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ほらふきのイデア  作者: カナマナマ
第 五章
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5-17 鉄ほど重要な存在

夜が明けた。

人々は徐々に目を覚ますにつれて,グリエルは騒々しくなってきた。


「水車が壊れたんじゃない?!一体何があったんだ?」


「広場にあった銅像が消えちゃった!」


「橋脚をつないでいた鎖が切れた!これはどういうことだ?」


「関門に穴があいたらしいぞ?歩哨兵たちはちょっと叱られるかもんな。」



夜のうちにグリエルのインフラが徹底的に破壊された。

もちろん、それが俺たちの仕業であることは誰も知らない。

いざその犯人たちは…


「ZZZ...」


徹夜のせいで昼寝中だ。

いつものように俺だけが目を覚まして状況を注視している。

本当は俺も今回の仕事が終わったら一日くらいは楽に寝たい。




グリエルの議会でも当然大騒ぎとなった。

今回のことの原因、被害状況などの調査に追われている。


「多分何かの液体を使ったような…」


「金属が使われたところだけが局地的に破壊されて…」


「目撃者がたった一人もいないんです…」


「せめてもの人命被害はないことが…」


相次ぐ報告に『雨上がり』のリーダー格である、アグネスが口を開いた。


「私は今回のことが追放令に対する恨みから起こったテロだと思うけど。」


この一言で、再び議会が騒々しくなった。

これに同調する意見と、憶測という意見がまちまちである。

だが少しずつ、同調する方向で意見がまとまっていく。

アグネスの微笑も大きくなっていくが…


「憶測はやめましょう。」


メリッサが流れを止めた。


「私はそれなりに妥当な推理だと思うんですが…?」

メリッサさんが憶測だと思う理由でも?」


「追放令が発表されてから2週間ほど、こんなことを飾るには時間がなさ過ぎるんじゃないですか?

あなたがそんなに自負心を持つエルフを 相手に一発食らわせてあげるには。


また追放令の中に、こんなことをバレずにできる人間がいる?

そんな人がいるなら私も一度直接会ってみたいですね。」


「それでは誰がこんなことをしたというのですか?」


「そうですね、追放令でも足りず、濡れ衣を着せようとするエルフとか…」


この言葉にやかましかった空気が凍りついた。

だれの目にもアグネスを狙撃する発言。

メリッサもこれを知らないはずがない。

しかし、このような対立は長続きしなかった。


「それは後で!一応復旧作業をするのが先です!

今すぐ直さなければならないことが一つ二つではないです!

早く工房地帯で職人たちを集めて、すぐに作業に投入させなければなりません!」


「じゃ、私が工房エリアに行ってくる。

メリッサさんの言う通りなら、私が責任を取らなければならないでしょうから。」


「そうですね。どうかお願い致しますよ。」


「…くそっ、あの女は一体何を考えてるんだ…」




『雨上がり』を連れて工房地帯に向かうアグネス。

すでに工房地帯は由来がないほど混んでいる。

この光景にちょっと外から周りを見るが…


「···なんか鍛冶の煙が少なくない?

人がこんなに多いのに。」


「人間の攻防が空いているからだろう。」


「そうだろうな…」


この瞬間、アグネスにも何か違和感を覚えた。

しかし、それがどんなものかはまだ分からないまま工房地帯に突入する。

人波をかき分けて、運営中の工房に入る。


「議会から出た。失禮しよう。


「何の用事ですか?」


「仕事が忙しいのは分かるけど、優先順位を決めてくれないか?

ひとまず、必ず必要なインフラを先に復旧することが議会で決まった。

そのために職人たちを募集しているんだ。」


「申し訳ないんですが、それなら他の工房に行ってみる方が…」


「どうして?」


「私も消息は聞きました、金属を使った場所が集中的に破壊されたって

木工や石工なら得意ですが金属は少…」


「ああ、そうか。仕方ない。次の工房に行こう。」


次の工房に入った.

だが、同じ話を聞いた。

鍛冶屋の技術は未熟だ。

その次も、その次も。


結局、承諾した鍛冶屋が10人にも満たなかった。

グリエルを復旧するには途方もない数だ。

そして最後の方でも…


「ここの専門は木工だから、悪いけど他のところで…」


こうなると、アグネスも爆発してしまった。


「一体どうして一様に断るんだ?!

工房って書いてあるなら、そっちの技術を持ってるんじゃないか?!」


「こうだから公務員は…

現場は知らないくせに口先ばかりで…

知らないのか?エルフたちは元々、金属の製錬技術はほとんど持ってないだろ?」


「それは何の…?」


「考えてみろ。山もあんまりなく、こんなに森ばかり茂ったところで鉱石を採取するのが簡単だと思うかい?

あったとしてもエルドリームが築かれて千年だから、枯渇したのは当たり前だろ。

だから、目に見える木や石に目が行くようになってことさ。

それによって木工技術と石工技術は発展したが、金属製錬はずいぶん昔から発展が止まったぞ。」


「なら破壊された物は誰が作ったというんですか?!」


「誰って、人間族だ。この近くにあった水車装置も、隣の家で働いていた人間鍛冶屋が作ったものだから。」


この言葉を聞いて衝撃に陥ったアグネス。

やっと気持ちを引き締めて話を続ける。


「…だったら人間に学ばなかったんですか?」


「俺は違うが、強硬派は当然学ばなかったし、俺も学ぼうとしたんだけど、今になって他の技術を覚えるのも大変だってさ。

金属の技術がないわけではないが、あれで稼いで暮らすには足りない。

それに本業の木工の仕事も忙しいしから。


また鉄鉱石を外部から持ち込むのも人間側のコネクションがないと大変だし。

何よりも、人間たちが金属が必要な部分を完璧に埋めてくれたから、俺があえて学んでなくてよいいと考えて。」


「そんな…そんな…」


「だから硬派なやつらは気に入らない。

あいつらのせいで俺だけ被害を受けるんじゃん。

…あ?どこに行った?」


アグネスはさっき聞いた水車で行ってみる。

これだけの技術者が集まっていて水が必要なところなのに、水車は止まっている。


ここまで見て、やっと状況の深刻さが把握され始めた。

グリエルは被害を復旧する能力がない。

復旧のためには必ず人間の手が必要だ。

このことに気づいた瞬間、アグネスは暴れる。


「くそっ!くそっ!人間なんかの技術に!」


「どうする?何とか修復しないといけないんだろ?」


「だから、人間の手を借りようというのか?!私たちはエルフだ!

魔法を使えば何とかなるだろう!

魔法で水源地を作ればいいし、錬金術と鉄を操る魔法で修復すればいい!」


「無理だと思うんだけど···」


「はあぁ…?」


「全てのエルフが俺たちのように魔法に堪能なわけではないじゃない。

この水車を訳もなく作ったんじゃないって。

インフラレベルの魔法を維持するのも無理だし、魔法で修理するのもたぶん無理だよ。

精巧な設備を手当たり次第に修理したら、結果は目に見えている。


ひとまず議会に戻ろう。

悔しい気持ちは分かるけど、俺たちだけで決める問題じゃない。」




「フアア…眠らなかった甲斐があったな。

いよいよ折り返し地点を過ぎたっけ。」


遠くからアグネスなやつらを眺めていた俺。

此処迄も順調だ。


今となっては手の施しようがない。

方法はただ一つだけ。

人間技術者たちを呼び戻すだけだ。

これが私が目指していた核心目標とつながる。


『人間がエルドリームにとって重要な一部分であることをエルフたちが悟ること。』


エルフたちがエルフの国で暮らしながら人間に逼迫されたはずがない。

それでもこれほどの憎悪がたまったのはあくまで1000年の時間によって、ダムの小さな穴が大きくなっただけだ。


恐らくタカ派のほとんどは人間から迫害された経験がないだろう.

ただ他人が憎むから、悪いと言うから憎んだだけ。

実際に自分は人間による被害を受けたことがない。

憎悪の実体がない。


ならば、人間の大切さを悟らせればいい。

役に立たず、下等で卑怯な存在だと考えたなら、その認識を覆せばいい。

エルフができないことを人間ができる。


問題は追い出された人々を再び呼び集めることだが。

人間にとっても、エルフの故郷とはいえ、確かにここで長い時間を過ごして生まれ育った人々がいる。

彼らにはエルドリームが故郷であるわけだ。

このまま立ち去りたがらないだろう。


この状況の仲裁者としてエリーゼが現れることは今は完璧だ.

近いうちに状況を見て、エリーゼを人間との和解の代表者に選ばれるよう姿を現わさせるつもりだ。

人間でも他でもないエリーゼの言葉なら、今まで両方のために頑張ってきたエリーゼの言葉なら、和解の意思を受け入れてくれるだろう。


ただ一つ。

心に引っかかることが残っている。


「あのアグネスというやつの足取りが心細いんだ…」


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