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11:プリンセスの帰還

「皆様、大変ですわ!」

「一緒に薬草取りに行っていたウズメ様が、洞窟に…」

「…洞窟に入ろうとして、入り口の落とし穴に落ちてしまわれました」

ラグナロクに戻ってきたわたくしとメイド二人は、打ち合わせ通りに台詞を喋りました


「なんだって?!」

ギルドハウスの一階、酒場でくつろいでいたメンバーは、驚きの声をあげましたわ


「姫たちが向かったところの近く…って事は、『古代への道』か?」

「…ええ」

下調べの時に知ったのですけれど…あの洞窟は深く潜るほど

古代のマジックアイテムが掘れるので、そう呼ばれているようですわね


「なんてこった…あの深層に通じる穴へ落ちて、帰ってきた奴はいないぞ…!」

渋めで体格のいい髭親父冒険者が、そう語る

もちろん、知っているから落としたのですわ


そこに…


「…おい」

全身を黒い装備で固めた黒髪の冒険者が、わたくしにつっかかってきましたわ

彼はユピテル様の親友で…ロキと名乗っている男、ですわ


「何で帰ってきた」

「え?な、何でと言われましても…??」

チッ…めんどくさいのに絡まれましたわ……


「近くに街があっただろう?救援要請なら、そちらの方が早かったはずだ」

「そんな事言われましても…」

素人のお姫様なのでわからなかった…風を装う

普通の男なら、これで誤魔化せるのだけれど……


「それに…三人いたのだろう?

 …連絡に一人が来るのはまあいい

 残り二人は、救助者の確認、声かけ、食料の補充

 長いロープを買ってきて、救助できないか試す…できる事は沢山あったはずだ」

そんな事して、助かったらどうしますの?!

あーもう、本当コイツめんどくさいですわ


「落ち着け…彼女達は素人なんだ」

そこに、ユピテル様のフォローが入る

彼は金髪碧眼の美形の剣士であり、冒険者として数々の成果を上げてきた、言わば完璧超人

ふふ…婚約したかいがありますわ


「お前のフィアンセなのだろう?

 ゆくゆくはギルドリーダーの妻になるなら、これくらい把握すべきだ」

…なんかコイツ、男の癖にお局的な雰囲気があるんですわよね…苦手ですわ……


「もし仮に、落ちたのがそこの姫だとして

 そこのメイド二人は同じように、姫を放っておいて帰ってくるのか?」

「ロキ!」

ユピテル様が、ネチネチを止めてくださいましたわ

さすがイケメンは違いますわね


「今はそれよりも…彼女をどうするかだ」

「…そうだな、まだ助かる可能性だって、わずかにある」

無いと思いますわよ?

ちゃーんと間に合わないように、調整して帰ってきましたもの

ユピテル様なら、可能性はゼロではないと思いますが…


「あいつ助けに行ったら、いくらくれるんだ姫サマ」

薄汚れた緑髪、常にいやらしい笑みを浮かべている、背筋の曲がった痩せ気味の男

そいつがわたくしに向かって、金を出せのジェスチャーをしながら話しかけてきましたわ


「は?」

「王族の落ち度だよなぁ?わざわざ指名して連れてったのに事故に合わせるなんて」

うえ…コイツもめんどくさいタイプですわね


「国から金出してくれよな、たっぷりと」

「金、金、金…嫌らしいですわね

 人としてもう少し礼儀という物を考えなさったら?

 …そんなもの、出る訳ないでしょう?」

「なんでぇ、金は必要だろうがよぉ!ケッ、金出さねえなら行かねえよ」

…なんて浅ましい……

まあ、下民なんてこんなもんですわね

やはり、我ら上に立つ王族が導かねばなりませんわ


そんな下民の中でも、ユピテル様は例外

国で1・2を争う程、武技に精通、数々のモンスターを蹴散らし

ラグナロクのリーダーまで上り詰めた、上昇志向の強いイケメン

彼には貴族の血が混じっているのでは無いかとの噂もあり

わたくしのフィアンセに相応しい男ですわ


…と、思っていたのですが…

あんな女に引っかかったのは、大きなマイナスポイントですわね

おかげでこんな手間をかける事になったのですし…

もっとユピテル様には王族の魅力を、わからせなければいけませんわね

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