4-2 エルフの国
話は続く。
オフィーリアから始める。
「私もそれなりにエリゼさんの消息を聞こうとしてみましたが、結局何の消息もありませんでした。
最後に聞いた知らせが半年前。
エルドリームの首都、『グリエル』から姿を消したそうです。
でも時々目撃情報は聞こえてきます。
一番最近は、このミノルタでも目撃されたようです。」
「理由はやはりあれか?」
「はい。エルドリーム議会を強硬派が掌握したんです。」
「そうだと思った。仮面舞踏会の時、偶然に聞いたんだ。」
「モグモグ、エルドリームなら私の時代にもあった国だね。
まだそんなふうに生きているのかよ、その耳大きいやつらは?」
エルフの寿命は少なくとも人間の5~6倍程度まで。
俺とオフィーリアはもちろん、ルメナが生まれる前から何百年も生きてきたはずの存在だ。
「ところで強硬派なら、やっぱり言うのも変わったことがない?」
ルメナの質問に出てオフィーリアが同時にうなずく。
「エルフが最も優越した種族で、他の種族はすべてエルフより下等だ。」
「それによって、人間を排斥し差別する思想を持ったエルフたちです。」
エルドリームは、セフィエルの中でも最高に歴史のある国の一つだ。
それほど人間との交流も多かったが、憎悪の歴史も深い。
人間より強い魔力を持っているから怖くて。
人間より派手な美貌が欲しくて。
反対に、エルフは人間より少ない数に怖くて。
このような理由で、エルフと人間の争いは何百年間も続き、その時間の中で強硬派の誕生はある意味で当然のことだった。
もちろん強硬派がいるとすれば穏健派もいるものだ。
そもそもエルドリームはエルフが主で、人間が住んでいない国ではない。
当然、人間と平和に暮らすエルフも多い。
とにかくエルフといえば、森で平和に過ごすイメージがあるが、実際は違う。
人間の国よりも激しい葛藤とも言える。
「強硬派が議会を掌握できた理由は何んだ?」
「エリゼさんの立場が問題でしたね。」
「…そうだったか。」
「ねえ、二人きりが分かる話はやめろよ。私も気になるんだって。」
いつの間にか食べ物を半分ぐらい食べてしまったルメナがまた話に割り込む。
いったいあの体のどこに、あんなに入るんだろう。
「それを本当に全部食べようとするのかよ…」
「二度と食べることに関しては何も言えないようにしてやる。」
「頑張って。」
「ところで、エリゼっていう子の何が問題なんだ?」
「確か、自分でも隠す方だったから。」
「私たちもその時までは全然知らなかったですからね。」
「ねえ?」
「それでは姿をくらました理由がそのせいかもしれないか?」
「たぶん両方全部だと思うんですけどね。」
「...」
カアン!
「うあっ!」
俺とオフィーリアの頭を空けたフライパンで殴るルメナ。
「だからその問題って何なのかって聞いてるのに、おまえらだけで!」
もう一度私が大騒ぎしたら言うつもり!?」
「...お前も気づいてたんじゃない?」
「気づいたって何が気づいた。
早く話さなければ、本当にどんなことが起こるかしれないよ。」
これにオフィーリアが語ってあげた。
「エリゼさん、ハーフエルフなんですよ。」
「ハーフエルフ?」
「私たちも最初はエルドリーム出身の人間だと思っていたので、ルメナさんも気づかなくてもおかしくないですね。」
「なんだ、エルドリームについてよく知ってるように…」
ルメナはこぶしを取り出したので話するのをやめた。
「ハーフエルフだったんだ。武器も弓で、魔法もほとんど使わずに弓スキル中心だったから。
知らなかった。 耳も人間型だったし。」
「魔法をよく使うほうではないと言っていました。 耳は魔法を使うとエルフのようになります。
本人自らなぜ言わなかったのかは後になってわかったんですが。」
『ハーフエルフ』
エルフと他の種族のハーフ。
歴史の中でも非常に珍しい種族である。
「かつてのハーフエルフなら、確かにエルフと人間の両方から排斥された存在だったけどね。」
「そうだったな。エルフには汚い血が混じったという理由で、人間たちには自分たちを見下すという理由で受け入れられなかった種族。」
でも、時間が経って、このごろは認識がよくなった方んだ。
ハーフエルフって言っても、普通の人間よりもはるかに能力があり、エルフと人間の間の仲裁者としても絶えず活動してきたから。」
「認識が良くなったのに、何が問題なんだ?」
「認識が良くなって問題なんだ。
ハーフエルフとして勇者の地位を得て魔王を討伐した最強の射手。
こうなった以上、エルフも人間も味方に引き入れようとするのが当然だよ。」
「エリゼさんのアイデンティティに対する答えを求めているのです。
エリゼさんはエルフか、それとも人間か。」
エリーゼが自分をエルフだと言うと強硬派のエルフは喜ぶだろう。
最強のエルフが人間を捨てて否定したのだから。
反対に自分を人間だと言ったら穏健派と人間は喜ぶだろう。
最強の人間がエルフを捨てて否定したのだから。
「結局お前との戦いでエリーゼはエルドリームの象徴になってしまったんだ。」
「それでその重圧感から逃げたというのか。」
「それが最も大きな理由だろうが、もっと大きな理由は強硬派。」
オフィーリアが説明を続ける。
「エルドリームの現在の強硬派と穏健派の割合を考えると6対4程度です。
勢力的には穏健派が勝てないのです。
その足りない部分を埋めるのが人間の力です。
そうだとしても、完璧に対等ではないのです。
なのに強硬派が議会を掌握した理由は…」
「力で押しやったんだ。」
「正解です。そもそも、影響力のある強いエルフたちほどエルフに対するプライドが高く、人間と混ざることを拒否する方ですから。」
強硬派が議会を掌握したため、現在エルドリームの政策決定権は強硬派にあります。
おそらく、これを武器にエリゼさんと交渉したでしょう。」
「交渉ではなく脅迫が合う表現のでは?」
「とにかく強硬派の味方になることを拒否し、中立としての位置を守り続けようとするものと俺はみている。
強硬派も追い上げたりはしないだろう。そこまで刺激したら、すっかり背を向けてしまうかもしれないから。」
ルメナが言葉を遮る。
「要約したらこれか。
エリゼというハーフエルフがいるが、あいつの故郷であるエルドリームは現在強硬派と穏健派が争っている。
この状況でエリゼに双方とも自分たちの味方になってくれることを要請。
そんな中で強硬派が議会を掌握し、あれこれエリゼを煩わす。
それで現在逃避中。」
「そんなわけさ。」
「頭痛いな。ここにお酒3つ追加!」
「お前はまだ食べるものが残っているように見えるけど?」
「…休憩だ。
それでこの話をした理由は何だっけ?」
「もしかしてエルドリームを通過することに 問題があるんじゃないかと思ったんだけど…」
「もしかしてまたそんなことを考えているの?」
「…そうなんですか?」
「…考えがなかったわけではないけど、まだ起こってない問題に触れるわけにはいかないだろ。
今度のことは人間とエルフの葛藤だ。
人間である俺たちが割り込むのは慎重にしなければならない問題だ。」
「まぁ、状況っていつでも変わるもんだから。
気が変わったら言え。」
「私が手伝うことがあれば、いつでも、いくらでも言ってください。
それをためについてきたんですから。」
「ありがとう。」
エルドリームのエルフと人間の葛藤。
それを解決してあげることが、今の俺にできることなのかは確信が立たない。
酒気も帯び始めたので考えがまとまらない。
今日はこの辺で休もうか。
「…まだお皿が残ってますね、ルメナさん?」
「何だ、何でお前がそんな口ぶりで言うんだよ。」
「いえいえ、自分が全部食べられると自信満々におっしゃったすごい方にはこんな言い方が似合いますよね。」
「…ごめん」
「よく聞こえないんですけど?」
「ごめん!実はさっきから限界なんだ!
お酒も、何とか喉元から押しのけようと注文したのに、やっぱり無理!」
「こうなると思った、このあほう!
早く部屋に上がって、横になって休め!
これからは食べ物を適当に注文して。」
「オフィーリア、支えてくれる?」
そして、ルメナが立ち上がった瞬間。
いっぱい食べた人が急に体を動かせばどうなるだろうか。
復讐するという心が天罰になってしまったのかな。
汚い天罰がわたしを襲った。
部屋に上がって来た。
記憶消去魔法を使いたい…
まだ衝撃が消えない。
現在、ルメナはオフィーリアが看護している。
ただ、食べ過ぎは肉体的な傷でも病気でもないから、回復魔法は押して使わない。
消化剤のようなものだけあげば、別にすることはない。
しばらくすると、オフィーリアが私の部屋に入ってくる。
「ルメナさんは落ち着きました。」
「あのアホのせいでご苦労さま。」
「いよいよ二人だけの時間ですね…?」
「…なんか目が怖いですけど?」
その言葉にいつものように頬を膨らませるオフィーリア。
そして俺が座っている椅子の横に座る。
「何ですか、怖いなんて。 女の子にそんなことは失礼です。」
「今、瞳がハートの形じゃなかった?!
そんなことが人間にできる?!」
そしてオフィーリアが俺を抱きしめる。
「?!」
「これくらいは大丈夫じゃないですか。」
「あの…うるさいって誰かクレームつけるかもしれないし…
何と言うか…この作品ひとまずR-15で…」
「今日はそういうことで来たんじゃないんですよ。」
「あ、違う?」
「そういうのはゆっくりやることにしました。もう絶対に逃げないと約束を貰ったんですから。
ゆっくり楽しむつもりです、フフフ…♥」
「やっぱり怖い!!」
「とにかく今日来た理由は」
また椅子に戻って
「約束を守ってください。」
「…?」
「私がなんでこんなに鈍い男を好きになったでしょか…」
オフィーリアは首を横に振ると、また切り出す。
「生きて帰ってきたらやってくれるって話があったんですよね?」
「…ああ」
「やっと思い出したようですね。」
最近、あまりにも多くのことが起こって、忘れていた。
どう考えたら恥ずかしいことだ。
約束を守るために生きて帰ったのに、その約束を忘れていたなんて。
「じゃあ、今話してあげればいい?」
「はい。」
「その時も言ったが、聞きっ放しで居眠りするな。」
そうして俺の過去をもう一度オフィーリアに話し始める。
興味深い目で俺の話を聞くオフィーリア。
まるで夢を見ているような目で俺を見つめている。
そして10分後…
本当に夢の国へ旅立ちました☆
全体の話の1割はしたっけ。
「…こうなると思った。」
本当によく寝ている。
起こすのがごめんと感じれるくらい。
「へへ…そんな…大胆すぎるじゃないですか…」
「何の夢を見るんだ…」
椅子で寝ているオフィーリアを持ち上げて俺のベッドに移す。
幸せそうな表情で眠るオフィーリアの顔を眺める。
このような表情を見たくて、オフィーリアをそこから連れてきて、今の旅行をしているのだ。
「こうなったら、おれがオフィーリアの部屋で寝ることにしようか。」
「いやーん…子供は息子二人に娘二人…」
「おやすみ、オフィーリア。」
部屋の戸を閉めて明日の年を迎えに行く。




