現実世界と異世界sideレイ
キリがいい所で区切ったので、短めです
その日も何の変哲もない、ただただ仕事が忙しいって言うだけの日のはずだった。
俺が所属する第5騎師団は、平時は王都の警備を担う。
一口に王都と言っても規模は大きく、第5騎師団は司令塔の役割を持ち、あとは各区に在中している警備隊に細々とした役割を担って貰う事になっていた。
もう間もなく王都設立祭が始まる。
祭りってなると、そりゃ呆れるほど悪党が湧いて出てくる。
その質の悪さは、魔物もびっくりだ。
そんな次から次に湧く奴らを片付けながら、その日は何だかいつもと違うっていう感覚が付き纏い離れなかった。
俺は狼族の亜人だ。
狼族はよくカンが働くって言われいる。たぶん今感じている違和感は、そのカンが働いているせいだって思うんだが。
全く心当たりがないし、何とも行動のしようもなく、もどかしく思っていた。
「ちっ、イライラする」
「随分苛立ってるな、レイ。珍しいじゃないか」
「ライル団長、あー‥‥すまん」
ガタイの良い団長が執務室から出てきて、苛立つ俺に声をかけてくる。
熊の獣人であるライル団長は、間違っても親しみやすいような風貌じゃない。
でも愛情深い族性からか、部下に対してもサラリと気を配ってくれていた。
「何か今日は気が立つって言うか、なーんかイライラするんだよなぁ」
「何だ、最近忙し過ぎて遊べてないのか。
欲求不満は身体に毒だぞ」
ああああ〜っ!今、イラつきが天元突破した!
ライル団長は最近番を見つけたばかり。
幸せ絶頂な時期なのは分かるけど、ムカつく!
「ライル団長はいいっすね!愛しい番を手に入れたんだから!
あー俺も可愛い番が欲しい!
その場限りの愛より、永遠の愛が欲しいっ!」
思わず願望が飛び出してしまう。
「まぁ、手に入れたくても中々見つからないのが番だからな。
大抵の奴らは番を諦めて、普通に家庭を築いているじゃないか。お前はどうなんだ?」
そうなんだよな〜。
探して見つかる様な番なら、苦労はしない。
でも俺は‥‥。
「俺は狼族の男だ。一生ただ1人を愛し抜きたい。
俺だけの、ただ1人が欲しいんだよ」
狼族は、自分だけの唯一を望む。
そんな性質だから、少しずつ仲間が減っていくんだがな。
ま、それも運命だろ。
「族性のなせる技‥‥か。それも仕方ないだろう。
まぁ、仕事に影響だすなよ」
「了解」
王都設立祭まではまだまだ3ヶ月もあり、これからますます仕事は煩雑となり忙しくなるだろう。
よく分からん感情に振り回されて仕事を疎かにするなど、愚の骨頂と言うものだ。
さっさと旨い酒飲んで、気晴らしでもするか。
そう思い、食堂街を目指し職場を後にした。
後から思うに、おそらくこの時期に俺の番は此方に来ていたんだと思う。
なのに俺はこの時ソレに気付くことが出来なかった。その所為で俺のただ1人、唯一の女にあれ程の苦痛を与えてしまう事となり、激しく後悔することになるのだった。
読んで頂きありがとうございました。