4-12 デートはいつでも難しいこと
中心街に入ると、オフィーリアが手をつないでくる。
「…え?!」
「何を驚くんですか、デートじゃないですか?」
「いや…思ったより大胆だなと思って…」
「あなたがいなかった1年間、どんなに愛情に飢えていたか知らないでしょう?
やっと平凡に幸せで笑えますね。」
こんなことを言われると恥ずかしくても手が離せない。
それにこういう笑顔も反則じゃんかよ…
それより、このような俺の気持ちを知るはずのない人々は、俺たちに目を奪われる。
カップルのように見えることもあるだろうが、やっぱりオフィーリアのルックスが一役買っているんだろう。
残った手でずっと頭だけ掻く。
もう少し歩くと雑貨店が見えてくる。
近くに行くとすでにお茶のにおいがし、外のテラスでお茶を飲んでいる人たちも見える。
「いらっしゃいませ」
「お茶の葉っぱや香草を買いたいのですが。」
「ごゆっくりご覧ください。」
「あ、みかん茶もありますね。蜂蜜に漬けたんでしょうか。」
「本当にみかん好きだね、飽きない?」
「そういうクリスさんの好みとかないんですか?
勇士のころは、食べるだけで感謝していたころですから、そっちの好みはよく分かりませんね。」
「甘みはあんまり好きじゃない。」
「えっ?!甘い味は正義ですよ?」
「逆に、好みは辛口かな。」
「そんなものを人が食べてもいいんですか?」
「なんだよ、それは。失礼だろ。
君こそ甘いもの、あんなに好きになるな。すぐ太るぞ?」
「ムム~ウン、デート中にそんなこと言うのが一番失礼なことですよ!」
「おすすめならハイビスカスをおすすめするよ。
甘党にはぴったりだから。」
「甘みと合う香りだから?」
「酸っぱくてそれもそうだけど、糖分吸収を防いでくれるんだよ。」
「…初めて、なぜ私がクリスさんのことを好きになったのか分からなくなりました…」
その一方で、まさにハイビスカスの方をよく見るオフィリア。
気になるみたいだね。
「ああ、女心がわからないんですね。」
いつの間にか店員が来ている。
「デート中ですよね?それでは、おすすめしたいことがあるんですよ?」
興味が湧く。
「どんなものですか?」
「これです。」
見た瞬間、どんな表情をするかわからなくなってしまった。
濃い桜色の花だ。
「ヘロナ花。主な使い先は強心剤と血液循環、そして…」
「よく知っていますね。それでは他の用途も知っていますね?」
「なんですか、これ。あれじゃないですか、これ。
精力剤として使う…」
「ええ、知らないふりは。もう全部しっているのが、これを1~2回使ったわけじゃないようですが。」
そして、むかつくな笑顔でこう話す。
「彼女がすねたときは、これ一発なら万万歳ですよ?
夕方、お酒一杯とともに寂しさをなくし、精神的な愛の後に続く肉体の…」
「オーケー、そこまで!」
なぜか勝手に暴走してしまう店員から逃げ出す。
デートってこんなに大変なのか。
「どうしたんですか?」
しかし、大変だと言ったらもっと大変になるのは目に見えているから、口をつぐもう。
出てきて街を散歩しながら夕食のための食堂を探しているところに、聞き慣れた声が。
「酒をもっと持ってこい!お前なんかに私が負けるもんか!」
「…心配された通りですね。」
両手でグラスを持ったまま飲んでいるルメナが見える。
酒の賭けでもしているようだ。
「止めましょうか?」
「ほっといて。いま止めたらかえって怒るから。」
と言ってはいるものの、気になるのはしょうがない。
やっぱり近所で食べた方がいいか。
周りでも一番高級なレストランを選ぶ。
店員が案内し、ウエーターまでついたレストランだ。
席に座るとメニューが置いてある。
「クリスさんはどんなことを…?!」
「ウゥッ…」
「どうしたんですか?!どこか痛いんですか?!」
「…そう。」
「はい?」
「こんな店は初めてで、雰囲気に押されて死にそう…」
オフィーリアが呆然とした表情をする。
「宮廷で働いてたじゃないですか。この程度で…」
「宮廷や貴族たちの生活とは違う。
公的な仕事のために行く食事やパーティーは、ただ自分の体に行けば、そちらが自分で準備してくれたから。」
でも、こんなにプライベートで来るのは初めてで…
俺の話を聞いて、オフィリアがメニューを読んで店員を呼ぶ。
「まず、アペタイザーとスープでは、ジャガイモをソテーで調理し、その上に茹でた貝柱をのせてください。
スープはナッツスープにハーブピューレを追加。
メイン料理では、外だけをスモークした鮭をスライスし、その上にレモンとグラインディングしたコショウを。
そしてアヒルを丸ごとローストした後グレイジングまでお願いします。
デザートはみかんのママレードをのせたケーキに、ワインはクラウザーホリデーで。
「はい、少々お待ちください!」
今度は俺の方で呆然とした表情をする。
「何か言霊でも唱えた?そして、それをあの店員は全部聞き取れた?」
「私はこんなところに慣れていますから。
家がそんな家庭だったので。」
「俺は君の言ったことの半分も分からなかった…」
「なら、どうして無理しなからこんな所に来たんですか?
特にこんな所に来なくても大丈夫だったんですよ。
出任せで、街角露店でもいいです。」
「デートだろ、俺も男としてのプライドが無いわけじゃないんだ。」
「ふぅん…」
「無理してみたということさ。結局失敗だな。」
「そんな人が喫茶店ではよくそう言いましたね。」
「その反省も兼ねてここに来る勇気を出してみたんだ。」
「……プフッ。」
突然笑い出すオフィーリア。
「何がそんなに面白いんだ?
はい、田舎者の平民で面目ありません、お嬢さま。」
「アハハ、そうじゃなくてこの人も弱点があるんだなと思いましてね。」
「?」
「私の知っているクリスさんは毎回何でも知っていて、何でもやりこなす人でしたから。
そんな人が思いも寄らないところで弱点を持っているのを見ると、ふふっ。」
しかし、その笑いに物笑いは全くない。
「これからも一緒にすれば、もっとたくさんのことを知っていくことになるでしょう。楽しみですね。」
「俺が明らかにすると思う?」
「弱点があるから私とルメナさんと一緒にいるんじゃないですか?」
「うぅ…」
「そして、弱点があれば、それがどんなことでも、必ずお手伝いしますから恥ずかしがらずに教えてください。」
「…それはいいけど、ルメナには話さないで。
あいつが知ったら一週間は笑い者になるから。」
「それもいいですね。二人だけの秘密。」
そして前菜が出る。
「どうですか、こんな料理は好みに合いますか?」
「…もう弱点が明らかになった。」
「?」
「ここにある焼きナス。ナスは嫌いんだ…」
「…ガキですか?それはお手伝いできません。」
食事を終えて出て行た。
「幸い、ルメナが暴れなかったね。」
「今日のデートの邪魔になったら、ちょっと小言を言おうかと思ったのに、残念ですね、フフッ。」
「どうしているのか一度見てみようか。」
さっきルメナがいた飲み屋に行ってみたが、ルメナの声は聞こえない。
店を見渡すと、ルメナの様子も、他のパーティーの様子もない。
店員に聞いてみよう。
「もしかしてここにいた人たちがどこへ行ったのか知っていますか?」
「あ、他でまた飲むって言いながら会計していかれたんですけど?」
……ルメナ!!!!
「どこに行ったか知っていますか?」
「それは私もよく…」
危ない…
これは確かに…
「大丈夫でしょう。あのルメナさんじゃないですか。勝てる人が…」
「いや、俺が心配することは別のことよ。」
「?」
「ルメナの奴、毎回そうやって事故を起こしていたずらをする気でいっぱいだけど、事の成否に関わることには厳しい方だよ。
だから正気ならいったんここで待つか、少なくとも共鳴石かテレパシーで連絡したはずだ。
そうしなかったということは…」
「まさか···」
「どれだけお酒を飲んだんだ、あいつ!」
「ルメナさんが酔ったら危ないですか?」
「あいつとドレンテにいるとき、酔っ払ったのを見たことがあるよ。
ややもすると、今日この都市が全部壊れるかも知れない。」
「?!?!」
「ルメナの機嫌が悪くなる前に探さなければ!」
その頃ある酒場。
「はっはっ、全部私の前にひざまずいて!これで賭けは私の勝ち!」
テーブルの上に立ったまま完全に酒漬けされた人々に勝利宣言をするルメナ。
「うひひ、勝った。クリス、見てるかい?!これが私なのよ!」
「ああ、疲れたね。家に帰ろうか?あ,出て来たっけ?」
「何言ってんだよ! 私はまだ酔ってない!話もまともにするじゃん!」
酔っぱらいの見本を示すルメナ。
「この人をパーティーに入れるのは考え直したほうがいいかも…」
人たちがついに万古不変の真理に気づく。
ルメナがパーティーに入ると疲れるってことを。
「ちょっと風に当たってくるね。」
酒で赤くなったルメナが暑さを感じ始める。
店の外に出る。
「ふう…星が100で…200で…」
路地に入るルメナ。
そして。
「動くな。大声も出すな。」
「...?」
「命が惜しければ、素直についてこい。」




