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ほらふきのイデア  作者: カナマナマ
第 五章
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5-15 談判

翌日になってメリッサさんと一緒にグリエル議会へ来た。

議事堂は雄壮な建物だ。

議会というよりは巨大な美術館にいる感じだ。

そしてあるところにいくつかのエルフが見える。


「いらっしゃいましたね、メリッサさん。

そちらがあなたが選択した人間ですか?」


「そうです。甘く見ないほうがいいでしょう。

急に立場を変えたことに対する最小限の贖罪として、確かに人間を弁護できる、賢い男を連れてきたんです。」


「ふん、たいしたことないように見えますが。」


俺に対する反応で強硬派と穏健派の違いが一目で分かる。

ここにいるエルフは、メリッサさんを除けば6人。

その中で4人が強硬派か…


「君、名前は?」


「ハインツと呼んでください。」


「度胸はある。人間のくせに議事堂まで来ようと考えたなんて。」


「それほどの度胸もなかったら、もうエルドリームを去っているでしょう。」


「ほーう、ではもう少し難易度を上げてみようか。」


奇襲的な魔力放出でわたしを脅かす。

…これだけの魔力なのか。


「…俺の魔力の前でもこんなに立っているとは、人間にしてはましな方だな。」


「僕も魔法使いですから。この程度は、耐えるに足ります。」


「魔法使いか?そんなやつがどうしてグリエルにいる?」


「魔法の本山と呼ばれるここで勉強してみたかったんです。」


「クハハッ、メリッサさんの言う通りですね。

確かに利口ではあります。」


「言ったじゃないですか。それはそうと雑答はこの辺にして入りましょう。

議長に失礼ですから。」


ノック後に門の中に入ると、老いたエルフが1人座っている。

エルフが年老いた姿なんて、一体何歳だ…


「セネト様、昨日の議題でこうして伺いました。」


「…そこの人間の子だけ残して出て行け。」


「え?!セネト様、ですが…」


エルフたちは反論しようとしたが、老いエルフの目を見て言葉を止めた。

他のエルフたちはみんな外に出る.

そして、俺を席に座らせて聞く。


「君が引退した老人を呼び出した不器用な若者じゃな。」


「私が呼び出したって?」


「メリッサが人間を捨てるはずがないから、誰かの頼みでそうしたんだろう。

そして待っていたかのように君が来たじゃろが。」


…鋭い。

エルフの議長、つまりエルフのトップという称号はただではないんだね。

すると、この人も嘘の通じない部類だ。


「ええ、私からお願いしたことです。」


「それにエルドリームに住む人間でもない。

そんないきている目は、ここではみられない。

エルドリームの人間たちは、 すでに反捕起状態じゃ。まるで儂のように。」


「半放棄状態とおっしゃるのは?」


「儂より人間をよく知るエルフはいないだろう。

若い頃は人間界で冒険者として過ごしたこともある。

こういうふうに。」


そして俺に何かを投げた。

紫色の玉がちりばめられた、古い冒険者ブローチ。


これを見た瞬間、髪が白くなり、冷や汗が流れる。

もしこの老人が敵になれば…


「言ったじゃんか。半放棄って。

この年になって若い奴らの面倒を見るのは嫌じゃ。

あくまで中立の観察者としていたいだけのじゃ。

だから、私とけんかする心配はしなくてもよいぞ。」


どうかそうであってほしい。

この老人、俺より強い。

このようなプレッシャーは、かつてのルメナ戦以来、初めてのことだ。


「望んでいたのが人間の追放令といったっけ?

よい、許可するぞ。」


「…こんなに易しく決めても良いんですか?

私が何をするかもお話しませんでしたけど。」


「エルフと人間の間の問題を、エルフは解決できなかった。

「この儂も若いとき試みたが、失敗したんじゃ。

なら一度は人間にも任せてみるのが筋じゃんの。」


そして慈愛に満ちた笑いで私を安心させる。

思わず貰い笑いをしてしまった


「うそをついたんですね。中立とは考えられません。」


「何をするつもりなのかは分からないが、期待するぞ。

行く前、ヒントだけくれたらありがたい。」


「…「エルドリームにおいて、『人間の大切さ』を知らせてあげる」ってことです。」


「もう面白い。では、出て行くことにする。すぐ知らせがある。」


挨拶をして部屋を出ると、他のエルフたちがドアの前で立っている。

出るや否や俺に質問が殺到する。


「どうなった?」


「…面目ないです。」


この一言にエルフたちの悲喜こもごもだった。

メリッサ氏だけが平常心を保っている。

俺は本心と違って、苦しい顔をする。

苦しそうに唇を噛むが、実は笑いをこらえるためだ。

これに気づかず、楽しんでいたエルフたちがメリッサ氏に近づいていく。


「メリッサさんにも感謝しないと。事実上あなたのおかげで追放令が可決されたから。」


「もう言わないでください。提案した時に言った言葉をもう忘れたんですか?」


「失礼しました。これからは仲良くしましょう。

そうです、これから…」


言っていたエルフが、急に体をひねって俺を見た。

私の方に近寄りながらこう言う。


「エルフの結束をかじっていた害虫が消えるから。」


それから俺に嘲笑を見せる。

お願いだから行け…もう笑いを堪えるのが限界だから…


「残念だな。偉大なエルフの魔法を学ぶこともできず、これからは半文の魔法だけを使うことになったから…」


あ、ダメだ…

結局、笑いをこらえることができなかった。


「…何が面白いんだ?」


「いえいえ、気が抜けて笑っただけです。

気分が悪かったら、謝ります。

ただ…」


「ただ?」


「私の欲しがる魔法はもう完成寸前です。

エルドリームから追放される前に、 皆さんにもお見せします。」


「ふん、人間の魔法なんかに興味がわいてくると思うか?」


「きっとそうなるですよ。」


そしてメリッサさんとともに議会を出る。

祝う前に聞いておきたいことがある。


「今見た強硬派が核心ですね。」


「『雨上がり』と呼ばれるやつらなの。

強硬派の中でもひどい奴らだけが集まった集まりよ。」


それはもう分かっていた。

この前、テラの頭の中から情報は抜きとってたんだから。

ただ、本当にどんな者なのかは、今になってはっきり分かっていた。


「それで、直接会った感想はどう?」


「…正直言って議長に会えてよかったです。

危うくまたうぬぼれるところでした。」


「何言ってるの?」


「たった今その場にいたやつら、全部僕の相手にはならないということです。」


さっきの顔、テラの脳で見た奴らだけだ。

『雨上がり』という名前は、自分たちが雨で、人間は洗い流される汚物にちなんで名づけられた。

そして、さっき俺を脅した男がその首長である。


「アグネスか…戦闘力はさておいても、容易ではないそうだ…」

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