3-14 すべてを置いておく勇気
「…すべてを置いて?」
オフィーリアが問い返す。
「私がいなくなったらどんなことが起こるか想像できないんですか?」
「捨てるのではありません。しばらくの間下ろすだけ。必ずまた取り戻すようになります。」
「そのしばらくの間にすべてが変わる可能性があります。
二度と戻すことのできないことも起こるかもしれません。」
…その通りだ。
今はこれ以上話しても無理だ。
そんな人だから, まだ逃げなくてここにいるのだから。
説得するためには、オフィーリアが守ってきたことを代わりに守ってあげる何かが必要だ。
今の俺がそんなことをしてくれるのができるか。
「…話は全部聞いていました。」
その時ニコラがこちらに来る。
「逃げてもいいです。姉上、私が姉上の空席を埋めてみます。」
「何言ってるの。君がどうやって…」
「姉上がやってきたことは全部見ながら育ちました。姉上くらいうまくはできませんが、失望させない自信があります。」
「やめばさい。私のせいで君が苦労するのを私に我慢しろと言うの?」
「その言葉通りお返しします!」
ここにいる全員が驚いた。
この子がこんなに叫ぶのは初めてだ。
オフィーリアにとっても衝撃的だったようだ。
「私が苦労して不幸なら、姉上も不幸で悲しいということでしょう?
私も同じです!
姉上が悲しんで不幸になれば私も悲しくて不幸です!
本当に私のことを思うなら、もう自分のことを考えてください。」
静寂が続く。
オフィーリアが再び口を開く。
「君一人でお兄様を手に負える?」
「やりとげてみます。」
「どうやって?」
「姉上だけが人々の尊敬を受けてきたのではありません。
姉上の仕事を助けただけなのに、ある瞬間から私を従ってくれて、信じてくれる人たちができました。
これまでは私も問題があれば自分一人で引き受けようとしていましたが、今は違います。
皆と一緒に力を合わせて解決していきます。
他の人も姉上のためならきっと助けてくれると信じています。
姉上のおかげで甘えた臆病者はこうして成長しました。
もう私に少し荷物を分けてくださってもいいです。」
このようにニコラの言葉は終わった。
オフィーリアが口を開く。
「ハインズさん、後で12時になったら、一人で私と初めて会ったそこに来てもらえますか?」
「家の裏庭のそこですか…」
「はい。しばらく考えてそちらでお答えします。
とりあえず今は帰ってください。」
「……わかりました。」
これ以上何も言わずに山を下りる。
オフィーリアは再び十字架に祈る。
考えながらシュベルテナに戻っている。
オフィーリアを解放させる策略を。
ルメナもニコラも、何も言わない。
全てを俺に任せているんだ。
…やはり核心は戦争を止めること。
オフィーリアを束縛している鎖は、戦争のせいで流れる罪のない血。
これを止める方法を考え出さなければならない。
戦争を止める要素はたくさんある。
一方が勝利し、一方が敗北すれば止まるが、これは現在可能性がなく、あってもならないことだ。
第二は互いの和平や和親であるが、これも現在としては非現実的である。
最後に、どっちが勝利する見込みがないため、戦争をやめる場合。
俺が狙うべきやり方は結局、最後の方式。
アルデンが勝利できないようにし、戦争をやめさせるように作るのだ。
しかし、アルデンは強国だ。
現在、3国同時に戦争をしているほど強力な国だ。
戦争をやめさせるには、一挙に途方もない被害を与えなければならない。
まず、民衆の支持を受けている聖戦と認識されるため、扇動はできないだろう。
アルデンヌと国境を接する国は計6カ国。
残りの3国を巻き込んでアルデンヌを牽制させるようにするか。
しかし、これは慎重でなければならない。
戦争を防ぐために別の戦争を作ることはダメなことだ。
何よりもこれを実行に移る時間が足りない。
次に戦力を削減すること。
兵員の数、普及、能力のある指揮官。
戦争を可能にする3つの要素。
この3つをぶち壊す。
余った時間を考えるとこれ以外に方法がない。
しかし、これを一日で実行するにはどうすれば···
オフィーリア…結婚…貴族…欲望…傲慢と自慢…
「…それだ。」
この方法なら使えできる。
1日で可能であり、罪のない血を流さずに戦争をやめさせる確かな武器を手に入れることができる。
オフィーリアのためだと思ってやさしいすぎく考えていた。
これらのゴミを打ち砕く最も強力な武器を忘れていた。
一度動き出した歯車は回転し続ける。
瞬く間に戦略が頭の中で作られていく。
戦略は練られた。
あとは詳細な作戦だけ考えればいい。
気が付いたらすでに屋敷の前まで来ていた。
「俺が城門でワープをしたっけ…?」
「ぼんやりと城門の前まで行こうとするので私がワープした。
位置情報はさっき見ておいたので、一気に飛び越えることができるから。
感謝しなさいよ。」
「ありがとう。二人とも俺とちょっと話そう。」
お屋敷に帰った。
アルベルトは家にいないようだ。
運がついている。
「戦略は立てたけど、成功させるためにはニコラが手伝うことがたくさんある。」
「覚悟はしました。何でもおっしゃってください。」
「私はやることない?」
「当然あるさ。この作戦ではニコラが情報の核心。
実際の行動はルメナ、君が核心だ。
それでは作戦を説明する。」
頭の中に描いておいた作戦を取り出す。
作戦を聞きながら次第に笑みが大きくなるルメナと違って、ニコラは次第に口元が下がる。
「…とんでもない作戦ですね。そんな作戦が本当に成功できるんですか?」
「俺を信じられない?」
「心配するのです。」
「君は君だけ心配すれば大丈夫だ。」
いつの間にか12時をあまり残していない。
「それじゃ行ってくるよ。」
2年ぶりに再びオフィーリアに会ったそこに行けば、すでにオフィーリアは出ている。
「きましたね。」
「…答えはお決まりですか?」
「…あの子があんなに成長しているとは思いませんでした。
何かあると姉上を探して泣きながら走ってきたのが昨日のようなのに...フフッ。」
「私と初めて会った時は泣く寸前だったんですけどね。」
「ニコラはいい子です。」
「...」
「他の方々もそうです。
だからその方たちが私のせいで苦労しているのはやっぱり見ていられません。」
「その言は…」
「やっぱり逃げることはできません。
私の心を配慮してくださってありがとうございます。」
「.....」
オフィーリアが振り向いて一言を話す。
「もし結婚してもあなたなら大丈夫かも分からないと想像しちゃいました。」
「...私なんかがあなたに似合いますか?」
「これをあなたに差し上げます。」
俺に何かを投げる。
白金に星と月形のダイヤモンドをあしらった指輪だ。
「もう未練を持ってはいけないですから。プレゼントとして差し上げます。」
「…なら、これをお返しに。」
小さな瓶を一つ取り出す。
「睡眠薬です。こんな日はよく眠れないものですから。」
「ありがとう。」
本当に去りつつ最後に一言を言う。
「あの人を思い出させてくれてありがとうございます。」
それから自分の部屋に戻る。
…結局断られてしまった。
だけど…
だから安心した。
俺が知っているオフィーリアらしいな、優しい決心だ。
だから…
必ず俺が助けてあげる。
12時
「それではこれから作戦を始めようか。
ニコラ、一番、信用できる雇用人を説得してもらえる?
どんなことがあってもオフィーリアを優先してもらえる人。」
「何人かいます。」
「その中で最も対外的に顔が知られた雇い人を説得してくれ。」
「この条件なら、執事のゲロルトさんですね。」
「それならその人を説得して。
またオフィーリアが書いた文章や手紙があれば持ってきて。」
「ルメナ、お前は製作を始めてくれ。
声も出してはいけないし、どんな気配も出してはいけないけど、君ならできるよな?」
「私が誰だと思っているの?任せておけよ。
ただし時間は少しかかるよ。製造過程も厳しくなり、材料も限られるから。」
1時
「ゲロルトさん、ちょっとよろしいですか?」
「ニコラ様?この時間に寝ないで、どうのような?」
「…姉上のために、力を貸してくれませんか?」
「…おっしゃってみてください。」
「ふむ、これくらいなら草案は作られたな。」
「ふぅ、私もこれから製造を始めようか?」
3時
「説得は?」
「成功です。」
「では、待ってくれ。これを作るのはちょっと時間がかかるんだよ。」
「ところで私の部屋がこんなに汚くなったのは初めてですね。」
「不満を言うならハインズに言って。
この条件で錬金術をするためには必要なものが多い。しょうがないよ。」
4時
「うーん、これくらいなら使えるかな?」
「もう効果があるのが感じられる。ご苦労さま。」
『アルスマグナ』
「セフィエルでの初アルスマグナがこんなつまらないものを作るのに使われるとは、この魔法を作った私としてはちょっと複雑な気持ちよね。」
「でも、これが持ってくるようになる事件は、とんでもないことさ。
じゃ、二コラか持ってきたこの印章を…」
5時
「ゲロルトさんですか。よろしくお願いします。」
「本当にオピリアニムを救援してくれるのですか…?」
「私の命以外の全てをかけて必ず。
これからも守ってあげれるためには命まではかけることができませんね。」
「これからもですか…なら信じてみます。
具体的に何をすれば良いのでしょうか?」
「君たちはもう寝ておいて。」
「君は?」
「やるべきことがもう一つ残っている。
そして、状況をずっと見なければならないから。
出かけてくるよ。」
6時。
「どなたですか?」
「ネビュラ邸から人が訪ねてきました。執事って言ってました。」
「ああ、ゲロルトか。何の用事でこんな朝から?」
「これをお伝えするために…」
フェルナンドとセルジオとアベル。
3人の家に手紙が届いた。
「何だと…」
「いきなりこういうのを…」
「やるしかないか…」
7時
朝になってオフィーリアも目覚めた。
悪夢すらなかった。
今夜に予定されている現実よりもっと悪夢のようなことがあるだろうか。
今日は家で舞踏会を準備するしかない。
震える体を引きずって風呂場に向かう。
「オフィーリア様。」
「ゲロルトさん…?」
「今日が悲しくても、明日は必ず幸せになるでしょう。」
「...?」
そしてゲロルトは去る。
8時
「一応、俺が今やることもおわったな。」
あるうわさが出始める。
ここはシュベルテナのある繁華街。
「オフィーリア様が婚約するんだって?」
「相手は誰?」
「それがさ、今日舞踏会で決まるらしいよ。」
「男の方がうらやましい。」
「もうすぐまたお祭りが開かれるになるな。」
王都全体にうわさが広まっていく。
今日『聖女』が、『銀雪姫』が、『勇者』が、オフィーリアが婚約する。
午後
貴族たちの中でも噂は早いめで広がっている。
「それならお祝いのプレゼントを用意しようぜ。」
「その結婚の主人公が権力の中心になる。コネクションをつくらないと。」
「贈り物にお金を惜しむな。そうする価値のあることだから。」
聖騎士団の屯営にいたアルベルトも噂を聞いた。
「誰がその噂をしたんだ…ま、構いなしか?」
うわさが広がり、多くの人が知れば、顔のためにも結婚を断ることは難しくなるだろう。
のんびりと夕方の舞踏会の準備を始める。
シュベルテナ全体がざわめいているが、張本人がいるネビュラ邸は静かだ。
今すぐ舞踏会の準備が重要だから。
余事に気を使う余裕はない。
そのように一日は騒々しいが静かに、ゆっくりながらも早く過ぎていく。
いつのまにか5時。
舞踏会に行く時間だ。
「準備は終わった?」
「人をここまでこき使うなんて。私に借金一つしたのよ?」
「広く見ると、俺との契約の一環じゃねか。借金じゃないよ。
でも後でちゃんとおごるからさ。」
「それで十分よ。」
ニコラも準備がえきたようだ。
「行きましょうか、皆さん。」
「オフィーリアは?」
「後でいらっしゃるそうです。もう少し心の整理が必要なようですね。」
「それでは俺たち先に出発しよう。」
家を出て馬車に乗り込む。
そして私とオフィーリアはもちろん、世界の運命を変える馬車の輪が動き出す。
最後の仮面舞踏会に向かって。




