4-10 討伐戦
「弱い」
人影のない道。
テラの周りには人々がどっと倒れている。
このような所での争いぐらいなら、大きな問題は起きないだろう。
これを狙ってこちらに来たものでもある。
先に飛びかかってきた奴らが愚かものだ。
すでに貧民街の方でも噂が広がっている。
今倒したのは20人ほど。
一人が疑って動員されるものではない。
一応リーダーに見えるやつに近づく。
「ちぇっ、やっぱ無理かよ…」
「別の意味で無理だな。」
「ひいっ!」
「この情報の源が誰か知っているか?」
「知らない…俺たちも他の連中から聞いたんだ…」
「なら、その連中は誰だ?」
「ノックウッドの連中らだ。ここから近い所にアジトがある。場所は…」
「なるほど。あいつらに問い詰めてみようか。
よく聞け。俺は噂の主人公じゃない。この事実を広めろ。
仕事の成果によって再び剣を振り回すかもしれないから真面目にやれ。」
短く話して席を立つ。
ノックウッドという奴のところへ行く。
この建物だ。
内側が騒がしい。
かなり大勢いるようだ。
ここで騒動を起こせば、必ずここにいるといううわさが再び広がる。
しかし、それがどうだというのか。
それより先にうわさのもとをさがして壊す自信がある。
ためらうことなく建物に入る。
やくざたちがおしゃべりをしたりお酒を飲んだりしている。
その話のテーマは当然うわさ。
そして一人二人と気づき始める。
「あいつ、まさか…」
「そうでしょ?」
「自分で金塊が転がってきてくれたな。」
だんだんテラを囲むやくざたち。
気にしないまま建物の中央に行く。
「ノックウッドって誰だ?」
「俺だ。」
太った男が前に出る。
「おまえか?そのうわさを広めたのが?」
「そうだ!わざわざ来てくれてありがとう!」
その言葉に何の迷いもなく剣を抜くテラ。
「一度だけ機会を与えよう。本当のことを言え。
そのうわさの元は誰だ?」
「生意気な奴!この人員を相手に戦ってみるのか?!」
「チャンスは終わった。」
「捕まえろ!」
人々はテラに向かって武器を向けようとしている瞬間、テラは振り向く。
そして剣風が吹き、人々を押しのける。
そして、すぐにノックウッドに向かって走る。
剣が腹に突き立てる。
「うああっ!」
「脂質のせいで剣が刺さっていない。この程度の傷ならまだ死んではいない。」
テラが淡々と語る。
「ただしこの剣を突き詰めると話が違う。
臓器が破られれば、生きる確率は急激に下がるから。
誰がこんな噂を広めるようにしたんだ?
お前のようなごみがまき散らすようなうわさじゃない。そういう恨みもなかったし…」
「ううっ…ある女が…」
「女?」
「赤い髪に赤い目…お金をあげるから噂を広めるように言ったんだ…」
「どうしてそんな噂を?」
「知らない…俺たちはお金さえもらえ良いから…
そんなことは言ってくれなかった。」
「どこにあるのか知っているのか?」
「城のホックラー通りにいるから、もしお前を見つかったら訪ねて来いと…」
ついにノックウッドの船から刀が抜かれる。
ほっとした途端, もう一度剣が突き刺さる。
「クアア!どうして?!」
「もし罠とかなら、全身にこんな風に穴をあけて殺してやる。」
今やっと剣を倹集に入れる。
それにもかかわらず誰も飛びかかっていない。
悠悠と建物をくぐるテラ。
ホックラー通りか。
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「どうしてこんなことになってしまったんだ…」
3人でクエストを受けて城外に出た。
もちろん、私が受けたクエストではない。
ルメナが昨日即席で受けたクエストだが、その内容はややこしい。
キャンセルするのも困るからこうなったんだけど。
「私だってこんなことになるとおもわなかったんだ。もう怒らないで。」
「…わかる。ただ焦っているんだ。」
「そちらも時間がかかるでしょう。
そう思って心が楽になるようにしましょう。」
「クエストに集中しようぜ。まず、今日は…」
「そこ、早くついてこい!」
「はい!」
今日のクエストは、 B級モンスターである『インテニーボア』の討伐。
よく食べるイノシシだと思えばいい。
ただ、その大きさが半端じゃないので、むやみに放置しておけば周辺の生態系が崩れてしまう恐れがある。
最近他からここまで移動したようだ。
当然、E級の我々が受けることはできないので、討伐隊の補助としてついて行くことにした。
今四つのパーティー、20人が討伐隊に参加して目的地に向かうが…
「あのう、昨日の試合、見たんだよ。」
「どう?うちのパーティーで入ったら、今日得る戦利品は全部あげるよ。」
「割り込みするな!僕たちのパーティーに来るのはどう?」
「あ…あの…」
人気満々だな…
オフィーリアが周囲の関心を独り占めしている。
助けてくれという顔で俺を見つめるが、無視する。
本人が断る方法を少しは身に付けておいてほしい。
「...」
「ルメナ、俺の顔になんかある?」
「お前の好みって、もしかしてネトラ…」
「一発殴ってやろうか?」
森に着くのはすぐだ。
今日のリーダーに選ばれたB級の男が、名前はワイザー、クエストを説明する。
「さて、ここからは真剣に取り組むことにしようぜ!」
他の人も気合いを入れる。
ただし、俺たちのパーティーだけは例外だ。
気合いを入れる必要もないが、それより気になることがある。
もしインテニーボアがあったら、少しでも地から振動が感じられるはずだが、それがない。
俺たち3人は心配ないけど、残りの討伐隊にとって、B級のモンスターの気配に気づかないことは致命的な結果につながる。
インテニーボアは鋭敏なやつだ。
少しでも脅威を感じたらすぐに攻撃してくるだろう。
単純に眠っていたり、 ご飯を食べてるところだったらいいんだけど…
森の中に入って行く。
しんと静まり返っている。
気味悪いほど。
「他のモンスターたちも見えないね。」
「インテニーボアに、押し出されたんだろう。」
「それとも狩られたか…」
自分たちだけで騒いで進む討伐隊。
俺もピンと来るところがない。
元魔王様は何か知っているだろうか。
「ルメナ、君は思い当たることある?」
「何が?」
「あえてインテニーボアがこの森にやってきた理由。」
「ありきたりだ。餌のことよ。」
「このあたりでは特に荒廃した地域はないんだけど?あえて移動する必要が…」
「だから餌がもっと必要になった理由が…」
この時、他の場所と異質的な風景が目につく。
荒れ地になってしまった土地。
土以外は残っていない。
「近くにある。全員警戒を緩めるな。」
ワイザーが言う。
ただ、ここまで来ても、まだインテニーボアの声が聞こえない。
その時草がごそごそする音が聞こえる。
全員が緊張したままそこを見て、ただイノシシが飛び出す。
「なんだよ、ただのイノシシか…」
「これから狩りをするやつに比べるとかわいいね。」
討伐隊が緊張が解けて笑って騒ぐ。
ルメナだけがこの様子を見てすぐ警戒態勢に入る。
「やばい…」
「…まさかあれか?」
「そう、それだ。
あのイノシシ、インテニーボアの子だ!生まれて間もない!」
ルメナが全員に知らせる。
ルメナの言葉に人たちが凍りつく。
「これが子だと?!」
「あのインテニーボアの子だ。
この大きさであるのが当然でしょ。
この森に来た理由が子供たちの餌のせいだったんだ。
そして、子だって油断するな。
普通の成体イノシシよりも強いから。
それでもやはり問題は…」
地面が鳴り始める。
「親のインテニ ーボアだけど。」
森の木々が倒れるのが見える。
そこに見えるのは巨大な岩のような形。
そして周りの石ころのような形。
インテニーボアの群れだ。
親一匹に、子が四匹に、ここにいる奴までして五匹。
「怒ってるね。こいつを脅かしてるんだと思ってるみたいだな。」
ルメナがのんきに話す。
「戦闘準備!子は無視しろ!
親だけつかめば残りは何とかなる!」
ワイザーが叫。
すぐ陣形を整え始める。
「あのバカが…!」
ルメナが再び叫ぶ前に、討伐隊とインテニーボアが激突する。
語尾の突進は詰まった。
タンカーが前に出て、その前に防壁とバフを追加する。
「よし、ではさっさと…」
ワイザーの話が切れた。
あちこちで悲鳴が聞こえる。
子イノシシの攻撃に遭った人たち。
「子も危ないと言っていたのに。
恐らくD級の危険度にはなるって。」
ルメナが情けないように首を振っている。
瞬く間に乱戦が展開される。
子たちが飛びかかって陣形が崩壊し、親が崩れた陣形をかき乱す。
「あはは、面白いね。」
「そんなに笑うところじゃないんじゃないでしょうか?!
早く助けてあげないと!」
「忘れた?私たちはE級のサポーターとして参加したこと?
適当に死なないようにしてあげればいいって。
訳もなくでしゃばっては面倒なことを作るのはやめよう。」
「ムウン…!」
オフィリアが不満そうに頬を膨らませながらも、すぐ基礎的なバフを与え始める。
オフィーリアのバフがいるから死ぬことはないが、あれぐらいのバフではインテニーボアを倒すのは無理だ。
「といっても手を拱いているわけにはいかないじゃない。」
「俺が手を使ったからってポイントをもっと貰えるの?面倒なのはいやよ。」
「当たり前だろ?何を言ってるんだ?」
「高ランクモンスターの素材は 受け取ってくれないって言ったじゃん?実力行使も困るし。」
「子も高ランクか?」
その言葉に目の火種が生き返ったルメナ。
怖い…
「ほんとだ…
あの貴重なポイントをほかの奴らにやるところだった…」
ルメナが直ちに魔法弾を撃つ。
人に突進していた子に命中した魔法弾。
そのまま倒れる。
慈悲心ないな。
力の調節も全然しなかったし。
人人はあぜんとした表情だ。
そんなこと気にするルメナでもない。
続く3度の魔法弾で、子が倒れる。
「では…」
「最後は俺が。」
俺の魔法弾も子に命中する。
「おい、クリス!」
「なんだ、不満ある?
もっと早くキャスティングしたらよかったじゃん?」
「ちぇっ、ひとつぐらいはいいだろう。」
ただ、このように口げんかをする余裕とか、子たちを倒したことに感心する余裕はない。
倒れた子を見た親が泣き叫ぶ。
そして、さらに猛烈に暴れ出す。
「距離を広げながら堅牢!あんなに暴れたらすぐに疲れるよ!」
ワイザーが再び指揮を下すが、
「攻撃しろ。自分の体力が先に落ちて、抵抗もできず死にたくなければ。
野生の体力を侮るな。」
再びルメナが作戦を修正する。
「自分のレベルもなにも分かっていない奴らね。
あれと持久戦をするのが可能だと思ったの?
一日中走り回る動物なのに。」
「本当に詳しいですね。」
「200年間研究したのが錬金術と魔法だけではなかったから。
仮にも魔王だったから、このくらいは知っておかないと。」
3人で適度にバフとヒールを使って保持力を高める。
そうして戦闘が続く。
弓を射る。
しかし、手っ取り早くも避ける。
魔法を使う。
あらかじめ距離をあけて射程をはずす。
近接攻撃をする。
すべての攻撃を牙で打ち抜く。
獣とは思えない利口な戦い方だ
そしてそろそろ限界だ。
「…飽きた。あれじゃ一生が過ぎても勝てないよ。」
「その言葉、いつするか待ってたよ。」
「わたしが倒してはいけない?」
「弱点もない?それで倒したと言えばなんとかごまかすことができるのに。」
「うーん、それでいいかな?」
ルメナが決めたように前に進み出る。
「みんな、必殺技準備。」
「なんだよ、急に…」
「黙れ、ちょっと。
お前が指揮して今このありさまだろ。」
そして、また飛び付く準備をする インテニーボア。
「よし、あんな勢いなら通じるよ。」
「一体何の作戦を…」
「もう一度言うよ。黙って攻める準備。」
そして、インテニーボアが走り出す。
ルメナがタイミングを計る。
「私が合図したら攻めろよ。3…2…1…今!」
それとともに煙のカーテンが大きく立ちのぼる。
これに驚いたインテニーボアが急旋回している。
「かかった。」
そして、足で地面を蹴ると岩が湧き上がる。
盛り上がった岩にぶつかって立ち止まったインテニーボア。
「さあ、総攻撃!」
これと共に、すべての攻撃がインテニーボアに食い込む。
「素早い動きを封じれば、何とかなるよね。」
「賢いな。こんな戦術をすぐ考えるなんて。」
「イノシシは突然前に何かが現れたら、障害物が現れたと認識するんだよ。
そして、本能的にそれを避けようとする。
それを狙って初突進の速度を落とし、もう一度本物の岩で動きを止める。
最初から岩を使っていたら、その岩ごと砕いてしまっただろうから。」
この程度なら魔法の水準も適当だよね。」
傷ついたインテニーボアの動きが確かに遅くなった。
「ここまえやってくれたのにダメなら、冒険者はやめなさいよ。」
総攻勢をかける討伐隊。
もがくが、抜け出せないインテニーボア。
そしてルメナが手を伸ばす。
「最後は私が。それが敵に対する礼儀よね。」
光がインテニーボアの体を貫く。
倒れゆく巨体。
「討伐終了。」




