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20:教会と冒険者登録

晴れ渡る空の下

私とテラスちゃんは、別荘近くの街にある教会に来ていた


椅子が並ぶ礼拝堂は結構な広さがあり

休日ならばかなりの人がお参りに来るだろう

今はおじいさんおばあさんが、まばらにいるだけだ

特に目に付くのは、鮮やかな色使いのステンドグラス

人類を救ったという、技術スキルの神様が描かれている


その礼拝堂を抜けると、もう一つの建物が見えてくる

先ほどよりは小さい、ミニ礼拝堂といった感じだが…

ここが冒険者にとって重要な場所なのだ


ミニ礼拝堂の中に入る私たち

そこでは、シスターさんがせっせと掃除をしていた


「いらっしゃい、教会へようこ…あら?この間の天才ちゃんじゃない」

妙にオトナの色気を感じさせる緑髪シスターさんは

こちらに気づき掃除の手を止め、テラスちゃんに声をかけた


「シスターお姉さんやはー」

「先週ぶりね。今日は何の御用かしら?」

「あの…実は」

私がシスターさんに、訪問の目的を話そうとした時


「ウズメお姉ちゃんと結婚しに来ました!」

テラスちゃんがトンデモなことを言い放った


「えっ?」

「て…テラスちゃん?!」

教会は結婚式を挙げるところ…でもあるけどぉ!


「健やかなるときも病めるときも幸せにします!」

「待って待って!ギルドに入っただけですよね?!」

「そう、同じ籍に入った…つまり結婚したって事!」

「そうはならないと思うんですけど?!」

「いいわね…お姉さんそういうの嫌いじゃないわよ」

「ちょっとー?!シスターさんー?!」

シスターさんも悪ノリして結婚話に乗っかってくる

テラスちゃんの知り合い、こんな人ばっかりなの?!


「そういう訳で、結婚式の予約をしたいんだけど…」

「うーん…予約にも頭金がいるから、今の天才ちゃんには無理ね」

「そっかー…」

露骨にがっくりするテラスちゃん

結婚…じょ、冗談だよね…?


「ほらほら、結婚資金を稼ぐためにも、登録をしなきゃでしょ?」

「そうだね!」

シスターさんは、テラスちゃんの言葉で大体の事情を察したようで

話を上手く戻してくれた


そう、私たちはこの教会に、冒険者登録をしに来たのだった


「まさか、天才ちゃんのギルドに人が来るとは思わなかったわ」

「えっへん」

私も、入ることになるとは思わなかったです


「えっと、ウズメさん…でしたっけ?教会は初めて?」

「あ、いえ…子供の頃に一度」

「じゃあ、冒険者カードはまだよね

 冒険者カードを作って、天才ちゃんと同じギルド所属

 同じパーティを組むって事でいいのかしら?」

「はい、お願いします」

教会で冒険者登録をして、冒険者カードを手に入れる

そうして初めて、冒険者として認められ、正式に仕事を受けられる


なぜ教会なのかというと…

冒険に必須な『スキル』の管理が、教会でしか行えないのだ

なら、その他の登録も、教会でできるようにすれば楽だろうという訳だ

教会では、冒険者登録、ギルド加入、パーティ編成、スキル管理が行える


大きな家付きギルドは、ミニ祭壇を立て神官さんに常駐してもらう事で

その機能を自力で備えてたりする

…神官さんの出張費高いから、かなりの大手しか無理だけど


シスターさんが、先ほど掃除していた机から、白いカードを取り出す

これは…


「これが、新人さん用の冒険者カードね

 名前と所属、持っている四大スキル、ユニークスキルが書かれるわ

 依頼者はこのスキルを見て、依頼に適正な冒険者かを判断するわけね」

夢にまで見た冒険者カード…!


「スキルっていうのは…」

「あ、前に別のギルドで雑用係をしていたので、大体わかります」

「そう?…でも、手順通り説明しなくちゃなのよね」

シスターさんは、めんどくさそうにため息をつく


「前に、お客さんにスキルの説明を省いて対応したら

 後から『話が違う』って文句言われてね

 初見のお客さんには必ずスキル説明をしろ!って上司に怒られちゃったの」

「あはは…」

「復習のつもりで聞いてね」

色っぽくウインクをするシスターさん

…この人、聖職者ってより飲み屋のウエイトレスさんっぽい…


なんて思った直後


「では、まず…スキルの成り立ちから」

礼拝堂に響く澄んだ声で、語り始める

その声は、息を飲むほどに綺麗で

そのギャップに、思わず参ってしまいそうになる

やっぱり聖職者なんだなぁ…


私とテラスちゃんはそっと椅子に座り、シスターさんの歌うような声を聞き入った

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