5-14 着手
俺とエリーゼは目的地に向かっている。
まず外見、特に耳を隠すためにフードを被った。
「あの二人に錬金術を任せてもいいの?」
「言ったじゃん。ルメナは俺より優れた錬金術師だ。
あいつがいるなら心配はしなくてもいい。」
「あいつを信じてるよね…」
「命の恩人だから。
できれば君もあいつを少しは信じてあげて欲しいけどさ。
もう魔王ではなく、元の姿に戻ったんだから。」
「私がそのせいでこうしていると思ったの?
そっちの恨みはもう消えたわ。
君が死んだと思って恨んだのだから、 君が生き戻った今は恨む理由がないでしょ?
むしろ私を助けてくれていて。」
「なら、なんでそんなに仲良くならないんだ?」
「ただ性格が合わないだけよ。」
まあ、あいつと初対面ならこんな反応が正常だろう。
俺もルメナと初めて会った時はこうだったし。
初めから親しくなった、オフィーリアが珍しいケースだっただけだ。
それでも恨みがないなら、 俺も心配ない。
ルメナの本質がわかれば、次第に受け入れてもらえるだろう。
対話をしている間にいつの間にか目的地に到達した。
ここはグリエルの工房が密集している区域、ゆっくりと各店を見回る。
ちょっとかけただけだが、もう満足だ。
俺の思った通りの区域だ。
セムスでの確信が、確定に変わった。
最後に一つだけ確認してみようか。
「エリーゼ、俺が指名する二つのお店で剣を買ってきてよ。」
エリーゼはすぐに剣を買ってきた。
両手に剣を握って、身体強化バフをかけて…
パチン!
二つの剣をぶつけ、一つの剣がもう一つの剣を傷つけた。
物証さえ完璧だ。
当所での調査は終わった。
次の調査地域に行こう。
次に来たところは、グリエルのインフラがあるところ。
1000年の都市らしく、様々な施設がある。
水を運搬する灌漑施設、主要位置を結ぶ転移魔法陣、各種公共機関まで。
魔法陣に手をつける理由がない。
灌漑施設を最優先に狙おうか。
そして最近建てられた建物も対象だね。
そして、その次はグリエルの関門。
もう少し完璧に構造を知っておく。
ここで勝負がつくかもしれないから。
ところで他の人たちはどうしているのかな…
「おっしゃった通りに砂を集めてみたんですが、これで何をなさるんですか?」
「瓶を作るつもりよ。
原料を使うのだからそんなに大変ではないだろう。」
「ガラス瓶くらいは買ってきてもいいんじゃないですか?」
「それはね、普通のガラス瓶では危ないかもしれないから。
今から作るものを入れておくにはね。
だから調整を経て、最適な容器を作るつもりさ。」
「危なすぎんじゃないでしょうか?
ルメナさんの手作り毒って、本当に鳥肌が立ちますよ。」
「私もクリスの注文通りに作るだけよ。
まあ、人に撒こうとして作るのではないんじゃない?
そうするつもりだったら、魔法で毒雨を撒くのがもっと早いぞ。」
「お願いですから、どうかその考えは実行しないでください…」
「しないよ。それに今回やることは局所テロだろ?
また、魔法感知にうまいエルフが どこにでもいるはずよ。
私は冒険を楽しむ方だけど、勝算のない戦いは好きじゃない。
それがわざとこの毒を作る理由で。」
「…うまくいくでしょうね?」
「まあ、私に言えることは、私たちもこんなに騒ぐのではなく、仕事を始めてこそ作戦成功率が上がるということだけだ。」
「そうですね。それでは私は何をしていればいいですか?」
「そうだね、まずこの鉱石を全部きれいに砕いてくれ。
私もできるだけ早くガラス瓶を鋳造するから。」
「今、何とおっしゃいましたか、メリッサさん?」
「人間の追放令を提議します。」
「…あなたの口からそんな話が出るなんて。
昨日までは誰よりもそんなことに反対したんじゃないでしたか?」
「昨日であきらめました。もう娘と離れて半年が過ぎたんです。
人間たちには申し訳ないが、私はエルフとしての、そして母としての責任があるのです。」
「それにしても突然すぎですね。
まるでエリーゼから何かを聞いたそうに。」
「…どういう意味ですか?」
「ここ数日前にセムスで大きな騒動があったとの報告がありました。
力の激突だといいますが、そのパワーからみて、一人はエリーゼで間違いないと思われます。
その相手が誰なのかはまだ分かりませんが…
とにかく最近、エリーゼ様を目撃情報が現れて、あなたは母親としての言を突然言い出した。
誰が見ても疑わしい状況じゃないですか?」
「…そうですか?気持が悪くなりました。」
「どういうことですか?」
「そんなことがあったのに、母の私には一言の言質もなかったというわけですね?
一体何のためにそれを私に知らせなかったんですか?」
「…それが私たちも正確な確認が必要だったので…」
「そして私の本心が否定されたことも不快ですね。
娘のために私の夫を否定しているのです。
私だと気楽に追放令を提案したと思うのでしょうか?」
「それじゃなくて私たちはあくまで…」
「そうでなければ、ただ私を見下しているのでしょうか?
ずいぶん大きくなりましたね、ちび諸君。
最近エルダーの称号をもらったからといって、あまり這い上がっているんじゃないですか?
エルダーにもクラスがあるってことをまだ知らないようですね。」
そして圧倒的な魔力がしばらく議会全体に漂った。
魔力が過ぎ去った場所を、緊張感がその場を埋める。
ここで他の、エルフたちがメリッサを止める。
「そこまで、メリッサ。
君の気持ちは分かるが、やり過ぎたぞ。」
「失礼しました…」
「この案件は議長に聞いた方が早いかもしれない。」
「議長さんですか?あの方は引退して、もう名前だけかけておいた名誉職じゃないですか?」
「でも案件が案件だから。
あの方の決定なら誰も反対しないはず。」
「戻ってきたよ。」
「ううっ、薬品臭い…私の家がこんなになるなんて...
このにおい、しみはしないよね?」
「帰ってきた?とりあえず試作品だけ作っておいたぞ。
今全部作ったらこの家が溶けてしまうだろうから。」
「ルメナさん、わかったからまずこれから!
もう製造用の釜が半分ほど溶けたんです!」
「私、帰ってきたわ。」
「メリッサさん、思ったより早く来られたんですね。
仕事はどうなりましたか?」
「よかったのか、困ったのか、わからないな。
議長に決定権が下ってしまったわ。
そのためなんだけど、クリス君は明日私と一緒に議会に行ってくれる?」
「はい?」
「それがね、一応人間本人たちのことだから彼らにも弁論の機会はなければならないという穏健派議員たちの主張があって。
それで立案者である私が人間代表を一人選ぶことになってしまったの…」
困ったことになった…
しかし、メリットがないわけではない。
エルフの中でも力と知恵と影響力を兼ね備えたエルフだけを集めた議会。
あいつらの顔ぶれを見ておけばきっと役に立つ。
メリットとリスクを天秤にかけてみる。
敵の情報とわたしの情報の口外。
…決めた。
「行ってみることにしましょう、グリエル議会へ。」




