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筆で戦う野郎どもは仲間を求めて電車に乗った!!

作者: ラシオ
掲載日:2021/05/03

※GWなので書き溜めした書き出しをまとめてショートショートを作りました。



 僕たちは平穏な日々を過ごしている。……今日も通勤電車に揺られ。


 そこで同じ車両に乗る僕たちは、同じ駅から通勤する仲間だ。


 通勤時間の俺たちは、みんな読者として小説投稿サイトを楽しんでいる。


「ふう~」「そうだよな」「ははは」「あっ」「うぅ~ん」「………くっ」


 ……作品を読み終え俺たちはひと息ついた。


 そこで、ひとりがあることを思いつく。


「どうせ俺たち、目的地の駅まで暇なんだからさ。みんなでスマホから小説投稿サイトでショート・ショートでも書こうぜ!」と言う突拍子もない言葉だった。


 ……だが、時間はたっぷりとある。


 ――毎日、膨大に投稿される小説サイト。


 下は200文字から上は10万文字以上まで様々な人の思いが重なり合って、今日も投稿される。


 一瞬の輝き。……お決まりの設定で書かれたテキストは、定型文章読み取り装置と化した者たちによって、ローラー車の(ごと)く過ぎさって行く。


 地は(なら)らされ、(わず)かに残ったアイデンティティーはいずこへ。


 残された物語を楽しむ者たちの宝探しは大変だ。


 ひとときの楽しみ。笑いを取るか。感性を取るか。


 文章の意味を()み取るには頭の体操が必要なんだと熟練者(シニア)は語る。


 フォースを信じろ。必ずや、この日に面白い作品に出合える。


 だが、早朝の通勤電車に乗る我々の寝ぼけ(まなこ)にガッツンとくる楽しさはあるか。


 そこにあんたは……、うん、辞めておこう。


 決して愛とか言わない。言えない。だが、インパクトだけなら即興(そっきょう)だ。


「おいおい、いつまでも妄想してないで俺の作品を見てくれ」と言われ、彼の作品を検索する。


 ちなみに投稿ルールは三千文字以内とすること。


 面白ければ、次稿にせよと決まっていた。


 俺が知らないうちに決まった。「何それ?」


 彼の作品に戻る。そこに書かれている文章は、こうだった。


『我は魔王。猫を愛し、猫を撫でる。そして、猫に虐げられ、猫へ奉仕を続け、猫を持ち上げ、爪で引っかれる。……あぁ、我が愛しき猫……』


 謎の猫愛を語ろうとした彼の作品は爆死した。

 ……思いが強すぎて内容が無かった。


 じゃ僕だ。次にもうひとりの彼の作品を検索する。SFものだった。


『――それが解ったのは奇跡だった。


 人は「うっ」という時に1.5秒止まる。

 それは大気に放出するまでのエネルギー消費量から換算される動作だ。


 ここでみんなは思い当たることを巡らせるであろう。いろいろとね。


 さあ、誰が検証するか、どう検証するかは自由だ!


 ……だって、人間だもん...』


 なにも論理的に証明されていない……。


「そんな、SFってあるかぁー」と猫愛を描いた彼は、途中で下車していった。


「ああ、トイレに行きたいって乗る前から言っていたぞ」


 もうひとりの彼が言う。


 その彼の作品はこうだ。


『俺はサム。サム・ドペスだ。奴が死んだ。馴染みのバーで撃たれた………』


 みんなでブラバした。誰がこんな朝っぱらから濃厚なハードボイルド長編の書き出しだけを投稿しろって言ったんだ。


「仮にそのオチに辿り着いたとして、山手線で例えたら何周回る長編なんだ」と「う」を書いた彼は言った。


「さらばじゃ。俺はここから地下鉄で向かおう。いずれ、お前たちとは決着をつけようぞ」とハードボイルドを書いていた男は下車する。


「おーい」「勝手に行けぇー」「遅刻すんなよぉー」と彼の健闘を(たた)え、みんなで敬礼した。


「すまん。遅れたが俺の作品を読んでくれ」とみんなに呼び掛けた作品はこうだ。


『ある日のこと。勇者を待ち続けた、ひとりの少女は一生懸命に生きました。


 そして、彼女はすべてを知ったとき、こう言ったわ。


「人ってさ。なんだろうね。でも、私はこう思うの。

 きっと楽しかったことを忘れちゃうから求めるんだよね」』


 そして、誰も、何も語らず、目的の駅についた。


「ああぁ。さて、今日も頑張っか」「そうだな…………君の作品、良かったよ」


 この時点で投稿できなかった残り2名も悔しんだ。


「無念です」「明日は必ず……」


 ホームを歩く、彼ら4人の足取りは軽やかだった。


 ……結局。俺たちは、ニ千文字も語れていない。



 ◇  ◇  ◇


 そのころ、秘かにハードボイルド男は明日の新作に向けて地下鉄のトイレでスマホのメモ帳を使い真剣に創作していた。


 その内容はこうだった。


『タイトル: キャピX2したい多肉植物たち SF童話編


「この星の知的生命体たちは私たちに気づかないのだ!」

「「のだ!」」


 うきうきと踊る多肉植物たち。


「そうそう、この前も新たに侵食に成功したのに気づかないんだよね」


 ここはオーストラリア南部。私たちはハマミズナ科の植物である。


 似ているが自生したものでは無い。宇宙から地球にやって来た知的植物である。


 荒野の大地にひっそりと咲く。私たちは今日も賑やかだ。


 そこに多肉植物を食べる人間が現れた。


「うわぁぁぁぁ― 食べられちゃう」


 しかし、多肉植物たちに移動する足はない。


「だったら、渋くなれぇぇぇぇぇぇ―」


 とっさにとった化学変化。


 自己防衛のために多肉植物たちは抵抗した。


 ひとつの多肉植物を食べた人間は、便意をもよおした。


 ぐるぐるぴぃぃぃぃぃぃ――


 慌ててその場を立ち去っていった。


 アナタタチはレベルアップシマシタ……

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 レベル:1 → 1000

 魔 性:女の子を魅了する可愛さ

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 天の声が聴こえる。


「「わぁぁい!、わぁぁい!」」


「どうだ。原住民ども、我々の力を思い知ったか」


 喜びを現す多肉植物たち。


「それじゃ。みんな、今日も我々の星に願いを!」


「「願いを!……」」


 日が落ちて光合成が発動し、体内が循環していく。

 夜の温度差で湿った空気より水分をゴクリと吸収。


「ああぁぁあぁん」


 艶やかな生声を夜の荒野に響き渡らせた。


 ここは多肉植物たちにとっての新たな楽園。』


 ……よし、出来たぞ。


 ハードボイルド男は呟きながらトイレから立ち去った。


「ふふふ。この物語をホームセンターの観葉植物コーナーで読めば笑えるだろう」


 しかし、主戦場は電車の中である。


 さあ、明日も楽しみだ!!


ラシオです。

最後まで読んで頂きましてありがとうございます。

 

※面白いと思えましたら、読んだ事が無い人に電車の中で勧めて反応を見て頂けると幸いです。


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