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ほらふきのイデア  作者: カナマナマ
第 三章 『愛する君だから』
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3-17 黄金に切られた鎖

顔を見た瞬間座り込んでしまった。

何の声も出ない。

でも、その目は俺をちゃんと見つめている。

俺も体をかがめて目線を合わせる。


「何でこうしてるのよ?」

そしてオフィーリアの仮面を剥がしてあげる。


「こんなことが起こったら、『何で今までからかったんだよ』と頬を膨らませて怒るのがオフィーリアらしいだろ?」

そして流れる涙を拭いてあげる。



「だからもう泣かないで。」



今にもまた泣き出しそうな顔で俺を見つめるオフィーリア。

そんなオフィリアの頭を撫でてあげる。


その瞬間、誰かの攻撃が俺の方を向いて飛んでくる。

けれど、その間にルメナが割り込む。


「ロマンスを知らないみたいだから、教えてやるよ。

泣いている女と、慰めている男がいれば静かに見物するのが一番なのよ。」


俺もこうしてはいられない。

とりあえず仕事を全部整理するのが先だ。


「ちょっと待ってくれ。」


身を起こして立てようとするが、オフィーリアが俺をつかまえる。

「行かないで」と言うように。

俺を捕まえた手を優しく握る。


「もうどこにも逃げないと誓うから、すぐ戻るよ。」


それとともにオフィーリアが手をゆっくり離す。

瞬間、アルベルトが俺の方に飛びかかってくる。

ルメナも逃してしまった人間の範疇を超えた速度であり、確かに殺気のこもった剣。

俺の心臓を狙う角度で飛びかかる。

だが…


「まだ話終わってないから待ていろ、ぶしつけのわんこ。」


アルベルトの方に手のひらを広げたら、アルベルトが反対側の壁に突き当たる。

壁にすっかり身が刺さるほどの衝撃。

他のやつらも俺に飛びかかろとしたのをやめ、一応アルベルトの方に行って様子をうかがう。


「行ってくる前に一つだけ聞きたいことがある。」

また仮面をかぶりながらオフィーリアから背を向けたまま問う。


「俺だと疑って、ある程度気づいていたのは知ってる。

俺がバカみたいにヒントをあんなに撒き散らしたから。」


そして本当に聞きたいことばを切り出す。


「どうして問わなかった?どうして仮面をはがそうとしなかった? 俺がクリス·レヴァントだということを。」


確かあの時に目が合った瞬間からオフィリアも確かに直感したに違いない。

俺だと。

だが知ろうとしなかった。

どうして。



「…だから。」

小さな声に力が加わる。



「万が一、仮面中の顔があなたじゃないなら耐えられなかったはずだから!」


「こんな日々の中で希望を忘れたまま生きてきたから!」


「そして…!」



「もう大丈夫よ。」

オフィーリアの言葉を遮る。


「最後に話したいことは俺も知っている。

その言葉の通りにするために行って来るよ。待ってくれ。」

そして、前に出て、最後の言葉を代わりに言ってあげる。



「本当にあなたなら、きっと私が助けてほしいと言う前に、私を助けに来てくれるから。」



そして、その通りになってしまった。

だから、これから始めよう。



「待たせたな。ゴミどもめ。」


4人と俺の見が会った。

かし、誰も先に動かない。


「お前何するやつだ。平凡な護衛ではない。」


「収納魔法を使うあの女も普通じゃねんだ。

収納魔法そのものでもハイレベルの魔法なのに、その宝物を全部収納したんじゃないかって。」


「ほらだろう。絶対トリックがあるはずだ。」


「でも油断するな。」


やはり実力はあるやつらだ。

ルメナの収納魔法と先の斥力魔法、その2つだけで相手の技量を計り、甘く見ない。

しかし、その判断力がどこまで耐えてやるか…


「はぁ…お前らのせいで息苦しくて死ぬかと思った。

オフィーリアをあんなにまでするなんて。


でも、残念だな。

お前たちが俺を殺す機会は、今言った通り、俺をもっと苦しめてストレスで殺す方法しかなかったのにさ。

本当はこのまま踏んで殺したいが、一度だけチャンスを与える。」


今日はいつになく感情のこもった声を出す。

宣戦布告を。



「どげざやれ。こん畜生どもめ。」


プライドのかたまりである坊ちゃんたちが、この言葉に腹が立たないわけがない。

だが、アルベルトがその言葉に飛びかかるのを阻止する。


「意外だな。いつも一番で、考えもせず飛びかかってきたあほうが。」


「俺が手を打つ必要もない。」


不機嫌に笑う。

それから、俺ではなく、他方へ口を開いた。



「オフィーリア、戦争で人々が死んでいくのを見たくないなら君があいつを殺せ。」


「君たちがどんな関係なのかは知らないけど、かなり格別な間柄だったんだみたいだな。」

……


「お互いに殺してみろ。好きな人に死んだらそれはそれで幸せじゃないか?」

………



「立ち上がれ、オフィーリア。そしてコイツを…!」


「もういいぞ、てめえ…」


アルベルトの言葉を断つ。

こんなに怒りに包まれたことがあったか。


「これからその舌を動かせないようにしてやる…!」


言葉が終わって、電撃を飛ばす。

だが、アルベルトの連中はそれを全部軽く防御する。


「たったこれだったか?この程度で俺たちに勝つんだと?」


「そんなはずが。

とりあえず、オフィーリアを安心させるのが先だからお前たちは遺書でも書いておけ。

オフィーリア! 今から俺の言うことよく聞け!」


息を吸って…

オフィーリアはもちろん、ホールのすべての人が聞ける大きな声で話す。


「ルメナ! 今日奪ったお金はどのくらいだ?!」


「多分80億… いや、最大100億リデムくらいにはなるんじゃないかな?」


「100億リデムか。その程度ならどの程度の軍備になるだろう?」


「よくはわからなくても、よく使えば、十万くらいは動けるくらいじゃない?!」


「よくきいたか、お前ら!

これから俺を防げなければ、俺はあの金をアルデンの敵国に軍備として与えるつもりだ!」


その言葉に会場が騒がしくなる。

パーティー場が修羅場と化していく。


「お前らが戦争を起こして人々を虐殺するって?オフィーリアの優しさを利用するために?

なら逆にやられるようにしてやる。


アルデンと戦争中の三国に対する支援はもちろんのこと、まだ中立を守る国々にも支援をして戦争を煽るつもりだ。

アルデンが国境を接する国は計6カ国。

いくら強国でも6カ国をすべて防げるか?

虐殺どころか国の滅亡を心配すべきだろう。」


こうまで言うと、他の貴族たちも俺に向かって声を張り上げる。

しかし、たちまちルメナの脅威に鎮圧された。

そして俺は表情がゆがんだアルベルトの連中に、事の顛末を公開する。


「そもそもお前たちがもらった手紙は俺がこうするために俺が送ったものだ。」


これを聞いて、求婚者グループは驚く。



「簡単だった。オフィーリアの筆跡は手紙でも何でも手に入れて調べればいいし、それを偽造することはなんでもないんだ。

同じように写すのではなく、まったく同じ筆跡の手紙を『作って出す』ことができるから。

印章は当主とアルベルトとオフィーリアだけが使えるんだと?

もう1人いるんだ、お前らに無視されたやつが。」


アルベルトがニコラの方を見る。

そのニコラを自分の後ろに隠すルメナ。



「手紙の内容を作るのも簡単だった。お前らと違って、俺はオフィーリアをちゃんと理解しているから。

オフィーリアみたいに文を書くのは簡単だ。

実際にお前たち全人騙されたじゃねか。

オフィーリアならそんな手紙を書いてもおかしくない聖女だから。



そうやって手紙を出したら、まんまとだまされてくれたよ。そうだろうと予想した。

慎重に考えていると、チャンスを逃すことになるから、事の真偽は二の次にして、とりあえずやらないと。


また友情なんか口から出すけど全部ウソなのも知ってるから。

議論などせずに別の奴らを踏める機会と思って金をかき集めることに血眼になった。


何よりも、自信があってよかった。

自分たちより優越した人はいないし、あえて自分を騙せる人はいないと思うやつらだから。

またそんな奴らだから、自分が騙されるとは思わないまま、負けられないと思ってお金を貯める姿が頭の中に描かれる。



お金をこんなにもたくさん持ってくることも予想した。

たぶん、一応お金を持ってきて、オフィーリアの心を得て、お金のことはあとに何とかごまかそうとしたんだろうな。

今すぐ騙したらオフィーリアに ばれるかもしれないから。


一人は下級貴族だが、対象の出身から貴族になった家、一人は王子、一人は大貴族。

お金を引き出すにも十分な家柄と地位。

何よりもオフィーリアを得るなら、家柄のレベルで支援してくれるはずだから。

そうやって、ものすごいお金をためて持ってきたんだ。



ま、一言に言って、つまりお前らの心理なんて俺にはまる見えってわけだ。



次に、お前たちがお金を集めてくると予想してそのお金を盗む作戦を立てた。

だが、腐ってしまった人性と違って実力はあるのが問題。

その程度ならさっきくらいの収納魔法を使ってしまうと違和感を覚える。

ほかにも緊張感で、もしかするとお金を確かめに来るか、ほかのやつのことを確かめに来ることもあるかもしれない。

ほかにも、あれくらいのお金を運搬すればはばれることは決まってるから、せめてここに来た貴族たちの口をふさぐことも必要だった。


つまりばれないような仕掛けが必要だった。

それで作ったのがこれ。」



小さなポーション瓶を取り出す。

水と言っても信じるほどの澄んだ液体が入っている。

薬瓶を開けたとたんに、中身があっという間に消えていく。

そして、俺の近くにいた人々が一瞬だけど、こう思った。


「…ま、どうなってもいいか…」


薬瓶を閉め直すや否や、このような考えは消えた。

このような考えが不意に思い浮かんだ。

そして、これが俺と係わっていることを、俺の笑いで気づいた。



「『ヘブンリインセンス(楽園の香り)』、この薬は素早く蒸発し、吸入すると感知する感覚が鈍くなる。もちろん、緊張緩和にも役に立つ。

一言で鎮静剤だということだ。

吸う瞬間、すべてが楽観的で肯定的に見えるようになる。

否定的な考えは思い浮かべることさえできない。

自分を狙う陰謀なんて考えられなくなる。


果たしてこれが効いているのかとオフィーリアに直接飲ませてもらったんだけど、効果はあるようだったぜ。

オフィーリアに効くならお前らみたいな雑魚には決まってる。

俺はもちろん、中和剤を飲んだ。」


「そんな強力な薬があるんだと?ふざけるな!」


「悪いけど、そういうのが得意なんだ。実際に今、俺の作戦は成功したじゃないか?

わざわざ無色無臭にするのに苦労したぞ。でも全部うまくなったから、そうした甲斐があるな。」


「それを徹夜で全部作ったのは私なんだよ!」


「わかるから、ちょっとじっとしてくれよ、こんな時は。」


「それを作るために私の部屋がめちゃくちゃになったんですけどね…」




「お前たちが全部着いた8時から薬をあちこちに撒いておいた。

そして人知らずに抜け出して、隠れ魔法を使って宝物の量を見計らってみた。

それからまた戻ってきて時間をつぶそうとしたら、オフィーリアにダンスを誘われてかえって役に立った。

俺がオフィーリアとダンスをすると焦ってオフィーリアにもっと気を使うようになったんだ。

それだけに他のことにはもっと気を使うことができない。


それで11時ごろにまた抜け出して、警備を全部気絶させて宝物を収納した。

機密保持のためにそれぞれひそかなところに隠れていたけど、そういうのを見つけ出すのはすぐだ。

もちろん、気づかないように魔力を調節しながら少しずつ詰め込んだ。


そうやってテメらを逆に脅すための材料を手に入れて、12時にこうしてオフィーリア救出ショーが始まったわけだ。



最後に、なぜこのような煩わしい作戦を展開したかというと、見たとおりだ。

この状況で婚約式なんか挙行できるんだ?


本当は王様の金庫をはたいてしまおうかと思ったんだけど、その程度では婚約式を止められない可能性もあるんだ。

混乱をしばらく隠してしまうか、無理やり敢行することもできるから。

だから、婚約式を止めるようにしようと思ったら、直接に現場で暴れたほうが確実だ。


他の理由と言えばこれだ。お前たちを無一文にするために。

いくら実力と血統があっても、お金無しで何かができるんだろう。


話しが長すぎだったな。

とにかくお疲れ様。

お前たちのおかげで、 こうやって軍備が集まったから。」


そして会場全体に聞こえるように再び叫ぶ。



「さあ、わかったか!?

これ以上オフィーリアを脅かせばこの国のお金でこの国を壊してやる!」

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