みこまれて、こんな大所帯の食事を賄ってたんだよ」

あの小娘、人材採用までやってましたの?!


「あんたんとこのメイドとやらは、高い食材ばっかり買ってきてさ

 こんなんで食費抑えた料理なんか作れる訳ないでしょ?」

「それをなんとかするのが、料理人なのではなくて?」

「へぇ…王宮の料理人はすごいんだね

 まあ、おばちゃんが辞めた後に、立派な料理人を雇えばいいよ」

ああ言えばこう言う…


「か、勝手にやめるなど、許されると思ってますの?!」

「だから、契約が終わる今月末までって言ってるじゃないの」

小娘の結んだ契約内容なんて知りませんわよ!


「大丈夫、おばちゃんにはわからないけど

 ラグナロクで働ける名誉ってやつがあるんでしょ?料理人なんてすぐに集まるわよ」

そうわたくしに言い捨てて、料理人は厨房の奥に、再びひっこみましたわ

ぐぬぬ…

混乱してる時期にやめるなどと、迷惑極まりないですわ

今度雇う奴は、勝手な事をしないように、契約でガチガチに縛ってやりますわ



「ただいま戻りました」

消耗品を買いに行っていたメイドたちが帰ってきましたわ

正直、こんな雑用、他に任せたいのですけれど…

メイドたちがいないとわたくしが不便ですわ


「…?どうして何も買ってないのかしら?」

彼女らを見ても、手には何も持っていない

それに、やけに帰ってくるまでの時間も早い…


「…それが…値上げを要求されまして……」

「値上げ…?」

「は、はい、冒険に必要なロープ、マント、干し肉…

 その他消耗品も、すべて定価で買ってくれと…」

「え…ど、どういう事ですの?!」

「…それが…」

仕方なしに小娘の帳簿を見ていましたが、経費がかなりかかってるのが消耗品ですわ

それを値上げされてしまえば、会計が一気に赤字に…!


「元ラグナロクメンバーが、巨大蛇を倒して

 この地域を救ったことはご存じですよね?」

「…ええ」

「住民たちは大変に恩義を感じていまして

 そのお礼と言う形で、今まで原価ギリギリで購入できていた訳です」

「英雄に感謝の意を示す、下々の者として当然ですわね」

「…しかし、それは元ラグナロクメンバーの娘、ウズメに対してだけです」

また小娘…!?


「彼女が買い出しに来なかった時点で、安売りをする意味が無くなったのです」

「そんな…!我々もラグナロクの一員ですわよ?!」

「…流石に気づきだしたようです

 我々は、名声に乗っただけの集団だという事に」

「それの何が悪いんですの?!」

名ばかりの集団なんて、世に溢れてますわよ!

元ラグナロクのやつらの名声も、偶然手に入れただけでしょう?

折角、わたくしとユピテル様が有効活用してやろうってのに…!


「それならば、わたくしが直接行って

 王族として、今まで通りの取引を要求しますわ!」

「お、おやめください!」

「王家は巨大蛇の時に、何も対処ができませんでした」

「そんな要求をすれば、それこそ王家の威信がボロボロになります…!」

「反乱勢力まで生まれるやもしれません…!」

メイド二人が、行かせまいと必死にわたくしを諫める


「どうか、どうかお静まり下さい…」

こ、こら!物理的にしがみつくのはおやめなさい!


「しかし、ならどうすれば…!」

「経費を削っていくしかありません…今は我慢の時です」

小娘一人がいなくなっただけで…なぜこんなに……

ゴミスキルしか持たないクズなのに…!

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