4/5

かぐや姫をとりもどせ！

竹ババア「姫ぇぇぇ、行かないでくれぇぇぇ」

かぐや姫「……」

　姫が行ってしまううううううううううう

　月に連れて行かれてしまううううううう

　幼い頃から育てたのにッ！

　笑って筋トレしたのにッ！

「ママ大好き」「ママと結婚する」って言ってたのにッ！

　5人の貴公子のしつこい求婚ラッシュを蹴散らした時は「ママすごいすごい」って抱きついてくれたのにッ！

　帝のマッチョ軍団と乱闘した時も、絆パワーで撃退したのにッ！

　天女の羽衣を着せられた途端、姫の目が虚無に染まったのだッ！

　無垢な笑顔が奪われたのだッ！

竹ババア「ぬおおお、返せッ、ワシの娘を返せッ！」

　天女があまりに美少女(マッチョ)すぎて、帝の兵は戦意喪失。ならばワシが一人で戦うまでよ！

　天女(マッチョ)は空飛ぶ雲にいる。ならばジャンプして殴りかかるまでよぉ

かぐや姫「穢らわしい」

>>>腹パン！

竹ババア「ぐっふぉぉぉ」

　姫ぇ、どうしてー

　腹筋がメリメリするぅ

かぐや姫「穢らわしいババアね。

　二度と触れないでちょうだい。フンッ！」

　と、筋肉むきむき

　顔面キックを叩き込まれる。

竹ババア「ふぎょお」

　　ドゴォ　メキメキメキ

　地面へ一直線　クレーター

　姫ぇ……

　ビクンビクン

　そのまま意識を失った

◯病棟

竹ババア「姫ェェェ！」

　姫がいないッ！

　うおおおおおおお！

帝「ハッハァ〜！　目が覚めたようだなッ！」

竹ババア「帝ッ！？」

帝「このパックを見よ！　かぐや姫が残した霊薬

【不老不死のプロテイン】だッ！」

竹ババア「ワシには無理じゃ。もう、疲れた」

　姫に殴られたよぉ〜

　痛いよぉ〜

帝「そうか。なら富士山に、捨てて来る」

竹ババア「もったいないッ！　飲むッ！」

　げしっ！

　シャカシャカ

　ぐびぐび

竹ババア「うおおおおおおお！！！！！

　パワーが、みなぎってきたァァァー！」

　たぎる、たぎるぞぉ！

　若かりし頃のパワーがッ！

帝「すさまじい……ん、なになに、注意点……

『筋トレをサボると効果が切れでしぬ』」

竹ババア「要はサボらなければいいんじゃな」

帝「ああ。頑張れよッ！」

　よぉーし、姫救出作戦、スタートじゃ！

▼西暦2021年▼

竹ババア「しまったァ！　筋トレしすぎて

　時代が進んぢまったァーッ！」

　だが姫救出には関係ないッ！

　気を取り直して、いざ月の都！

▼

◯STAGE１：NASUへの道

　青い空、流れる雲、どこまでも続く黒い道。

　遥か遠方にスペースシャトル！

　そのロケットで、月まで行けるに違いない！

　車道を走る竹ババア！！

パトカー「止まれ、そこのババア、止まらんと撃つぞ」

竹ババア「姫のためェェェェェ」

　　パトカーをぶっ飛ばせ、ぽーん！

　　　むきむき

　BOSS：NASUの戦闘員

戦闘員「止まれババア」

戦闘員「スペースシャトルは渡さない」

　入り口前に構えてる。

竹ババア「どけぇい！　月まで行くのじゃー」

　ガトリングガン、乱射！

　グレネードボム、投擲！

　　ドカァァァァァァン！

戦闘員「やったか？」

　やってない。無傷！

　鍛え上げた筋肉は、最強ォォォォォ！

竹ババア「ガハハハハー、筋肉最強ォォォォォ」

　むきむき

　スペースシャトルが今、宇宙へ！

　竹ババア、カエルみたいにはりついた！

▼

◯STAGE２：宇宙

　タコがやってくる。

タコ「ちゅーちゅー、人間の匂いがする」

タコ「おいしいおいしいハラワタの匂いだ」

タコ「くらえ、破壊光線」

　　スペースシャトル　ボカァァァァン

　　宇宙飛行士を食い散らす。

竹ババア「ワシのスペースシャトルになにをする！」

　　キレた！　ボコる！

　　タコ殲滅！　食べる。

竹ババア「ガハハハハ、あ、どこへ行けばいい？」

　　真っ黒の宇宙。一人、迷子である。

　　おやおや、筋骨隆々のタコが泳いできたぞ。

　BOSS：タコマッチョ

タコマッチョ「貴様ー、よくも同胞をー」

竹ババア「弱肉強食じゃー」

　てーい　てーい

　パンチ！　パンチ！

　ババアのほうが、強かった。

竹ババア「食われたくないなら、道案内せい」

タコマッチョ「ひぃぃ」

　　むきむき

　　月へ向かって、ダークマターを泳ぐのだ。

▼

◯STAGE３：月の迷路結界

　奇怪な籠目模様。謎のふわふわパワーで進めない。

　月面は見えてるのに。

竹ババア「なんじゃこの迷路」

かぐや姫「ママー」

竹ババア「んなっ、姫、姫ー」

かぐや姫「あはは、こっちだよー」

竹ババア「待てー」

ザントマン「くっくっく、迷え迷え、

　夢現を彷徨え、永遠の夢を見続けろ」

竹ババア「聴こえたぞー、クソヤロー！」

ザントマン「ファッ！？　なんという聴力」

　BOSS：ザントマン

竹ババア「竹パンチ！」

　　ゆらり

ザントマン「幻影だよ」

竹ババア「むむむー、目に集中…そこだッ！」

　　　ドゴォ

ザントマン「ぐはぁ」

竹ババア「筋肉があれば、なんでも視える！」

ザントマン「うぐ、ひ、姫さまーーーーーー」

　　　ボカァァァァン！

　迷路が消えて、月面へ。

　むきむき

▼

◯STAGE４：月面

ウサギ「キャー！」

ウサギ「不審者だー」

ウサギ「餅ついてる場合じゃねえ！」

竹ババア「姫はどこじゃァァァァァ！」

ウサギ「狂ってるババア」

ウサギ「餅兵器だね」

ウサギ「うん餅兵器の出番だよ」

　　おぞましい純白スライム発生！

　BOSS：餅スライム

餅スライム「モッチッチー、拳法殺しのモチだよ〜」

竹ババア「うるせえゴリ押しじゃー、パンチ！」

　　　もちっ

餅スライム「物理吸収だよ〜。餅ミサイルだよ〜」

竹ババア「ウッ……！」

　モチを詰まらせて、呼吸困難！

餅スライム「モッチッチ、窒息だよ〜」

　心拍が乱れる！

　息は止まるも、闘志はますます燃え盛る！

竹ババア「姫、姫、姫が待ってるんじゃー！

　不老不死プロテインパワー、アアー！」

　燃えたッ！　餅、蒸発！

餅スライム「熱っ！　だよ〜」

竹ババア「富士山爆裂パンチ！」

餅スライム「やられたよ〜」

　　　ボカァァァァン！

　焦げた餅片を振り散らして、次のステージへ降りていく。

　むきむき

▼

◯STAGE５：月面リバーサイド

　一面の緑はカエルの皮膚。

カエル「ゲコゲコ」

カエル「今日も雨だゲコッ」

カエル「雨乞いすげーゲロ」

カエル「ゲロゲーロゲロ」

　ゲロ　ゲロ　ゲロ　ゲロ

　　　ザザザザザザザザーーー

ババア「足元がビチョビチョじゃ」

　　霧の向こうに美女が傘をさしている。

　　赤い着物と緑のお肌。

　　絶世のガマガエル美女(マッチョ)だ！

　　むきむき

　BOSS：ジョウガ

ジョウガ「3000年の歴史をもつ月面拳法、受けてみるケロ！」

竹ババア「こちとら自己流じゃー！」

　　ジャンピング！

ジョウガ「矢のように飛び、雨のようにアポロ経絡秘孔を突く。ケロケロケロケローーー！」

　　　ビシビシビシビシッ！

竹ババア「ぬわー、か、体が動かん」

　　ババア、片足立ちでプルプルプル

ジョウガ「経絡秘孔【アポロ爆殺孔】を突いた。

　貴様の筋肉はニトログリセリンのように

　液状化して大爆発をおこすケロッ！」

竹ババア「ぬ、ぬおお、筋肉が、筋肉が〜

　　皮膚から赤い水がぴゅー。

　　爆発するぞー！

ジョウガ「しっているか、不老不死のプロテイン

　10連続発動すると、不発でデッドエンドケロ」

竹ババア「なにぃ！？」

ジョウガ「終わりだ。月面彗星クレーターラッシュ！」

　　ケロケロケロケロケロケロケロケロケロケローーー！

竹ババア「ぬわーーーーっ！」

　　ボカァァァァン！　　ボカァァァァン！

───────────

　　GAME OVER

───────────

◯三途の川・魂の行列

カロン「かっかっか、三途の川の渡守、カロン──」

竹ババア「姫ェェェェェ！」ドゴォォォォォ

カロン「ウボァー」

　覚醒した圧倒的むきむき

　三途の川へダイブ

◯STAGE５：月面リバーサイド

竹ババア「復活じゃー！」

ジョウガ「なんだってー！」

竹ババア「死の淵より生還して筋力100倍だー！」

ジョウガ「でたらめだー」

竹ババア「思いつきの、銀河スクリュー拳！」

　　　キュゥゥイィィィィン！！！

ジョウガ「ぬわーーーーっ！！」

　　　ぐるんぐるんぐるん

　　　ボカァァァァン！

▼

◯STAGE６：月の中心核

　蒼いクリスタルの神殿。

　ちっちゃな太陽みたいな中心核。

　中にはまさかのかぐや姫。

　自転車を必死にこいで発電中。

　かぐや姫、かぐや姫、かぐや姫

　かぐや姫が10000人！？

　自転車を必死にこいで発電中。

竹ババア「姫ェ？　どういう事じゃ」

　ガタン

　と、姫の一人が立って、走って来る

かぐや姫「ママー」

竹ババア「姫ー」

マザー「ブー　ブー　ブー

　No.10001、持ち場に戻りなさい」

　マザーコンピュータ。母親っぽいホログラム。

　SFでよく見るアレだ。

竹ババア「貴様が黒幕かー！」

マザー「その通り、よく来ましたね人間、

　かぐや姫は、人工生命体(ホムンクルス)、私が、母親です」

　　　な、なんだってー！

マザー「月は地上を遥かに上回る科学力を誇ります

　それゆえエネルギー問題は早期に深刻化したのです。

　我々は【かぐや姫プロジェクト】に着手しました」

マザー「不老不死のマッチョに育て

　自転車で発電させるのです。永久に。

　エネルギー問題はもう、解決しました！」

竹ババア「それで、こんなたくさんの姫を！」

マザー「月の羽衣によって、苦しみは感じない

　むしろ幸福感に包まれているのです」

かぐや姫「嫌よ、私は野山で走り回るの

　こんなとこ、もうたくさんよ」

竹ババア「よく言った姫ェ！」

マザー「愚かな人間よ、我が筋肉にすり潰されて

　宇宙の塵となりなさい」

　　　ゴゴゴゴゴゴゴゴ

　BOSS：マザーコンピュータ（筋肉）

　　デカイ母親(マッチョ)だー

　　むきむき

竹ババア「銀河スクリュー拳、たぁー！」

　　　ぽすん

マザー「その程度の筋肉……雑魚ですね。

　筋肉はデカいほうが勝ちます！

　見るがいい、20メートルの巨大筋肉をー！」

　　　むきむき　むきむき

　　　ドシーン

竹ババア「ぐわぁぁぁ」

かぐや姫「きゃぁぁぁぁ」

マザー「ははははは、さあさあもっと、

　私を楽しませなさい！」

　　むきむき

竹ババア「アイツには勝てない、逃げるぞ姫」

かぐや姫「うん、地球まで走ろう」

マザー「逃げられると思ってるのかしら」

　　むきむき

　　圧倒的な筋力差。

　　勝てるわけがないよ。

◯１時間後

マザー「キャハハハハー」

　巨人が小人をいたぶる図

◯２時間後

マザー「うぇっへっへへへー」

　巨人が小人を突っつく図

かぐや姫「マザーが感情的になるなんて」

◯３時間後

マザー「ふひゃひゃははははは」

　ババアと姫、ボロ雑巾みたい

竹ババア「もう、ダメじゃ」

かぐや姫「シャッターもダクトも、閉ざされちゃった」

マザー「あはは、あはは、あははははー

　あー、楽しかった」

　　むきむき

かぐや姫「マザー、楽しんでる。楽しむ？

　……そうだ」

　　ごにょごにょ

マザー「人間にしては、頑張りましたね

　そこのおばあさんは、改造して自転車をこいで

　もらいましょう。改造します、力を抜いて……」

　　　鉄の触手　ウィィィィィン

竹ババア「うおおおお！」みょん

竹ババア「竹パンチ！」

　　　ぴょす

マザー「あらあらまだ元気が有り余ってるようね」

　　　平手打ち、べし

竹ババア「ぶへ」

マザー「それそれ」べしべしべし

竹ババア「ぐはぁ」

マザー「あははは」べしべしべし

竹ババア「まだ、まだ」

マザー「キャハハ、あはは、はは、あー」

　急に真顔になる巨人

マザー「飽きた。潰れなさい」

　べちゃ

竹ババア「ぎゃー…復活！」

　べちゃ

竹ババア「復活」

　べちゃ

竹ババア「復活」

　べちゃっ　べちゃっ　べちゃっ

　冷たい眼差しで、踏み続ける。

　べちゃっ　べちゃっ　べちゃっ

マザー「はーい、今ので9回です。

　どうですかー、心折れましたー？」

竹ババア「う、うぎぎ、ひ、ひ、」

マザー「んんー、聞こえませんねー」げしげし

竹ババア「姫を産んだとき、何を想った」

マザー「え？」

竹ババア「娘を愛していないのか！」

　　巨大な母、プルプルふるえ

　　筋肉モリモリ！

マザー「愛など、とうに捨てたわー！」

竹ババア「んなっ」

マザー「もういい、ババア、貴様はエサだ、

　10000人のかぐや姫のエサになれ！

『筋トレ』ができないまま弱り果てろ！」

　　　その時　ぶつっ

>>>感情抑制プログラム、停止します

マザー「え？」

かぐや姫「やってやったわ」

　ディスプレイを割るかぐや姫！

マザー「ウガァァァァァァン！

　なにこの感覚ーーー、胸が熱いーーーーー

　ぐぉおっおおっおおおっおおおおお」

竹ババア「それが、愛じゃよ」

かぐや姫「それが、愛だよ」

マザー「ぐおおおお、この、この、穢れた感情

　ォォォォォ、いやよ、いやなの、苦しい

　押しつぶされたくない、いやーーーぐぐぐ」

　　マザーのモザイクが増していく。

　　声が裏返る。

マザー「あああああ、私、娘になんてことを

　ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさ…

　にゅわあああああああああああああああああ」

　ボカァァァァン

　　　ドカァァァァァァン

　　　　　　ボォォカァァァァァァン！！！

…

◯エンディング

　まんまる月

　爆発

　ババアとかぐや姫

　こっちへ飛んで来る

　後に行列

　10000人

　かぐや姫まみれ！

　ずららららー

　アメリカ南西

　ハワイ

　かぐや姫軍団、占拠

　わぁい！

　幸せに暮らしましたとさ

　かぐや姫と竹ババア、なかよく並んでニコニコ。

　ハワイの海で月見団子を食べさせあいっこ。

　あくび　ひざまくら　すやすや

　安らかな寝顔

　うごめく上腕二頭筋モリモリ

　めでたし　めでたし