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ほらふきのイデア  作者: カナマナマ
第 五章
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5-12 最強のお母さん

何て言うか…

エルダーエルフという名前にしてはかなり地味な家だ、ただの裕福な家庭という感じの家だ。

この程度でも立派な家だが、この前にネビュラ邸を見たのが原因だろうか…


「家には誰もいないの?」


「いないよ。お母さんと私だけ住む家だよ。」


「失礼します…」


内部も平凡だね。

家庭そのものだ。


「お母さんは議会のようだわ。

楽にいってて。」


家を用心深く見回す。

さっきは分からなかったがひっそりとした趣が感じられる。

そんな中、あるものが目についた。


「家族肖像画なんだね。」


幼い体型のエリーゼとエリーゼに似たエルフ、そして弓を持った男。

これはエリーゼの父。


「そうよ。お父さんは今はお亡くなりになったけど。」


「余計なことを言い出したのかな…」


「もう10年以上も前のことなの。悲しみを忘れて懐かしさだけ残すには十分な時間だったわ。

別に事故で亡くなったわけでもなかったし。」


「それで私とミノルタで別れるとき、そうおっしゃったんですね。」


「結局クリスが生きて帰ってきたから、余計な話になったけどね。」


こんなくだらない会話を続けているうちに、外からの人の気配を感じた。

外からも、俺たちの気配を感じるように、家に飛び込んでくる音が聞こえてくる。

そして、エルダーエルフの登場だ。

成熟したエルフが居間に入ってきた。


「エリーゼ、帰ってきたの?!」


「お母さん、お元気で…」


「元気?!家出したから何の連絡もしてなかって、そんな言葉が出るの?!」


「知ってるじゃないですか、私の立場がどうなのか…」


「では少なくともどこで過ごすのか、お金はどうするのか、計画でも言っておくのか!」


「いや、それは焦って…」


「正座!」


…お母さん、それ自体だね。

そのエリーゼが頭を上がれない。

最強のエルフもお母さんの前ではしょうがないもんだな。

エリーゼの口答えを完璧に制圧してから俺たちに目を向けた。


「ところで、あなたたちは?」


「エリーゼの友達です。始めまして。」


「初めて見る子たちばかりよね。それに全部人間だなんて。

まず、私の名前はメリッサ。よろしくね。」


「こちらこそよろしくお願いします、メリッサさん。」



「エリーゼ、早く説明!」


「は、はい!

それが、魔王討伐戦の仲間達です。

私を助けようとここまで勝手に来てしまって…

だと言って、帰ろっていうの困るし…」


「勇者パーティーの時の仲間たち…?」


その時になって表情に驚きを見せるメリッサさん。

俺たちの顔を一つ一つ眺める。


「何と言うか、いきなりすぎるね。

どう反応すればいいか分からないわ…」


「ご迷惑をおかけしまして申し訳ございません。」


「エリーゼ、いったいこれはどういうことなのよ?

これは怒ることを超えて、当惑するばかりだわ。

問題の中心にいる君が、今どんな状況かわからないはずはないから。

ところで人間の助力を受ける?それも勇者パーティー?」


「私もかなり衝動的に決めたことですけど、失敗するとは思っていません。

クリスが私を説得するために設計した作戦、奇抜で立派な作戦だったので。」


「ああ、そうなの?じゃあ、クリスという友達が言った作戦を聞いて…

ちょっと待って、クリスなら…クリス·レバント?

死んでしまったと君が一ヶ月間をずっと泣きながら悲しんでいたあの子?!」


「お…お母さん?!それを話したら?!」


メリッサさんが俺をもう一度見る。

俺ははにかむような微笑を浮かべて言う。


「運がよくて何とかして生きて帰ってきました。

他の人たちには秘密にしてください。」


「…ふぅ、なんとか納得したみたい。

驚きすぎて気絶しそうだったわ。

あなたがクリスだとしたらそこのお二人は?」


「はじめまして、オフィーリア·ネビュラでございます。」

「ルメナ・エルナス。」


「オフィーリアは君のことだったわね。娘から話はたくさん聞いたわ。

そしてルメナさん…?

勇士パーティーではなかったことを覚えているけど。

でも、どこかで聞いたことのある名前だったような…」


「魔界で死んでいった僕を救ってくれた恩人です。

それからずっと一緒にいます。」


メリッサさんはみんなの紹介を聞いて疲れたようにソファに身を投げた。

でも、すぐ起きてこう言う。


「頭が痛くて、話ももっと聞いてみないといけないけど···

ひとまず久しぶりに帰ってきた娘と、その友達に夕食を準備するのが先でしょうね。

ちょっと待っててね。」


外を見るといつの間にか日が暮れていた。

メリッサさんはそのまま台所に向かった。



「こうすればいいんですか?」


「あら、オフィーリアちゃんは料理上手よね。

エリーゼの言った通りよ。

良い花嫁になれるそうだわ。」


「花嫁って…これを使えば夢が現実に…」


「何んか言った?」


「いえ、何でもありません。独り言でした。

やっぱり今日使ってしまうのは無理かなぁ…」


いつの間にか料理を手伝っているオフィーリア。

低親和力もまさにZ級と呼ぶに値する。

あとでメリッサさんを説得するためには、俺としてもありがたいことだ。

そしてメリッサさんを見て、エリーゼはまた気持ちが複雑になったようだ。


「一つだけ約束して。お母さんが協力を拒否するなら君も未練なく諦めてくれ。」


「そのつもりだ。あくまで近道ができただけで、もとから行くとした道がふさがったわけではないから。」


「ところでお母さんを説得する自信はあるんでしょ?

さっき見たように、やすいな人ではない。」


「真心を伝える。一番いい説得方法だよ。」


エリゼはあきれたように頭を抱えた。

そして、らしくなく静かなルメナ。

さっき買った本を精読中だ。


「どう?200年間の進歩が感じられる?」


「正直、今まで私が浪費において寛大だということは自覚があったぞ。

でもこの本を買ったのは本当に浪費だった気がする…」


「それでもそんなに買ったら、当たりがなくはないだろう。」


ルメナの過去か…

これもどうやってでも調べる方法を…


「お食事の準備、できました!」


「この食卓がこんなに混んでいるのは久しぶりよね。」



本当に久しぶりに楽に食事をするようだ。

毎回あらゆる仕事とルメナのせいで気楽になったことがなかったから。



食事をしながらさまざまな話をした。

勇士パーティーの旅路と生きて帰ってきた話をもう一度。

そしてエリゼには前回言えなかった話を持ち出した.


ただしルメナの正体についてだけは、メリッサさんに隠した。

メリッサさんだとしてもそれまでは受入れられなさそうだよ。


「本当にご苦労したわね。

それにうちの娘のせいでも。」


「お母さん?!」


「今振り返ってみると、エリーゼくらいは天使だと感じられます。

こいつはただ男に胸だけつけておいて、股から金玉だけ取り除いたやつで…ああっ!」


「いい加減にしろよ?お前のも取り除く前に。」


「とにかく、私がそんな人生だったら、全部諦めてスローライフを生きたくなるそう…

なのに、またいばらの道を歩くなんて、強い子よ。

それもエルフを助けるために…」


この辺で切り出そうか。

うまくいくといいな。


「そのことについてですが…

メリッサさんにお願いしたいことがあるのです。」


「何かな?」


「エルダーエルフで、エルフの会議重役というのはエリーゼから聞きました。

是非、この作戦に力を貸してください。」


「…その話が出るとは分かっていたわ。

エリーゼは行動はこうでも、私のことを考えてくれる善良な子だから。

そんな子が何も考えずにお前たちを家に連れて来ることはない。」


「私はただ久しぶりに顔でも見ようと来たんだよ、お母さん。

お母さんを引き入れるつもりって、私は全然なかった。」


「エリーゼの言う通りです。

メリッサさんを引き込もうとするのは、あくまで僕の考えです。」


ここまで言ったのにメリサさんは何の反応もなく微笑ばかり浮かべている。

どういうつもりなのか読めない。


「それではまず、エリーゼが言った奇抜な作戦を、私にも言ってくれかしら?」


漏れなくすべての作戦過程を説明する。

そして作戦を聞いて生まれたメリッサさんの眼光を、俺は逃さなかった。


「なるほど…エリーゼが君を訳もなく君を信じているのではないわね。

そんな作戦は一度も考えたことがない。

ただ私を説得するには少し足りないかも。」


「…どんな点が足りませんか?」


「経験と認識の違いかな?

初めてエルドリームに来た人間と、何百年も生きてきたエルフの違い。


私は何百年もの間、両種族の葛藤を見て生きてきたわ。

誰よりもこれに詳しいし、感じてるよ。

今、君たちはエルドリームの葛藤を少しバカにしているよね。」


特に反論できる言葉がない。

説得が失敗するのではと苛立つ。

こんな私を見て、メリサさんがまた話を切り出した。


「面白い話をしてあげようかな?

「私も昔は強硬派だったの。

人間なら全部嫌いだったわ。」


「ええっ?!」


「過去の私は、今はいなくなったエルドリーム浄化部隊の隊長だったの。

あの頃のエルドリームは今よりもモンスターが溢れていたわ。

毎日のようにエルドリームの脅威的なモンスターを討ったのよ。


そんなある日、単なる偵察中にとんでもないモンスターに会ってしまったわけよ。

『カラブテッド・ワン』、土を腐らせるそのおぞましい木怪物。

すでに私が発見した時は、土の生気を全部吸い込んで、私さえ手ごわいな、とてつもない力を手に入れた状態だったの。


だからといって退くわけにもいかなかったので、他の人達を避難させて、一人で戦ってみたけど敗北したよ。

ここまで言ったら次の話は想像がつくよね?」


「あの時会ったのがご主人だったんですね。」


「正解。夫はミノルタから派遣された冒険者だったわ。

向こうもモンスターで頭が痛かったから。

とにかくあの人の助けのおかげで生き残れた。」


「そして惚れたんですね?」


「いえ、あの時は魔法と弓を放ちながら殺せようとしたわ。

人間なんかが私を救ったのが悔しかったから。」


…エリーゼのお母さんらしいな。

その性格はメリッサさん譲りなんだ。


「でも、それ以降も討伐中に何度も出会ったよ。

いつも私が冷淡にふるまいっても人良く笑ってくれたわ。

その笑いに私もだんだん心を開いていったの。


そして討伐が完了した後、私にプロポーズしたのよ。

私はその時も夫に武器を向けたんだ。


そしたら、その男の話が…

『俺はバカだからエルフと人間の葛藤に対してよく分からないけど、あなたを幸せにしてくれる方法は誰よりもよく分かっている。』と言って…

その言葉とともに見せてくれた目に騙されてしまった。

そしてその目、それが私がクリス君の頼みを断っている理由。」


メリッサさんの目が合った。

わたしのすべてを読み取っているような目だ。

逆に私は何も読めないんだ。


「あの時あの人の目は『他人に信頼を与える目』、君の目は『自信に満ちている目』。

それも悪くはないけど、エルドリームの葛藤を解決するためには足りない。

私が夫を殺そうとしたように、いつかは受け入れられるかもしれないけど、今のうちはお前の作戦によって生じた感情によって問題が起こるはずだよ。

その瞬間、君はどうするつもりかしら?」

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