5-13 真意
家の外の庭を歩き、ため息をつきながら頭の中を整理中だ。
自信のあった作戦が否定された。
そしてその欠点を解決する方法がその瞬間には浮かばなかった。
メリッサ氏はこう語っている。
「ゆっくりよく考えて、答えが決まったら言ってくれね。」
メリッサさんの言うことは正しい。
このままなじゃ俺はひどい目になるかもしれない。
最近の成功から始まったうぬぼれのためだろうか。
だが俺たちには時間があまりない。
エリーゼが帰還したことが明らかになる前に、先に動かなければならない。
どんな答えを出せばメリサさんを説得することができるか...
「まだ悩んでるんですか?」
「オフィーリア…君ってどんな答えを出すと思う?」
「ううん、よく分かりません。
私はただ人々を助けたいだけだと言うことになりそうですね。」
「君らしいね。むしろ君がメリッサさんを説得したほうがよかったかな?」
「自信を持ってください。あなたも優しい人だから。」
オフィーリアは俺を邪魔したくなかったのか、家に戻った。
その次はルメナが出た。
「お前はまたどうして出てきたんだ?」
「忘れたの?私はお前を助けてあげる助っ人だろ。
今がその時だと思うから。」
「…君ならどう答える?」
「今すぐをどうにかするのは難しいだろうね。
メリッサもそう言っても頭ではわかっていると思う。
結局、時間が答えだということを。」
「それだけでは足りない感じだね。」
「だからこの言葉をもっともっともらしく包装するのが必要なんだ。」
「助言ありがとう。」
そしてルメナが入ると、エリーゼが出る。
一体何だよ…
「三人で何か話してたの?」
「心配してこうしてるんじゃないの。」
「まあ、いいか。じゃあ、君にも同じように聞いてみるよ。
君ならどう答える?」
「私なら今の私を最後まで守ると言うかも。
それもまた、母が言った信頼ではないかど思う。」
「そうかもしれない。」
「でも結局答えを決めるのはお前だよ。」
エリーゼもまた家に戻った。
俺はもう少し庭をうろつく。
難しい答えではないと思う。
作戦自体は好評だった。
問題は事後処理の方法だけ。
私が逃しているものは一体何だろうか。
人に優しい心。
最高の治療剤は時間。
自信に対する信頼。
まったく、本当に自分たちの性格がそのまま反映された答えばかりだ。
これじゃ俺には…
「…もしかしてあれか?」
「来たわね。答えは決めた?」
「…正直いまでもよくわからないんです。
だから単純に決心することにしました。
命をかけて僕を助けようとした友達を、 今回は僕が必ず助け出すと。
エルフとか人間とかは気にせず、ただ…」
「もういいわ、それで十分よ。」
メリッサさんはようやく私が読める笑みを浮かべた。
慈愛に満ちた微笑みだ。
「さっきの『自信のこもった目』では自分について来いと、自分に対する信頼を求めることを言って、そんな行動をとるようになる。
でも、『信頼を与える目』では、人々に信頼をお願いする言葉を言って行動をするようになる。
君の作戦通りなら、最後には必ず話しの瞬間が必要になる。
さっきの君だったらある瞬間、自慢によって事を誤ることになったかもしれない。
今の目ならよくやりこなすことができるよ。
そう、エリーゼを助けてあげようとする子に『信頼を与える目』がないはずがない。
ただ、今まで隠されていただけで、今その目が私が望んでいた目だよ。
それでは私が何を手伝ってくればよいかしら?」
「説得に応じてくれるのですか?!」
「もちろんよ。娘を助けることだから、お母さんが助けてあげないなら、誰がやる?」
「…良いお母さんだね、エリーゼ。」
「アララ、私はむしろクリスくんのことが本当によい男だと思うんだけど。エリーゼと結婚させたいほど。」
プッ!プッ!プッ!
俺、エリーゼ、そしてオフィーリアまで飲んでいたお茶を吐いた。
「お母さん?!一体何?!」
「能力ある、頭いい、優しいさまで。こんなによい男って珍しいわ?
チャンスがある時に捕まえるのがいいわよ。君だって気がないのではないじゃない?
だからその前、あんなにも泣いて…」
「あの話はもういい!それはあくまでも仲間として悲しんでたんだよ、仲間として!
クリス、早くお母さんに頼みたいというのが何なのか言ってみろ.」
「あ、はい…」
「メリッサさんにお願いしたいのは、強硬派への偽装です。」
「どういう意味?」
「メリッサさん自身も自覚があるでしょうね、自分が穏健派の代表的な人物だということを。
ならそれを逆利用するつもりです。
エルダーエルフ、議会の重役である穏健派、それにエリーゼの母であるあなたが強硬派に回った場合、どのようなことが起きるのでしょうか?
強硬派は勢いづいてもっと荒くなろうとするでしょう。
反対に穏健派と人間にとっては希望を奪うことになるでしょう。
長話はこの辺にして、一言でいって、議会に人間の『追放令』を提案してください。」
「追放令を?
やっとクリス君が何を考えているのかはっきり分かった。」
「メリッサさんでなかったらエリーゼが直接乗り出すようにしようと思ったんですが、助けてくださって本当にありがとうございます。
もしも,エリーゼの話を聞く人に突然の心変わりの理由を聞かれれば、それはエリーゼの話をしてください。
エリーゼが迷って苦しむのを見たくない、娘の苦労をこれ以上したくないお母さん、この上ない理由でしょう。」
「私が説得に失敗したら?」
「ご本人がおっしゃったじゃないですか。エルドリームの葛藤は、 僕が思ったより深い。
この作戦はその事実を知る前に立てたものです。むしろ、今はさらに確信を持てました。
それでももし失敗したらやはりエリゼが前に出るしかないです。
ですから、娘のために是非努力して下さい。」
「あら、さっきの結婚話は考え直すべきかも。
悪いことも言えるね。」
「この作戦も十分悪さです。」
「よし、明日すぐに議会で話をしてみたらいいかな?」
「お願いします。」
明日、議会で追放の話が出るなら、少なくとも推進までには2~3日ほどかかるだろう。
その中にすべてのセッティングをしておけばいい。
このようにメリッサ氏との交渉は成功裏に終わった。
かしてくださった部屋に入ってそろそろ寝ようと思ったら…
「ク・リ・ス・さん?」
「オ、オフィーリア…?」
「さっきの結婚の話、とても気になって。
クリスさんの答えを知りたいですね…?」
瞳の中の光が薄れたオフィーリア。
口を滑らすと殺される…!
「ああ、あれ?エリーゼをからかうためのいたずらだったじゃん。
真剣に考えもしなかった。」
「ふぅん~」
セーフかな?お願い…
「そうみたいですね。かなり茶目っ気のある性格のようですから。」
こう言ってにっこりと笑う。
···助かった。
「私が考えすぎたそうですね。それではおやすみなさい。」
「おやすみ、オフィーリア。」
「すぐ明日つかおうとした計画は実行しなくてもいいですね…」
翌日
早くからみんな、目が覚めた。
「それでは今日のことについて説明するよ。
一応メリッサさんは私の頼み通りにしてくだされば良いです。
できれば、ご提案だけではなく、ご主導をお願いいたします。
ルメーナとオフィーリアは家で錬金術をして。
重要なことは全部ルメナがするから、オフィーリアはルメナが言うことだけ手伝ってあげればいい。
そして俺とエリーゼがグリエルの調査に行ってくる。
ここでも確認が必要な所が何箇所かあるから。
みんな最善を尽くしてくれ。
俺も最善を尽くすから。
じゃあ、始めようぜ。」




