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ほらふきのイデア  作者: カナマナマ
第 三章 『愛する君だから』
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3-19 陽動作戦

一旦,大急ぎでニコラを連れて逃げたオフィーリア。

しかし、引き続き王宮の方に気を遣う。


続けて戦闘の音がアルデンに鳴り響いている。

一つ一つが全部オフィーリアの胸を刺す。

今、自分にできることは何だろう…


「ほっといて。」


「あなたは…」


「フルネームは初めて言うね。 私は『ルメナ·エルナス』。

事情があって、あいつと一緒にしているよ。」


「…本当に一人にしておくつもりですか?」


「自分でそう言った。誰も介入しないようにしてくれって。」


ルメナがけんかの音がする方を見つめる。


「一応君は守らなければならないことがあるから争ってはいけない。

君が戦ったら駄目なのを分かるからあいつが代わりに戦ってるんじゃない?

もし君がたたかいしたら、君を愛してやった人たちが、明日になれば反逆者になるかも知れない。


そして私もあいつを助ける考えはない。

あいつらを打ちのめすのはクリスがすべきことで、私は別に頼まれたことがあるんだ。」


「頼まれたことですか? 私も手伝います!」


目を大きく開いてルメナに寄り添うオフィーリア。

プレッシャーを感じるほどルメナに食って掛かった。


「…君の姉ちゃん、元々はこういう性格だったの?」


「私も久しぶりに見て驚いています。」


「まあ、絶対来ると言うなら止めはしないけど、隠れ魔法はちゃんと使えなさいよ。

後ろめたいことだから。」


「はい!」


「…普通、こんなこと聞いたら、どんなことって聞かないの? 私は君が少し怖くなるんだけど?!」


「それでは、しばらくお屋敷にお戻りになってよろしいですか?」



屋敷に引き返すと、すでに大騒ぎになっている。


「オフィーリア様、どんなこたがあったのですか?」

「婚約式はどうなったんですか?」


「お父様はお休みですか?」


「オフィーリア様のお仕事で、目が覚めていらっしゃいます。」


応接間に行けばルイスが座っている。


「お父様…」


「オフィーリア以外は出てくれ。」


他の人たちが皆出て行く。


「お父様、私は…」


「家を出るんでしょ?行って来いなさい。」


「…反対されないのですか?」


これにルイスはため息をつく。


「君にいつもすまなかった。私までもアルベルトが怖かった。

あの子が君とニコラを傷つけるのを恐れた。

君が心に傷を負っても君が無事であることを願った。

だから今まで君の肩を持ってあげられなかった。

君が心に傷を負ってもいつかは治ると信じていた。 君は強い子だから。

でも結局時間が薬ではなかったようだな。」


「…」


「武道会の話は伝え聞いた。

君を守ってくれる人か?」


「…はい」


「何かあったら頼りになる人か?」


「はい」


「...君を愛してあげられる人?」


「……そう思います。」


やっとルイスが笑う。


「じゃあ、行って来い。

私の心配はしないで、ニコラがあるから。」


「…いってきます。」


そして部屋を抜け出るオフィーリア。


「君のお母さんと同じなんだ、本当に…」



自分の部屋にまっすぐ行くオフィーリア。

そこで魔法スタッフを握る。

母譲りの、勇者パーティーでも何度も私の命を助けてくれた品。

そして聖職者の服装。

自分のアイデンティティであり、思い出を共にしたもの。

その他には服だけ何着か準備する。

準備は終わった。


最後に小さな額縁を眺める。

小さな額縁に入れられた肖像画には幼いオフィーリアを、20年後ならこうなるだろうオフィーリアが抱えている。


「いってきます、ママ。」


外に出るとルメナだけがいる。


「ニコラは連れて行けない。隠れ魔法が不可能だから。

私がカバーしようとしても、実力者にはひっかかるだろう。」


「これからどこへ行くのですか?」


いつもの小悪魔らしい笑い方でルメナが答える。


「王宮に戻って王を拉致するつもりよ。」




またここは、俺とアルベルトの連中との対決。

今俺がしていることは逃亡。

そんな俺の後を着実に追ってきている。


「けがをしたからといってすぐ逃げるのか?」

「そんなやるくせに大口をたたいた?」


俺の体にはまた、もう3つの負傷ができた。

一つはわき腹、一つは太もも。そして肩。

確かにS級は怖いな。

それに加えてにアイテムまで…


二つはアルベルトによって、一つはフェルナンドによってできた傷。

セルジオとアベルのやつは傷は作らなかったが、徹底したサポートで、結局隙間を作った。


「これくらいで立つと苦痛なく殺してやる。」


「断るよ。」


後ろへ火炎を放つ。

もちろんこの程度は牽制程度にしかならない。


おれは今、王宮と繁華街の境界を出入りしながら王宮の周辺を回っている。

…どれだけ時間が必要なんだ。

その時、共鳴石が鳴る。


「ああ、やっとつながる距離だね。

今から王宮に入るから、君も始まって。」


「確認。ワープ。」


あっという間に距離をあける。


「あいつ、ワープを?!」

「まだあのくらいの力がのこっていたのか?」


聖騎士といっても根本は騎士だ。

魔法使いや聖職者を魔法では勝てない。

魔法使いのワープを追うのは無理がある。


「ちぇっ、どうするんだ?」


「早さのバフをできるだけ全部使う。」


瞬く間に俺との距離を縮めてくる。

しかし、攻撃をする前に、再び距離が開いた。


ワープを適切に使えば追い付くことはない。

敏捷性バフを使って速くついてくるが、攻撃が可能な範囲まで来ればワープのクールタイムが終わる。

再び距離を開く。


「ちくしょう!どこまで行こうつもりなんだ?!」

「シュベルテナから脱出しようとするみたいだな!?」

「そうしたからといって追撃を止めると思うのか?!」


いつのまにか城壁まで残り少なくなった。

しばらく空を見上げて月の位置に方向をチェックする。

時間的に見てあの位置ならこっちの方が西の方だな。


さらに必死に追ってくるアルベルトグのループ。

この城壁をすぐ超えるのはあいつらでは不可能だから。


「ワープ」


一気に城壁の向こうにワープした。

昨日の経験が役立った。

そして関門を見ながら待つ。

2分ほどしてからドアが動く。


今になって出てくるね。

再び追撃戦が再開される。

ますますシュベルテナから遠ざかっていく。





……


「もう少し…」


もう少しだ。

目的地までは。


いよいよ目的地が見える。

目的地はシュベルテナに来るときに見た岩山。

頂上は非常に平らで広い。

そこにワープする。


「ふう、これくらい来たらいいだろう。」


ここで見えるシュベルテナは、今や小さなほくろのようだ。

そして粘り強く追ってきたアルベルト一味がついに現れる。


「逃げるなんて、だめでしょ?お前の命に俺の出世がかかっているのに。」

「それを離れてもどうせ死ぬ罪があふれているけどね。」


まだまだ元気があるようだ。

S級の称号を与えるに値する。

しかし、今日、その称号に対するプライドを全部壊してやる。

伸びをしながら話す。


「追いかけてくるのにご苦労さま。わざわざ地獄まで来てくれるなんて。」


「ここに落とし穴でも作っておいたのか?」


「いや、罠なんかにかかる実力じゃないってのは分かる。」


そして言う。


「これから俺が本気を出すということだ。」


その言葉にしばらくお互いを見つめながら俺をあざ笑う。


「そういう実力があるなら最初から使えばいいんじゃないか?」

「傷まで負いながら使わなかった理由が何だ?」

「もう残った手段がそんな情けない嘘しかねのかよ?」

「効果はあるな。面白い冗談だった。

あまり苦痛を感じずに殺してくれるかもしれないな。」


俺にゆっくり近づいてくる4人に理由を話してあげる。

そして気づかないほどゆっくり、しかし確実に魔力を引き上げる。


「簡単なことだ。村をむやみに壊したらオフィーリアがものすごく怒るよ。

俺はテメラのようにむやみに人を殺さない。

多分ここらならシュベルテナに影響はないだろう。

また、シュベルテナでも手のつけようのない遠い距離だ。

つまり、お前らを思いきり踏みつけてもいいってことだ。

何より最初から本気だったらお前らが怖がってついてこなかっただろうから。」


もう一度4人のプライドを傷つける。

今までの追撃戦ではらはらしていた忍耐が崩壊する。


「遺言は終わったのか?」

アベルが前に出る。


「もう笑わせることもできないな。死ね。」

再び4人が一度に飛びかかる。



…さぁ、始めようか。

祭りの閉幕を告げる血みどろの虐殺を。


いつの間にか俺の前までもう近付いた4人。

詠唱をとなえる。


ゼフィロスブーマー(屠殺の飆)


風の刃が剣にぶつかり、フェルナンド、セルジオ、アルベルトの3人がそのまま地面を転がる。

そして。


『グラビタル·コラプス』


さっき王宮で使った魔法と同じ魔法。

だが、その威力は先とは非常に違っている。


「クアアッ!」


アベールの体が岩山に埋もれていく。

正確には体ごと岩山を貫いている。

心では立ち上がろうとするが, 指一つ持ち上げられない。


フェルクダス(神罰の雷聲)


空に向かって手を伸ばす。

空が一瞬輝いた。

そしてアベルに向けて腕を下ろす。


そして岩に埋もれて動けないアベルに、すべてを壊すような稲妻が走る。

稲妻の音は山の破壊はもちろん、アーベルの悲鳴さえ飲み込んだ。


「今回はよく焼けたな?」


3人の前に見えたのは完全に掘られてしまったくぼみの中に全身真っ黒に倒れたアベル。

そして今度は俺の方から先に残った3人に近付く。


「まず、一匹…!」

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