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ほらふきのイデア  作者: カナマナマ
第 三章 『愛する君だから』
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3-2 王道を向けて

オフィリアが邸宅の応接間に向かっている。

その足取りはまるで機械を見るような、感情がこもっていない足取りだ。

いつの間にか応接間に到着する。


「オフィーリアです。」


「入ってなさい。」


部屋に入ると年老いた男1人に若い男が4人いる。


「来たな、うちの娘よ。」


年老いた男性がオフィーリアを歓迎する。

オフィーリアは何の返事もなく空席に座る。


「それで今日はどうして呼んだんですか?」


「そんなに冷たくするな、オフィーリア。」

オフィーリアの隣に座っている男が言う。


「別にそんな態度を見せようとはしていませんが、お兄様。」

声には感情が感じられない。


「今日、こうして3人方がお見えになった。

さあ、挨拶しろよ?」


向かい側の3人の男がオフィーリアを眺めながら微笑む。

それに反して、オフィーリアの表情には不満が溢れていた。

不満そうでもオフィーリアが頭を下げる。


「お久しぶりです、オフィーリア様。」

「そうですね。中央軍4隊長セルジオ様。」


「もっと美しくなられましたね、オフィーリア様。」

「そうですか。第二王子フェルナンド様。」


「お元気でしたでしょうか、オフィーリア様。」

「おかげさまで。王都守備隊副団長アベル様。」


皆、笑みを浮かべてオフィーリアを眺めるが、オフィーリアは目もくれないまま質問する。


「それで今日も同じことを言いに来られたんですか?」


「オフィーリア、無礼な言動は慎める。」


「たしか言ったはずなんですが、全部関心ないんだと。」


「オフィーリア!」


兄の方が大声を出すが、オフィーリアがそっちに顔を向ける。

目が合った瞬間、血が凍りつくような感覚で言葉を失ってしまう。


「戦争に参戦して侵略するつもりはまったくないので。

戦争を防ぐためでなければ呼ばないでください。」


「でもそれじゃ…」


「私の決心は確固です。」


その言葉に3人とも何も言わない。

今見えていた凍りついた表情はまだ解けていない。



「次いで結婚の件ですが…」

オフィリアがため息をついて話す。


「私は結婚するつもりは少しもありません。

だから毎回こんなふうに私を呼び出すのはやめてください。

それではこれで席をはずさせていただきます。」


「オフィーリア、待てろ!」


結局怒ったようにお兄さんが呼ぶけど無視して席を立つ。

部屋を出る際に一言、言い残す。


「これ以上聞いても変わることはありません。」


そして出て行ってしまうオフィーリア。

残った男たちはがっかりして何も言わない。

そして、4人の若者は、何かを決心したかのように目つきを交わす。


部屋戻る道。

オフィーリアの手には何かがきらめている。

過去に愛した誰かが誕生日にプレゼントしてくれた指輪が。

そしてその人をまだオフィーリアは愛している。




「はくしょん!」


「何だよ、風邪? それとも誰かがお前の悪口でも言っているのかな?」


「悪口言われるからって風邪がひいたらお前はもう俺のせいで100回は死んだった。」


俺とルメナはアルデン軍から出て、シュベルテナに向かっている。



「ところでそこに行くって何かできることがあるの?」


「知らない。」


「お前らしくない。

私が気持ち通りに行動すると毎回叱るやつが。」


「やるべきことが分からないわけではない。

問題はその行動のための条件だ。」


「聞いてみようか。」


「オフィリアが戦争に参加していたら断れない圧力が働いたはずだ。」


「自分で戦争に参加したとは全然思っていないの?」


「オフィーリアはお前じゃないんだから。」


「おい、私も私に喧嘩を売って来なければ私の方から先に喧嘩はしないよ。

では条件の問題は?」


「やっぱり一番問題はアルデンの軍事力と強者だろう。」


「ふん!神のズボンにしがみついて吠える奴らが強いならどんなに強いんだ。」


「俺たちが虎でもオオカミが群がると負けるしかない。」


「オオカミもオオカミ次第だし、虎も虎次第だ。」


「でもこれは王道に入ったらそんなに心配しなくてもいいよ。」


「そうだろうね。戦争中だから。

使える兵士や人材はほとんど戦争に行っただろうね。」


「だからといって油断はするな。

それはそうとしてもう一つはやっぱり顔かな。」


「…そうだね。」


マエスには俺の幻影魔法を認識できる実力者がいなかった。

しかし、シュベルテナは違う。

オフィーリアはもとより、錚々たる実力者が集まっている。

そんなやつらはすぐに顔の魔力を感知してしまうだろう。

事の顛末を知らない以上、誰にも、ましてやオフィーリアにさえむやみに接近することはできない。


だからといって素顔で歩き回るにはリスクが大きいすぎ。

オフィーリアならすぐ分かるだろうし、そもそも顔が知られるのはまだ早い。

かなり複雑な問題だ。


「声はどうするの?」

ルメナが質問する。


「声は錬金術で変調しようと思っている。

少しだけ変化を与えばいいんだ。」


「では問題はやはり顔か。」


「顔も変える薬もあればいいんだけどそれを作る材料がいまはあまりない。

よりによって足りない材料がかなり珍しいもので、すぐ手に入れることも難しい。」


「今ある材料でどうにかならないかな?」


「どうしても方法がなければアルスマグナでも。」


そうして一日野営し、翌日も馬を走らせて午後、ある村に着いた。

地図を見るとこの町からシュベルテナまではもっすぐだ。

とりあえず今日一日は休みながら考えよう。


どうせ顔を隠す問題を解決できなければ、シュベルテナには進入できない。

旅館に入って、まっすぐベッドに横になる。


どうすればいいんだ…

然して夕方まで眠ってしまった。



目が覚めるともうルメナは部屋にいない。

自分で適当によく食べているだろう。

寝起きたばかりでなのかご飯を食べる気はない。

村の散歩に出かける。


…やっぱりアルスマグナを使おうか。

悩みながら歩いていると、ある行商人にぶつかる。


「あっ、すみません。」

行商人の背負った品物が落ちる。


「…仮面?」


「おい、気をつけろよ。」


「すみません。ところが、仮面を売っているようですね。」


「『隠遁祭』が目の前だから。」


「『隠遁祭』ですか?」


「何だ、君はアルデン人じゃないんだ。

隠遁祭を知らないなんて。」


「旅行中です。アルデンは今回が初めてです。」


「おお、そうだな。」


「お詫びにお酒をおごりたいですが、その『隠遁祭』というものを詳しく聞かせてもらえませんか。」



行商人と飲み屋に入る。

お酒が入ると行商人も話し始める。


「隠遁祭」というのは、この世を見守る神様がお祭りの期間中にはより人々を厳しく監視するという伝説から由来した。

だからこそ神の目から逃れるために仮面をかぶって神に許しを請うための祭りを開く。

それが『隠遁祭』ってこと。」


「お祭り期間はどうなりますか?」


「これから3日後から5日間行われるお祭りさ。」


「シュベルテナでも祭りがあるんですか?」


「あるというレベルじゃない。

君が王室舞踏会に行ってみないと分からないよ。

華やかさの極致だ。」


「神に許しを請う祭りが華やかとは矛盾ですね。」


「神様もたまには楽しまないとな。」



「お酒までおごってもらったのに仮面まで買ってくれるなんて、むしろ儂がすまないな。」


「酒は倒したことに対する謝罪。仮面は説明の値です。」


「真面目だな。なら祭りを存分に楽しめ。」


俺が買った仮面は目と口だけが出る形。

行商人が立ち去る。


「幸運だ。こんなときにこんな祭りがあるとは。」


また宿舎に戻ってくる。

ルメナも部屋に戻っている。


「おい、クリス。 私がいいことを教えてあげるよ。」


「『隠遁祭』の話ならもう知ってる。」


「ちぇっ!」


翌日になると祭りの準備が始まることが分かる。


「確かに大きなお祭りだな。

村単位でこんなに大きく準備するなんて。」


「お祭りはシュベルティーナで楽しんで。

早く気に入った仮面だけ買ってこい。」


ルメナが仮面を一つ買ってくる。

悪趣味なものを買ってくるのではないかと心配したが、派手ではあるが普通の品物だ。


「よかった…」


「全部聞こえるよ。」


馬にまたがって走る。

走れ、走れ、走る。


町を出て2日目の午前。

おびただしい大きさの岩山が目につく。

地図によるとあの山が見えたらまもなくシュベルテナが見える。


案の定、時間はどのくらい経ったのだろうか。

マエスとは比較にならないような広々とした城壁が見える。


「あそこがシュベルテナ。」


すでに道には大勢の人々が見える。

祭りを楽しみに来る人たちだろう。


「早く行こうよ、ほら。」


催促するルメナ。

こいつがかんしゃくを起こさないようにするためには、今日一日くらいはこいつの思いきり遊ばせておいたほうがいいかもしれない。



行く前に馬を野原に放す。

あの中に入ると、管理してあげる時間はない。


「ご苦労様。これからは自由に生きれ。」


そしてシュベルテナの正門に向かう。

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