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ほらふきのイデア  作者: カナマナマ
第 三章 『愛する君だから』
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3-7 雲に隠られた月

月明かりのような銀色の髪。

アクアマリンのような瞳。

真珠さえも圧倒する肌。

誰もが視線と魂を奪われる美しさ。

俺さえ初めに会ったその時は、視線と魂を奪われたことがある。


そして今、もう一度奪われた。


「オフィーリア…」


「そちらにいらっしゃる方はどなたですか?」


ばれたか?!

逃げることはできない。

オフィーリアならすぐに追いかけてくるから。

ワープを使ってもオフィーリアの魔法の実力なら、魔力の残滓を追跡してすぐ追いつけることができる。


…臨機応変。

覚悟を決めるしかない。

仮面はちゃんとかぶっているよな?


「ニコラ様、こんなところにいらっしゃいましたか。」


何でもないように暗闇の中から出てくる。

オフィーリアとは目を合わせない。


「どなたですか?」


「ハインズさん、どうしてここに?」


「ハインズ?そんな雇い人がいたっけ?」


「私を救ってくださった恩人です。

事情があってしばらく私の護衛に雇いました。」


「ハインズです。」


オフィーリアが驚いたように息音が止まる。

声の変造の薬物はまだ働いている。

なのに確かに何かを感じた人の動きだった。


「ハインズ…ですか…?」


「ええ、そうです。」


「顔を上げてもらえますか?」


顔を見せるが目は合っていない。


「仮面ですか…」


「隠遁祭期間にはありふれたものですね。」


「少し脱いでいただけますか?」


やはり。

これは無理を通すしかない。


「申し訳ありませんが、隠遁祭期間中は絶対に脱がない方なので。

祭りが終わったら脱ぎます。」


「私にも見せてほしいと言ったけど断られました、姉上。」


「…」


ナイス、ニコラ。

オフィーリアが目を合わせるために目を動かしているのが感じられる。

今、目が合えば、ばれるという直感が来る。


「それであの方を雇った事情っていうのは?」


「路上でケンカがあったところ、ハインズさんとハインズさんの仲間さんが私を救ってくれました。

そのお礼に舞踏会に参加したいとおっしゃって。

だから私の護衛として参加資格を差し上げたのです。」


「そうですか。弟を救ってくださったこと、誠にありがとうございます。」


「やるべきことをやっただけです。」


「姉上、もう一度考えてください。」


「…」


「嫌いな人が多いということは知っています。

でも私は姉がこんなに元気なく人を避けるのがとても可哀想です。」


「…」


「姉上…」


「怖いんですか?」


俺が何を言い出すんだ?

止まれ、俺の舌。


「ハインズさん、何のことを!」


オフィリアがニコラの言葉を止めさせる。


「でしたら?」


「一生を逃げるつもりですか?」


「嫌なものから逃げるのがおかしいなことですか?」


「ちょっと低級だけど例を挙げてみましょうか。

道端に汚物があるとしましょう。

それを見れば当然避けなければならないでしょう。

ですがすでに汚物が落ちた道でよけたところにもう汚物がないと断定できますか?

既に底には汚物が散らばっています。

あなたの方法は避けることですが、果たして最後まで通じましょうか?」


「…」


「そうですね。それでは、どうされますか?

そのまま一生そこにいるつもりですか?」


「…」


「避け続けていればいつかは完全にゴミに囲まれたところに行くこともできます。

では、残った選択肢は何でしょうか?」


「何ですか?」


「ひとつひとつ自分で片付けていくしかないです。

もちろん、片付けることは大変で汚い仕事でしょう。

でもそれ以降は何も気にせず歩けばいいんです。

もうじゃまものはないから。どうせ掃除中に汚れたから。

体は後で洗えばいいんです。


一生を汚物に囲まれて生きたくないなら、こんな決断が必要なときもあるのです。

早く整理するほど心の荷物を減らせる時間がもっとたくさんできますから。」


「…」


俺, 今何をしたんだ…

オフィリアが俺を見ながらニコラに問う。


「明日の舞踏会に行けばいいの?」


「…はい!」


「なら明日9時までに行くよ。」


「ありがとうございます、姉上!」


そして、俺の方を見て言う。


「口が達者ですね。」


「そうですか。」


「あなたのせいで行くのですから明日、私の護衛もお願いします。」


「はい…はい?!」


「それでは明日お目にかかりましょう。

安らぎの夜になりますように。」


そしてオフィーリアは消える。

ぼんやりしている私をニコラが抱く。


「すごいです、ハインズさん! 姉上を説き伏せるとは。」


「あぁ…はい…」


「よし! 私たちも気合を入れましょう。」


「…」


俺、どうしたらいいんだ…


部屋に戻った。

明日の事も心配だけど,ニコラが風呂場で話していたことが分かった。


そのオフィーリアの目に雲がかかっていた。

何よりも澄んだ瞳でなければならない瞳のはずなのに。


いろいろなことが思いつく。

こんなに眠れない夜は久しぶりだ。




翌日起きても俺はぼんやりしている。

ルメナが俺の部屋に入ってくる。


「何だよ、何だよ?」


「俺、どうすればいい?」


「また何が問題なんだ?」


「昨日、オフィーリアと会ったよ。」


「?!」


ルメナに一部始終を説明する。

大いに期待していたルメナだったが、思ったよりあっけない再会に、面白くないという顔に変わった。


「よかったんじゃないの?」


「俺に護衛を任せたんだよ。気付いたんじゃない?

それなのに気づいておいてどうしたんだよ。」


「からかっているんだろうね。」


「何度も言うけどオフィーリアはお前みたいな子じゃない。」


「とにかく私が言うことは君がオフィーリアに言った通りよ。

避けられない時は正面突破。」


「…」


その言葉通りではある。

着替えてニコラのところに行く。

すでにニコラも準備をしている。

ニコラが走ってくる。


「おいでになりましたね。

昨日のこともう一度感謝します。」


「ああ、はい…」


「ハインズさんのことが気に入ったようでした。

因って今日の姉上の護衛はよろしくお願いします。」


「ではあなたの護衛は?」


ルメナが俺を押しのけて、ニコラを抱きしめた。

「心配しないで。お前なんかいなくても楽勝だから。」


弁解の種がない。

ニコラも笑いながら確認射殺をする。


「ではよろしくお願いします。」


部屋に戻ってきて私も舞踏会の準備をする。

仮面ももう一度見て。

ニコラから貰ったスーツの中から一つ選ぶ。

一応護衛だから区分けのために刀を持って行こうか。

マントも一つ持っていこう。


準備は終わった。

待つだけ。


「退屈だからルメナでもからかおうか。」


本当は緊張を解きたいからだろう。

おれのいけにえになれ。


ルメナの部屋に入ると、

ドレスを着たルメナがいる。

見た瞬間何も言えない。


「アハハ、何だよ、その様子は?!」


ルメナが俺を見て笑うこえに気がつく。

俺も呆然とした表情で答える。


「武道会に合わせただけだ。君こそよく似合うね。」


「何だと?からかってるんでしょ、それ?

こんなに美しい女を見たことある?」


「準備は終わったか確かめに来ただけだ。」


「では後でね。」


ルメナの部屋から出てくる。

なんだかもっと緊張するようになった。


することがないのに緊張すると、一日も早く過ぎていく。

いつのまにか5時。

ニコラが私たちを訪ねてきた。


「入場時間は6時ですので、そろそろ出発しましょう。」


正門には馬車が控えている。

「貴族のものです」と書かれているような外観だ。


馬車に乗ると動き出す。

すでにルメナはニコラをもって遊び始めていた。

しかし、どんな音もおれの耳には入らない。


これからどうすべきか。

これからオフィーリアに再び会うまで3時間。

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