3-18 レジスタンス
アルベルトの体が震える。
脅しは無駄になった。
戦争で虐殺をすると、6ヵ国が襲いかかってくる。
兵員数、指揮官、武器の数まで。
勝算のある要素がない。
しかし、このために怖くて震えているのではない。
あえて自分を脅して、自分の手の中にあったカードを奪い取った目の前の男。
俺に怒ったのだ。
剣が俺の顔に向かって、すぐに魔法の防壁を作る。
剣が魔法の防壁にぶつかり、ホール全体を鳴らす。
「本当にせっかちだな、おまえ。」
「テメは絶対俺の手で殺してやる!」
S級の剣撃が俺を圧迫してくる。
マエスで戦ったA級より一枚上の実力。
だけど…
「攻撃が当たっていないぞ?もうちょっと頑張ってみろよ。」
たった一度の攻撃も当たっていない。
攻撃はすべて魔法の柵にはじき出される。
まず距離をあけて姿勢を取るアルベルトに俺が告げる。
「俺を見くびるのもいい加減にしろ。
そうでないと、本当に死ぬぞ?」
「くっそおぉぉぉぉ!!!」
特異な姿勢を取るアルベルト。
くるか。
鬪気を集めて、俺の方に刀を向ける。
『テレイン·プルター』
地を薙ぎ払う剣撃。
地を掘り散らしながら私を飲み込むために近づいてくる。
「おっと、こわいね。」
足で地面を蹴つと同時に、手前の地面が盛り上がり、斬撃の向をずらす。
そして剣撃はあっけないほど簡単に詰まってしまった。
「怖いだけだった。」
「ここは避難完了だ。これからは思いきり暴れてもいいよ。」
ルメナの方をみるとルメナ以外には誰もいない。
貴族はすでにみんな逃げたようだ。
正確には全てではなく、数人強者の雰囲気を漂わせる奴らが残っている。
あいつらも含めて敵は11人か。
たしかに、あいつらの立場から見れば、俺はアルデンヌを倒すと脅す狂人だろう。
「長くは言わないよ。俺が用事があるのはあの4人だけ。
残りとは争いたくない。」
しかし、誰もそれを聞かずに、俺に殺気を吐く。
…面倒になったな。
このような状況を予想しなかったわけではない。
この人数なら初めから…
だが、なぜがフェルナンドが人々を阻止する。
「私とアルベルト、セルジオ、アベルを除く残りは退くように。
各自散らばって、要人を守るように。
王子として命じる。」
「ですが、王子様…」
「俺たちの実力が信じられないのか?」
「そうじゃなくて…」
「それ以上は抗命と見なす。」
「…了解しました。」
人々がばらばらになる。
そしてフェルナンドが先頭に立ってやってくる。
「俺が一番こいつを殺したくなってしまったのに奪われるわけにはいかない。」
「そう?」
「一つ聞いてみよう。
お金を盗んだなら誰が一番多くのお金を持ってきたかも分かっているだろう。」
「ああ…それ?お前の予想通りよ。 お前が勝った。」
「当たり前なことだ。国庫まで手をつけて持ってきたんだから。」
「そんなこと誰が聞いてもいいのか?」
「言うとする奴はお前みたいに全部殺せばいいんだから。」
フェルナンドが飛びかかる。
これと共に4人全員が俺に剣を向ける。
カアン!
もう一度轟音が響いて、防壁にひびが入る。
一重の防壁を間にして、力比べが行われる。
「俺たち4人ともS級だ。果たしててめえが生き残れるだろうか。」
「そんなことはあらかじめ言ってくれたらいいのに。
ところでセルジオとアベルって言ったっけ?
お前らも本当に熱心に戦おうとするね。」
「お金では負けたけど戦闘では負けないんだ。」
「貴様がアルベルトと戦っているとき相談した。
こうなった以上、お前を殺したやつがオフィーリアを持つことに。」
「そうか?なら…」
『グラビタル·コラプス』
もう一度重力魔法で4人を吹き飛ばす。
「その逆に俺がお前ら全部をぶっ殺すと、オフィーリアは俺が連れて行く。
文句ないな?」
本格的な戦闘が始まった。
全部剣を使うが、S級なら魔法にもある程度は長けるに違いない。
何よりもアルデンといえば、聖騎士で有名なところ。
聖騎士という名称に合わず、ゾンビという異名が似合うほどの生命力を持っていて、防御に長けている。
ヒールと各種バフ。
つまり、これを崩さなければならない。
『インバイド』 致命打強化
確か中尉級の攻撃力バフだった。
さっきより一層強力な攻撃が防壁を強打する。
詠唱魔法はひとまず節約しようか。
牽制用魔法弾を作るが、威力は確実に作る。
この程度でなければS級には無理だ。
魔法弾を飛ばすが、簡単にふさがってしまう。
弾き飛ばされた魔法弾が当たったところは、まるで鉄球に当たったように砕ける。
そして、すぐ続いて攻撃が入る。
『インペイラー』
正確に俺の腹を狙って入ってくるセルジオの突き。
当たった瞬間、テラスを通って外に押し出されてしまう。
3人で防御し、隙が作られたら残りの1人が攻撃する。
どこかで一度見た戦法だな。
身を払って立って上がる。
「でも戦法を使って終わりがよくなかったんだけど、お前たちはどうなるかな?」
戦闘が再開される。
俺を四方向から取り囲む。
「両面とも極相性で攻める!」
「分かった!」
フェルナンドとアベルが両方に跳ぶ。
阻止しなければならないが、すぐ前でセルジオとアルベルトの攻撃が飛んでくる。
「ちぇっ!」
地面を凍らせて重心を奪うつもりだったが、滑る前に逃げてしまう。
そして、俺の両脇にフェルナンドとアベルが立つ。
『バーニングクローニング』
強力な火の塊が俺の方に向かう。
『アイスペイザー』
剣に鋭いつららがついて、これを振り回して俺に飛ばす。
片方は火、片方は氷。
頭を使ったな。
一方を対応すれば、もう一方をまともに対応できないようにするためだが…
これなら魔法の防壁じゃ足りないか。
ならば、こうすれば一発で防げる。
『クレイランパート』
俺の周りを土の城壁で囲む。
当然、火が塞がり、氷も塞がれてしまった。
「防御魔法はただ魔法防壁を作る魔法だけあるのではない。
まだ俺を無視しているか?」
今度の攻撃が塞がったのはあいつらも意外だったらしい。
雰囲気が変わる。
「本当に何をするやつだ。この程度の実力なら名前が知られているはずだが。」
「何をそんなことを問い詰めてるんだ。今さら。」
「知りたいことや欲しいことがあったら俺を倒してみろ。
それがお前たちのやり方じゃないか。」
そして挑発するように魔法弾を一つ飛ばす。
これに刺激されたのか、バフを追加する。
もっと強く、もっと速く。
「…そろそろ俺も攻めてみようか?」
とりあえず、今入ってくる攻撃から先に攻めるのが先だ。
防壁をそっと厚くして。
ノックバックがなくなるほどしっかりしたガードを作り出す。
これに対してあちらも新しい攻撃パターンを準備する。
ならば速攻。
チェーンライトニングを発動する。
稲妻魔法の速さと無影槍魔法が合わさって完璧に直撃する。
「こんがり焼けたかな?」
直ちに電撃のチェーンが切れる。
ダメージがないと誇示するかのように首を左右に振る。
「まだ足りないみたいね。」
しかし、ダメージがなくてもS級の自分たちに一発食らわせたことは大きな衝撃だったようだ。
アルベルトが俺を見ながら仲間たちに話す。
「こいつ、確かに強い。
俺たちが適当にやったとしても、S級4人の攻撃を防ぐのはおかしいんだよ。」
「俺たちと同じS級くらいだというのか?」
「どうするんだ?部下にやらせてS級たちの身の上を調べろというか?」
「そんな時間なら戦闘が終わっても残るだろう。」
「やっぱりそっちを使うしかないか。」
言ったのはフェルナンド。
何か奥の手でもあるのか。
「これからゆっくり殺してやる。できる限り防御してみろ。」
「今までずっと殺すって言ってただろ? でも、まだ生きている。言うのばかりではなく行動で見せてみろよ。」
フェルナンドを除いた3人が出場する。
「まる見えじゃない? 3人が隙を作って、フェルナンドが強力な一発を準備する。」
「なら阻止してみろ。」
3人が一度にとびかかる。
やっぱり特別なものはないか…
さっきと変わらない攻撃だ。
「透きを作らなきゃいけないんじゃない?この程度ではもう足りないよ。」
「時間を稼ぐだけで十分だ。」
3人が退いてフェルナンドの剣が俺に向かう。
『ドレメルスナックル』
剣が回転するように高速のたつまきが剣に漂う。
目で見ても威力のあるそうな攻撃だ。
防御壁を厚くするか。
その瞬間、フェルナンドがさらに一言叫ぶ。
「貫通効果賦課!」
防御壁を破った剣が肩をかすめる。
この戦いで初めて血が流れた。
「それを瞬間的に避けるなんて、すごいな。」
「今のそれは…」
「知ってるんじゃないか?」
確かに今のそれは魔法の詠唱ではなかった。
しかし、何かを発動するための言葉であることは明らかだった。
単なる気合ではない。
それだけでは私の防御を突破することはできない。
結論は…
「あの剣、めっちゃよさそうだけど?」
アイテムの効果。
「正解。俺の剣の名はペネントリーズ。
攻撃に貫通の効果を与えてくれるエピック級武器だ。」
「王子様らしいな。」
今、貫通を素早く分析してみる。
「元の威力よりは弱いのか…
それなら、元々の攻撃を一点に集中させて穴を作り、残った攻撃力をすべて浴びせるやり方だ。」
「…なんて気に入らない頭脳なんだ。」
正解のようだ。
「…悪いけどお前以外にまたエピック級の武具持ってるやつがいるか?」
「エピックがそんなにありふれたものだと思うのか?」
「俺の予感では他の奴らの装備の中にもユニーク級はあると思うけど」
「あれくらいなら本当に頭脳がもったいないな。」
アルベルトが乗り出す。
「俺の剣は聖騎士団に受け継がれる剣。
ユニーク級の武器だ。」
「効果は?」
「君が直接斬られて調べてみろ。」
斬撃が飛んでくるが、はやく逃げる。
「そしたら防具は全部スペシャル級だね。」
「それ以上があるかもんな。」
セルジオというやつが笑っている。
「金持ちのやつらってことか。
良い武具一つぐらいはセレブの心得ですというルールでもあるのか。」
「悔しかったらお前も一つ持てろ。」
今度はアベルの攻撃。
今回も避ける方を選ぶ。
しかし、それが問題だった。
アベルはまやかし。
本当の攻撃はアルベルトが。
攻撃が俺の足をかすめる。
足の方もちゃんと氣をつかっていたのに…
そうすると、その剣効果は追加的な身体能力バフなのか。
単純だが、効果はたしかだ。
4人が余裕を持って俺を見つめる。
まるで今の2度の攻撃は始まりというように。
攻撃が続く。
本心を発揮するかのように今まで以上に猛烈に。
…よくないな。
こうなると知ってたら、 俺も俺のローブを取り出した方が良いか。
今のような剣撃は防げる。
しかし、さっきのようにスキルを伴った攻撃なら、詠唱魔法が必要かも知れない。
しかし、それを知っているように時間を与えない。
俺もそれなりに戦術を考える。
「でもアルベルトとフェルナンドさえ注意すれば…」
結局、主な攻撃はあの2人。
2人だけ牽制したら···
これを知っているかのようにフェルナンドとアルベルトが一緒に襲いかかってくる。
「ちぇっ!」
スキルを使って襲いかかる2人を食い止める。
彼と一緒に作っておいた魔法の防壁はすべて崩れてしまう。
すなわち無防備。
セルジオの剣撃が俺の船の真っ只中を狙う。
「ううっ…」
剣撃が届く直前に防壁を作ったが、完璧に防げる防壁を作るには時間が足りなかった。
そのまま防壁がもう一度割れて後ろに飛んでしまう。
底から起きると周りの風景が変わっている。
…もう王宮区域からも出てしまったか。
いつのまにか戦闘区域は王宮を抜け繁華街に進入している。
そして、それに関係なく、俺を追う狩人たち。
ウサギを駆っていくオオカミの群れのように近づいてくる。
「自信が満ちあふれてるな。」
気がついたら傷がすでにたくさんできた。
傷口がずきずき痛む。
今完治させる時間はない。
簡単な回復魔法で止血だけしておく。
「では少し早いがこのタイミングで始めてみようか?」
そして俺は…




