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17:勧誘の天才少女

「…ふぇ?」

意外な提案に、私の脳が追いつかず、へんな声を上げてしまう

私をギルドに入れたい、なんて……


「一人ギルドに、そんなに雑用は無いと思いますけど…」

「ちーがーうー!」

「じゃ、じゃあ何を…?」

「あたしはウズメお姉ちゃんと一緒に、冒険に行きたいの!」

…冒険…

確かに、その言葉には憧れもある、けど……


「い、いいんですか……その、私なんて

 ちょっとえっちなダンスが得意なだけの小娘ですよ…?」

「技術の話じゃないよ」

冒険に技術スキルは必要不可欠なもの、だけど…?


「お姉ちゃんは、命がけで私を助けてくれた

 それは、あたしが憧れてたラグナロクそのもの…」

彼女が、私の手を取る


「スキルよりも大切な何か」

彼女は私の手を動かし、私の手のひらを、私の胸に当てさせる


「お姉ちゃんの中に、本当のラグナロクは今もあるんだって…そう思ったんだよ」

そして…優しい顔で、そう語る


「……っ」

彼女の言葉に、涙がこぼれた


もういないと、諦めようとしていたラグナロクの魂は

助けられた人たちの中に

伝え聞き、憧れる人たちの中に

そして、私の中にあるんだと…教えてくれたのだ


「え…ま、まずい事言っちゃった?」

涙が止まらない

ぼろぼろと泣き続ける私に、心配したテラスちゃんが声をかける


「す、すみません…おとうさんたちの事を思い出しちゃって…」

「おとうさん、たち…って?」

「私、孤児で…昔のラグナロクの皆さんに育ててもらって…」

「…そっか……」

彼女は慰めるように…ただ静かに手を握って、私が泣き止むのを待っていてくれた


………

……


「昨日は二人で頑張って、地上に戻ってきたよね」

ようやく落ち着いた私に、テラスちゃんは少しづつ話しはじめる


「大変だったけどさ…ウズメお姉ちゃんがいてくれて、辛いけれど楽しかったんだ」

エレベーターを見つけて

お茶をしながら作戦を立てて

協力して巨大モンスターを倒して…


「脱出したあの時に見た星空は…たぶん一生忘れないと思う」

うん…あれは、本当に綺麗だった


「お姉ちゃんはどうだったかな…?

 お姉ちゃんは、あたしと冒険…行きたくないかな…?」


いつもおとうさん、おかあさんを見送っていた事を思い出す

…本当は、私も一緒に行きたかった

帰ってきたみんなの話はいつもわくわくして、冒険に行きたくて

けれどついて行きたいと言っても、誰も了解してはくれなかった


大事にしてくれているんだ、と無理やり自分を納得させた

冒険の才能が無いからしょうがない、と無理やり自分に言い聞かせた


…でも


「行きたい…」

半日ほどの、命がけの冒険を経て

それでもなお…


「行きたいです…一緒に冒険、行きたいです……!」

彼女となら、きっと楽しい旅になる…そう思えた


そっと差し出される彼女の右手

私はそれを両手で掴む


「よろしく…お願いします」

「うん、これから…よろしくね」

岩の扉をこじ開けて、陽の光の指す方へ

彼女に照らされて、私は冒険者としての第一歩を…


「ひゅーっ、テラスっちやるやん…!お姉さん口説き落としおった!」

その声ではっ、と気づく

…そういえば、アマミさんたちもいたんだった…!


「ちょ、ちょっとナンパみたいに言うのやめてよ?!」

そう文句をつけるテラスちゃんは、珍しく顔が赤かった


「いや、二人の空間の邪魔にならへんように

 ウチ頑張って気配消して見守ってたんやで…それぐらいええやん!」

「ナンパと言ってますが、口説き落としはリーダーに必要な素質でしょう

 恥じることはありませんぞ」

「お、執事もトイレから帰って来とったんやな!」

結構長い間話してたっぽい…自分では気づかなかったけど


「えへへ…口説き落とされちゃいました」

「お姉ちゃんまで?!」

こうして私は、照れ顔のかわいい天才少女と共に

冒険者としての第一歩を歩み始めたのだった


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