3-22 それでも君に聞きたい (第 3章完)
ニコラは自分の部屋で、椅子に座ったままただ待っている。
ルメナが今度だけは自分を連れて行けないと言ったから。
必ずまたやって来ると言ったので静かに待っている。
お姉さんはこれから発つ。
これから自分も心配だが、姉の方はもっと心配だ。
言いたいことが…
「言いたいことがあるなら行かないとさ。」
驚いて椅子が後ろに倒れてしまう。
見上げれば…
「ハインズさん、戻ってましたね…」
「もうクリスって呼んでいいよ。
そっちが本当の名前だから。」
「そうですか。ここに帰ってきたということは..…?」
「全部終わった。何も心配しなくてもいいよ。
万一、そんなことがあったら、アフターサービスもしてあげるから心配するな。」
「そうですか…」
一体何をする人だろう。
1年間誰も、オフィーリア自身さえ解決できなかった問題を、たった5日で解決して去ろうとするこの男は…
「そういえばもうこれは本当に必要ないだろうな。」
そして仮面を脱ぐ。
ニコラも何度か見た顔だが、今は何か違う神秘的な感じがする。
「じゃあ、見送りに行こうか。」
ニコラの手を握る。
ワープを使ってすぐに家の外に出る。
「あのう、それで本当に何をしている方だったんですか?」
「さっき名前を言ったよな?クリスだって。
そしてお前のお姉さんの反応。
最後にテレポートができる魔法の実力。
この程度ならわかった?」
「……?!!?!?!?」
「うあっ、体を揺らすな!
ワープ中にそんなことしたら大変なことになるかもしれないよ。」
「勇者パーティーの…?!
確か1年前に死んだ?!」
「と知られているようだけど、こうやって生きて帰ってきたぞ。」
「…事情は聞きません。
隠遁祭期間のことだけでも頭が痛いから。」
外に出るのはすぐだ。
もう一度西を通って外に出る。
これでシュベルテナとはお別れだ。
しかし、必ず戻ってこなければならない。
俺が望む世の中にはここもなければならないから。
いつのまにかルメナとオフィーリアがいるところまで戻ってきた。
「戻ってきたな。」
「…アルベルトやつらはどうなった?」
「治療だけしておいたよ、君の恋人が。」
オフィーリアの方を見る。
「切断の復元までは治療しませんでした。
クリスさんがそうした理由を知っているから。
でもやっぱりほっとくわけにはいかなかったんです。
いくら憎くてもお兄さんであり、生きていける人たちだから。」
その言葉に笑いながら答えてあげる。
「君の望むようにすればいいよ。
そうするためにそこから連れてきたんだから。」
「本当に大丈夫?このまま送っても?
ごみは最後までごみよ。
あいつらを生かしておけば、必ずいつか後患になると思うけど。」
ルメナはまだ疑心が残っているようだ。
「そうよ、生かしてあげるし、武器も奪わない。
エピックとユニーク級の装備は欲しいが仕方ない。
すでに戦争を止めるよう脅迫した時点で、俺が持っている交渉材料はすべて使ったと考えてもいい。
これ以上は不公正な取引になる。
あいつらを殺したり、国宝級のアイテムを持っていくようなことになれば、本当に追い上げられるかもしれない。
失う可能性がある状況なら恐怖を感じるが、失うと怒りを感じるから。
なによりも、苦しんでいた本人が許しただろ…?
正直に言って、殺したい心はまだそのままだけど、、オフィーリアをために我慢してるんだ。
人を許したその優しさを踏みにじりたくない。」
と言ったが、治療しなかったら、絶対ショック死しただろう。
ただ、当事者だったオフィーリアに、最後の審判の権利を与えたかった。
そして、オフィーリアは1年間の悪夢を許した。
俺が知っている、あのオフィーリアらしく…
また思えば、そいつらは目が覚めてどうなるだろうか。
失われた体を見て反省するか、それとも憤怒するか。
それもまた一つの妙味かも知れない。
ルメーナと話している間にニコラはオフィーリアに近づいた。
ニコラが口を開く。
「姉上…」
「ニコラ…」
オフィリアもニコラを見つめる。
暫時の静寂。
先に口を開いたのはニコラ。
「いってらっしゃい。」
…え?
「それで終わり?」
ルメナがあきれたように問う。
「話したい話は母の墓前で全部したんですから。」
「……本当に大丈夫だよね?」
「はい! ご心配なく!」
「それじゃ行ってくるよ。」
オフィリアがニコラを抱いてくれる。
これとともに朝日が再び昇る。
……
出発する前に一つ聞かなければならないことがある。
オフィーリアに近づく。
「一つ聞きたいことが…」
言葉が終わる前にオフィーリアが今度は俺を抱いてくる。
「このまま話してください。」
「…俺がお前を連れて来たのはお前が自由に暮すことを願うからだった。
俺について来いと連れてきたのではない。」
「何ですって?!」
抱いていた俺を押しのけて怒ろうとするオフィーリア。
そうするオフィーリアの両手を繋いで話を続ける。
「最後まで聞いてくれ。
いろいろ事情があって、私はこの世を変えるための旅行をするつもりだ。」
「…」
「旅行と言っても楽しいことよりは大変でつらいことの方が多いと思うよ。
君の性格ならそういう人たちの醜い面をなくすどころか、見ることさえ苦しいだろう。
もう一度言うけど、俺は君が幸せに生きろと、そこから連れてきたんだ。」
そして一番聞きたかったことを問う。
「難しくて、大変で、苦しいな旅行になると思うよ。
でも俺について来たい?」
何も言わずにオフィーリアが俺のところにやってくる。
そして頬を回しては…
手のひらが!
?!?!?!?!?!
肌が触れ合う軽快な音が響いた。
「キスでも考えましたか?」
「おい! お前マジで!」
「アホみたいな質問をするから叱ったのです。」
「…ということは。」
「質問する前から知っていたじゃないですか。」
問い直す。
「後悔しない?」
「あなたこそこれから後悔するでしょう。こんなお転婆に耐えるには。」
「本当に大丈夫?」
「もう聞かないで。」
「…幸せになる自信ある?」
「妻の幸せなら夫の内助をよくしてくれるものじゃないですか。」
いつもなら当惑して怒っただろうが、今度は頭を撫でてあげる。
「誰が君の旦那なんだ?」
「何ですって?!私に指輪もあげたくせに、今さら言い逃れしてるんですか?!」
「それはあくまでも贈り物だったぞ?
プロポーズの指輪じゃなかった。」
「…いやらしい!バカ!覇気ない!金玉なし!」
「最後はひどすぎじゃない!?」
「怒るべき方は私です!」
また始まった。
そろそろ出発しなければならないので、早く黙らないようにしないと。
だから唇に奇襲的にキスする。
「....!!!!」
「俺は俺の家族をこんな世の中で過ごすようにするのは嫌なんだ。
だから一生懸命努力してみて。
その時はブーケにウエディングドレスもセットで持ってきてあげるから。」
「ふえ…」
「……何だ、ルメナ。その目は?」
「青春は熱いな…」
「うるさい、幼児体型。」
「うわぁ…」
「ニコラ、お前はいったいなんで…」
「…義兄。」
「こいつらの前でやるんじゃなかった…」
もう出発の時になった。
シュベルテナの兵士たちが来る前には出発しなければならないから。
「じゃあ行ってみる、ニコラ。
元気に過ごしなさい。」
「クリスさん。ルメナさん。」
「なに?」
「私が本当に欲しがっていたお兄さんとお姉さんができた感じで幸せです。」
「俺は理解できるけど、ルメナが姉さん? 妹じゃなくて?」
そして久しぶりにルメナの拳が腹に突き刺さる。
「今まで我慢してたら長く我慢したよね。
これからはまた言葉に気をつけろよ?」
「ぜひまた来てください。
お兄さん。お姉さんたち。」
「そうだね。また会おうよ。」
お互いに違う方向に歩いて行く。
「うぅ…眠くてたまらない。」
「お前だけ眠れなかったわけじゃない。もう少し我慢しろよ。」
「ダメだ。休憩時間!」
勝手に休息を取るルメナ。
止む無く止まることになった。
…
「こいつ、眠から起こる気がぜんぜん見えない…」
「やっぱり疲れてたんでしょうか?」
疲れ果てて寝ている俺を見ている二人。
ずっと呼んでみて触ってみるが、起きる気がない。
「理由は色々なあるけど、やっぱり戦闘が問題だったみたいね。
手ごわい奴らだったから。」
「戦闘の痕跡だけを見れば圧倒的だったようですが?」
「だからもっと疲れたんだ。S級4人をわざわざ圧倒する。
簡単なことではないじゃん。」
「相変わらずおバカさんですね。」
「だから君も私もこいつについてきたんだけどね。」
岩山から向かった方向は南側。
本来の目的は俺の国カラゼンに向かうことだったが、そのためには東に行かなければならない。
しかし、東にも戦争が起こっていた。
その手紙で戦争は終わるが、すぐに通行ができるほど後始末が速くはないだろう。
だから戦争がなかった南に迂回して行くのだ。
「う~ん…」
「どうしたの?」
「南に行くなら久しぶりに友達でも会えるかなと思いまして。」
「誰のこと?」
「勇者パーティーの射手、『エリーゼ·フェブリ』です。」
冒険は新しい方向に向かう。
夕やけの野営
「久しぶりに食べるけど、やっぱり料理の腕は絶品だ!」
「恥ずかしいですね。」
「私もシチューもっとちょうだい。」
「お前は女子力で負けても何の感じもない?」
「…言ったな。明日は私が料理してやる。
必ず今度は美味しいはずだから期待しろって。」
「食料品捨てるな。家庭教育の基本じゃない?食べ物を大切に!」
「ルメナさんの料理…女子力…負けられない…」
こうして第3章も完結しました。
次回の話は検収を経て、来週から掲示するつもりです。
第3章では、キャラクターの心理と、それに応じた心理戦に焦点を当ててみましたので、次章では、少しは冒険者の日常らしいお話を書いてみました。
第4章になってから冒険者としての物語が始まる小説なんて、自分で考えてもあっけにとられますねWWW。
もちろん、今回も馬鹿な陰謀は存在します。
そして7月10日までは連載周期がもっと不規則かもしれません。
資格証試験の日程がそう決まってしまいました。
このため、不足していた時間がもっと足りなくなりました。
すみません…
とにかく、ずっと見ていただいている方々にお礼の言葉を申し上げ、来週またお目にかかります。




