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ほらふきのイデア  作者: カナマナマ
第 二章 「薬と毒は紙一重の差」
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2-6 偽装就職

「それでは今日はゆっくり休まれますように。」


領主の城で部屋を一つ借りた。

部屋を1つだけ貸した理由は明らかだ。

2カ所を監視するより、1カ所を監視する方が楽だから。

まあ、今回は仕方なくルメナと同じ部屋を使わなきゃ。


「う~ん、ふわふわでいいね。

昔の記憶がよみがえる。」


「しばらく一人でいてくれ。

旅館に残こして来た品物を取りにいってくるから。」


「心配しないで行ってらっしゃい。」


一人で考える時間が必要だ。

向こうが裏切る気持ちでいっぱいなら、こちらが先手を打てばいい。

戦略はさっきから考えておいたし、細部の作戦だけ立てればいい。


「いいモルモットができた。」


お金で世界を変えると言ったが、単にお金が多くあるたけでは足りない。

力とお金を持っているのは俺であって、持てない者たちではないから。

俺がどんなにお金を持たない者に分け与えても、持てる者が力で奪うことは俺としても皆を守ることはできない。


つまり単に金をもうけるだけでなく、持てる者のものを奪って影響力を減らすことが重要だ。

もちろん、他の持てる者に対する警告であり、手本になることもあるだろう。

だからといって、お金をまともに使う人から奪うつもりはない。

そのような点で、あのゴミはいい実験体になるだろう。


旅館に到着して道具を取りまとめてチェックアウトする。

そして闇市に向かう。


「それは前もって準備しておこうか。」



2時間ぐらいかかっただろうか。

城に戻ると兵士たちが飛び出してくる。


「見つかりました。」


俺を囲む。

オズワルドが前に歩いて出てくる。


「どこに行って来たんですか?心配しました。」


「錬金術道具を探しに行ってきました。」


「そうでしたか。

今度からはぜひ、お声掛けいただき、外出していただきますようお願いいたします。」


「それは申し訳ありません。」


「...いっそのことアッシュを 護衛でつけてあげます。

彼が一緒なら私も心配しなくてもいいでしょう。」


「いいえ、そこまでする必要は。」


「ご遠慮いただかなくても大丈夫です。

アッシュ、あの方をよく護衛するように。」


アッシュという男が俺の方にやってくる。


「よろしく。」


見え透いたことを言うな。

いつでも君を監視して殺せるから余計なことはするなという脅迫だ。

問題は俺は脅迫が通じる相手ではないということだ。

一応奴を油断させるのが先だろう。


「よろしくお願いします。」


部屋までアッシュという男がついてくる。

部屋に俺を押し入れて行ってしまう。

ルメナはもう寝ている。


「緊張感なんてねのかよ、こいつは…」


俺も早く寝よう。

やることが多いから。




「ハインズさん、セルシアさん。よく眠れましたか?」


翌日になって日が昇るやいなや部屋の戸をたたく音が聞こえる。

オズワルドか。まめまめしいね。


「朝食はどうしましょうか? 持ってきましょうか?」


「私たちが食堂に行きます。」


半分ほど目を閉じているルメナの手を引いて食堂に向かう。


「食後は特にご用件はいますか?」


「ありません。すぐ製造室に行けばいいです。」



朝食を適当に食べてすぐにオズワルドについていく。


「お城の地下にあるんですね。」


「誰にも見つからない安全なところです。」


ある門の前に着く。

門を開けると、お城のホールに匹敵する大きさの製造室がある。


「ずいぶん大きく建てたんですね。」


「これくらいじゃないとまともな薬が作れないんじゃないですか。」


入ると辛いにおいが鼻をつく。

ルメナが鼻を握る。

ロピン唐辛子のにおい。ひどいな。


「一応、もともと作業していた人たちを撤収させておきましたが、人手が必要ならば、いくらでも呼んできます。」


「今は大丈夫です。」


中央の銑鉄釜が目に立つ。


「これがその薬ですか。」


「未完成品ですけどね。

じゃあ、アッシュを残しておきますのでよろしくお願いします。」


行ってしまうオズワルド。

アッシュという男と2人の部下が製造室の外で待っている。


「ロピン唐辛子のにおいからなんとかしよう。

そうでなければここを爆破させてしまうかも知れない。」


ルメナの脅迫のような提案に一応内部を掃除する。


「掃除ぐらいは人を呼んでもよかったんじゃない?」


「人の目はできればない方がいい。」


「本当に作ってあげるつもりなの?」


「そうだけど?」


「前もって言っておくけど世界をもっと良くするという君に付いて行くという契約だったぞ?

その道から君が離れたら私は君から離れるよ。」


「心配するな。作戦は…」


ルメナに小さな声で作戦を伝える。

ルメナが茶目っ気たっぷりに笑う。


「そうね。気に入った。そうしよう。」


「それではレイジストックから作ろうか。」


錬金術を始める。

とりあえず材料は全部そろっている。


「こんなロー級強化剤もちゃんと作れないなんて。

200年という歳月はながいね。」


「今では資料を探すことも大変な分野だから。

俺たちが作ることになった、ハイポーションのレシピもそうだよ。


でもロー級まではまだ作っている人たちが残っている。

ミドル級からが問題だ。」


30分ほどでオレンジ色の薬が沸騰している。


「魔法付与は適当なものにしておこうか。」


「お前がやれ。私は私の作品を適当に作るのは大嫌いよ。」


魔法付与とともに水薬の色が一層明るくなった。

これで完成だ。

量を見れば200本は出るか。


「そんなふうに見ないで来て飲んでみてください。」


門の隙間からアッシュ一味が俺たちをじっと見ていた。

入ったアッシュの方に瓶を1本差し出す。


「確かに色とにおいからして違う。」


さっそく飲んでみるアッシュ。


「ふむ…悪くはないな。でも、俺たちが作った薬より効果が弱くない?」


「私たちのが定石です。

副作用をなくして爆発的な効能は減らしましたが、持続時間ははるかに長いです。」


「どれくらい増えた?」


「もともと1時間だったが、これは3時間くらいでしょうか。」


「…すごいな。報告してくる。」


まもなくオズワルドが降りてくる。


「素晴らしいです! 1時間も経たないうちにこんなものを作り出すなんて。」


「簡単なものです。これで5000万は確実に私たちのものですね。」


「あ、そうですね。この程度なら5000万の価値があります。」


「それでは今晩またいらしてください。

ハイポーションを用意しておきます。」


「今日ですって?!

ハイポーションをそんなに早く作ることができるんですか?」


「製法の見学は一度完成品をご覧になって、次の製造の時にご覧ください。」


「了解しました。それでは今夜にまたお会いしましょう。」


じゃあ、ハイポーションの材料を買いに行こうか。

「材料買いに行ってきます。」




アッシュとその部下たちがついてきた。

今は別にいいけどさ。


「これも必要だし、これも、あれも買っておこうか。

おお、これもいいかも。これも買っておいて。」


「…こんなにたくさん買うのが必要か?」


「ぜんぶ必要だから買うのです。」


「もう200万リデム分は買ったのにまた買うなんて!」


この言葉にだれかの辛抱が尽きた。

ついてきたアッシュのせいで、外出したのに仕事ばかりするようになったルメナが、結局けんかを売ってしまう。


「うるさいな、ぼけ!

錬金術について何も知らないバカはあそこでお茶でも飲んでいろよ!」


「何だと?!この女が!」


あの二人は本当に相いれないな。

ルメナの限界を試すのはやめてほしい。


「落ち着いてハイポーションの価値を考えてみてください。

10本だけ作っても最低150万です。

これだけの材料なら200本は出ますか?」


「3億…!」


「分かったら荷物でも運べ。

お前たちのためにやっているんだよ、バクマ。」


「バクマがなんだ?」


「バカ+くま。あいつにぴったりでしょ?」


幸いにも物を運ぶに夢中して今度は聞けなかったようだ。

戦わないでほしいけど、今は。

お城に戻ってまたハイポーションを作る作業に入る。


「じゃあ、作戦を始めてみようかな?」


「ハイポーションを作るのは久しぶりだな。」


「お前の作戦通りならハイポーションでありながらハイポーションではないけどね。」


「作るのにかかる時間は4時間くらいか?」


製造を始める。




……



「思ったより難しかったな。」


「でもけっこう満足できるに出たよね?」


試しに作ってみた10個。

持って部屋に上がる。

オズワルドが来るのを待つだけ。


夜の10時ごろくらいになったら戸をたたく音が聞こえる。


「オズワルドです。 入ってもいいですか。」


「どうぞ。」


「ハイポーションは完成されましたか?」


「これです。」


テーブルに10本の赤い瓶が置かれている。


「これがハイポーション…」


「これで1000万は私たちのものです。」


「知っています、知っていますが。」


「?」


「これが本当にハイポーションなのか確認した後でこそ、本当にあなたさんたちのものになるのでしょう。」


「私を信じられないんですか?」


「いいえ。直接しっかり自分の目で見たいだけです。

150万リデムをそのまま使ってしまうのは少しもったいないですが。」


「どうやって確認するつもりですか?」


「こうして 。」


オズワルドは手を上げると,アッシュが彼の兵士の1人を刺す。


「何を?!」


「ポーションを飲ませてみてください。」


俺がはやく兵士にポーションを飲ませる。

そして、すぐに血が止まる。


「…素晴らしい!」


とんでもない奴だ。

わざと脅そうと思ってこんなことをしたんだろう。


「ハイポーションが確かですね。」


「言ったはずなんですが。」


「アッシュに話を聞きました。

200本分の材料だと。」


「そうです。」


「残り190本の金額も全部払います。いかがでございましょうか?」


「お金は大丈夫ですか?」


「今持っているお金では80本分が限界ですが。

それで明日お金を借りてこようかと思います。」


「…そうですか。」


「それでは明日は私の仕事があるから明後日に製法を習うことにしましょう。」


ハイポーションを持って俺たちの部屋から出る。

その時になって、ようやく俺も一息つく。


「…1段階は成功だ。」


「あいつがアホか賢いかよくわからないよ。」


「アホだ。それもすごいな。」


マエスでの2度目の夜はこうして過ぎる。

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