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ほらふきのイデア  作者: カナマナマ
第 五章
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5-2 現地の話

古木がありとあらゆるところに立っているにもかかわらず、絶妙に村には日差しがさしている。

微かな花の香りが漂う。

何よりも明らかに人々が歩き回っていて人工的な建物が溢れていても自然の一部であるように違和感がない。

ここがエルドリーム。


「それで君たちはどうするつもりさ?」


「まあ、旅館から探さないとですね。」


「そんなことなく商人組合の建物で過ごすのはどう?

思えば君たちのおかげで助かったから。

お礼を言わないと。」


「いえ、それは助けてもらったので当然すべき…」


「大丈夫、大丈夫。

そうでなくても最近宿舎の席がたくさん残ってるから心配しないで使うようにして。」


「…なら、ありがたくお好意をお受け致します。」


商人組合なら情報を得やすいだろう。

もしかしたらエリーゼに関する情報もあるかもしれない。


市場に位置する商人組合

商人組合に着くと、やっと日が暮れている。

商人組合の敷地は思ったより広いと言った方がよさそうだ。


空いている宿所を借りて荷物を解く。

今になって葛藤があるということが少しでも直接感じられる。

部屋はきれいに整理されており、いろいろな機材も残っている。

最近まで人間が使っていた部屋だ。

そのような部屋が3つもあるということは、どんなことが起っているのかを間接的に物語っている。


日が完全に暮れて、商人が部屋にやってきた。

「さあ、ご飯食べに行こうぜ!」



「そういえばモンスターのせいで名前も聞けなかったな。」


「私はハインツ、貧乳のやつがルメナ、もう一人はオ…ステラです。」


「それに区分しなくてもいいじゃん!」

やっぱり殴られた。


「俺はノリスと呼んでくれ。よろしく。」


近くにあった飲み屋に入る。

人間が大部分だが、エルフもちらほら見える。


「そういえば、少し後で俺たちを救ってくれた衛兵たちが同席するだろうが、もし不便そうなら言ってくれ。」


「大丈夫です。私たちもお礼を言いたいので。」


まず料理とお酒を注文して食事を始める。

しかし、ルメナの表情がよくない。


「またなにが不満だ?」


「うーん、このはちみつ酒は絶品だよ、本当にいい。なのによ…」


「ところで?」


「どうして肉料理が一つもないんだ…

おいしいお酒のためのおいしいおつまみはお酒に対する基本的な礼儀だろ!」


「おい、おごってくださったのにそんなことを…!」


「ああ、悪かったな!

俺はここで長い間を生きていたから食欲もエルフたちと似てきてね。

肉料理がないのはないから思いきり注文しとけ。」


「面目ございません…」


「でもよ、この店の店長がエルフなんだ。

こんなまずい草だけ何百年間食べるためには料理実力が必須だ。

食べてみたら好きになるよ。」


その言通り、俺もオフィーリアもおいしく食べている。

お肉じゃなくても、チーズや卵くらいは使ったし。

ルメナもいつの間にか、自分の注文した肉は見向きもせず、自分の皿までこっそり持っていって食べてしまった。


「お先にお食事中でしたよね。」


「来たな、ロメル。君たちが遅すぎるんじゃないか。」


「この人たちは、さっきのあの方々ですね。」


「こちらも恩人だから。お互いに挨拶しろよ。」


「ハインツです。先ほど手伝ってくださってありがとうございます。」


「働いたんですよ、何を。お構いなく。」


「ところでかなり遅くなったのにまた何か起こったのか。」


「さっき言ったあれです。また、ささいな騒動があって…」


「硬派のやつら、俺たちが嫌なら無視すればいいんじゃない?!

どうしてわざとあんなことをするんだ!」


「声を…」


でもノリスの発言にあっという間に居酒屋が騒がしくなる。

人間も、関係なさそうなエルフも声を出す。


「この前余計な言いがかりをつけて返品したやつがあったんだ、ちくしょう!」


「隣に住んでいたやつがけんかに巻き込まれて腕が折れた!」


「同じ種族って恥ずかしいよ、あんな奴ら!」


すごいね。

たった一言でここまで火がつくとは。

このていどならけんかが起こってもおかしくないはずだが。

ノリスに聞いてみるか。


「積ってる恨みが多いそうですね。今まで暴動が起きなかったのが不思議なほどです。」


「まあ、いろいろ問題があるから…」


「やっぱり人間なのが問題なんでしょうか。立場の問題ですか、それとも力の?」


「最も大きな理由は硬派なやつらもエルフなのが問題だ。」


「ことがよく分からないですね。」


「穏健派って人間との平和を追求するエルフの総称だろ?

でも中には穏健派でありながら、エルフの優越主義を信じるエルフたちもいるね。

彼らは自分たちが弱く愚かな人間を保護してあげなければならないと思っている。

ところが、人間がエルフに反旗を翻したら、彼らはどんな行動を取るのだろうか。」


穏健派でも再び派閥が分かれるのか。

それなら今の状況が理解できる。

人間の立場では穏健派の支持が必ず必要だ。

だからこそ、自分たちが先に手をつけにくい立場になってしまったのだ。

幸いなら、穏健派でも派閥が分かれているなら、強硬派でも派閥が分かれている可能性が高い。


「それで何が起こったの、ロメル?」


「モンスターの所有権をめぐって争いが起こりました。

強硬派が勝手に戦闘に割り込んでモンスターを横取りしたと言いますね。

逆に強硬派は、自分たちでなかったらモンスターの撃退は不可能だったと言って退かなかったのです。」


「最近そういうことが多いね。まさかまたバイロンのやつか?」


「はい…」


「あいつだけは本当になんとかならねんだ?

これで何回目だ?」



「バイロンは誰ですか?」


「硬派なやつらの行動隊長みたいなやつだ。

あらゆる所で事故を起こしている。

しかし実力があり、周りにいつも連中があるのでむやみに触ることが大変だ。」


「衛兵が困るくらいなら相当な実力でしょうね。」


「冒険者レベルでいえばB級上位…いや、A級か。」


「なるほど。困るほどの実力ですね。」



バイロンか。

知ってる名前が出てきてくれたね。

テラの頭から抽出した情報にあった名前だ。

テラの情報と今の話を推合してみる。


あんなことをしたらかえってエリゼの憎しみを買うだけだ。

しかし、それに気づかず、むしろ脅迫し続けるつもりのようだ。

おそらくエリーゼがセムスまで来たことが、窮地に追い込んだのだと思っているようだ。

バカめ…


「とにかく君たちもバイロンだけは避けるように。

訳もなく、絡まっていいものはないから。」


「そうさせていただきます。」


「…なんで私を見てるの?」


「そうだな、自分の胸にきいたら?」


A級か。

接触するようになれば確かにうわさが立つだろう。

危機になるかもしれないけど…

機会にもなり得る。


この時、黙って聞いていたオフィーリアが初めて口を開く。


「こんなときにエリーゼ・フェブリーが出てくれれば…」


この一言で、飲み屋が静かになった。

今のその言葉が沈黙の呪いだったけ。


「最近セムス近くで目撃されたとの噂はあったよね。

あくまでもまだうわさですが」


「確実に彼女が前に出てくれるなら、この葛藤は終わるでしょう。

ただ、彼女がどちらに立つかによって悲喜こもごもとするでしょうが。」


エルドリームの当事者たちも、エリーゼに対する立場については十分承知している。

天秤にかけられる最後のおもり、それがエリーゼだということを。

そして、そのおもりの行方が分からないということも。


「私、よけなことを言い出したんですか…?」


「よくわからないな。」


見る見る沈んだ酒場の雰囲気。

ルメナが席を蹴って立つ。


「さあ、そんなのはここを出て考えようぜ!

今は飲んで活気に満ちた姿を見せてこそ、強硬派の奴らもへこたれるんじゃない?!

あんなやつらがいくらそうしたとしても倒れないという意志を見せてみろよ!

私を倒せるのはお酒だけだ!」


「お嬢さん、よく言ったな!その通りだね!」


「よし、みんなでグラスを持って!

ああ、エルドリームの平和と酒の神様をために乾杯!」


ルメナによって再び活気づく酒席。

こんな点一つは本当に生まれつきだ。

ストレートな言葉で直接人の心に響く言葉を言う。

私も少しは余裕を持つようにしよう。

ところで…


「あのままではまた酔いそうな勢いですね…?」


「ルメナ、まだコナド実、残ってるぞ。」

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